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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第囲章 新生
350/394

§337 価格

朝の目覚めと共に、新妻からの挨拶を受ける。

奴隷時代に申し付けた日課のキスは一般人になった今も、

いや妻になった今も続けてくれている。


2人の立場を変えた事で、

急に余所余所しくなってしまったのかと考えてしまった事もあるが、

そんな事は全く無かったと今なら言える。

その時の自分を叱ってやりたい。


2人をギュッと抱き締めてから解放した。


以前ならば起床後直ぐにナズは台所へ向かって行ったが、

今はエミーやクルアチ、更にはイシャルメダもいる。

彼女らのお陰で朝晩の食事の支度はかなり軽減されており、

ナズの仕事は様子見や味付けを指示する程度に収まっていた。


勿論、ナズ自身も多少手を出して食事の支度は行う。

自分は庶民的な料理の方が好みなので、

エミーやクルアチが知っているような金持ち料理は、

毎日出されると胃腸が厳しいと説明したからだ。


現代日本人だって飽食の時代とはなったが、

流石に毎日ピザやステーキは厳しいだろう?


勿論それでも平気だと言う人もいるが、特殊な例の話はしていない。

和食なら兎に角として、

そのような味付けが広く用いられる地域では無いのだ。


無いなら自分で用意をすれば良いと言う話になろうが、

まずもってこの国には出汁の文化が無い。

自分が出汁に用いたキノコや海藻は高級食材で一般人は入手が難しかった。

醤油・・・いや魚醤の入手法も限られている。


製麺に於いてもここでは人力、それも力仕事となるので、

ある程度人員が割ける暇な時でなければ用意ができない。

今は地図作成に全てのヒューマンパワーを注いでいる状態で、

あれもこれもさせるのは忍び無い。


だから今はこの位で良いのだ。


ナズもアナも起き上がったので、自分もベッドから立つ。

部屋付けにしたメイドのイルマは既に起きており、

誰も寝る者がいなくなったベッドを整えると、

シーツだけ剥がして下の階へ降りて行った。


「あっ、そういえばご主、旦那様。

 リアナさんから言付けなのですが、

 前回ご主人様が提供されました汁の食べ物と、

 苦みのあるお酒をお店で出したいと申し出がありました」


「ええっと、ラーメンとカモーツかな?」

「はい、それですね。

 それから前回の品代として幾ら払えば良いのかと聞かれております」


「クレープは良いのか?」

「ええと、あの食べ物はカモーツのお酒と一揃いなのでは?」


最初からセット扱いかよ。

モーニングセットか?

いや、ナイトセット?


ま、まあどちらだけでも物足り無くはあるな。

酒場にクレープは似合わないし、

苦みのある酒をリアナさんの出す料理で口取りするのは厳しい。


「そうか。じゃあちょっと値段を計算してみるから、

 後程リアナさんに伝えて置いてくれ」

「分かりました。お店で出せる価格になれば良いのですが・・・」

「作るに当たり面倒な工程が色々とあるようですし、

 特にあの苦い実の飲み物などは収穫も抽出も難しいでしょうね」


「酒も運ぶ手間があるし、道具も必要だからなあ・・・」

「そうですよね・・・」

「庶民が気軽に旦那様のお作りになるお料理を頂く事は難しそうです」


アナとナズは首を傾けて唸っていた。


そうなのだ。

卸すにしたって値段を相談しなければならないし、

あちらもこちらも損がないようにしなければならない。


今までは自分が食べたいと言う欲求のためだったので、

値段を気にせず作って来た面もある。

それが儲けの範疇にあるかと言ったら全く未知なのだ。


宴会の席では女性陣からナズに店を出させろと凄まれたが、

果たして出した所で庶民が買える値段に届くのだろうか?

高過ぎて誰にも買えないのであれば、出店直後に閉店である。


そもそも、どの位の量のカモーツの実が収穫できるかすら不明なのだ。


クレープの方は大工に頼んだ焼き台の返答待ちである。

小麦粉と砂糖を練るだけの生地だし、

材料費の殆どを占める酪は掲示板に依頼を出せば半額だ。


現実的に1番面倒な生クリームの作成は、

この世界では酪を放置して置けば全てが変質するので、

手間も無ければ無駄に成る事も無い。


酪で採算が合わなければ牛乳から生クリームを取ったって良い。

こちらの世界の住人は知らない様子だったが、

自分には遠心分離機が・・・あるけど大変だなこりゃ。


酪から生クリームを作るのには結構な金額が掛かった。

自分達が宴会で使用した際に沢山買わざるを得なかったのは、

急拵きゅうごしらええで且つ量を必要としたためであり、

結局残った酪の液体部分は半分以上余ってしまった。

勿論翌日のスープに化けたので、無駄にはならなかったのだが。


酪は1つで10~15食分は行けそうだった。

多分小さいサイズ50個分の量であれば、

3個もあれば十分足りたのだろう。

買取カウンターでは1つ当たり400ナール。

冒険者ギルドで買えば半額の200ナール。

1食分あたり12ナール、材料費としては多分これが一番高い。


果物は10食分でオレンジっぽいタプスなら2,3個、

パイナップルっぽいアナナスなら1つで済む。

どちらも15ナールもしない。

1食あたり1.5ナール。


小麦粉は50食分で1袋だった。

120ポット120ナールだ。

それから牛乳は1瓶使用したので、100ナール。

1食あたり4.4ナール。


コボルトスクロースも必要だ。

と言っても塊一個で20ナールと結構安いので、

これは50食分作ったとして半分も使わない。

生だと渋い種類の果実を甘く煮る必要を考えれば、

50食で10ナール換算で良いだろう。

1食あたり0.2ナール。


と言う事は1つあたり原価18.1ナールか。

これにカモーツの実の汁を入れた酒を出す。


エールのカクテルが1杯4,50ナールで提供されているお店なのだ。

1杯と言っても結構な飲み応えのある量である。

現代日本の感覚で言えば小ジョッキ1杯分と言っても良い。


この辺りに収めるとなると、

クレープとセットで60ナールから75ナールでギリギリか?

バンディールの樽からワンショット。

つまりおちょこ1杯分・・・待て、カルクだ。


カルクで軽く計算してみる。

酒樽1つは1人で抱えて持つのがやっとな感じ、

お祭りなんかでよく見られた樽の大きさだ。

多分4斗樽とかいうサイズだろう。

4斗=400合=72000ml。


小ジョッキ一杯当たり250ml程度として、

3/4をカモーツで割ると60ml程度、1200杯分。

それに180ml分のカモーツが必要だ。


15年物のバンディール樽が7000ナールであったので、

1杯当たりの酒代が約5.83ナール。

30年物だと3倍の17.5ナールだ。


・・・仕入れ値で客に出している訳では無いし、これは卸価格の話だ。

更にカモーツの種を炒った汁代を加えなければならない。

カップ1杯のカモーツとショットのバンディール。


となると、リアナさんのお店で出せそうな値段になりそうも無い。

採算に乗せるなら15年物で行くべきだろう。

30年物の高級品はやはり貴族向けなのだろうな?


で?カモーツの実の方の手間だ。

実を外して種だけにし、洗って炙って煎って砕いて濾す。

最低3時間の工程が必要だ。


ジャーブは50杯で拳3個分だと言っていた。

大体両手で掬って2杯量だ。

1本の木から落ちていた実の量はもうちょっと有ったので、

収量としては1本の木から1回分かそれより多いか位か?


大体70杯分位とすると、庭には20本移植したので1400杯分だ。

年間で50杯を30回しか納められない事になるが、

流石に高く付きそうだし、毎日お届けが必要な位に売れる事は無いだろう。


コーヒーの木は条件が良ければ年に2回収穫できると聞く。

最良だとして60回、そうでは無かったとして30回の納品が可能だ。

条件が良くってナズの歌の2回に1回が限度だろうか。


人気が出てしまって歌の日は必ず提供するように頼まれた場合、

プタンノラまで収穫しに行く必要がありそうだ。

そう言う事になった場合、農園を設けると言うのも手である。

ギリギリ酒場に納める量しか取れないのであれば、

貴族向けに卸すなんて事は無理だろうからな。


そして濾す前までの工程ならば一度に沢山行える。

豆を煎るまでで3時間の拘束として、それが150杯分をやったとしよう。

つまり50杯分は1にん時間。

銀貨1枚、100ナールも貰えば良い方か?


後は豆代だ。

どの位の間隔で収穫ができるか全く不明だし、

生育の手間もどの位掛るのやら。


でも町で売っている果物がかなり安い事を考えると、

カモーツも農園で育てるとしたらかなり安い物なのだろう。

両手に一杯で30ナールも貰えば高めの果物だと思う。

50杯分で30ナール、1杯当たりの豆代は0.6ナール。


それでは酒を運ぶ運賃と、カモーツの実を外す手間。

どちらも銀貨1枚、合計200ナール頂くとすると、

50杯で330ナール、1杯当たり6.6ナール。


酒代が5.83ナール、カモーツが6.6ナール。

これらを混ぜたドリンクは12.5ナールだから、

クレープとセットにすると合計で18.1+12.5ナール。


リアナさんが仕入れとして払う価格が概算で約31ナールだ。

結構ギリギリか?

セットで100ナール取って何とかのラインだろう。

一般市民が手の届くラインに納まりそうで安堵した。


カモーツ単体として飲むのであれば、牛乳を足して10ナール。

モーニングコーヒーとして満足行く量とするならば倍だ。

仮に富裕層向けに朝の1杯を提供するならば、20ナールが原価となる。


あ、いや、煎った豆だけ販売すれば良いのか。

そしたら1杯13ナールだ。

あらやだ、意外と庶民的?

喫茶店のコーヒーくらいの値段に収まりそうでびっくりした。


いやいやいや、前提がおかしい、これは原価だろう。

販売時には3倍頂いて定価は1杯辺り40ナールだよ。

50杯当たり2000ナール・・・ま、まあそうだよな。

嗜好品なのだし、そんなもんなのだと思う。


同様にラーメンを見積もって見たが、

40食分のミニラーメンは材料費だけで233ナール、

煮込む手間賃と麺を捏ねて切る手間賃を銀貨5枚頂いて、

1杯辺り18.3ナールであった。


これが原価なので、販売時は50ナール位か?


高いよ。

具無しだぞ?半分だぞ?

日本でこの値段設定だと暴動が起きるだろうな。

カモーツも結構な代物だと思ったが、ラーメンは更に高級品だった。


アナに頼んでパピルスに認め、ナズへ渡した。



   ***


 

朝食時にジャーブから手紙を渡される。


手紙を寄越す元はもうジャミルしかない。

騎士団に世話になる用件はもう無いし、

ボルドレック関連は片付いたので安心して報告を聞いた。


「ええっと、鯉のカードを入手したそうです。

 何の効果なのでしょうか」

「こっ、鯉のカードは防具に付ければ魔法の効果を抑えられますっ。

 ぶっ、武器に付けた場合は単体属性魔法に限って強くなるそうですっ!」


突然ラティが知識を披露する。


良いんじゃないか?

迷宮関連はラティに聞けば何とかなりそうなので、

今後も頼りにして行こう。

わざわざ遠方のジャミルに聞きに行かなくて済むのは大きい。


「それじゃ、今日の予定だが」

「今日も地図を作るのですよね?」

「23層以後の地図は細かい部分が多いため少々時間を取られましたが、

 何とか午前中には閉じる所まで終わりそうです。

 俺とラティ殿で残り2層分の印刷を、

 パニ君がインクの管理を、後はヴィーが乾かせば大丈夫でしょう」


「そうか、ではそうして貰って、ラティは午後に地図を売りに行って来い」

「かっ、かしこまりましたぁ」

「やっと終わりかー」(ヴィー様、いけませんよ。これもお仕事です)

          (へいへいへーい)


ここで追加の100部を指示したらヴィーは爆発しそうである。

黙っとこう。


「自分は捕らえている男の育成をして置きたい。

 あの男は冒険者にして商館へ売る予定だ」

「そうなのですね?」

「冒険者ですか、それも宜しいかと思います」

「なるほど、パニ君と同じジョブですか」

「へー、パニと一緒?」

「あの、ええと、僕はいつの間にか冒険者になっていましたが・・・」

「ぼっ、ぼっ、冒険者ってそそそ、そんなに簡単に成れるものでは、

 ・・・無いハズだとおっ、思うん(ですが・・・)」


昨日から持ち回りで見張りをしているが、

夜はアナが見張りを、その後途中からジャーブが、

朝食前にはイルマと交代した。

従ってイルマの食事はこの後となる。


「それと合わせてイルマとクルアチも育成して置きたい。

 迷宮へ行くのは自分とアナだけだが、

 パーティはパニ、イルマ、クルアチ、イシャルメダを入れる」

「かしこまりました」

「あ、はい、僕もですか」

「わっ、私ですか?」

「え?ワタシ?ヨんだ?」


「ああ、イシャルメダはパーティに入って貰うだけだ。今日もお勉強だ」

「ウン、がんバてクるね?」


未だ会話に付いて行けていないイシャルメダであるが、

名前が挙がった事には反応を示した。

パーティに入れたとしても、結局は商館でお勉強して頂くだけである。


「クルアチも、パーティには入れるが家の事をやってくれて大丈夫だ。

 実際に戦うのはもっと後になる。

 パニも今は印刷の仕事を手伝って欲しい」

「かしこまりました」

「え、ええっと、戦わずして強く成れるものなのでしょうか・・・」


勿論クルアチの育成として実戦の経験は積ませる予定だが、

先に探索者Lv50を突破させて置きたいだけである。

そもそも実戦の練習と言うだけならば、

ラティと共に低層の地図を取る作業に連れて行けば良い。


「エミーはいつも通り、家の事だけで良いからな」

「かしこ・・・まりました」


食事後に見張りをしていたイルマと交代し、元盗賊のハンダールを見張る。


とは言うものの、ハンダールは風呂場の板の間で横になって寝ていた。

既に昨日の時点からパーティに入ったままであったので手間は無い。

その間にイルマは急いで食事を取らせた。


イルマが食事で抜けている間の暇な時間を活用すべく、

ハンダールには探索者ジョブ適応試験の練習をさせて置きたい。

アナに頼んで時間を正確に数える特訓だ。


しかし、アナは人間語が解らない。

自分も解らない。

人間語が解らなければ訓練が行えないが、

通訳ができるイルマは食事中だし、ラティは大事な印刷作業中だ。

そもそも訓練を任せるには不安が着き纏う。


結局クルアチを呼び、アナからの特訓内容をクルアチが訳して伝えた。


「では参ります。私の手拍子を頭に刻みなさい」

「xxxxxxxxxxxxxxx」


──パン、パン、パン、パン、パン・・・。


特訓の内容は簡単である。

アナが手を叩き、そのタイミングを頭に刻むのだ。

自分が知る60秒とアナの知る80秒が大体一致しており、

こちらの世界の1分は殆ど変わりない。


だが脳は混乱をきたす。

ビートが早過ぎるのだ。


そもそも人間の心臓の鼓動は安静時に60回から70回と聞くので、

アナの手の撃つスピードだとやや早い鼓動となる。

ここにいると自分の感覚まで狂って来そうなので、

申し訳無いが席を外させて貰った。


7,8回の仮試験の後アナからは合格が出たようだ。

曰く、まあまあの飲み込みでしたとの事である。


一発合格できるアナのような才能を求めてはいけない。

そもそも1日でOKが出れば十分では無いだろうか。

ジャーブなんて無能扱いされて諦めたんだぞ?


そうこうしているうちにイルマが帰って来たので、

再び見張りを交代して貰った。

トイレを要求された時は逃げないように注意する必要がある。


ジャーブを呼び、2人体制にすべきか?

夜は大人しく寝ていたので見張りは1人でも何とかなったが、

日中は大変そうだ。


うーん、ジャーブは製本の要ではあるので、今交替させるのは厳しい。

他の者が同じ仕事をできるようになってくれれば良いのだが、

持ち前のスキルや器用さに掛かって来る労働者は替えが利かないのだ。


結局、再びクルアチを呼んで2人体制での警戒をお願いした。

基本的に交代制、トイレの要求がある場合は2人同時と言う事で。

丁度人間語が判るし。



   ***



現在のパーティはアナ、イルマ、クルアチ、イシャルメダ、ハンダール。

このうちアナだけを迷宮へ連れて行く。

ハンダールのジョブは既に探索者にしてあるが、

これは後から村人に戻し、正規の手段でジョブの変更をさせる予定だ。


そういえば身代わりのミサンガは前回の盗賊戦で千切られてしまった。

あの一撃が再び起こらないとも限らない。

後衛だから何だと言わずに、やはり持っていて良かったと今更安堵する。


幸いな事に予備が1つ用意されているのだが、

元々はイシャルメダに着けさせておこうかと思っていた物である。

結果的には自分が使用する事になってしまった。


この際だから、もう3個位予備を用意しておこう。


イシャルメダも酒場通いになる訳で、

酔っ払いから不意の一撃を食らわないとも限らない。

流石に過保護かな?


・・・良いんだよ、皆平等に安全第一だ。


「それじゃあ下層から順に行くぞ」

「はい、トラッサの7層からで宜しいでしょうか?」


「トラッサ7層にも魔物の部屋があったのか?」

「ええ・・・あの、私の以前の主人の友人がそこで」


「そういえばそう言っていたな。トラッサ7層といえばミノだったか。

 それ程大変な階層ではないはずだと思うが、

 何故お前の元主人の友人はやられてしまったんだ?」

「ええと、はい。私と相方の奴隷が前を守り、

 前主人達が側面を警戒する形で戦っておりました」


「自分達が以前行ったような布陣を張った訳だな?」

「旦那様のように計画を立てて行った訳では無く、

 自然とそう追い込まれただけだったのですが、

 結果的にはそうなりますかね?」


「うんうん、それで?」

「その際に相方の主人の元にはスパイスパイダーが混じっていたようで、

 混戦中に毒を受けてうずくまり、

 魔物の集中攻撃を浴びてしまわれました。

 相方であった奴隷は主人を救おうと救助を強行したのですが、

 その甲斐虚しく魔物たちに囲まれ、双方共に力尽きました」


「そんな状況でよく生還できたな?」

「勿論毒消丸は準備していたのです。

 しかしあの時はミノの集団に囲まれてしまっていて、

 直ちに飲ませる事も困難でした。

 前主人のご友人は・・・倒れられた後ミノの激しい突進を受け、

 部屋の隅の方まで追いやられてしまったのでどうしようも無く」


「そうだったのか。

 毒も怖いし、魔物の部屋で1人だけ分断されると恐ろしいな」

「はい。毒は単にダメージを受けるだけで無く、

 眩暈に戦意の喪失、更には虚弱状態になるようです」


7層辺りならば脅威がある魔物はいなかったと思ったが、

やはりそういう重大インシデントがあったのだ。


自分が毒を受けた際もかなりの苦しさを経験したし、

まともに戦っていられる状況では無かった。

やはり毒は危険だ、耐毒装備は全員分用意した方が良い。


そんな事を言ったら状態異常は全て危険だ。

耐性装備は全員分用意した方が良い。


アナに案内され、魔物の部屋の入口に立った。


「こちらです」


そういうと、アナはそっと壁に手を触れた。


──ゴゴゴゴ・・・。


音を立てて壁が動き、部屋の様子があらわとなる。


この魔物の部屋には床が動いたりしていざなわれる事は無かった。

低階層ならではなのだろうか?

入るならどうぞ、ご自由にと言う事だろう。


偶然発見してしまっても引き返すチャンスはあるようだ。

ミノならそこそこ戦い易い。

低階層とは言え人気のある階層なのだ。

十分制する事ができるパーティならば濡れ手に粟と喜ぶのだろう。


アナは以前の主人に魔物の案内をしなかったと言っていた。

発見は偶然だったが、ここへ行くとジャッジを下したのは主人達だ。

アナは逆らえなかった。

いや、行けるとは思っていたのだろう。

だが友人の方が毒と言う予想外の事態に倒れたのだ。


隠密活動のスパイスパイダーが、ミノの集団に紛れて噛みついた。

自分もスローラビットの部屋で経験した。

見えない魔物と言うのはそれだけで脅威である。

どんな時にも、細心の注意を怠ってはならないと戒めた。


とは言え。


7層の魔物はオーバードライブしなくたって中級雷魔法一撃である。

今となっては別段困るような事など無い。

アナもそれが解っていて直ぐアイテムを拾いに向かった。

殆どが皮であり、ホモール、羊毛と続いた。


スパイスパイダーから出るであろうスパイダーシルクは入手できなかった。

いなかった訳では無いだろう。

レアアイテムだし出なかっただけである。

勿論ヤギの毛も見当たらなかったぞ。


アナと2人でアイテムを拾い終わり、次の階層へ移動した。

お次は9層、スローラビットの部屋だ。

∽今日のステータス(2022/07/09)


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv66

  設定:探索者(66)魔道士(43)勇者(33)

     道化師:下雷魔法・荒野移動/知力中・知力大(39)

     神官(45)博徒(40)


 ・BP164

   キャラクター再設定   1pt   MP回復速度×20  63pt

   パーティー項目解除   1pt   6thジョブ     31pt

   パーティライゼーション 1pt   詠唱省略        3pt

   獲得経験値上昇×20 63pt   ワープ         1pt


 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 忍   Lv29

 ・イルマ      狼人族  ♀ 21歳 巫女  Lv21

 ・クルアチ     兎人族  ♀ 18歳 英雄  Lv2

 ・イシャルメダ   猫人族  ♀ 29歳 探索者 Lv3

 ・ハンダール    人間族  男 23歳 探索者 Lv1


  ↓


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv66

  設定:探索者(66)魔道士(43)勇者(33)

     道化師:下雷魔法・荒野移動/知力中・知力大(39)

     神官(45)僧侶(19)目利き(26)


 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 忍   Lv29

 ・イルマ      狼人族  ♀ 21歳 巫女  Lv21

 ・クルアチ     兎人族  ♀ 18歳 英雄  Lv4

 ・イシャルメダ   猫人族  ♀ 29歳 探索者 Lv8

 ・ハンダール    人間族  男 23歳 探索者 Lv7



 ・収得品

   皮        ×  32   ホモール     ×   7

   羊毛       ×   3   コボルトソルト  ×   1



 ・異世界98日目(朝)

   ナズ・アナ93日目、ジャ87日目、ヴィ80日目、エミ73日目

   パニ66日目、ラテ45日目、イル・クル42日目、イシャ16日目



 ・トラッサの迷宮

  4 チープシープ     /  ビープシープ

  5 スパイスパイダー   /  スパイススパイダー

  6 エスケープゴート   /  パーン

  7 ミノ         /  ハチノス

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今日のステータス) >・収得品 >   皮        ×  32   ホモール     ×   7 >   羊毛       ×   3   コボルトソルト  ×   1 > ・トラッサの迷宮…
突っ込むべきか悩んだけれども。 ユウキ君や、アナは「運悪く魔物が大勢いた部屋に捕まってしまい」と言っているし、「主人達は慌てていた」とも言っているから、魔物部屋と分かっていて入ってはいないぞ。 と…
>7層の魔物はオーバードライブしなくたって中級雷魔法一撃である。  原作では雷と氷は魔法使いでは使えず、魔道士になってからやっと取得できる属性となっているため、魔道士の使う雷魔法は下級雷魔法です。なの…
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