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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第四章 資金
52/394

§051 完了

ホドワの迷宮から出て、武器屋に行く。


ジャーブはホドワの街も知っている様子だった。

元は一般人なのだし、報酬や装備を求めて出歩くのは当然だ。


武器屋に立ち寄り、店員にバスタードソードについて聞く。

在庫はあるが、1点しかないので選べないと言われた。


 ・バスタードソード (空き 空き)


良いじゃないか、2枠。

良い装備品には空きスロットが付き易い説、あるかもしれない。


ミチオ君が見付けた超高額装備品には大体スロットがあった。

あ、店頭で見付けたダマスカスの剣やステッキには、

空きが無かったから買わなかったような気がする。


高額装備品の最低スロット保証は否定された。


「後は防具だな」

「本当に宜しいのでしょうか?」


「掘り出し物のようだし、次は無いかもしれん。今買って置いて損は無い」

「以前この武器を買うまで、とても苦労致しました。

 防具は安物でも充分です、剣である程度防げます」


バスタードソードは高いのだろう。

値段を聞いてないので何とも言えない。

10万ナールとかだったら流石にまずい。


「済まないが、バスタードソードはいくらなのだ?」

「一振り4万ナールですね、なかなか上がって来ない逸品ですよ」


なんだ、十分じゃないか。

手持ちの金貨は5枚以上あるはずだ。


前衛なんだし、アナのように盾を持っていないから、

不意の一撃を受けやすいだろう。

鉄か、竜革位を揃えてやった方がいい。


「金属と皮ならどちらが好みだ?」

「皮の鎧で大丈夫です。

 高価な剣を選んで頂いているので、贅沢は言いません」


「金属は重くて嫌いか?」

「いえ、そんな事は無いです」


遠慮されてうっかり死なれても困る。

まあ、皮がいいと言うならそれでいいか。

動きやすさや好みの問題もあるだろうし。

ロクサーヌは、重たい装備はスピードが減殺されるからと嫌がっていた。


「じゃあ店主、竜革の帽子と鎧と手袋、ブーツを」

「かしこまりました」


「ええっ、皮ってそういう・・・」

「何だ?お前が皮にしろといったではないか」

「し、失礼しました、普通の皮だとばかり」


「お前はいくらだ」

「ええと、27万ナールです」

「この鎧はいくらだ」

「ええと、2・・・3万ナールでしょうか」


「つまりお前は、3万ナールをケチったせいで、

 27万ナールの損をしろと主人に言っている」

「い、いえ、そんな事は思っていません」


いつもの常套手段で言い負かす。

アナもこの方法で抑え込んだ。


「お前を使い捨てにするつもりは無いからな、

 前衛で思う存分発揮してくれた方がこちらとしては嬉しい」

「は、はい、ユウキ様ありがとうございます!」


「ちょ・・恥ずかしいから大声で名前を呼ぶな!バカっ」

「すみませんっ!」


店員が苦笑しながら戻って来た。


「合計で81600ナールでございますが、

 一度にこれだけご用命頂けましたし、愉快なやり取りも見せて頂いたので、

 特別に57120にお値引きさせて頂きます」


ほら、笑われてるじゃないか。

落ち着いてハイハイ聞いとけばいいんだよ。


それにしても3割引、癖になりそうだよ。

3割引の理由もそれぞれ違って面白い。

それに全部で8万と聞くと、かなりの出費だが、

それが5万台に抑えられるとなると、一気にお買い得感満載になる。


とは言え金貨は6枚飛んだ。

よい装備品だから当たり前なのだが、

2番奴隷ごときにこんないい装備を!とか、

2人がライバル視しなければいいのだが。


「では、それを身に着けたら町に戻るぞ」

「は、はい、急ぎます」


その後トラッサの旅亭で弁当を受け取り、自宅に戻ってきた。


「おかえりなさいませ、ご主人様」

「おかえりなさいませ、家具を受け取っております」


「そうか、掃除はどうだ」

「台所とトイレ以外は終わっております」


「台所は私が、アナさんがトイレと庭を掃除する予定でした」

「そうか、庭はジャーブにやらせる。2人とも、新しい仲間のジャーブだ」


「宜しくお願いします」


ジャーブが頭を下げた。


「一番奴隷のアナンタです、宜しくお願いします」

「同じく、一番奴隷のナジャリです、初めまして」


ジャーブは2人とユウキへ視線を交互に行き来させると、

初めてうろたえた。


「あ、あの・・・どちらも一番と言うのは?」

「私とアナさんは2人とも一番なのですよ」


──そんな馬鹿な、とジャーブは思った。

  一番奴隷が2人と言うのは聞いた事が無い。

  一般的には実力者か、超美人の妾かの2択だ。


  この主人の奴隷2人のうち、

  どう考えても可愛いのがナジャリと名乗ったドワーフだ。

  こちらが主人のお気に入りなのだろう。

  ドワーフだけど、服はワンピースで戦闘をしそうに見えない。

  物腰も柔らかそうで、つまり愛人だ。


  対して、アナンタと名乗った猫人族の方は筋肉質で冷静さがあり、

  服も動きやすいパンツルックだ。

  強い先輩がいると聞いていたので、

  おそらく彼女が戦力としてのNo1だ。

  迷宮には彼女と前衛を任される事になるのだろう。


  どちらも1番の候補には成り得るが、

  どちらも1番と言うのは聞いた事が無い。


  普通に考えれば、どんな奴隷だって1番になりたがるし、

  隙があればその地位を奪いたがる。


  商館ではそのように教育されたし、

  一番奴隷の権限は主人の次に強いので決して逆らうなとも教えられた。


  しかしどうだろう、この2人はとても仲が良さそうだ。

  主人公認の同列1番と言う事なのか。


  2人の命令に乖離があった場合に、

  どちらに附くかで自分の待遇が変わる事に恐怖した。


「ところでジャーブ、ラッシュは使えるか?」

「はい、大丈夫ですが」


  主人がスキルについて聞いてきた。

  見習いを含めてもう12年も迷宮に入っていたのだ。

  ラッシュなんて敵に囲まれていても繰り出せる。


「それで土を掘り返せるか?」

「えっ?」


  魔物でなく土に使えと言われて混乱した。

  そんな事はした経験が無い。


  金が返って来ないと言われた時に友人を殴った時も、

  イライラして机や壁に当たった時も

  ラッシュを使おうと言う発想は無かった。


  鋤を手渡され、庭の中心をラッシュで掘れと命じられた。

  迷宮は?この高価な装備は?防具だって身に着けている。

  意味が分からなかったが、命令は命令だ。

  やるしかなかった。


剣太刀つるぎたち数多あまたの猛者の奮い立ち、

  集えこの一太刀に、

    ラッシュ!」


  鋤が光り、大地を叩いた。

  地面が振動し縦に人が1人入る位の裂け目ができたが、

  鋤の先端はぐにゃりと曲がった。


「ユ、ユウキ様、申し訳ありません、道具を駄目にしてしまいました」

「そ、そうか、やはり無理があるな」


やはり、装備品以外はスキルの威力に耐えられないのか。

装備品で効率よく掘れそうな物は無いだろうか。


ナズの槍で・・・折れたら面倒だしな。

となると、いつでも新品に戻るデュランダルか。

いや、あれは切れ味が良すぎてうっかり飛んでったらヤバ過ぎる。


Lv3辺りの武器にして置こう。

武器3に振ってクラウソラスを取り出した。


「じゃあ、ちょっと使い勝手が悪いかもしれないが、これで」

「中々の名刀に見えるのですが、壊してしまったら・・・」


「この装備は壊れないから安心しろ、適当に掘り起こしたら終わりで良い」

「わ、分かりました」


キッチンにテーブルと椅子が既に置かれている。

棚には既に食器が収まっていた。


そこから4つ取り出し、弁当の包みを並べ・・・あっ、3つしかない。


そういえば3人分で宿を取っているのだし、弁当も3人分だ。

ナイフで全部のパンと肉を4等分して皿に3切れずつ並べた。

野菜炒めはひとまず全部集めて4つに盛り分ける。


足りなくなった分は、・・・そうだ。

果物があったので切ってしまおう。

オレンジ・・・いや、タプスを4つ切ってそれぞれの皿に盛った。


「ナズ、昼食にしよう。みんなを呼んで来てくれ」

「かしこまりました」


ナズがアナを呼びに行った。

アナはジャーブを呼びに行き、外で一緒に手足を洗っているようだ。

トイレ掃除と土作業だからな・・・。

早く魔法を取得してウォーターウォールを出してやりたい。


アナとジャーブが戻って来た。

ナズはもう席に着いている、左隣らしい。

アナも直ぐに座った、右隣らしい。


ジャーブは・・・そうだよな、説明してない。


「あー、うちでは座って一緒に食べる事にしている。

 出かけた際の食事はこうは行かないだろうが、

 ウチではこのルールに従ってくれ。

 好きな場所に座って、そこがこれからお前の場所だ」

「分かりました、ご一緒させて頂きます」


やけに素直だな、抵抗がない。

まあ、一番奴隷たちが率先して座っているのだから従うか。


「では、いただきます」

「「いただきます」」

「・・・え?」


「ああ、気にするな、ただの挨拶だ。真似しても良いし、しなくても良い」

「は、はあ・・・そうですか」


皆お腹が減っていたらしく、黙々と食べた。


「それより2人とも済まないな、

 1人増えたが食事を追加するのを忘れてしまっていた」

「いえ、これで充分です」

「今日は迷宮にも行っておりませんし、果物もありました」


それにしてはあっと言う間に食べてしまった気もするが、

そう言わせてしまう所がダメな主人なのだろう。

食うに困らない位はしてやりたい。


「あっ、しまった。夕食も朝食も追加しないとな」

「そうですね、私たちはまだ掃除を続けます」

「あの、俺はどうすれば」


「庭はどうなった?」

「一応、言われた場所の土は反しましたが」


「剣は?」

「道具置き場に置いてあります」


慌てて取りに行く。


土だらけになった剣が作業小屋に立て掛けられていた。

回収し忘れたらボーナスポイントを失ってしまう。

危なかった。


これがどういう物であるかは伝えていないし、

土を起こす道具として渡したのだから、その認識は間違ってはいない。

間違ってはいないが・・・。


「じゃあナズからお金を受け取って、鋤を買い直して来てくれ」

「分かりました」


「買ったらハーブの種を植えたいから、うねを作っておいてくれ」

うねと言うのは何でしょうか」


農作業をやった事が無い人間に、うねは馴染みが無いか。


「水はけを良くするために、柔らかくした土を山のように繋げるのだ」

「山?」


うーん、口で説明するのが難しい、1つやって見せれば良いだろう。

言って聞かせやって見せて何とかだ。


「じゃあやって見せるから覚えてくれ」

「分かりました」


先が曲がった鋤でどうにか掘り返された土塊を砕いて、

ならしながら1列のうねを作った。


「こうすると種が柔らかい土で成長し易く、

 雨や水を撒いても底に溜まらず腐り難くなるのだ」

「ユウキ様は農業にも詳しいのですね」


詳しいと言うか、一般知識と言うか、義務教育の範疇はんちゅう

いや、特別には習わなかったが日本人なら大抵知っている。

やはり基礎教育は偉大なのだ。


「ま、まあな。壊れていない鋤の方がやりやすいと思うから、

 新しい鋤を買ってからやってくれ。雑貨屋はナズが知っている」

「分かりました、やってみます」


その後旅亭で1人増える事を伝え、

夕食と弁当の80ナールの3割引、56ナールを支払った。


家に帰るとうねが1つ増えていた。

ジャーブも頑張っているようだ。

土もしっかり掻き混ぜられてフカフカだ。

均等にハーブの種を蒔いて行く。

・・・水、水が無い。


「アーナー?」

「はーい、お待ち下さい。・・・・・・・何でしょうか」


掃除をしていたアナが手を止めて走ってきた。


呼ばれると走って来るだなんて、犬みたいに懐っこいな。

もう犬人族で良いよ、君は。

取り敢えず頭を撫でた。

その上に生えている耳もピンピンした。


「種を撒いたのだが撒く水が無い、井戸まで案内してくれ」

「水汲みでしたら私が行きますので」


「場所を知って置きたいからな」

「かしこまりました、ではご一緒致します」


井戸までは歩いて2分。

遠い訳では無いが往復4分、帰りは重たい水の桶を抱えるので

1人で2往復以上は大変だ。


さっきはナズとアナ、2人で1桶ずつ運んだのであろう。

これからはジャーブに任せようか。


食事と皿洗いはナズ、掃除と洗濯と装備の手入れがアナ、

水汲みや畑の手入れなどの力仕事がジャーブ。

いい塩梅だ。


水の桶のうち1つは掃除用に回し、

自分が汲んだ1つを庭に運んで水をやった。

新しいうねが半分まででき上がっており、

うねはあと2つ程で庭が埋まる。

1畝1種類として5種類のハーブを育てられそうだ。


種は適当に何種類か買ったので何が育つかは楽しみだ。

購入時に名前を言われたが覚えちゃいないし、そもそも味や形を知らない。


うね分の種を蒔いた所で、ジョブを確認すると農夫が増えていた。

ミッション完了だ。


後は育っても、育ってくれなくても良い。

育ってくれた方が美味しい思いはできるが。


畑は全部ジャーブに任せた。

∽今日のステータス(2021/08/10)


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者  Lv34

  設定:探索者(34)剣士(30)英雄(21)騎士(10)

     賞金稼ぎ(10)

  取得:村人(5)戦士(30)商人(30)色魔(1)奴隷商人(1)

     暗殺者(1)武器商人(1)防具商人(1)


  ↓


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者  Lv34

  設定:探索者(34)剣士(30)英雄(21)騎士(10)

     賞金稼ぎ(10)

  取得:村人(5)戦士(30)商人(30)色魔(1)奴隷商人(1)

     暗殺者(1)武器商人(1)防具商人(1)農夫(1)



 ・繰越金額

     金貨  9枚 銀貨 26枚 銅貨126枚


  ジャーブ装備品   (81600→57120й)

   バスタードソード  40000

   帽子        10000

   鎧         12000

   手袋         9600

   ブーツ       10000


  夕食と弁当追加         (80→56й)


     金貨- 6枚 銀貨+29枚 銅貨-76枚

  ------------------------

  計  金貨  3枚 銀貨 55枚 銅貨 50枚



 ・異世界12日目(昼)

   ナズ・アナ7日目、ジャーブ1日目、宿泊9日目

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 今日のステータス ジャーブの防具、ちゃんと高級な竜革製の値段なのを明記したほうが。(原典の読者には自明なのだとしても)
[気になる点] 賞金稼ぎ(10) ↓ 賞金首(10) いつの間にお尋ね者になっちゃったの? 今更ながらで申し訳ありません。 面白くて何回も読み返しているのです。 つい、発見してしまいました。
[気になる点] 賞金首だと賞金を懸けられている側なんだけど。賞金稼ぎ?
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