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銀河戦國史 (迷走の北辺暗黒天体群域)  作者: 歳超 宇宙(ときごえ そら)
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第25話 Story about ロザリオ 4-1

 オーラルな愛撫に慰められる。

 若き日に思い描いたセシリアについての妄想には、そんな場面も何度も出て来た。


 妄想の中のセシリアに背中を押されて、夢を目指す努力に打ち込んでいた日々が、ロザリオにはしきりに思い出された。


 宇宙要塞チェルチェンへの、最後のスペースコームジャンプの最中もそうだった。

 ただの思い出か、ゆがめられた時空が過去の断片を運んだのか。


 ミナブ星系も宇宙要塞チェルチェンも、接続する2つのスペースコームに含まれているため、数千光年も離れている両宙域間の踏破は、たったの2か月で済んでしまう。

 ヘラクレス第2回廊と呼ばれるスペースコームから、第1回廊と呼ばれるそれを経た移動だ。


 目的の場所に迫ったこの期に及んでも、まだ行方不明のセシリアは、ロザリオの頭の中を騒がせ続けていた。

(あんなにも背中を押してくれていたセシリアを放って、何なんだ俺は。

 俺なんかには、助けに行く資格すら無いな。俺なんかが助けに来たって、セシーは喜ばないだろう・・・・・・・)


 任務を選ぶ権利はある。

 保安機構は、新入り職員にも選択権を与えている。

 断り続けて、長く任務の無い宙ぶらりんな状態を続ける職員もいれば、強引な説得を受けた末に、渋々任務に就く者もいる。


 ロザリオも、セシリア捜索チームに加えて欲しいと主張することはできる。正当な理由があれば。

(そんなもの、無い。

 昔クラスメイトだったなんて、正当な理由になるもんか。


 クラスメイトだった経歴を活かした情報収集はもうやり終えたし、得られた情報は捜索チームに送付した。

 もう、俺にできることは無い。失踪者捜索に何の実績もない俺には、もはや出る幕はない)


 権利の行使には、責任が伴う。

 セシリア捜索に役立てる根拠も無しに、任務を選ぶ権利を行使するなど、無責任も甚だしい。


(捜索チームに加わるなんて、あり得ない。

 でも、このままセシーから離れて、関係のない任務に就いてしまって良いのか。

 せっかく、セシーの失踪したアガデ星系とは20光年しか離れていない、宇宙要塞チェルチェンに、やって来たって言うのに・・・・・・・)


 前日に寄せられた、セシリアに関する新たな情報を、ロザリオは反芻し始めた。

(培養奴隷について、色々と調べていたっていう、話だった。

 担当した孤児がどうやら、培養奴隷の子供だったらしいからって)


 セシリアの職場の同僚とかいう人が、失踪発覚から2か月近くが過ぎたころに、思い出してくれた。

 トラペスント星系時代にセシリアと親友だった女性が、彼女から寄せられたメッセージの中にその同僚の名前を見つけ、何度も繰り返し問い合わせた結果、探り当てることができた新事実だ。


 トラペスント時代の親友と言うのは、サイモンの姉の友人の妹だから、この情報も先にサイモンに知らされ、ロザリオはサイモンから聞いた。

(こういう情報の伝達においてさえ、後回しにされている俺に、セシーを探しに行く資格なんかあるわけないよな)


 隣で目を閉じているサイモン・ウェントスも、頭の中はセシリアに騒がされているだろう。

 だが、トラペスント時代には別の女性に熱を上げていたいサイモンの心配は、セシリアに釘付けだった自分とは別物だと思う。


(なのに、セシーを探しに行けないし、情報ですら、サイモンより後に回ってくる)

 集合着座室のシートに、友人の隣で身を沈めながら、ロザリオの落胆には底がなかった。


 急減速により生じるGを、ここに集まって堪えるのが船の規則だった。

 ずっと堪えていたGが緩む。減速が終了しつつある。到着が近いしるしだ。


 漆黒の宇宙から、じわっと宇宙要塞がにじみ出て来る様子を、腕に巻いた端末に立体表示させて見ることもできたが、ロザリオもサイモンもそれをしなかった。


 要塞への侵入を開始した頃になって、サイモンが端末に状況を表示させた。

 円筒形建造物である宇宙要塞の、軸線に沿って輸送船が進む様が、立体の模式図として端末上の空間に示された。


 停船から1時間後に下船した。

 船内は狭くもなかったのだが、長く缶詰になっていたそれの外に出ると、今生まれ落ちたかのような解放感に満たされた。


 ひとしきり満喫して周囲に意識を向けると、その場の異様な雰囲気に気付く。

 これが最前線特有のものだと気づくのには、数分がかかった。保安機構職員がやたら目に付く。


 肩から袖に白いラインをあしらった文官も多いが、そこが赤い稲妻模様である武官も多い。

 戦闘直後の高揚感に浸っていると分かる一団もあれば、戦闘直前なのを露にした鬼気迫る面構えの一団も見える。


 拘束された宙賊を、連行する一団にも出くわした。

 解放された航宙民族が、武官の職員に改心の決意や感謝の気持ちを、涙ながらに述べている場面も見た。

 それらにいちいち興奮するショーン・ブランケットを宥めるのに苦労しつつ、彼らはスペースポートを後にした。


「せっかく捕らえた宙賊を解放するだなんて、そんなことやっているから、弱腰だって言われるんだ。あんな奴ら、皆殺しで良いじゃないか! 」

 こんなショーンの強硬論に、もはや反論する気も、若者たちからは失せていた。


「へいへい、じゃあ上層部にむかって、せいぜい主張してみてくれ。

 それより、早く行こうぜサイモン。俺たちの任務が何なのか、早く知りたいぜ」

「そうだな、ロザリー。ここの緊張感に触れていると、俺たちも早く、何らかの任務に専心したい気分になるな」


 手近なポールを蹴飛ばして、無重力中を飛翔する。

 移動補助用に、コンコースには格子状に、いくつものポールが配されている。

 広い無重力施設では、必須のものだ。


「おい、待ってくれよ」

 出遅れたショーンが叫ぶのを背中に聞きながら、ロザリオはサイモンに尋ねる。

「示された任務は、素直に受けるつもりなのだろ?」


 宙を泳ぎながら、サイモンは応じた。

「そうだな。よほどおかしいと感じる任務でもない限り、選ぶ権利は行使しないで、与えられた任務に精一杯取り組んでみるよ」


「そうだよな。まずはどんな形でも、現場を体験してみないと」

 言葉にはしないが、セシリア捜索とは違う任務でもそれに向かう決意を、彼らは伝え合った。

 どれだけ彼女が、気がかりであろうとも。


 課題ごとに組織は編成され、課題が解決すれば組み替えられる。

 組織を固定化して、それに課題や任務を割り当てる方式を、保安機構は採用していない。

 縦割りとか硬直化という問題を防ぐためだ。


 だいたいが3~5年で、組織は組み替えられる。

 5年で解決できなくても、基本的には次の組織に引き継いで、その組織は解体となる。

 ずっと同じ面子で同じ課題に取り組み続けることは、あまりなかった。


 課題の内容によっては、同じ人物が5年を超えた長期にわたって、1つに取り組み続ける場合もあるが、それでも固定化されるのは、各課題において中核を成す数人で、それ以外は3~5年で入れ替えられる。

 スペシャリストとゼネラリストをバランスよく育成するように、保安機構は勤めていた。


 特に武門においては、私兵化などという危険もあるから、組織の固定化を極力避けるよう、保安機構は気を配っている。

 同僚も任務も、3~5年で替わって行くのが通常だった。


 ロザリオとサイモンは、同じ建物に出頭することを指示されていた。

 そこで任務を拝命するだろう。

 スペースポート脇の施設への出頭を指示されているショーンとは、ここからは別行動だ。


 軸部分のスペースポートから、外周壁内面にある大地へと2人は移動した。

 それは、エレベータと呼ばれる乗り物を使っての、降りると表現される移動だった。

今回の投稿は、ここまでです。 次回の投稿は、 2023/2/4  です。


 効率的に動く組織とはどういうものかについて、思索を巡らせることがよくあり、その成果をときどき作品中に盛り込んでみたりもするのですが、今回はゼネラリストの重要性というのを書き込んでみました。


 作者の勝手な思い込みかもしれませんが、日本の企業というのはスペシャリストの育成には熱心でも、ゼネラリストの育成にあまり関心が向いていない気がするのです。

 もちろんスペシャリストは必要ですが、同じくらいにゼネラリストも必要ではないでしょうか?


 ゼネラリストとは、要するに全体をバランスよく見ることができる人なわけですが、それの育成は恐らくスペシャリストより難しく、高度な先見性や戦略性が求められ、企業においては幹部クラスがしっかりとした考えを持っていないと実行不可能だと思います。


 スペシャリストは、業務の範囲や内容がある程度固定化されているので、育成するのにも一定のセオリーを確立しやすいですが、ゼネラリストはそうはいきません。

 企業活動の全体像が、日々変化して行くものだからです。


 顧客の入れ替えや要求事項の変化、関連法規の改廃、技術革新、人事異動等々で刻々と変化して行く企業活動の全体像を、常に正確に把握し続けることが求められるのが、ゼネラリストです。


 いまその企業が実施している全ての業務に加え、それを踏み越えた範囲や、過去にやっていたこと、未来に関わる可能性があることなどにまで目を行き届かせ、十分に把握しておく。

 こんなことができる人材の育成に、一定のセオリーなど確立できないでしょう。


 でも、ゼネラリストの確保は必須です。

 スペシャリストばかりでは、いつどこに隙ができるか分かりません。


 ある業務のスペシャリストが一人もいない、という事態を発生させないためには、ゼネラリストが絶対に必要です。

 変化して行く企業の全体像に対して、全ての業務にスペシャリストを必要な人数配置し続けるのに、欠かせない人材です。


 このところ、色んな企業で品質不正や情報漏洩やシステム障害などが続発しているように思えますが、それらもスペシャリストの人数や能力の不足以上に、ゼネラリストが足りていないのではないか、と作者は感じています。


 作者が務めたことのあるいくつかの企業でも、誰もやり方が分からない業務、そんな業務があることすら誰にも把握されていない業務、というのが少なからずあったと思います。

 ゼネラリストの不足が、深刻な状態だったのだと思っています。


 そんなゼネラリストを育成するためには、5年とか10年の長期的な計画を立てた上で、色んな業務を順番に経験させる人材というのを確保する必要があると思います。

 でも作者が見て来た企業では、目先の仕事量だけに対応して、場当たり的に人を右へ左へと移しかえ、長期的な計画性のある配置転換など、やろうともしていませんでした。


 スペシャリストとしての経験を積めば、ゼネラリストとしての素養も磨かれるという勘違いも、あったように思えます。

 ゼネラリストを育成するには、その為の特別な教育訓練プロセスが必要だとは、思いもよらないかのようでした。


 それどころか、ある人材に対してスペシャリストになることを期待してるのか、ゼネラリストになって欲しいのかも決まっていないし、何のスペシャリストが何人必要になるのかも、誰にも分かっていない状態だったのでしょう。


「君に今後どうなってもらいたいとか、どんな仕事をしてもらうつもりとか、そんな計画は何もないよ。今抱えてる仕事をどうするかで、精一杯だからね」

と、上司にきっぱり宣言されたこともあります。


 この上司にしても、スペシャリストとしての教育は受けたけど、ジェネラリストとしての教育は受けていないから、自分の担当部署内に分からないこと見えてないことが、無数にあったのでしょう。

 そんな人に計画性など望むべくもなく、場当たり的にしか行動できない訳です。


 そして会社中を眺め渡しても、そんな人しか見当たらない企業もありました。

 こりゃダメだと思って、辞職しましたけど。


 こんな、愚痴みたいな個人的不満を詰め込んでいたのでは、誰にも読んでもらえない作品になってしまうのではないかと、心の片隅では危惧しながら、それでも書かずにはいられませんでした。

 今後も少しは出て来るかも知れませんが、あまり多くならないように心がけますので、このことで愛想をつかしてしまわれないように、読者様には伏してお願い申し上げる次第です。

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