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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第五章 生活
71/394

§070 収監

目が覚めると日は傾き、空には赤みが掛かっていた。


夕方に目覚めると、朝だか夜だかの区別が付かない症状がある。


見当識障害といって痴呆の1つらしいが、まさかそんな事はあるまい。

今が朝の4時なのか夕方の4時なのか、明るさでは区別が付かないだけだ。

誰かこの症状に名前を付けて欲しい。

あるかも知れないが、その名を知らない。


左右にナズもアナもいないのだから、多分これは夕方なのだろう。


そういえば戦利品で、宝石の入った箱を持ち帰って来たのだった。

どこに持って行けばいいだろうか。

取り敢えず思いつくのは宝石店。

これはルイジーナにあるだろう。


他には、・・・商館に持って行ってもダメだ。

この世界の商館とはそういう物を売り買いする所では無い。

骨董品店はちょっと違うな、

雑貨店では店主の手持ちが無いだろう。

やっぱりどう考えてもルイジーナに持って行くしかなさそうだ。


早速ルイジーナの冒険者ギルドに飛び、受付で宝石店の場所を聞く。

ギルドを出て左側にあるそうだ。


前回この町の商館に出向いた時とは反対の方向に

キョロキョロしながら道を進む。

陽は落ち掛かっているので、

白い街並みにオレンジ色の光が反射して幻想的だった。


看板にクリスタルっぽい絵が描かれている店がある。

店構えもスタイリッシュで洗練されており、

如何にも高級店と言う雰囲気を醸し出している。

どうやらここのようだ。


中に入って店員に声を掛ける。


「すまないが、大量の宝石を手に入れる事になったのだが、

 鑑定と換金をお願いしたい」

「ええと、どちら様でしょうか」


「おっと、そうだった。自分はユウキと言う」

「ユウキ様ですね、かしこまりました、奥へどうぞ」


奥の個室に通されて、腰の低そうな商人が席に着いた。


「どうも、初めまして。

 私はこの店の買い付けを行っております、ナージフと申します」


「初めまして、ユウキと申します。

 ある商人から大量の宝石を入手しまして、

 買い取って頂きたくこちらにお伺いしました」

「ほう、・・・大量ですか」


一瞬目が光った気がした。

まあこういった店だ。金の話には鋭いのだろう。


「今は持って来てはいないのですが、どうでしょう。

 そういった取引もして頂けるでしょうか」

「ええ、構いませんよ、どのくらいでお持ちになれそうですか?」


「ああ、自宅に行って帰って来るだけなので、3、4分もあれば」

「左様でございますか、それでしたら直ぐお持ち下さい。

 こちらも受け入れの準備を致します」


「ではまた後程」


一度店を出て、適当な柱の陰から家の納戸に飛んだ。

宝石箱・・・と言えば宝石が入っているからそうなのだけれど、

いわゆる小さい小箱ではない。


両抱えにしないと持てないほどの大きさで、

かなりぎっしりと宝石が入っていた。

これが全部値打ちものならば、もう働く必要が無いんじゃないのか?

と思えるほど大量なのだ。


抱えながらゲートを先ほどの柱に繋ぐ。

そのまま宝石店へ持ち込んだ。


「す、済まないが、さ、先ほど買取をお願いしたユウキだ・・・。

 ちょちょっと、手伝って・・・」

「は、はい、お待ち下さい」


受付のお姉さんがカウンターから回り込んで端っこを持ってくれた。

そして2人掛かりで、先ほど案内された部屋に箱を運ぶ。


「こちらでお待ち下さい」


その後、しばらく待たされた後、先ほどの男が入って来た。


「どうも、お待たせしてしまって」


「いえいえ、こちらがお願いする事ですから」

「ええとその箱ですか、どれどれ・・・」


ナージフが箱を開けて驚きの声を上げた。


「おおっ、これ全部ですか、どうやって入手したか聞いても?」


「悪徳商人と決闘して、勝ったのでその戦利品です」

「ふむ・・・そうですか、少々お待ち下さい」


「はい、宜しくお願いします」


暫くすると騎士が2人やってきて、いきなり手枷を嵌められた。


「ちょ、どういう事ですか!」

「うるさい、ここは盗品は扱わない正当な店なんだ!

 こんなに持ち込んで足が付かない訳がないだろ、この盗賊め!」


「なんでそうなるんですか、さっきも言いましたよね、

 決闘して勝ちえた戦利品だって」

「決闘で奪えるのは装備品だけだ!すぐ解かるような嘘をつくな!」


ちょっと、どういう事だ。

あの立ち会った騎士は持って行っても問題ないといったぞ。


「騎士様、そうなのですか?

 私は立ち会った騎士から持って帰ってもいいと言われたのですが」

「うるさい、お前に掛けられた嫌疑は騎士団に行ってからだ」


くそう、何でこんな目に。

と言うか、あの商人もこうなる事が判っていたから、

売れなかったのではないだろうか。


ちまちま売りに行くにしたって、

何故そんなに持っているのかって事だ。

失敗した。少量ずつ色々な所で売るべきだったか。


ともあれ、嫌疑を向けられたってジョブは今は商人なのだから、

何も恐れる必要はない。

インテリジェンスカードでも何でもやってくれ。


その後、騎士達は一言も発しないまま、自分を連れて騎士団へ向かった。

何を話しかけても答えて貰えなかった。

釈然としないが、話は着いてからなのだろう。


町中を見せ物のように、枷を付けられた状態で練り歩き、

ルイジーナの騎士団に連行される。


お偉いさんが出てきてカードを確認されて

いくつか質問されるのだろうと思っていたら、

そのまま牢屋に直行だった。


なんたる酷い仕打ち、これでは冤罪も多かろう。

これが自分でなければ絶望だ。

これではまっとうに生きている民は救われないぞ。


例の商人を嵌めて殺した人間が、

よくもまあそんな事を言えるものかと一瞬思ったが、

それはそれ、これはこれである。†


しかし、このままここに入れられっぱなしなのもマズイ。

取り敢えず、例え宝石が売れなくても最低限家に帰って寝たいのだ。

どうすればいいかな。


幸い、牢に入れられカギを掛けられた後は見張りもいなかった。

枷はあるが、牢の中は自由に動き回れるし、

他に牢に入れられている者もいない。


ワープで抜け出す事は容易だが、

それでは真っ当にこの街での買い物ができなくなるので、

こういう時はアナに頼もう。


ワープで家にゲートを開き、アナを呼んだ。


「アナ―?」

「はい、すぐ参ります」


今日は午前中しか迷宮に入っていなかったし、体を拭く時間にはまだ早い。

する事が無かったアナは掃除をしていたようだ。


「ど、どうなさったのですか、ご主人様。その手枷は?」


「ちょっとした行き違いで、ルイジーナ騎士団に捕らわれてしまった。

 誤解なのだが、全く話を聞いてくれないのでな。

 すまないが大急ぎでトラッサの騎士団に赴いて、

 ルスラーンと言う隊長に取り次いで貰いたい。

 自分はこの後またルイジーナの牢に戻る」


「ええっと、私がトラッサ騎士団に行き、

 その・・・ルスラーン隊長様に、

 ご主人様がルイジーナで捕らえられたと伝えれば良いのですね?」


「ああ、できるだけ早く頼む。ゲートはいつもの旅亭の裏だ」

「かしこまりました、行って参ります。ご主人様もお気をつけて」


そういってアナはゲートを後にした。

自分もすぐにルイジーナの牢に戻る。


幸い誰も来なかったようで、騒ぎなどにはなっていなかった。

ここで脱走していました、では流石に申し開きはできまい。

後はアナを信じて待つだけだ。


・・・本当に大丈夫だよね?

あの商人の箱を持ってきた時点で盗賊になっている可能性を今更考えた。


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 商人   Lv30


  設定:商人(30)探索者(36)英雄(27)騎士(22)

     賞金稼ぎ(22)暗殺者(1)

  取得:村人(5)戦士(30)剣士(34)色魔(1)奴隷商人(1)

     武器商人(1)防具商人(1)農夫(1)

     薬草採取士(15)錬金術師(1)料理人(1)村長(1)

     盗賊(1)


良かった。やはりあの宝石は正式に自分の物なのだ。


だが待てよ?冤罪で捕らえられた結果、

あの宝石は宝石店に置かれたままとなっている。

そうすると、あの宝石は誰の物になるのだろうか。


宝石商の物?


自分の物で合法だったのだから、

勝手に宝石商の物とすれば彼らが盗賊に成るのではないのか?


それとも、誰の物にもならないから、

自分が裁判を受けて奴隷に落とされたり、処刑されたりして、

初めてあの宝石商の物に成るのか?


色々腑に落ちないが、

願わくばあの勘違い店員にも天誅を下してやって欲しい。


今日の自分は何だか傲慢だな。

金が絡むと人は変わるのだろうか。

怖いな・・・そんなつもりは全く無かったのに。


3人の奴隷を抱えて、ある程度の纏まった財があって、

相手を格下だと見下して、金勘定で一喜一憂する。

そこに天罰が下れとか、自分は何様なのだ。

このままでは身を滅ぼしかねない。


ゆっくりでいいのだ、ゆっくりで。

悪目立ちせず、細々と、今の生活を続けたい。

あの宝石は売れたらラッキー位だったのに、どうしてこんな事に。


漫画的展開だともう助け船が来てもいい頃なのだが、

現実はそう上手くはいかないものだ。

やる事も無いし、考えも纏まったしで、適当に横になって休む。


・・・・・・・・・。


さっき仮眠を取ってしまったせいで眠れない!


これはあれだ、夜更かししちゃうパターンだ。

中途半端な時間に昼寝をすると夜まで響く。

もう仕方無い、横に成るだけなって、目は閉じる。


・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・・今日は夕飯なしだな・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・2人とのお楽しみも無しだ・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・体は・・・・まあ昨日の夜体を拭いたからいいや・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・明日のパンを買うのはナズが行くのだろうか・・・・

・・・

・・・・・

・・・・・・・・・今何時だっけ・・・

・・・・・

・・・・・・・・

・・・・ここにきて何日目だっけ・・・・

・・・

・・・・・・zzz。


「おい起きろ」


「  おい!  」


「へあ・・・ああ、はいはい、今起きますよ・・・」


誰か来たようだ。

ルスラーンの話が通ったのかな?まだかな?

取り敢えず動きはあったようだ。


重い腰を上げて正面を見ると、

さっき牢に連行した騎士とは別に、もう1人初めて見る騎士がいた。


「面会だ、そのまま出ろ」

「解りました」


面会って事は偉いさんかルスラーンか、どっちだろう。


「謁見室に行くぞ」


謁見か・・・、流石に貴族を前にしての一般礼節は知らないぞ。

せいぜい異世界小説で読んだ、ご機嫌うるわしゅう位だ。


この世界の謁見方法はミチオ君も知らなかったし、

そういう描写は無かった。


手に枷が付いたまま厳つい騎士2人に前後を挟まれて、

少し豪華な部屋に入ると、椅子にはルスラーンがいた。

良かった、まともに話せそうな人がいて。


「おお、やはりユウキだ。どうした、そんな恰好で」


「どうしたもこうしたも、あの決闘で得た商人の遺品を、

 この町の店で売ろうとしたら話も聞かずにこれですよ」


「そうか、災難だったな。まあ一応、確認はされたんだろう?」

「インテリジェンスカードの事ですかね?何もなく、いきなり牢でしたが」


自分に枷を付けた騎士を睨み付けた。


「そうなのか?おい、どうなのだ?」

「えっいえ、あの店の者の言う事なので信用できるかと思いまして」


「どんな時でも、まずは確認をしろと以前にも言っただろうが!」

「も、申し訳ありません!」


「じゃあさっさとしろ」

「ハイッ!」


「滔々流るる霊の意思、脈々息づく知の調べ、

  インテリジェンスカード、オープン!」


騎士がやってきて、手枷の上からインテリジェンスカードを出現させた。


「ユウキ・フジモト、商人、誠実ですッ!」


「だから言ったじゃないですかッ!盗んで来た訳じゃないって!」

「いや、しかし、盗賊と結託する事もありますし、

 あんな大量の宝石はどう見ても盗品としか見えませんでした!」


「そうなのか?」

「ハイッ、この男は1つ2つならいざ知らず、

 50から60ほどの宝石を一度に持ち込んだようなのです!」


「だからそれは灰汁あくどい商人と決闘して得た戦利品ですってば!

 ここに連れてこられる際にも言ったでしょう!」

「しかしッ、そんな話信用できません!隊長!」


「うーん、まあこの商人が決闘を行ったのは本当だし、

 その相手が何やら裏がありそうな商人だった事も本当だ」

「えええっ!?」


「解かったのならこれ外して下さいよ、それから宝石返して!」

「ハ、ハイッ!失礼しましたッ」


「全く、取り付く島が無くってどうなる事かと思いました」

「ははは、一度に売ろうとしたのは悪手だったな」


「こちらの商う物でなければ、早々に現金に替えるものです」

「そうなのか?高価な物に興味が無いのだな、変わっているなお前は」


「元が戦士だったからでしょうかね?」

「なるほど、そういう物か」


「おかげさまで助かりました。いずれお礼を」

「いや良い、今日は凄い戦いぶりを見せて貰った事だしな。

 私はお前が勝つ方に賭けたのだよ、一緒に見物した騎士がいただろう?

 勝敗が付いた後は、目を白黒させて面白かったがな」


「はあ・・・」

「まあ、こちらの不手際で済まなかった。

 また後でこの者にはきつく言って置くから安心してくれ。

 それでええっと何だっけ、どの店に卸そうとしたんだ?」


「この町の宝石店ですね」

「そうか。今日はもう遅いから、明日返却するように言っておく。

 また明日取りに行ってくれ」


「かしこまりました」

「それとお前の奴隷、血相を変えて騎士団に乗り込んで来たが、

 あの女も相当に腕が立ちそうだな?」


「ええ、迷宮で日々鍛えさせております」

「そうか、お前は商人でありながら根っからの戦士なのだな、はっはっは」


「恐縮です。おかげさまで守るべきものを守れましたし、

 アムルも平和になるでしょう」

「そういう所が戦士、いや騎士の目なのだよ。

 普通は商人同士、儲かると踏めば悪事を広げかねん」


「左様でございますか」

「どれ、うちの隊の冒険者に送らせようか?」


「いえ、私のパーティと共に帰ります。

 この街で私の帰りを待っていると思いますので」

「そうか、では気を付けて帰られよ。

 特に融通の利かないどこかの騎士に見つからんようにな」


「はは、気を付けます」

「申し訳ありませんでしたァ!」


ルイジーナの騎士団を出た時には辺りは一面闇が広がり、

星明りでかろうじて道が分かる程度だった。

∽今日の戯言(2021/08/21)


なんか設定資料だけの状態で置いておいたら急にアクセスが伸びて、

誤字報告や設定の間違いの指摘が集まって内心びっくりしています。

まだ本編公開前ですよ・・・。


設定を根本的に理解していなかったのだと反省して、

今日は原作を読み返しました。


小説版や漫画版との違いが多数あるかも知れませんが、

そちらはテキスト化するのが難しくて資料にするのは後回しです。


利権関係も厄介になるかもしれませんので、

ハッキリとそちらの内容を包括しているとは言えません。

このままweb版の拡張+と言う事でお願いしたい所ですが、

おかしな点があれば指摘して頂けると助かります。


なるべく本編世界観を壊さないように適宜修正させて頂きます。



 ・異世界16日目(17時頃)

   ナズ・アナ11日目、ジャーブ5日目、風呂設置まで1日

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 本文中) >「いやいい、今日は凄い戦いぶりを見せて貰った事だしな。 >私はお前が勝つ方に掛けたのだよ、一緒に見物した騎士がいただろう? >勝敗が付いた後は、目を白黒させて面白かったが…
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