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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第囲章 新生
349/394

§336 輸送

ガルガムは最後までパーティに入る事を拒絶した。

騎士団へ連れて行かれる事が判り切っているからだ。

そもそも兎人族と言う種族性に起因して、

街へは行きたく無いと言う心情が根底にあるからだろう。


仕方無いのでそのまま石化させ、後は荷馬車で郵送するしかない。

金が掛かって時間も掛かって、最後まで面倒な奴だ。

トラッサまで運ぶのは浪費でしかないので、

こうなってはサンサダールの騎士団に任せるしか無かろう。


「じゃあ一先ひとまずこの男はこのまま放置するとして、

 クルアチは実家の持ち物などを持って来たいか?」

「い・・・いえ、4年の間にすっかり変わってしまっておりまして、

 私や兄、父母の持ち物などは、

 既に処分されたか売られてしまった後のようでした。

 これからまたご主人様の元でお世話になる身ですし、

 これまでも不便はありませんでしたので、

 仮に私物が残っていたとしても不要です。

 元々大した物は持ってりませんでした」


「そうか、では・・・このまま帰るが良いな?」

「はい。元より故郷など諦めていた身です。

 最後を見送れた事、同族の仇を討てた事に感謝致します」


「じゃ、みんな戻ろうか。アナ、イルマ、ありがとう」

「いえ、私でしたら大丈夫です」

「は、はい、お役に立てまして何よりです」



   ***



途中リオリックの村に立ち寄って荷馬車の手配をお願いし、

石化した男を連れて帰るように頼んだ。

そちらはアナに任せ、

御者代や交通費としてアナには銀貨を20枚手渡した。


自宅に戻り、イルマはクルアチの傍に居てやるよう申し付ける。

彼女を1人にしないようにだ。

クルアチに取ってみれば今は1人にして欲しいかも知れないが、

逆にそうしない方が良いだろう。


最もクルアチの内情を理解できるのは、

長年一緒に働いて来たイルマしかいないからだ。

自分が一緒に居てやっても主人と奴隷の関係性であり、

何か声を掛けてやろうにもただの命令となってしまう。


居間でエミーと話していたナズを自室に呼んだ。

エミーも話を聞きたいかと尋ねると頷いたので、2人共呼び寄せた。


「──で、今はアナがその首謀者の男を近くの大きな町まで護送している」

「そんな事があったのですね・・・。あっ、お怪我などは?」


「イルマが対応してくれたし、何だったら自分で治療できるのでな。ホラ」

「ごごごごご、ご主人様っ!血だらけでは無いですか!

 直ぐにお着換えなさって下さい!エミーちゃん、お湯を!」

「は、はい、奥様」


あー、そういえばドワーフに腹を貫通させられたっけ。

鎧・・・と言うかミスリルジャケットの下のシャツは血だらけであった。

それをまくって見せてしまったものだから、

ナズもエミーも驚いて飛び出して行ってしまった。


怪我をしても治療すれば無傷、しかし血の跡は残る。

気が高ぶっていたせいで、すっかり自分の状態など失念していた。

装備も血糊で汚れているが、返り血を浴びただけだと思われたのだろう。


手入れもしなければいけないし、一先ず風呂場に移動した。


「おーい、ナズ、湯は要らない、自分で出すから!

 その代わり洗ったりするのを手伝ってくれー」

「かっ、かしこまりましたー。エミーちゃん行きますよ?」

「はい・・・」


居間の前を通り過ぎる際に、2人に助力を頼んだ。


たらいを3つ並べてぬるま湯・ウォールを出す。

ミスリルジャケットや竜革のブーツを脱ぎ、それらはナズが軽く濯ぐ。

身に着けていた衣類はかなり血でべっとりと濡れていたので、

エミーはそれらを受け取り乱雑に濯いで血をある程度落とした後、

別のたらいでもう一度濯ぎ出した。


うーん、たらい3つじゃ足りんな。


「ナズ、エミー、一旦空けてくれ。新しいお湯を出す」

「そうですよね、流石にこの量の血では」

「はい・・・」


自分でも死を覚悟した位のダメージだったのだ。

腹部からの出血は生半可な血の量では無かった。

医療が進んでいるはずの日本でだって、

これだけの傷を負ったら普通は即死だぞ?


即死とは瞬時に死んだ事ではなく、24時間以内の死亡の事を言う。

救急車で病院に運ばれたが、治療の甲斐なく死亡しても即死だ。

一時的に意識を取り戻したが出血量が嵩んだり、

意識混濁のまま戻って来れずに死亡しても即死なのだ。


衣服は新しいお湯に浸かり、元の白い色のシャツに戻ったようだ。

以前ジャーブが補修してくれたシャツに、再び大きな穴が空く。


「ジャーブさんに頼んで、また直して貰いましょうか」

(こくこく。)


エミーもジャーブの裁縫の腕前を知っている。

彼女が身に着けているシャツやベッドシーツは、

ジャーブが赤い糸で刺繍を付けていた。

その他にもヴィーやパニの服の袖や裾を直したり、

エミーのエプロンの丈調整もジャーブがやったのだそうだ。


意外とやるなぁ、あいつ。


洗濯を終えたエミーは自分の着換えを持って来ると、

入れ替わりに洗濯物を干しに出て行った。

風呂場でナズと2人に残される。


先程荒野で待つ間に使用した例の椅子は、

盗賊たちを運んだ時点で持ち帰って来ていた。

その椅子に目を向けると、

ナズは察して少し恥ずかしがりながらその1つを持って来た。


「お、お疲れのようですので、

 少しだけご主人様を癒して差し上げますね?」


「だっ、だからご主人様じゃなくってだな」

「だ、旦那様です・・・けれど、いいじゃないですか!

 私に取ってはずっとご主人様ですっ!

 ずっとお傍に居てお仕えしたい、大事な・・・大事なご主人様です」



  ***



ナズの献身的なご奉仕を受けた後、

洗濯されていた綺麗なシャツを着て、

納屋に石化のまま放置していた盗賊を風呂場に連れて来た。

そして印刷を頑張っているジャーブの手を止めさせ、ナズと交代して貰う。


一応ジャーブには装備を身に付けさせた。

騎士なのでな?

逃げられんぞッと言う事で。


「ジャーブ、インテリジェンスカードの呪文は知っているか?」

「ええっと、滔々(とうとう)流るるたまの意思・・・ですかね」


「おお、そうだ。良く知っているな」

「ええ、当然です。どこにいたって何をするにしたって聞く呪文ですし、

 基本的に皆知っているかと思います」


まあ、そうか。

宿屋や税金、騎士団を頼れば本人の身分確認にと、

いつだってインテリジェンスカードは生活に付き纏う。

そういう世界だ、この世界は。


「では盗賊の1人を奴隷に落とすので、お前が操作しろ」

「ええ!?よっ、宜しいのですか?

 お・・・俺自身が奴隷なのですが、そのような事ができるのでしょうか」


「奴隷は別の奴隷の主人に成れないだけで、

 ジョブの効果を発動させるのはできるだろう?」

「そ・・・そういう物ですかね、やってみます」


盗賊の口に万金丹を押し込んで潰し、再び石化を解除した。


「・・・くっ、ぶはぁ・・・」


「すまんな?石化は苦しかっただろう。

 もう荒っぽい事は無いので安心しろ」

「xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx」


あー、人間語。

イルマかクルアチかラティ。

うーん、消去法でイルマしかない。



   ***



「石化は苦しかっただろう。もう荒っぽい事はしないので安心しろ」

「xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx」


「xxxxxxxx?」

「ここは何処かと聞いています」


「とある騎士の家だ。お前は今から奴隷に落とされる。

 新たに決まった主人の元で精一杯仕え真っ当に働いて暮らせ。

 奴隷が主人を裏切ったら、次こそ処刑は免れないからな」

「xxxxxxxxxxxxxxxxx、xxxxxxxxxxxxxx」


「xx・・・、xxxxxxx」

「判ったと言っております」


「なあに、元盗賊の奴隷と判ると扱いは酷いだろうから、

 なるべく良い待遇で扱って貰えるようにしてやる。

 お前が正直に話さなければそれで良い」

「xxxxxxxxxxxxxxxxxx。

 xxxxxxxxxxxxxxxxxx、xxxxxxxxxxx」


「xx、xxxxx・・・・」

「感謝を述べております」


「戦闘奴隷として迷宮で戦って働くか、

 労働奴隷として荷役や家事仕事をするか、

 農奴として家畜や畑の世話を行うか。

 ・・・一応希望は聞いて置いてやろう。

 売る場所に依っては多少要望を叶えられるからな」

「xxxxxxxxxxxxxxxxxxx──」


「xxxxxxx・・・xxx。

 xxxxxxxxxxxx。xxxxxxxxxxxアスルタン」

「労働奴隷か戦闘奴隷が良いそうです。

 アスルタンの村はめて欲しいそうです」


身内に買われるのは流石に嫌だろう。

その村の者を殺したのだし、逆にいびり殺されても文句は言えない。

戦闘奴隷か・・・。


アナは以前、戦闘奴隷は生死が常に付き纏い、

人生は完全に主人の意向で左右されるのだといった。

その上で農村で働いていた方がまだ良かったのだとも述べていた。

この男が同じように考えるかどうかは判らない。


実は戦闘に向いていて、楽に生活ができるようになるかもしれない。

強くなれば頼られ、昔より生活の質は良くなるかもしれない。

そこは何とも言えない。


それに、戦闘奴隷として売却するのであればこちらは都合が良い。

トラッサやホドワの商館には何度も世話になっているし、

強い戦闘奴隷を提供すればあちらも喜ばしい事だろう。


丁度クルアチを育てたいと思っていた。

丁度イシャルメダも育てたいと思っていた。

一般市民と言えどもアイテムボックスが使用できれば便利かろう。


それからこの捕らえた盗賊の男は冒険者にして売ってやろうか。

その方が高く売れるし、重宝されて生活もある程度保障されるだろう。


ついでだよ、ついで。


しかし当のイシャルメダは商館に行ったまま帰ってきていないし、

今はパーティに入れる事ができない。

育成するにしても明日以降だ。


「ではジャーブ、やってくれ」

「はい、滔々(とうとう)流るるたまの意思、脈々息づく知の調べ、

  インテリジェンスカード、オープン!」


(ええっと、これでどうするんですかね?)

(ばっ・・・見れば解るだろ?奴隷登録だ)


(は、はい・・・・・・・・・しました。どうでしょうか)

(ん、バッチリだ)


  ・ハンダール  男  23歳  人間族  村人  Lv2


「ではお前を戦闘奴隷として、暫く自分が預かる。

 ある程度強化したら商館に売るのでそれまではここで過ごせ。

 後で食事と寝るための敷布を持って来よう」

「ええ!?この男を?宜しいのですか?」

「xxxxxxxxxxxxxxユウキ。

 xxxxxxxxxxxxxxx

 xxxxxxxxxxxxxxxxxxxx」


「xxxxxxxx」

「分かったと言っています」


「じゃあ見張りは頼んだぞ、ジャーブ。

 それから、何か聞かれても余計な事は教えなくって良いからな。

 その前に言葉が判らないか」

「か、かしこまりました。そうですね、

 人間語は判りませんので、俺が何か喋るような事は無いと思います」


あー、それより騎士に向って命令をしているのだから、

自分も騎士か或いは貴族か、地位の高い人物だと思われたに違い無い。

別に売却するし、まいっかの精神である。


一応見張りを立てては置いたが、ジャーブだけでは不安である。

もう1人は・・・クルアチかな?無理かな?

そしたらアナだろうな。

落ち着いたら2人で交代だな。


居間に戻りこれから調理を始めるであろうナズとエミーに、

1人分のスープを追加するように指示をした。


居間の椅子に座るクルアチをナズとエミーが取り囲んで慰めていが、

まだまだクルアチは情緒不安定のままであった。


彼女の両親を殺したのは親族であった。

彼女の村を壊滅させたのは村の者だった。

一体どれだけの精神負担が掛かっているのだろうか。

日本と言う温ま湯で育った自分には、その闇の深さは測り知れない。


思い出したかのようにクルアチは再び泣き出した。


このままでは仕事にならないし、ここに居ても邪魔だ。

ナズとエミーは食事の準備がある。

かといってクルアチの自室は半分作業場としてしまったので、

今はラティ達が一生懸命製本作業をしている。


うーん。


「イルマ、クルアチを2階の自分の部屋に連れて行け」

「ええっと、クルアチの部屋は1階では」


あー、普通自分の部屋と言うとクルアチの部屋と言う意味だ。

自分が言う自分とは1人称で自分を呼ぶ際の自分だが、確かに混乱する。

元々自分は俺とか僕っ子では無いので、指示する際は注意が必要だ。


「ええっと、イルマの部屋だ、そこで休ませてやれ。

 クルアチの部屋で泣かれると製本作業に支障が出るだろう?」

「よ、宜しいのですか!」

「ご主人様がそうしなさいと仰るのですから、宜しいのですよ?

 行きましょう?クルアチさん」


ナズとイルマに手を引かれながら、クルアチは2階へ上がっていった。

その後ややあってナズが降りて来て、エミーと2人で夕食の準備を始めた。


「今日は自分がパンを買って来よう。

 ヴィーも製本作業を頑張っているみたいだし」

「ありがとうございます。

 では、もしヴィーちゃんが来たら伝えて置きますね」


こういう時はトリアの揚げパンである。


ヴィーだとホドワでしか買えないので、

フワフワのちょっと良いパンか、ミニパンかどちらかと言う事になる。

あっ、パニに頼めばトリアでも買って来て貰えるのでは?

そのうち指示して置こうかな。


パンを買い、テーブルに並べて置く。

いつもここから食べ易いサイズに切ってくれるので、

ひとつを抜き取って別の皿にした。


「この1つは捕らえた者の分なので、スープと一緒にしてくれ」

「かしこまりました」「・・・分かりました」


「それで、アナさんはいつ頃帰って来るのでしょうか?」

「一先ず言う事を聞かなかった男を最寄りの村に運んでいるので、

 それが終わり次第だと思う。・・・あ」


リオリックの村に着いたとしても、そこには冒険者がいない。

そこからラウラニまでは半日以上の時間を費やすはずだ。

どれだけ無理を言って馬車を走らすように頼んでも、

今日はリオリックが精一杯と言う事になる。


相手は御者ではなく、村人・・・一般人だ。

無理は言えない。

どうしたってリオリックで1日足止めをされる訳で。


「その後を考えていなかった。アナを迎えに行って来る」

「そうなのですか?行ってらっしゃいませ」

「行って・・・らっしゃいませ・・・」


リオリックの村の中にあった家の壁にゲートを出す。

パーティは組んでいるので、アナが周辺に居れば判るはずだ。

キョロキョロと見回すと、民家の中にその人影が映った。


慌てて向かうとその家の扉が開いてアナが出て来た。


「旦那様、お疲れ様です。お迎えでしょうか?」

「あ、ああ。済まなかった。

 今日ではラウラニまで運ぶのは難しいし、

 どうしたってここで足止めになるよな」


「はい、その事で荷馬車を出すようにお願いした村の方が、

 この家で休んでも良いと仰って下さいました。

 ブラヒム語が話せる方で助かりました」


荷馬車を持っているのだから、他の町で売買をしたりする者だ。

言って見れば、この村の御用聞きの仕事をしている。

と言っても商人では無くって御者もまた村人であった。


アムル程に大きな「町」では無いので、

買い出しにも行くが村の仕事もやるのだろう。


自分もその家の者に礼を言って、

明日またガルガムを隣り町まで運んで貰うようにお願いをした。

追加の銀貨5枚を払うと、やはり喜んでとの事であった。


この村は何度か盗賊の襲撃を受けたらしい。

ガルガムに付いては見た事が無いと言っていたので、

やはりこの男は裏方だったのだろう。


どこまでこの男は働かないのか!

狡猾で残忍かつ怠惰で卑怯な奴だ。


この男はその盗賊団の副頭目で、件の盗賊団は壊滅させた事、

この後サンサダールまで運び、騎士団に突き出す事を説明すると、

この家の家族からは感謝され、銀貨5枚は返却を受けた。


明日、村の長からお礼をさせるとの言葉を頂いたが、

自分達もその必要があってやった事だと説明し、お礼は断った。

代わりにこの村の者が責任を持って騎士団へ突き出すとの事だったので、

後はリオリックの村の方々にお任せをした。


「それじゃあ、アナ。面倒事は終わったらしいので帰ろうか」

「あ、はい。かしこまりました。旅費を返却致します」


結局銀貨15枚が帰って来た。

この町から戦場となった坂までの往復代5枚分は、

それでもきっちり取られたのであった。


まあしょうがないよね、こちらさんも生活が掛かっているんだから。



  ***



「ええっ!?それではクルアチさんは、

 あのタロスと同じジョブに就かれたのですか?」


夕食後、自室でナズとアナ2人と過ごしている最中に、

今後の育成計画を話した。


彼女が取得した英雄の取得条件や今後の迷宮での活動、

この先パーティの主力になって貰う予定などを共有する。

クルアチの家族の事や村の事、

結局自分の奴隷として今後も面倒を見る事なども説明した。


ナズが最も驚いたのは、今説明した英雄のジョブの事である。

勿論アナも驚いていたが、この娘は驚きを表情に出さない。

その代わり尻尾を見るとピンピンに張っていた。

興味がそそられ、緊張している様子が窺える。


「以前ナズは、自分が瞬間移動していると言っていた事があったよな?」

「え、ええっと、今でも良く戦闘中はいつの間にか位置が変わっていたり、

 2重になって見えているような気が致します・・・」

「ご主人様が使っておられたスキルが、

 その英雄と言うジョブのスキルなのですね?」


「ああ、今はその1つ上のジョブに就いているので、

 さらに効果が高いスキルを使っている」

「あの・・・ご主人様はやはり・・・」

「この際ですからお聞き致します。

 私達は色々相談を重ねた結果、

 旦那様はやはり神に近しい方だと言う結論に達しました。

 旦那様はご否定なさいますが、全ての行いがこの世の方とは思えません」


アナが先陣を切って食い掛かって来た。


ずっとこれまで聞きたくても聞けなかった事だったのだろう。

立場が奴隷では無く一般人になった。

いや、自分の妻となったのだ。

隠し事はもうできない。

何なら隠す必要だって無いのかもしれない。


良いさ、全部話そうか。


ここの世界に来た理由、ナズやアナを選んだ理由、

この世界で何をしたいか、何を目標としているか。


・・・あ、人を見る目に付いては嘘なのでちゃんと白状します。

許して下さい。


「わ、判った、ちゃんと話そう。

 いや、いつかちゃんと話そうとは思っていたんだ。

 だけどその前に今日はナズの歌の日だからな。

 明日で良いだろうか?」


「明日・・・ですね?」

「明日ですね」


言質げんちを取られ、何やら弱みを握られてしまったような気がした。

今更、内密にな?では済まされそうもない。†


「それから今日はクルアチがあんなだし、

 元盗賊の奴隷を預かっているので見張りが必要だ。

 ヴィーとパニ、ラティとイシャルメダを行かせるが、

 ジャーブとイルマの分のタコスはお持ち帰りにして貰ってくれ。

 今晩は見張りをお願いしたので、夜食に出してやりたい」

「かしこまりました。ごしゅ・・・旦那様とアナさんはどうしますか?」


「どうする?アナ。一応行って置くか?」

「何かあっては困りますので、私は見張りを補佐します」


「だそうなので、自分だけだ。後で皆と徒歩で向かう。

 3人分のタコスをお土産に包むようにお願いしてくれ」

「かしこまりました、リアナさんにそう伝えて置きますね」


ナズは服を着て髪を整えると階段を下りて行った。


クルアチは夕食をパスして自室に戻っている。

一応イルマを傍に付けていたが、ナズが出て行くとイルマが戻って来た。

もう落ち着いているらしく、安心して良いとの事だ。


イルマが来た事で、アナは後をイルマに託して見張りを交代しに向かった。

自分も計画を進めるためにアナの後に付いて行き、

元盗賊の男には迷宮へ付いて来るように促した。


イルマが居ないと捕らえた男との会話すらできない。


アナとイルマの監視の下、

縄で縛り上げられた元盗賊のハンダールは、

黙ってホドワの迷宮まで付いて来た。


入って直ぐに出て、目的達成だ。

ハンダールはその行為に理解ができていなかったようだが、

迷宮に入れば探索者のジョブ取得条件を満たす。


ド田舎で迷宮に向かう事すら難しい辺境では、

探索者になると言う職業選択の自由も行使できないのだ。

ハンダールは農夫ジョブを取得していたが、

農夫ギルドにすら入れて貰えなかったのだから、

もうなんて言うか村八分?


いや、農夫ギルドに加入するための試験などがあったとして、

それにパスできないような無能だったのかもしれない。


と思って本人に聞いた所、村には農夫ギルドなんて無かったそうだ。

そもそも農夫と言うジョブすら知らない様子であった。

無能は村の方かよ。

そりゃ村が悪いよ。


農夫のジョブに就かないとパラメーター調整が行われないのだと思う。


探索者の取得についてはアナにトレーニングさせて、

正規の手段でクリアさせようか。

この男、特段無能とも思えなかったので。

∽今日のステータス(2022/07/08)


 ・繰越金額 (白金貨29枚)

     金貨 34枚 銀貨 75枚 銅貨 93枚


  交通費               銀貨20枚


  パン代                (70й)

   揚げパン × 7           70


  釣銭返却             ▲銀貨15枚


            銀貨- 5枚 銅貨-70枚

  ------------------------

  計  金貨 34枚 銀貨 70枚 銅貨 23枚



 ・異世界97日目(15時頃)

   ナズ・アナ92日目、ジャ86日目、ヴィ79日目、エミ72日目

   パニ65日目、ラテ44日目、イル・クル41日目、イシャ15日目

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― 新着の感想 ―
それなら普通に食ってく為に売られる人を育てて売ればいいのでは? 慈善活動し始めたりと思ったら、盗賊育ててチャンスあげるとか何がしたいのかよく分からない。
直接関わってないとは言え自分の村滅ぼした盗賊の一味を、 情緒不安定になってるクルアチと同じ家に住まわせて育成までしようとかイカレ過ぎだろ 頭おかしいにもほどがあるわ
本文) >ヴィーとパニ、ラティとイシャルメダを行かせるが、 > ジャーブとイルマの分のタコスはお持ち帰りにして貰ってくれ。 クルアチはともかくエミーは連れて行くのでは? (誤字報告)
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