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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第五章 生活
75/394

§074 算術

「結構有名な話です。俺がまだ迷宮に入りたての頃、

 この街にはタロスと言う名の知れた探索者がいました。

 強くて盗賊退治なんかもしていて、みんなは英雄だと言っていました」


・・・ん?


英雄で盗賊を退治して探索者・・・。

どこかで聞いたような構成じゃないか。

転移者か?タロス・・・太郎じゃないのか?


また嫌な汗が出てくる。

ミチオ君はともかくとして、

自分のスキルや秘密を知る者が、

直ぐ近くにいるかもしれないと言う事はかなりの恐怖だ。


・・・ミチオ君に会いに行くと言う事が最終目標だったが、

下手を打つと彼に不要なプレッシャーを掛けたり、最悪消されかねない。

闇雲に近寄らず、しっかり計画を立て、刺激しないよう接触をすべきだろう。


「そいつが50層以降に行きたいと騒いで、

 当時この町にいた領主に探索許可の申し出をしたんです」


「ええと、迷宮を討伐してはいけないから、

 50階層以降は許可が無いと駄目なんだっけ」

「はい、普通なら滅多に許可が出る事はありませんが、

 罪人がいる場合は許可が出る場合があります」


罪人がいると何で許可なのかが分からない。


「罪人のくだりは教えて貰えるか?」

「ええと、迷宮の最後のボスは装備を壊して来るらしいのです」


「ほう、良く知っているな」


帝国解放会のメンバーだけが知っている極秘情報では無かったのか?

この国では普通に知られている、と言うか教育されている可能性はある。


「ですので、死刑が決まった罪人に装備を持たせて、

 ボス部屋に放り込む事が稀に行われています」


「何やら恐ろしい処刑法だな」


魔女裁判か?


倒せば無罪、戻ってこなければ有罪。

いや、刑が確定した死刑囚だから倒したら放免と言う所か。

ん・・・?うっかり倒してしまったら、それはそれで罪に問われそうだな。

詰んでるじゃないか。


「その後、部屋を確認して装備が残れば攻略の許しが出るのです」


「残らなければ?」

「その階層で打ち止めと言う事で、絶対に許可はおりません」


「なるほど」


つまり、この国では迷宮の維持のために罪人をボスに突入させて、

その残った装備の有無で攻略の可否を決めていると言う事か。

基本的に50層は許可せず、申し出があった場合に手ごろな罪人がいれば

検証をして判断をすると。


なるほど、良くできた迷宮の維持システムだ。

それならばうっかり討伐されるような事はあり得ない。

不許可の階層に、騎士でも立たせて見張らせておけばいいのだ。


・・・この国の騎士が交代で見張るのだろう。

そういう「管理」方法なのか。

迷宮を維持しているからこそ、敬意を集めているとも言える。

酒場の女将さんが有難がっていた理由の1つなのだろう。


「ではなぜタロスは倒してしまったのだ?」

「それがその時の罪人は、どうやらボスに一撃でやられて死んだらしくて、

 装備が全部残っていたのです」


「それでタロスが挑んで倒してしまったのか」

「どうもそういう事らしいのです。

 普通は何度も検証が行われるのでミスは無いと思うのですが、

 タロスが強引に迫ったせいで、1回しか確認しなかったと聞いています」


なるほど、一度や二度ならば罪人が弱すぎた場合はそういう事もあり得る。

強引に迫られた事で、検証が少なく判断を誤ったのだ。


「それで迷宮が討伐されて、このありさまか」

「そうですね、それ以来迷宮の攻略解禁はどこの町も慎重になったとか」


「何年前の話だ?」

「うーん、もう10年ですかね。

 その後トラッサやホドワ、ルイジーナにも行きましたけど、

 結局宿が安くて暮らしやすかったトラッサに落ち着きました」


「ホドワに寄った事があるならナズを見かけなかったのか?」

「どういう事でしょう?」


「私はホドワの酒場で2年程働いていました。

 酒場にいらっしゃいましたか?」

「そういう事ですか、酒を買う金すらない貧乏戦士でしたので・・・」


「それで連れはギャンブルにハマって行ったわけだ」

「ええ、まあ、そうなんですかね?誰だって貧乏は嫌ですからね」

「あっ、ご主人様、多分ここだと思います。4区の7の3筋目です」


「毎回思うんだが、どう識別しているんだ」


「ええと、中央広場を中心にして北西が1区、

 北東が2区、南西が3区で南東が4区です。

 斜めに道がある町の場合は順番に8区まであります」


うーん・・・。

  ┌─┬─┐

  |1|2|

  ├─┼─┤

  |3|4|

  └─┴─┘


「その区域を左手に見ながら大通りを基準に横道の1本目、2本目、

 7の3ですので7本目の脇道を左に曲がって、3つ目の小道を左です」


ええと・・・。

  5┼

   |   4区

  6┼

   |   ☆ 

  7┼─+─+─+─

   | 2 3 4


「ここから扉を左手前から最初に数えて2、3、4・・・、ここです」


なるほど。

  ☆5||

    ||

   3||4

    ||2

   1||

  ──┘└──


そういう仕組みなのか。


京都の通り名住所みたいだな。〇〇通〇〇上る〇〇右に〇〇××番。

これなら難読住所にならないし、理屈さえ覚えればどこにだって行ける。

都市計画で整備されている国ならではの住所だ。


さて、この一見普通の民家の佇まいの店だが、どう対応しよう。

取り敢えずノックしてみようか。


──ドンドン。


反応が無いな。


──ドンドン。


「誰だ」


小さくだが確かに声が聞こえた。


「ジャミルと言う者から聞いた」


扉が少しだけ開かれて、目だけ見える。

こちらも小声で対応する。


「出所が怪しいものを売買していると聞いて来た、宜しく頼む」

「・・・入れ」


中は殺風景で、本当にここが商人の家なのかと言う不気味さがあった。

ミニマリストも真っ青な、イスとテーブルだけの部屋なのだ。

男は若そうに見えたがエルフ耳だった。


「チッ、3人分も椅子は無いから後は立っとけ」

「大丈夫だ、2人とも奴隷だ」


「それで何の用件だ」

「盗賊団殲滅の報酬で宝石を得た。買い取って貰えないかと思ってな」


「正当な報酬なら宝石店に売ればいいだろう」

「量が量でな、持ち込んだら盗賊と疑われて牢屋に入れられた」


「お前馬鹿だろう」

「そう言うな、ジャミルに聞いたらここなら捌けるかもと聞いてな」


「ふん、まあ買わん事も無いが、うちで買い取ると正価の半分だ」

「それで構わない」


「お前馬鹿だろう」

「だからそう言ってくれるな、他に方法が無いんだ」


「あちこちで分けて売ればいいじゃないか。

 宝石を買価の半分なんて普通しないぞ」

「そういう感じでは無いんでな・・・多分見たら解って貰える」


「それで、どこにあるんだその宝石は」

「ああ、じゃあ持ってくる。いったん外に出るからな」


「ん?そっちの奴隷が持ってるんじゃないのか?」

「家に置いてきた。今から持って来させる」


「この布使っていいぞ」


そう言って、この男はカーテンを広げ部屋の壁にぶら下げた。

よく見たら壁にフックが付いている。

恐らく壁全体が遮蔽コンクリートで、用がある時だけ布を掛けるのだろう。


「じゃあ有難く使わせて貰おう。2人とも、箱を取って来い」

「分かりました」「かしこまりました」


2人がゲートを往復して、大きな箱を抱えて帰って来た。


実際、いくつあるか数えていないので何とも言えない。

宝石と言っても、装飾部分がゴテゴテとくっ付いているので

総計で言うと40か50位だと思っている。


「おい、これ全部なのか、流石にふざけ過ぎだろう。

 何処の馬鹿がこんなに貯め込んだんだ」

「良く判らんが、長年盗賊団を飼い馴らしていた悪徳商人だった」


「はーん、売るより貯め込むのが趣味な奴か、納得行った。

 こんなのいきなり持ち込まれたら衛兵を呼ぶな、俺でも」

「おいやめてくれよ、これは正当な報酬だ。騎士の証言だってさせるぞ」


「馬鹿やめろ、騎士を呼ぶな。ここがどういった場所か分かるだろう?」

「まあそういう事だから頼む」


「チッ・・・ちょっと待っとけ。結構あるから時間掛かるぞ」

「ああ、ゆっくり待たせてもらう」


待っている間に暇だったのでこの男を鑑定をした。


 ・ゾスラ エルフ ♂ 38歳 冒険者 Lv7


名前とジョブが判ってしまったが、こういった場所の店主だ。

迂闊うかつに聞かない方が良い。


  ──何故俺の事を知っているッ!


トラブルの元じゃないか。


冒険者と言う事であればお金はアイテムボックスに収納できるし、

トラブルの際はすぐ逃げられるような段取りを用意してあるのだろう。

こういった怪しい事に手を出すのは、どうしたって冒険者が必要になる。


あれこれ妄想している間に、宝石が机に並べられていく。


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・


「うん、宝石のみが127個ある。これは大した値段にならんな」

「どうしてだ?」


「やっぱり、お前馬鹿だろう」

「し、失礼だな!宝石に興味が無いだけだ」


「ふぅー。いいか?宝石だけ持ち歩く奴がいると思うか?」

「いないな」


「そうだろう、普通はネックレスや指輪、ティアラやドレスにくっつける」

「それはそうだ」


「つまり、ここからここまでの宝石はもう一手間加工されて初めて商品だ」

「なるほど」


「それによく見ろ、この宝石、これと、これもだ。

 元々何かに付いていた物を無理やり剥がしたような跡がある。

 多分元は指輪だ。外す時に宝石を支える爪で引っ掻いて傷が入っている」

「確かに」


「これらは再研磨が必要だから、ほぼ原価だ」

「そうなのか、色々残念だな」


「こいつを集めていた奴は単純に宝石マニアだったんだろう。

 装飾品にはあまり興味が無いと見た」

「なるほど、良く判るな」


それで剥き出しの石鹸が箱に置かれていた訳だ、木箱に入れずに。

売らずに貯め込むと言うのも合点が行く。


「で、ここからここまでは、そのまま売れる加工済みの物だ。

 特に傷は入っていないし、状態も悪くない」

「そうか」


「宝石のみが127個で1つ6千ナールの半分、

 アクセサリの方が76個で1つ2万ナールの半分だ。

 それでいいなら買おう」

「良いも悪いも、ここでしか売れそうも無いからな。

 その値段で飲むしかないだろう」


「やっぱり、お前は馬鹿だな」

「えっ・・・」


「正規の値段で売れそうな奴を3、4個はねればもっと儲かるだろう」

「言われてみれば確かに」


「ふぅー。ジャミルに言われて来たにしては張り合い無くて調子狂うぜ」

「す、済まないな、なにせ右も左も分からない田舎者でな」


「まあ良く判るぜ。

 後先考えずにこんな物を町の宝石店に持って行くとか正気じゃねえ」

「まあな」


「褒めてねえよ!・・・ったく」


ゾスラは装飾品の方から3つ抜くとこちらに放り投げた。


「これとこれと、それからこれはもうちっと良い値で売れると思うから

 お前が自分で売れ。その女奴隷にくれてやっても良いと思うぜ」


そういえば、アナやナズにプレゼントすると言う手もあった。


だがこれは元は盗品。

知らない人の悲鳴がリアルに込められたワケあり品なのだから、

2人には付けて欲しくは無い。


どうせなら持ち込んだ琥珀のネックレスを与えた方が後味は良い。

自分が地球から持ってきた本当の財産で、プレゼントに真実味がある。


ではこの世界において自力で手に入れた2つ目の財産と言う事で、

3つの宝石は金に困ったら売る事にしよう。


「そんじゃちょっと待ってろ。

 流石にこんだけ全部買い取る金が手持ちにねえからよ」


そう言ってゾスラは奥に引っ込み、

フィールドウォークの呪文を唱えてどこかに消えた。


それにしても127個と76個、合計で203個も入っていたのか。

ただでさえ箱自体が重たそうだったが、

そんなにぎっしり石が入っていたとなると納得の重量だ。


「お待ち」


すぐにゾスラは帰って来た。


ゾスラはアイテムボックスの詠唱をすると、そこから金貨を取り出した。


「宝石が127個で1つ3000だから38万千ナール、

 加工済みの方が73個で1つ1万だから73万ナール。

 合計111万千ナールだが、端数負けてやるよ112万で良いな?」


この男は・・・掛け算ができる!(驚愕の目)


「商人のスキルなしで良く計算ができるな」

「まあこういう商売なんだからな。

 勉強すりゃ誰だってできると思うンだが、みんな数字に弱いんだよな」


そうなのだ。

義務教育程度の計算なら2年も勉強すれば四則演算位できるはずだ。

あ、いや、この世界で2年も仕事を離れて遊んでる暇なんて無いって事だ。

それだけ日々の仕事が忙しいのだとも言える。


「ほらよ」


ゾスラから白金貨と金貨12枚を渡された。

自分もアイテムボックスを詠唱して懐に入れる。


これで晴れて長かった悪徳商人討伐のイベントが終わった訳だ。

もう流石に何も無いよな?

後からこの男に密告されて騎士が来ては困る。

名前を明かしていないし大丈夫か。


いや、この男はジャミルを知っているし、

ジャミルには家を明かしているな・・・早まったか?


うーん・・・、まあ成るようにしか成らないのだし、

騎士が来てもまたルスラーンを頼ればいいだろう。

流石に次回はお礼の品を持って行くべきだろうが。


「じゃあ商談成立って事で、また何かあったら頼む」

「ふぅー。

 お前馬鹿だから次ここに来た時に変な事持ち込んで欲しかねえなあ」


「そ、そんな事は無いぞ。それは間違いなく正規品だから問題は無い」

「そうかい、じゃあ気を付けて帰れよ」


「ああ、済まないな。それじゃあ」

「もう来なくていいぞ」


全く、最後まで口の悪い奴だった。


怪しい商売人の店から邪険に放り出され、来た道を帰る。

適当な場所からワープで帰ろうと思ったが、ジャーブが進言してきた。


「ユウキ様。ここには昔、旨いパン屋があったのです。

 まだあるかどうか解りませんが、残っているなら是非食べてみて下さい」


「そうなのか、じゃあ案内してくれ」

「分かりました」


旨いパン屋・・・。


こんな世界のパン屋なのだ。どこも同じだと思っていたが、

ホドワのミニパンは地球のバターロールとまでは行かないが、

小さいながらも味があって美味しかった。


それとはまた違った旨さがあるのだろう、それならば期待できる。

ジャーブの案内のままに、パン屋へ向かった。


ここトリアは、殆どの商店が閉まっているが、

雑貨屋とパン屋だけは残っているようだ。

残った住民の最低限の生活ラインが保たれている。


まあそれもそうか。

彼らが撤退してしまったら、完全に街は消滅だ。

いつかはそうなるのかもしれないが。


「ユウキ様、ここです。まだやっていたようで良かったです」


このパン屋には依然として客が来るようで、

しっかりと商売をしていると言う雰囲気は見受けられた。

いまは夕方よりは少し前、パンを買いに来る客が集まるには少し早い。


「誰かいますかー?」

「お客さんかーい?ちょっと待ってねー」


奥の方からここの女将さんらしき人の声がした。


パンは生き物だと言われている。

発酵から焼き上がりまで、目を離せないらしい。

窯のふたを開けたり閉めたり火を加減したりと忙しい。


「はいよ、まだ夜のパンは焼けてないんだけどね、昼の残りならあるよ」

「残りか・・・」


「ウチのパンはね、焼いた後もう一度揚げるんだ。

 昼のパンでも全然ふわふわだよ」


揚げる・・・?揚げパンなのか。

それは期待したい。

学校給食で最も人気のメニューが揚げパンなのだ。

原始的な物に成ればなるほどそこに近付くはずだ。


「ジャーブが言っていた旨いパンはこれか?」

「そうです、揚げパンです。

 朝2つ買えば、昼でも美味しいのでここの探索者は毎日買ってました」


「あらー、あんた昔ここで探索者やってたのかい。昔は良かったねえ」

「そうですね、迷宮が無くなってしまって残念です」


「ったく、あのタロスとかいうのはろくでもないね。

 あんなのは死罪だよ死罪」


迷宮を討伐したら死罪は恐ろしい。

ガイウス帝国とは正反対じゃないか。


「死罪になったのか?」

「いや、なっちゃいないけどね。

 どこか遠い所に逃げるように去ってったっていう話だよ」


ここの住民の生活がひっくり返ったのだから、

そりゃあ恨み節も言いたくなるといった所か。


「それじゃあ、その揚げパンを・・・4つ、いや8つ貰おうか」

「8つは無いねえ、昼の売れ残りだからええと・・・2、3、4つだね」


「じゃあ4つ貰おう。美味しかったら今後も買いに来る」

「あら、あなた冒険者なの、嬉しいわあ。

 ここに来るお客さん減ってくばかりだからね。

 良かったら冒険者仲間に宣伝してね」


宣伝は無理そうだが、

美味しかったら毎日ここに飛んできて買う位はできる。


「1つ10ナールだよ、4つで40ナールだね」


銅貨で支払うのだから、ポーチから金袋を取り出す。

その瞬間ナズが突き飛ばされて、金袋が奪われた。


「きゃっ!」

「あっ」


何するんだジャーブ。

下剋上か。甘やかしすぎて飼い犬、いや狼に手を噛まれたか。


ジャーブは既に駆け出していた。

おいまてこら。


「ジャァァァァーーーブ!」

「俺が追い掛けます!」


ん?追い掛け?


「あちゃー、ここら辺に住んでる性質たちの悪いかっぱらいだね。

 あンた達が余所者だと思ってどこからか尾けて来てたんだろうね」

「そ、そうなのか、意外と怖い場所だな」


ジャーブじゃなかった。


疑って悪かった、でも警戒はどうした。

職務怠慢だな。

腹ぺこのせいで、お気に入りのパン屋の前で気が緩んだか。

それは申し訳無い。


「まあ騎士団が残っているから強盗はないけどね、スリは多いよ。

 代金は・・・どうするんだい?」

「そうか、じゃあこれで」


アイテムボックスから銀貨を取り出して支払った。


「何だ、取られたのは銅貨だけかい、良かったね全財産じゃなくって。

 次に来る時はお金、気を付けてね」


女将さんは手元の金庫から銅貨100枚の束を取り出して、

40枚差し引いてパンと一緒に返却した。

やはり動きに違和感はあったが、買い取りカウンターよりは手際が良い。

毎日ここでパンを売っているのだから、その辺は慣れなのだろう。


「ああ、それじゃあまた来る」


ジャーブがどこまで追い掛けて行くのかは判らないが、

パーティを組んでいるので大体の位置は判る。

と言うか、ウロウロしている様子なので、多分撒かれたのだろう。


「おーいジャーブ、もういいから帰るぞ」

「は、はい・・・申し訳ありませんユウキ様、見失いました」


ここに住んでいるのだから地の利は向こうにあるだろう。

隠れる場所や通路、乗れる段差など、特殊な場所は一杯だ。


相手は子供のようだったし、パワー系のジャーブが捕まえるには大変だ。

すぐに気が付いてオーバーホエルミングで駆け抜けていれば、

捕えられたとは思うがいずれにしたって後の祭りだ。


「そういう事もあるから、警戒は常にしてくれ」

「も、申し訳ありませんユウキ様」

「おっ、お許し下さい、ご主人様」


「い、いやっ、そこまで咎めていない。ナズは転んだようだが大丈夫か?」

「アッハイ。大丈夫です」†


「じゃあ帰るぞ」

「かしこまりました・・・」「分・・・かりました」


パン屋の前にあった建物の壁から廊下に出ると、アナが出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ、ご主人様」

「ごっご主人様!私はこれから夕食の買い出しに行って参ります」

「あっ俺も、水汲みに行って来ます!」


ばつの悪そうな2人が逃げるようにして去った。

いや、各自の仕事に散った。

怒ってないのに。


アナと2人、廊下に残される。


以前なら女子と2人きりになると気まずい空気に感じられた。

それが何故だろうか、ナズやアナといると心が落ち着く。

むしろ2人がいない方がソワソワして落ち着かなくなっていた。


大学時代、女子と2人きりになると何か気の利いた事を言わなければと、

余計な焦燥感があってそれが気を回して自分自身を疲弊させた。

だからモテはしたが、あまりるまなかったのだ。


今は、ナズやアナに自然に振舞える。

何も気を使う事は無く、話す事が無ければ話さず、興味があれば呼ぶ。

言いたい事を言って、撫でたい時に撫でる。


それが熟年カップルの関係であれば喜ばしい事だが、

残念な事にこの関係は主人と従者の関係に依るものだ。

2人の気持ちは確かめようがないし、聞いても本心は返って来るはずない。


「ええと、大工はどうだった?」

「はい、ニカワを塗った後は1日触らないようにと申し付かっています。

 その後はすぐにお帰りになりました」


「そうか、他に変わった事は無いか?」

「そうですね、今の所は何も無いかと思います」


「では少し早いが今日の挨拶を」

「かしこまりました」


アナは優しく迫って来たかと思うと、

体を密着させて絡み付くようなキスをした。


アナのここまで情熱的なキスは久しぶりだ。

そのままベッドに連れて行ってしまった。

一仕事終えた頃にナズが帰って来たので、

そのままナズも呼んで2回戦になった。

∽今日のステータス(2021/08/27)


 ・繰越金額

     金貨  2枚 銀貨 85枚 銅貨144枚


  戦利品売却 (1111000→1120000й)

   宝石のみ  ×127     381000

   アクセサリ × 73     730000


  盗難                (144й)


  パン代                (40й)


    白金貨+ 1枚

     金貨+12枚 銀貨- 1枚 銅貨+60枚

  ------------------------

  計  金貨 14枚 銀貨 84枚 銅貨 60枚

                   白金貨 1枚



 ・異世界17日目(16時頃)

   ナズ・アナ12日目、ジャーブ6日目、

   防具回収まで2日、鍛冶G面会まで5日

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― 新着の感想 ―
[一言] 改めて読み直してるけどゾスラの言う通り主人公の行動が謎すぎる何でまともな宝石数点を持ち帰ってバラで宝石商に売らなかったんだろ そんな急いで換金する必要も無いんだし金に困ってから10個20個な…
[気になる点] 今日のステータス) >盗難 (144й) >パン代 (40й) > >白金貨+1枚 金貨+12枚 銀貨-1枚 銅貨-144枚 パン代のお釣りがあるので、銅貨-84枚では? いや、…
[気になる点] >死刑が決まった罪人に装備を持たせて、 ボス部屋に放り込む事が稀に行われています 教えてください。 死刑囚がボスを倒してしまい、迷宮がなくなった時にはどうなるのですか?倒した者が死刑…
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