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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第五章 生活
78/394

§077 自立

スリの少女とその指揮をしていた男を捕らえ、

共にパーティに加入させ、自宅のタライの部屋へ押し込んだ。


現在はデュランダルを消してはいるものの、

迷宮帰りのスキル構成だったため、鑑定を取得していなかった。


落ち着いた事だし早速鑑定をしてみる。


 ・カリム・ハリル・トリア 人間   男 28歳 盗賊  Lv2

 ・ヴィクトラ       竜人族  ♀ 12歳 山賊  Lv1


アナの言う通り少女は竜人族で、もう1人の男は20代後半だった。

この2人の関係性も気になる所だが、もう1つ気になる事があった。


「お前は元貴族なのか」

「っ・・・・」


「答えなくても良いぞ、トリア。

 あの町の有力者の子息だったのだろう?」

「昔の事だ」


タロスの事件が10年前に起こった事だとすると、この男は当時18歳。

つまり青年だったと思われる。


「お前の親が失態を演じたと言う事か?」

「っ!」


あからさまな反応をして判り易い。


「いや、そんな事はどうでも良いのだけどな、何故盗賊なんかに?」

「・・・生きて行くにはそうするしかなかった」


「住民の誰も、お前の事など知らんだろう?」

「俺はタロスの友人だった。

 俺がタロスと父を面会させて、そして事件が起こった。

 父は処刑された」


「なるほど、自責の念か」

「それもあるが、多くの町民からは執政官の家族と言う事や、

 タロスの友人と言う事で恨まれている」


それで盗賊か、だからと言ってそれは仕方が無い事なのだろうか?

タロスは別の町へ去ったと聞いた。

この男も別の町でやり直せば良かったのでは無いだろうか。


「今更だが、もう一度まっとうに人生をやり直したいとか思わないか?」

「もう何もかも遅い。飢えを凌ぐために色々盗んだ」


試しにパーティー項目解除を久しぶりに付けて、ジョブ設定を弄ってみる。


 ・カリム・ハリル・トリア 人間   男 28歳 盗賊  Lv2

   設定:盗賊(2)

   取得:村人(6)探索者(1)魔法使い(1)色魔(1)


色魔の文字を見てブチ切れそうになったが堪えた。

若い頃下女やらと遊んだ結果なのだろう。


盗賊のLvが低いと言う事は盗賊としては殆ど活動していない、

或いは大した物を盗っていない。

もっと言うと懸賞金が懸けられる程の事をしていないと言う事だろう。

根は良い奴なのかもしれない。


ただ、この男にはもう1つ特異な点があった。


ジョブに魔法使いの文字があるのだ。

この男がいれば迷宮探索は楽になるのかもしれない。


だがどうする?

今まで拗ねてひん曲がった根性の持ち主のこの男を、

一緒に住まわせて良いのかと言う心配もある。


別の家を借りてそこにと言う訳にも行かない。

そのまま逃げられる可能性だってあるし、魔法使いに就任させた事で、

自分の価値を見出し別の主人を求めて逃亡する可能性もある。


この男の哀れな実情や盗賊Lvの低さからも、

目に見えての悪人では無いのだと思う。

その気があれば知名度を利用してかしらになれたかもしれないし、

自分の力で盗賊道を邁進まいしんする事もできたはずなのだ。


年端もいかない娘を1人で身請けして、

スリみたいな小悪党に成り下がっているのは、

臆病で意気地いくじが無い性格なのかもしれない。


「お前がやる気があるのなら、一度だけチャンスをやろうか?」

「そんな事できるかよ。

 盗賊に落ちたら後はもう狩るか狩られるかしか無いんだ」


「それができるぞ、奴隷に成ればひとまず処刑からは回避できる」

「はっ、俺みたいな無能を欲しがる奴なんて居ねえよ」


「お前は執政官の息子だったよな?」

「それがどうした」


「お前は多分小さい頃に洗礼を受けている」

「洗礼って何だ?」


「魔法使いになるための試練だな」

「馬鹿言え、親父も母上も誰もそんな事を言っていなかったぞ」


「そういう日が来る前に事件が起きたんだろう。

 或いはお前が大事な時期に遊び回っていたとかな」

「・・・」


何だ図星か?

色魔を持っていたしな、羽振りがいい時はやんちゃしたのだろう。


「そういう訳で、お前は奴隷に落ちる事にはなるが、

 魔法使いとして戦っていけば、お前はそこから逆転できる」

「迷宮でこき使われて死ぬだけだろ、盗賊として死んだって一緒だ」


「お前は魔法使いがどの位の値で取引されるか知っているか?」

「知らねえよ、処女で若くて美人の奴隷でやっと80万ナールだからな。

 戦闘奴隷なら使えそうな奴でもせいぜい20万ナール程度、

 俺みたいにこの年で未経験なんて精々その半分の半分だろ」


戦闘奴隷がいいとこ20万ナールなのは良い線を付いている。

戦闘奴隷としてそこそこ有能なジャーブがその位だった。


しかし、魔法使いの奴隷が正確にいくらかなんて全然判らない。

ミチオ君、後続の若者のためにも、

奴隷オークションで魔法使いの落札価格を見物しておいてくれ・・・。


判っている事は1つだけある。

多分100万ナールは固い。


白金貨を見せびらかして牽制していた商人がいたはずだ。

落札価格はそれ以上、1.5倍から2倍を見ても良いかもしれない。

この男は迷宮初心者とは言え、まだまだ若い。

存分に戦っていける価値があるはずだ。


「お前は売りに出せば、最低80万ナールだ」

「えっ?」


「もっと言うとその倍の価値はある。競売で売り買いされるような逸材だ」

「ええっ?」


28ならまだ若い方だ。

年寄りの魔法使いならあまり長い間は戦えないだろうが、

28歳なら30年は行けるだろう。

つまり価値があるって事だ。


「いくら金持ちと言えども、白金貨1枚をはたいて買った奴隷を

 使い潰して投げ捨てるような使い方はしない」

「そ、そりゃあ・・・そうだよな」


「それに魔法使いであるなら、どの戦闘奴隷よりも重要で強く成れる」

「・・・そうなのか」


「どうだ、お前がまっとうな道に戻る気があるのなら、

 誰かに仕えて生きて行くのは。

 お前が強くなって替えが利かなくなれば、一番奴隷にだって成れる」

「・・・」


「一番奴隷なら寂しい食事も無いだろうし、

 女の奴隷だって宛がって貰えるかもしれない。

 最低でも衣食住不自由しないぞ」

「本当か・・・?俺にもまだチャンスがあるのか?」


「ああ、間違いない。どうだ?奴隷になって魔法使いとして生きるか?」

「でも俺が魔法使いに成れるかどうかは信用できねえ。

 そもそも戦闘の経験だってないし、魔法の呪文だって知らねえ」


「商館ですべてイチから教えて貰える、何も心配いらんぞ。

 このドワーフの娘も元はタダの食堂の娘だが、

 商館で一から教えられて今では鍛冶師だ」

「なっ・・・鍛冶師!?あんた相当凄い御仁ごじんなんだな」


「凄いかどうかは知らん」

「鍛冶師の奴隷と言えば高額だし滅多にお目に掛からねえ。

 親父も欲しがっていたが結局手に入らなかった」


そうなんだ、鍛冶師凄いな。

魔法使い同様に高額なんだろう。

オークションに出したらやはり白金貨が飛び交うのだろうか。


まず奴隷に落ちるような事が無いように教育されるだろうし、

パーティに潜り込んだら重宝されるだろうから、

探索者として転落する事なんてありえない。


万が一奴隷に落ちる事になればその後のトラブルも知っているだろうから、

殆どの者がジョブを変える。


ある意味魔法使いと同等に出てこない逸材なのだろう。


「その鍛冶師と同等なのが魔法使いだ。

 お前たち貴族は当たり前に魔法使いのジョブを持っているが、

 庶民にはどう逆立ちしたって手に入れる事ができないのだ」

「そうなのか・・・知らなかった・・・もっと早く教えて貰って居れば」


「それを拒んで来たお前の生き方を反省するんだな」

「分かった。奴隷になってしぶとく生き残ってやる、

 だがその前に2つ確認させて欲しい」


「何だ?」

「魔法使いに本当になれるのか、と言う事とそっちのガキの事だ」


この娘は奴隷に落としたところで、売却ができない年齢のようだ。

12歳では売れなかったはずだし、

逆に引き取り料を要求されそうな気もする。

教育費や食費が掛かるだろうし。


「この娘はどういう関係なのだ」

「家が取り潰しになった時にウチの奴隷だった者の娘だ」


「奴隷商が一緒に連れて行かなかったのか?」

「未成年は売買できないし、食費やら何やらであちらさんも困るんだとよ。

 コブ付き女奴隷では仕事にならんし売れん」


「それでお前が引き取ったのか」

「そうだ、正式には俺は主人じゃない」


そりゃそうだ、盗賊は奴隷を持てない?・・・のだったっけ。

この男がそれを知っているのか知らないのかは不明だが。


「ではこの娘は引き取ろう。

 悪いようにはしないから、言う事を聞くように言ってやってくれ」

「分かった・・・」


「おい、ヴィー。今日からこの人がお前の主人だ。

 俺は違う主人に仕える事になる、ここでお別れだ」

「ヤだよ、兄ちゃんと一緒がいい」


「ヴィー、今まで悪かったな。

 もう盗んだり逃げたり隠れなくて済む、食事も毎日ちゃんと食べられる。

 この人と一緒に生きて行け」

「兄ちゃん・・・」


「分かったと言ってくれないと俺が困る。

 ヴィー、この人と一緒に行け。いいな?」

「わ、分かった・・・兄ちゃん・・・」


ヴィクトラの方はこれで問題なさそうだ。

この子もこの子なりに苦労をしてきたのだろう。

餌付けしてやれば懐いてくれるかもしれない。

流石に甘く考え過ぎかな?


「魔法使いの事なら簡単だ。

 今から迷宮に連れてってやるから、後ろから1発撃ち込んでみろ」

「はぁ?ちょ・・・ちょっと待ってくれよ。

 呪文だって知らねえし、いきなり迷宮だなんて無理だぞ」


「難しいブラヒム語は大丈夫か?」

「まあ、話せるくらいにはよ」


ゲートを開いてトラッサの1層へゲートを繋いだ。


「ジャーブ、アナ、来い。ナズはその子を押さえておいてくれ」

「「かしこまりました」」「分かりました」


「うわぁっ・・・」

「兄ちゃんっ!」


縛られたままジタバタするカリムをゲートへ押し込み、

アナにトラッサ1層の敵、グリーンキャタピラーを探させる。

その間にカリムのジョブを盗賊から魔法使いへ変更した。


「ご主人様、居ました」


「よしカリム、ファイヤーボールと言ってみろ」

「えっ、ふぁい・・ファイヤー?」


「ファイヤーボールだ」

「ファイヤーぼーる・・・・えっ・・・」


「解ったら戻るぞ、撃ち込んで見たかったら今のうちに詠唱してみろ。

 2人ともご苦労、撤収だ」

「かしこまりました」「分かりました」


結局カリムは魔法を発動せず、ジャーブによってゲートに押し込まれた。

やっときゃ良いのに。


「解かったならばお前を一度奴隷に落とす。家名は消えるが、いいよな?」

「むしろ消せる方法があるなら消して欲しかった。

 このせいで俺は・・・どこに行っても何をしても・・・、

 忌まわしいトリアの名で指を指されて来た」


そうか、カリムは自分の家名のせいで真っ当に生きられなかったのか。

どこに行ってもインテリジェンスカードのチェックが付き纏う。

宿に泊まるのも、家を借りるのも、ジョブに就くのだって。


名を汚されたら生き難い。

だからこそ名誉挽回のチャンスとして決闘があるのだろう。

名を偽る事ができないこの世界において、決闘の重要性を理解した。


さて、奴隷に落とすのには2つの実例があったはずだ。


1つはミチオ君の冒険録序盤だ。

野盗に襲われた村の村長が、

盗賊バンダナをちょろまかした元村人の盗賊を奴隷に落としていた。

つまり、村長のジョブならば盗賊を奴隷に落とす事ができるはずだ。


もう1つは聖騎士であるハツル公が小姑のルティナを奴隷に落とした。

聖騎士は盗賊でない者をより強力な手段で奴隷に落とす事ができそうだ。

例えば盗賊の協力者や、それ以外の犯罪者などを奴隷にする場合だ。


しかし聖騎士のジョブは持っていない。

騎士のスキルでは確認はできたが操作はできなかった。


以前ナズやアナを再登録した時に奴隷商人のジョブコマンドを試したが、

奴隷商人のスキルでは主人登録と遺言作成、それから奴隷解放しかなかった。

であれば主人の登録とか付け替えを行う以外は意味を成さない。

解放も先に主人のインテリジェンスカードを求められる事から、

主人の同意があれば可能とかそういう感じなのだと思う。


しかし村長のジョブは既に得ている。

村長のスキルにあるインテリジェンスカード操作には、

奴隷へ落とすコマンドがあるはずなのだ。


村長・・・役に立たないジョブかと思ったが、十分役立ちそうだ。


早速セットして、詠唱を行ってみる。


「滔々流るる霊の意思、脈々息づく知の調べ、

  インテリジェンスカード、オープン」


 ・カリム・ハリル・トリア <人間:男 28歳> 魔法使い


駄目じゃん・・・何やってるんだ自分。

しかも表示されている間はジョブの変更ができないときた。

インテリジェンスカードを押し込み、カリムを盗賊に戻した。


「滔々流るる霊の意思、脈々息づく知の調べ、

  インテリジェンスカード、オープン」


 ・カリム・ハリル・トリア <人間:男 28歳> 盗賊


     ・奴隷登録

     ・奴隷解放


解放はグレーアウトされている。

メニューから登録を選ぶと、ステータスが初年度奴隷と表示された。

そしてメニュー上には登録がグレーアウトされ、解放が黒字になった。

そしてジョブは自動的に村人へと変わる。


パーティジョブ設定からカリムを魔法使いへと変更した。


 ・カリム <人間:男 28歳> 魔法使い 初年度奴隷


ついでだから、女の子の方も変更しよう。

面倒臭いので3度目の詠唱はしなかった。


 ・ヴィクトラ <竜人族:♀ 12歳> 村人 未成年奴隷


ほー、未成年奴隷。


おそらく、このステータスが付いている間は主人の変更ができないのだな。

だからこそ売ったり買ったりできないと言う仕組みだ。

ヴィクトラは村人以外のジョブを所持していなかったので、

そのままにして置いた。

いや盗賊はあるけどさ、設定してどうするのよ。


さて、この2人の元盗賊を抱えっぱなしで夜を過ごすのは怖い。

できればカリムは今日中に奴隷商に引き渡して置いた方が良いだろう。


カリムの方は一応覚悟を決めたようだが、

ヴィクトラがまだ完全に納得できていない可能性もある。

彼女を説得するにあたり、カリムの存在は未確定要素になりうる。


2人を一晩放置した結果、

相談してやっぱり逃げようなんて事になるのも厄介だ。

早急にこの2人は離した方が良いと考えた。


となると、カリムをどこで誰に売るかだ。

ルイジーナの大商人、ザイードに売るのは何か違う。

やはりこれまで何度も世話になったし、

割引で無理を言ったシラーに買って貰うのが一番のような気がする。


トラッサの商館へ行く事にした。


「では、アナは引き続きその子の面倒を見てくれ。

 できるだけ落ち付かせて、ここでの暮らしを納得させるように。

 ナズは食事と湯の準備を。

 その娘は腹が減っているかもしれないから、果物を切ってやってくれ。

 ジャーブは水と庭だ、後で見張りを交代しろ」

「「かしこまりました」」「分かりました、行ってきます」


「ではかせを解いてやるが、今更逃げても無駄だぞ。

 奴隷になった上で主人から逃亡すると、盗賊より酷い目に合うからな」

「う・・・分かってるさ」


正確には自分の奴隷には加えていない。

奴隷に落としただけで、所有者を自分にした訳では無い。

恐らく、正式に所有するには奴隷商のコマンドが必要なのだろう。

どうせ売るのだし、所有しても意味は無いが。


「兄ちゃん・・・」

「ヴィー、お別れだ。お互い頑張ろうな」


カリムの事はもう心配要らなさそうだ。

名前を捨て、魔法使いとして生きる事ができると言う事実に、

素直に喜んでいるようにも見えた。


一旦カリムのアジトにワープをして着替えをさせて、

トラッサの商館近くの家の陰にゲートを繋ぐ。

何を言わなくても、ここまで素直にカリムは付いてきた。

ノッカーでガンガン叩くと、いつも通りにヨシフ君が出てきた。


「はい・・・おお、これはユウキ殿、今ご案内致します」


もはや何用ですかとは言わずに、ご案内になってしまった。


顔パスとはこの事か、大そうな身分になってしまった気がするが、

ここで浮ついてはいけない。

気を引き締めて生活する事が、身を固めて行く上で重要なのだ。


ヨシフとアグルスに出迎えられ、奥の応接室に案内される。


ササっと鑑定をしてみると、ヨシフはLv25に成っていた。

彼も頑張っているようで安心した。


今日は大取引なのだ、堂々と出されたハーブティーに手を付ける。

ややあって、商館主のシラーが顔を出した。


「これはどうも、ユウキ殿。本日は如何なさいましたかな」


隣に立っている男、カリムに目を向けてこちらを窺った。


「ええ、実はひょんな事から2人の奴隷を手に入れたのですが、

 どちらも抱える訳には行かない事情がありまして、

 1人を売却する事に致しました」

「ほう、・・・この男ですかな」


「カリム、この商館主は信用できる。喋ってもいいか?」

「えっ・・・あの、新しい主人に言ったりしなければ多分・・・」


「と言う事ですので、これから言う事は是非内密にして頂きたいのですが」

「分かりました、聞きましょう」


・・・・・・


シラーに、カリムがトリアの名を残していた事で、

生活ができずに困窮し犯罪に手を染めてしまった事を説明した。

そして、魔法使いのジョブを取得しているので

戦闘奴隷として十二分に戦える事、

心を入れ替えてまじめに仕事をする意欲がある事を話した。


「・・・と言う事です」

「あのトリアの執政官のご子息だったのですか」


「ええ。しかしもうその名は捨たので、ただのカリム、魔法使いの男です」

「なるほど、そんな事情がございましたか。

 確かに、その事情を知った上では手元に置く事は難しいでしょうな」


「魔法使いはこちらとしても欲しい人材ですが、

 今回はやむなく、といった所ですので是非汲んで頂けると」

「解りました、魔法使いの奴隷ならば引く手あまた、

 もっと言うと競売にも出せるような人材でしょう。

 素性もしっかりしておりますし、ブラヒム語の教育も不要のようです。

 元貴族と言う事であれば箔も付くでしょう。

 最大限勉強させて頂きまして、100万ナールで如何でしょうか」


「それで結構です。カリムはブラヒム語を理解できるようですが、

 魔法使いに成るとなると高度なブラヒム語も必要かと思われます。

 ぜひ勉強させてやって下さい」

「それは勿論、どこに出しても恥ずかしくないよう教育させて頂きます」


「それじゃあカリム、お別れだ。

 少なくとも食事に困る事は無いだろう。

 後はお前の器量と努力で頑張って行ってくれ。

 貴族の知識は必ず役に立つぞ」

「分かった・・・、分かりました。俺を・・・。

 俺を救ってくれてありがとう、最初のあるじ殿」

「なるほど、これは見込みが宜しい。

 良い主人に買って頂けるように頑張らせて頂きますよ」


「そうして頂けると」


小声でカリムに耳打ちした。


(お前の下着の中に金貨をしまって置け、

 奴隷になっても下着だけはお前の持ち物らしい。

 何かあった時に、困ったら使え)


そう言ってカリムに金貨を握らせた。


「それでは契約を」


カリムが腕を出す。

シラーがインテリジェンスカードの詠唱をして何やら操作が終わると、

アグルスに案内されてカリムは消えて行った。


そして、ヨシフが銀のトレイに白金貨1枚を乗せてやって来た。

たった1枚なのに、わざわざそんな事をしなくても・・・とは思ったが、

この1枚の貨幣の重さは、それ程に重いのだと言う事を考えさせられた。


「それでは、また何かありましたら宜しくお願いします」

「いえいえ、こちらこそ。素晴らしい取引でした。

 全くユウキ殿にはいつも驚かされますな」


「いやいや、流石にもう何も残っていませんよ」

「ユウキ殿は・・・、

 もっと何か大きな事を成し遂げられるような、そんな気が致します。

 私共も応援致しておりますので、その際はぜひご用命を」


それはちょっと買い被り過ぎだろう、過大評価が過ぎる。

ミチオ君とは違って、今度こそ本当に細々と生きて行きたい。

老後に備えて8枚の白金貨を貯めたら、†

あとは隠居してゆっくり過ごしたい。


ジャーブの話によると、

税金は15歳から60歳まで支払わなければならないらしい。

今現在、自分は21歳なので残り39年間。


パーティ6人だから5人奴隷を抱えて年間5万ナールと家賃が5万ナール。

食費も1食100ナール、3食365日で年間10万ナールを見積もる。

20万ナール40年を計算すると800万ナール、白金貨8枚なのだ。


800万ナールあれば、あとは細々と小遣い程度を稼ぐだけなのだ。

早く稼いでFIRE(経済的自立と早期リタイア)したい。


皆さん、頼みましたよ?

∽今日のステータス(2021/08/30)


 ・繰越金額 (白金貨1枚)

     金貨 14枚 銀貨 83枚 銅貨 48枚


   餞別                (1万й)

      

   奴隷売却            (100万й)


    白金貨+ 1枚

     金貨- 1枚

  ------------------------

  計  金貨 13枚 銀貨 83枚 銅貨 48枚

                   白金貨 2枚



 ・異世界18日目(16時頃)

   ナズ・アナ13日目、ジャーブ7日目、

   防具回収まで1日、鍛冶G面会まで4日

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― 新着の感想 ―
ヴィーとカリムが再会する未来はあるのだろうか… 最終回に期待…
[気になる点] MHさん >逆な言い方をすると、これ以外については各個人の判断によるところが大きいのです。 >聖騎士 できる >騎士 できない >村長 できる(盗賊のみ) >奴隷商人 できる >…
[一言] >mamohさま 原作において奴隷登録は前提条件の有無は置いておいて 聖騎士 できる 騎士 不明 村長 できる 奴隷商人 不明 はご納得いただける事と思います。 逆な言い方をすると、こ…
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