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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第四章 資金
51/394

§050 大剣

ナズとアナを家に置き、ジャーブを迎えに行った。

既に値段の話は付いているので、

この契約書と別にした金袋を渡すだけだ。


商館のノッカーを叩く。


「ようこそおいで下さいました」


現れたのは商館主のシラーだった。


「やあ、どうも。昨日契約した者を引き取りに参りました」

「お話は伺っております、こちらへ」


いつもの応接間に案内されると、既にジャーブが立っていた。


この流れるような手際の良さ、

一流の商売人はやはりきめ細かさが違うなと思う。


旅亭の店員も、酒場の女将さんも、

商売人ではあるがサービスへの自信とか高尚さがない。

もっとも、来る客はそんな事を望んでいないが。


やはりここは富裕層が訪れる場所なのだと身に染みる。


いいのか?・・・自分が、21の若造が。

百貨店の外商部ばりの待遇で持て成されてしまって。

既にこの大商人を相手に偉そうな口を叩いて、

ハッタリで商売の話をしてしまったので今更引けないが。


「既にヨシフと話をしたようで」

「はい、契約書を頂いております」


そう言ってシラーに渡す。

向こうも判ってはいるだろうから大丈夫だと思うが。


「この奴隷は初年度ではありませんので、

 18万2千ナールとなります」

「はい、でしたらこちらを」


別にしておいた金袋を取り出し、トレイの上で広げて並べた。


「丁度、確かに頂きました。それではご契約致しますので腕を」


シラーに促され、ジャーブと自分が腕を並べた。

ジャーブを下げさせると、少しだけ間を置いて契約の終了を告げられた。

今の間で死後解放の操作をしたのだろう。


「これで、この奴隷はユウキ様の物です。主人には──」


前回も聞いているし、元々知っているので聞き流す。


「これにて契約は終了です」


「そういえば、昨日はお出になられていたとか」

「はい、別の町に奴隷を融通して欲しいと連絡がありまして」


「ヨシフ殿も早く奴隷商に成れるといいですね」

「お恥ずかしい限りです」


「いつもはどの階層でご経験を積まれているのですか」

「あれはあまり力が有りませんので、

 奴隷にも怪我が無いように4層を回らさせております」


確かに、ちょっとひ弱そうだもんな。


パワーレベリングさせてやってもいいかなと思ったが、

それでは経験にならないとか怒られそうだし、

Lvと言う概念が無かったのだったか。

やはり余計なおせっかいはしないでおこう。


でも4階層でLv30を目指すのか。

確かLv24だった。

・・・あと何年かかる事やら。


「連れて行く奴隷にもよりますが、

 彼なら7階層でも十分大丈夫かと思いますよ」

「ほう?お客様がそう見立てするなら、やらせてみますか」


アナを見出し深層階に行く。

さらにジャーブが熟練者と見抜いたのだから、

実力を見る目はある、と思われているのだろう。

せめての手助けだ、頑張れヨシフ君。


「ではまた」

「またのお越しをお待ちしております」


商館を出てジャーブと2人になる。

どの位こちらの話を聞かせられているのか、まずはそこからだろう。


「ジャーブ、自分はユウキだ。

 今後、一緒に迷宮を探索する事になるので宜しく」


「はい、ユウキ様と呼べば宜しいですか」

「そうだな、そうしてくれ」


「自分の事は何か聞いているか?」

「ええと、以前にもこの商館で別の奴隷をお買い上げになったとか」


「そうだな、先輩が2人いる。仲良くやってくれ」

「分かりました」


「以前鼻が利く者を探していたんだが、その時にはいたか?」

「ええと、そのようなご用命があった事は覚えていますが、

 ユウキ様だったのですか」


「そうだな、お前はどうだ?」

「いえ、特にそういった技能は無いです」


「ラピッドラビットと渡り合えるといったな」

「目はいい方です」


「獣戦士ではなく、何故戦士なのだ?」

「獣戦士は狼人塚で転職をするらしいのですが、

 行く機会に恵まれませんでした」


なるほど、種族固有のジョブなら

その種族が多く暮らす街や村でないとギルド神殿は無いか。

別の地に生まれて行く機会が無ければ、

手っ取り早く地元で戦士になる方が早い。


「ではちょっとパーティに入ってみてくれ」

「分かりました」


おっと、無詠唱でパーティを求めたら不審がるな。


「今から起こる事は秘密だ、そして驚いても騒ぐな」

「え?は、はい、了解です」


パーティ編成を念じてジャーブを選んだ。


「ユウキ様、他にメンバーが・・・いませんね、どうやって──」

「だから騒ぐな、今起きた事は秘密だ。そしてこれから起きる事も秘密だ」


「はい、大丈夫です」


取得ジョブは・・・


 村人(6)農夫(4)獣戦士(1)探索者(1)

 戦士(16)剣士(1)薬草採取士(1)


持ってるじゃないか、獣戦士。

機会が無かっただけで、無能なんかではなかった。


しかし、今更変える意味は無いだろう。

ビーストアタックがダメージ3倍とかだったら惜しいかもしれないが、

折角戦士が育っているんだし、彼には騎士になって前を張って貰おう。

彼に倒されると経験値効率も悪い。

騎士ならば防御がメインで、戦線を維持するかなめとなれる。


そこら辺に生えていた木にワープを使って入り口を開けた。

ジャーブに目配せして中へ入れる。

驚いた素振りは無く、冷静にゲートをくぐった。


「緊張しなくていいぞ、ここは現在借りている宿屋だ」

「ええと、トラッサの・・・旅亭ですか」


「そうだ、良く判ったな」

「窓の外に鐘が」


そういえばトラッサの旅亭の前には騎士団ギルドの鐘塔があるし、

ここの者ならすぐ判るか。


「驚いたとは思うが、騒がないのは流石だな」

「ええと・・・、これでもかなり驚いて緊張しております」


「今ので解かったように、自分には他人には言えない事情や秘密がある。

 これからそれらを目の当たりにしても冷静でいるように。

 そういうジョブを持っていると思ってくれ」

「分かりました」


「他人には、立場によってジョブを偽って伝えている。

 例えば先ほどの商館やこの旅亭では商人として、

 これから向かう町では騎士として振舞っている」


「ユウキ様は騎士なのですか?先ほどはパーティ編成と移動魔法を──」

「騎士でもあり、商人でもあり、探索者でもある」


「ユウキ様の意志で換えられると?」

「かなりいい線だな」


やはり中階層にも行ける戦士ともなると、それなりに頭は回るようだ。

これは期待できる。


「そのような凄いお方にお仕えできて感無量です。

 是非お役に立てればと思います」


戦士で高Lvだからもう少し粗暴さがあるかと思ったが、

1年以上商館で教育された事も関係あるのか?

ずいぶん落ち着いているし、性格は丸そうだ。


  ──俺より強い奴しか主人とは認めねぇ!


とかだと面倒だった。


「パーティメンバーを紹介する前に、先に言って置く事がある」

「何でしょう」


「メンバーはお前よりはるかに強いが、気を落とさなくていい。

 お前もすぐ強くなる」


前衛で12層まで張っていける自信があったのだ。

これから投入される先で、変に気落ちしないようにするためにも、

最初から知って置いた方がいいだろうと考えた。


「大丈夫です。

 ユウキ様の凄さは先程分かりました。

 そのような方のメンバーなのですから、やはり特別な方々でしょう。

 逆に俺が足を引っ張らないか心配です」


「そこは大丈夫だ、特別を求めていない」

「はい、ありがたいお言葉です」


「じゃあ装備を買いに行こう、何か得意な武器があるか?」

「俺は盾を使うのは苦手です。両手が塞がって動きにくいし、

 器用な方では無いので、すべて力任せです」


パワータイプか。攻撃は受ける?避ける?

大剣で受け止めながら斬るのだろうか。

カウンター戦士なら強いな。


「両手剣の方が重くないか?」

「慣れですかね、片手剣ですと受け止めきれません」


慣れ・・・で済むものなのか?

自分のデュランダルも両手剣だけれど、

握った感じはしっくりこない。

まだ剣を握って十数日だし、仕方無いかもしれないが。


「以前はどんな剣を使っていた?」

「バスタードソードです、あまり出回っていませんが、

 鋼鉄剣の中では一番強く、自分にも合っていると思いました」


知らない武器が出てきた。

鋼鉄製の両手剣は鋼鉄の剣だけでは無いのか。

上のランクがあるのだろう。


そしてやはりパワータイプだ。

身長位の大剣を引っ提げてぶん回すのだろう。

敵に勝利したときに是非、頭の上でくるくる回して貰いたい。†


それにしてもパワー型なのに落ち着いた感じで頭も回る・・・。

アラヤダ、何この戦士、ちょっと優秀過ぎない?


「じゃあ、ちょっと探しに行くか」

「あ、あの、バスタードソードは高価です。

 鉄の剣位であれば十分ですので」


「そうか、しかし初めて聞いた武器だし、ちょっと見てみたい」

「バスタードソードはトラッサには無いかもしれません。

 ホドワやルイジーナにはあるかと思います」


結局この後ナズ達に会わせるのだから、ホドワに行くし丁度いい。

部屋から迷宮に飛んでもジャーブは騒いだりしなかった。

∽今日のステータス(2021/08/10)


 ・ジャーブ 狼人族  ♂ 28歳 戦士  Lv16



 ・異世界12日目(昼前)

   ナズ・アナ7日目、ジャーブ1日目、宿泊9日目

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