§204 宝籤
「さて、私達はこれで帰りますが、ユウキ殿はどうされますかな?」
契約手続きを依頼したシラーは、その役目を終えたので帰るようだ。
「私どもの仲間が札を換金せねばならないのでここに残ります」
「それもそうですな。では私どもはお先に失礼させて頂きます」
「シラー殿も札を買われたのでは?」
「そういう事は他の者にやらせておりますので。
ユウキ殿もお任せして置いて良いのでは?」
「うーん・・・。
いや折角なので、手に入れた奴隷のドレスでも買って帰ろうかと」
「そうですか、それでは我々はこれで。
騎士殿も、お世話になりました」
「うむ」「ああ、気を付けて帰られよ」
シラーはお抱えの冒険者と共に、ジトミールを連れて帰ろうとした。
「あーちょっと待った、シラー殿。これで彼に良い食事を」
「褒賞ですか。確かに、受け取っておきます。それでは」
ジトミールは一礼して帰って行った。
このまま騎士団を後にしても良いが、
その場合はあの観衆たちの前を横切って行かねばならない。
大損をした者が多そうだし、金を返せと凄まれても困る。
換金はしたいが、やはりそれはジャーブに任せるとして、
自分たちの中には冒険者がいない。
つまりこの控室から直通で帰る訳には行かないのだ。
先程のシラーの提案を受けて置くべきだった。
さっきはそこまで考えて声を掛けてくれたのだ。
しまったなあ・・・。
「ルスラーン隊長殿、外の騒ぎが収まるまで、
この部屋を借りても宜しいですかね?」
「ああ、まあ構わんよ?」
「ではありがたく、暫くここに留まらせて頂きます」
「うむ、それでは私は他の仕事もあるのでこれでな」
「はいっ、今日はありがとう御座いました!」
「なあに、礼には及ばん」
手をクイクイやってから他の騎士を連れて出て行った。
さて、現在この部屋にはナズ、アナ、エミーの他に、
イルマと知らない女奴隷がいる。
先程インテリジェンスカードを見たが、誰だったか覚えていない。
興味は薄かったので。
「名前は?」
「申し訳ありません、彼女はブラヒム語が解りません。
他の言葉でお願い致します」
イルマが割って入って来た。
他と言われても、自分が理解できる言語で通じないとなると、
これ以上は何も話せない。
「では済まないが、イルマ、通訳してくれ」
「はっ」
「名前は?」
「xxxxxx」
「xxxxクルアチ」
そうだ、さっき見た時は確かにクルアチだった。
名前位ならば鑑定すれば良かったかもしれない。
それよりも文の最後に名詞が来るような言語体系なのだろうか?
マイ、ネイム、イズ、クルアチ。
それなら英文と同じSVCだ。
日本語であるならば最後に助詞が付くので「クルアチです」となる。
「種族は?」
「彼女は兎人族です。このように、耳が長いです」
イルマがクルアチの頭の後ろに畳まれた耳を上へ伸ばしてみせた。
イルマやエミーは狼人族なので、
頭の横に付いた耳はそのまま横へ垂れ下がっている。
クルアチと名乗った女性の耳は後ろ側へ折り畳まれ、
伸ばすとピンと斜め上に伸びた。
兎人族・・・と言うならば兎人間だと思うが、
よくあるファンタジー的な兎耳娘とは異なり、
その耳は頭の真上にピンと立っていない。
尤もそんな生物がいたらハッキリ言って行動の邪魔だし、
見付かり易くて生命が脅かされてしまうだろう。
この世界のウサミミは耳こそしっかりと長いが、
獣の兎のように違和感無く斜め後ろへスラッと流れていた。
確かに、迷宮へ入って戦うような世界なのだ。
動き難かったら種の存亡に関わる。
頭の上だけ弱点丸出しなんて訳には行かない。
「では彼女は暫く商館に通わせ、ブラヒム語を覚えて貰おう」
「xxxxxxxxxx。xxxx、・・・『ありがとうございます』」
「xxxxx!アリナトソゴアマス」
クルアチは頭を下げた。
勉強のため商館へ通う事が良い事なのか悪い事なのか、
自分にはその判断ができかねる。
ヴィーは本人の生活向上の為であって、
本人もその方が良いと理解し勉学を励んだ。
クルアチはどうだろうか?
屋敷で仕事だけして暮らしていれば楽だったが、
この主人は勉強をしろと言う。
大変な事を要求されそうだと怯えるかもしれない。
自分だってもう一度受験勉強しろと言われたら断りたい。
人間族語は学びたいが。
「それから、ボルドレックから薬を飲まされなかったか?」
「xxxxxxxxxxxx?」
「xxxxxxxxxxxx」
「飲まされていないようです。私は飲まされました、こちらです」
イルマは口から丸薬を吐き出して渡して来た。
飲み込まずに口の奥へ溜めていたのだろう。
噛んだ跡があり、その薬はやや潰れていたがまだ何とか原形を留めていた。
アイテムボックスには・・・良かった、入るようだ。
「偽るように言われていないだろうな?
その薬を飲んだまま放って置くとお前が死ぬからな?
その場合は責任を取れないぞ」
「xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx」
「xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx
xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx」
「大丈夫のようです。飲まされたのは、私とイェーラ様です」
かなりの長文の問答があったようだ。
そうだ、あの爆ぜた女はイェーラと言う名だった。
済まんな、ボルドレック。
お気に入りの女を爆死させてしまって。
しかしそれはお前が自爆玉を盛ったせいであって、
身代わりのミサンガが有効であっても反射で死んでいたぞ。
「そうか、先程あの女を選ばなくて良かった」
「何故私だけでは無くクルアチまでお召しになられたのでしょうか?」
「あー、それは後からアナに聞いてくれ。それよりも妹だ」
自分の後ろで控えめにしているエミーを見た。
恥ずかしそうにモジモジとしているが、
喋らないし何を考えているのか窺い知れない。
折角の対面なのに、駆け出して抱き合うとかしないの?
「妹と再び会わせて頂き感謝をしても足りませんが、
その上再び一緒に生活ができるよう手配して頂き、言葉もありません」
にしては冷静だよ、君たち。
主人がいるから?
妹の事をどう思っているんだ?
ああそうか、ボルドレックの前ではできない事だったのだろう。
良いよ、自由にやってくれ。
イルマの腕を掴んで引き寄せ、逆の手でエミーの腕を掴んで引き寄せる。
お互いの手を抱き合うように絡めさせ、その上から自分が抱擁した。
「唯一の家族じゃないか。
これからはもっとお互いに助け合って生活してくれ」
「あっ、あの、はっ・・・はぃ・・・・ぐすっ・・・」
イルマの涙腺が崩壊したようだ。
ボロボロと涙を零す。
立ちっぱなしも可哀想なので、そのままソファに押し倒した。
後は好きなだけ感動の再会とやらをどうぞだ。
自分はナズと先程の続きをしたい。
「ナズ、お前はこっちだ」
「は、はいっ!」
「アナもな?」
「かしこまりました」
こちらは3人で抱き合う。
クルアチは困惑しながらその様子を眺めるだけだった。
仕方あるまい。
ボルドレックから主人が代わった所で、
この新しい主人が何を命令するかは未知数なのだ。
この若さであの屋敷に奉公していたのだから、
初めての主人がボルドレックであるのだろう。
他の主人がどうであるか知る由も無いし、
自分の性格だって知っている訳が無い。
イルマとは何度もエミーの件で交渉をしたので、
自分の人となりはある程度理解しているのだと思う。
しかしクルアチにまで自分の人物像を伝えている訳が無い。
本来であればボルドレック側の者、自分の敵であった訳なのだし。
まあその辺りはゆっくり覚えて貰えば良いだろう。
あ、そういえばルスラーンも騎士もいなくなったのだし、
これ勝手に抜け出しても良いんじゃ?
「では早速イルマに仕事を与える」
「はい、何でしょうか」
「今からドレスを買いに行くので、お前とそのクルアチの分を選べ。
それから替えの下着や生活用品として食器や寝具を買う」
「かしこまりました。xxxxxxxxxxx」
「xxxxxxxxxxかてぃこまでぃまた」
ほう?何だかインチキ外人みたいな日本語・・・、
いやブラヒム語が返ってきたが、
頑張ってくれそうな気がしたので良しとする。
要らないし直ぐに売ってしまおうかと思っていたが、
暫く手元に置いて様子を見つつ、
頑張ってくれそうなら家の事でもやって貰おうか。
屋敷の奴隷は教育が行き届いていて高級らしいし。
パーティには現在ここに居ないジャーブとヴィーが入っている。
ジャーブをパーティから外してしまうと探す時に困難なので、
ヴィーを外したとしてもここに居るのは合計6人だ。
結局2回に分けて移動せざるを得ない。
2度に分けてのワープで全員がこの部屋から脱出し、
ルイジーナの冒険者ギルドに出た。
そこから徒歩でブティックに入り、揉み手の商人に出迎えられた。
「おお!これはこれは。本日もありがとう御座います!
お客様のお陰でたんまりですので、
今日は出血大サービス、1着無料で承らせて頂きます!」
店主の男は指で丸を作ってニヒニヒと厭らしい笑いを浮かべた。
自分に賭けて、勝ったのだ。
見れば解る。
それにこの店で作ったマスクを被せた男が勝った。
大いに宣伝にもなるだろう。
ではその宣伝効果と勝ち馬に乗せてやった事も合わせた報酬として、
1着有難く貰って帰ろう。
「と言う事らしいのでイルマ、1着無料だ。
なるべく高そうな良い服を選べ。それからクルアチにも選んでやれよ」
「かしこまりましたxxxxxxxxxxxxxx」
「xxxxxxxxxxxx!」
「xxxxxxxxxxxx」
「アリガソゴァマス!」
流石お屋敷の奴隷だ。
良い服を着せられる事には遠慮が無い。
自爆玉で爆ぜた女奴隷は良さそうなドレスを着ていたのだし、
そういう事には抵抗が無いのだろう。
下位の奴隷だったアナとは反応が大きく異なる。
女性の服選びは長そうなので、その間に他の買い物をしよう。
「ではゆっくり選んでくれ。自分達は家具と雑貨を買いに行く」
「ええと?そのような物を含めて私たちの仕事では・・・」
「イルマ、このご主人様は殆どの事をご自分でなさいます。
遠慮は無用ですので、言われた事だけをお願い致します」
「は、はあ・・・」
アナの補足に助けられる。
流石一番奴隷の風格。
ナズも一番ではあるが大人し過ぎる。
アナは根っからの奴隷であるので、
一番奴隷たるものがどういう立場かを解っている。
その上で威張り散らさないし面倒見が良く、優しい。
「ではナズは家具屋に行ってベッドと箪笥、
椅子2脚と2人掛けの机2つ、それから棚を注文してくれ。
代金は金貨2枚もあれば足りるだろう」
「かしこまりました。棚と箪笥以外はお2つですね」
「アナは体を拭く大きな布、それからベッドに掛ける物と合わせて4枚、
替えの下着2着ずつと、自分達が使っていたような食器を」
「かしこまりました」
「あー、ちょっと金貨がもう心許無いので、済まないが銀貨で」
「問題ありません」
まあどうせこの後自分へ賭けた金が帰って来る算段なので、
銀貨の金袋ごと渡してしまっても良かったが、
残りが金貨1枚と言うのも何かあったら困る事になる。
銀貨50枚を金袋に入れてアナへ渡した。
多分雑貨程度でこんなに使わないだろうが、
余ったら皆の小遣いとして共有して貰えば良い。
大工のウッツの家付近へ3人で移動した。
自分はウッツと改修の相談だ。
これだけ人が増えたのだから、絶対部屋が足りない。
家を建て替えるべきだ。
あの家は現在1階建て。
これを2階建てにして貰い、もう少し快適に生活したい。
何せ賭けた金がたんまり(略)。
2人と別れ、自分はウッツを訪ねた。
「こんちゃー」
「親方ならいないよー」
「ありゃ、そうなのか。何時頃帰るかな?」
「ええとそうだなあ・・・ルイジーナまで決闘を見に行ってるから、
終わったら帰って来るんじゃないかなあ」
そうだった、ウッツもナズの関係者だ。
と言うかこちら側の人間だ。
酒場であれだけ盛大に騒いだのだから、
あの連中は皆見に行っただろうし、自分に賭けただろう。
大勝ちしたので負けて・・・無理かな。
自分も儲かっている事は解っているだろうし、
逆に吹っ掛けて来そうでもある。
賭けて勝ったと言う事は、賭け札の換金をしてから帰るのだろう。
と言う事であればもう暫くしたら帰って来るだろうが、
それは今直ぐでは無い。
それよりもこの男は弟子では無いらしい。
初めて見る顔だ。
服装を見るに下男でも無いし、作業服でも無い。
留守を頼んだ別の人なのか?
「はぁー」
「ありゃ、急ぎの用事ですかい?」
「い、いや、そういう訳でも無いんだ。家の建て替えをお願いしにな」
「おっ、そうですか。景気が良い話で羨ましいねえ。
それで、どこの家で?」
「ええと、21の321だっけ?」
「はい?」
「いや、外2区の13の2の1」
「はいはい、了解っす。
親方帰って来たら伝えますんで、家で待ってて下さい。
昼過ぎには戻って来ると思いますんで」
昼・・・そうだな。
今日はエミーを連れ出してしまっているので、昼食の準備が無い。
パンを買って、適当に肉を焼くか。
ミンチにしてトマト、葉物を挟んでハンバーガーで良いかな。
こういう時はファストフードに限る。
自分でなければできない仕事が無くなってしまったので、
暫くどうしようかと悩む。
そういえばジャーブ達を戻さないと。
250万ナールも賭けたのだから、その報酬は多分かなりの物だ。
持ち切れないとか、額にビビるとか、そういう事が起きないとも限らない。
高額では奴隷に払い戻しさせない可能性もある。
持ち逃げしたら・・・盗賊か。
流石にそれは無い。
しかし他人に持って行かれる可能性はある。
何と言ってもあのジャーブだし。
そういえば冒険者のジョブを取得したのだった。
これからはワープでは無くフィールドウォークで飛べる。
フィールドウォークで無ければならない状況の方が限られているが、
折角得たのだし使ってみよう。
ジョブを冒険者にセットし、詠唱省略を切って呪文を詠唱してみた。
ええと何だっけ、(フィールドウォーク!)・・・これか。
心で念じると呪文が浮かび上がった。
難読漢字では無いので助かる。
それに何度か聞いた事がある呪文だし、今更解らない事は無い。
「回顧に巡る行程を、共に目指さん行路の先を、
フィールドウォーク!」
──ヴォン!
ワープと全く区別の付かないゲートが出現し、
くぐるとルイジーナの冒険者ギルドに出た。
・・・ふむ。
わざわざ使う程の事も無かった。
そもそもジョブを冒険者にしなければならない面倒さがある。
この所ボーナスポイントも増えて来たので、ワープは付けっぱなしだ。
ジョブ一覧からジョブを探すより、ワープを選択した方が早いまである。
冒険者は・・・その上のジョブがあるかどうか不明だが、
現状に於いて何もメリットを感じられなかった。
封印かな。
上位職である魔道士のスキルが中級魔法であるので、
更にその上のジョブがある事は間違い無いのだろうが、
フィールドウォークの上位スキルと言う物が想像できない。
ワープのように、地上と迷宮を行き来できるようになるのだろうか?
しかし原作者の話ではボーナススキルを持つジョブは無いらしい。
遮蔽セメントのような妨害物は飛び越えられない劣化ワープ?
うーん・・・それでもそんな便利なジョブスキルがあれば、
たちまち噂になっていないだろうか。
冒険者に成る者は多いのだし、冒険者は迷宮で稼ぎ易い。
Lv50なんてあっと言う間だろう。
その上のジョブに就いている者が居てもおかしくはないと思うのだが。
そうでは無い所を見るに、
逆にその上のジョブは制限があったり、
使い勝手が悪かったりするのだろう。
例えば壁を目標としなくても使用できるようなゲートポータル。
但し消費量がエグイとか。
高度なスキルはその分MP消費量も大きくなる可能性は高い。
便利そうに見えるが長距離大量輸送に向かないんじゃあ成り手も無いわな。
そんな事を考えながらルイジーナの騎士団前まで歩いて来た。
仮設の詰め所は払戻金を受け取るカウンターになっており、
盗難が無いように1人ずつ区切って金の受け渡しを行っているようだ。
列はあるものの、購入時のような長蛇では無い。
購入者が少ない、或いは払戻金が高額であれば、
顔を覚えられたりする事はリスクとなり得る。
ある程度の金持ちならば金銭的な余裕もあるし、
混雑を避けて人がいない時間にするのだと思う。
ジャーブ達は・・・。
こういう時に便利なパーティ機能だ。
影を頼りに向かっていくと、列の後ろの更に向こうで3人とも集まっていた。
「ご苦労だったな、ジャーブ。札はどうなった?」
「ユウキ様ですか、お疲れさまでした。
言われたように250万ナールをユウキ様へ。
既に換金済みで、ラティ殿に持って貰っています」
失敗から学んだのか、安全に保管できるラティへ任せるのは正しい判断だ。
自分とジャーブ、ヴィーがラティに向けて注目する。
「えっ、あっ、は、はい、今お、お出しします」
ラティはアイテムボックスを詠唱すると、
手掴み1杯分の金貨を掬い挙げて渡して来た。
この枚数ともなると数えるのが大変だ。
後でゆっくり数えるとして、まずは全部こちらに渡して欲しい。
両手の平を皿にしてジャラジャラと受け取る。
賭け金が幾らになって帰って来たか判らないが、これは端数なのかな?
商人ギルドでは釣銭があれば10枚ごとに紙巻で渡してくれていたのだが。
続いてラティは再び手掴み1杯分の金貨を取り出し、自分の手皿に乗せた。
先程の金貨と合わせて両手から零れそうな程になる。
「いっ、以上になります・・・」
うん?
白金貨はどうなった。
250万ナールも賭けたので、
端数の金貨がこの量ならば、白金貨を4枚位は返却して欲しい。
これで以上と言われても困るのだが。
白金貨2枚分、200万ナールどこに行った?
「白金貨を出したはずなのだが・・・」
「でっででですので、さささ最初におわ、お渡しし(ました・・・)」
ラティがブルブルと震える。
最初に?
貰った?
ハッと手元に乗せられた金貨を見比べると、確かに上と下で色が違う。
最初に白金貨だけを見せられたので、輝く光に依って金貨と勘違いした。
最初に乗せられた金貨は全て白金貨だった。
自分のアイテムボックスを開き、
纏めて全部をバサッと入れると確かに2つの枠へ別かれて収まった。
何枚あるかは判らないが、ともかく手で掴む位の枚数がある。
白金貨8枚どころか、これでは大富豪では無いか。
もうリタイヤOK?
迷宮すら行く必要が無いかもしれない。
勿論やる事が無さ過ぎて暇になっても困るし、
ジョブに関しては一応の目標があるので、そこまでは育てるつもりだが。
宝くじで7億円当たった人の境遇だ。
自分は手放しに喜べる人種では無い。
だらけ過ぎて身を亡ぼした人だとか、
使い過ぎて逆に借金を背負った人だとか、
傲慢になり友人が去って行き、最後は孤独になってしまった人、
それから金を狙われて殺された人の話など、
良くない方ばかりを想像してしまう。
と、ともかく、これは後で有効な使い道を考えるとして、
今は元々持っていた250万ナールを所持金として考えて使って行こう。
泡銭を当てにしてはいけない。
後は・・・封印だ封印。
手に余る金は身を滅ぼすとも聞く。
「でっ、では戻ろう。服屋にエミー達がいるので、
お前たちもついでに1着良い服を買おうか。
ジャーブは持っているのでヴィーとラティのだ」
「えっイイの?」「よっよっ、宜しいのでしょうかっ!」
「良いと言っているのだから早く行って来い。
あそこに見える服屋の看板がある店だ。
既にエミーが居るはずなので、2人とも好きな服を1つ選んで来い」
「わーーーーーぃ」
「きゃっ、あ、あの、はわわわわわわ・・・」
ヴィーはラティの手を引いて一目散にブティックへ駆けて行った。
ラティが振り回されていて愉快だ。
我が家での彼女の立ち位置は決まった。
「どうして女性は服や小物に目が無いんでしょうね」
ジャーブが尤もらしい事を吐いた。
いやしかし、そういうお前はどうなのだ、と。
「エミーに色々貢いでいるのは知っているが」
「そっ、それはですねっ。
彼女の持つ境遇があまりにも可哀そうで、
俺に何かできる事があればと考えましてっ!
ど、同室ですし、そっそれに同族ですっ!
彼女の心が晴れればまた言葉を取り戻せるかもしれませんっ」
・・・早口。
しかも長文だ。
焦り過ぎでは無いだろうか。
うん、まぁ良く解った。
「ほー、ジャーブなりに考えたのだな。
でもエミーの方もまんざらでは無さそうだぞ?」
「い、いえっ、エミー殿はユウキ様の奴隷ですので!
そんな風には考えておりませんっ、本当ですっ!」
「エミーは言葉を取り戻している」
「えっ?」
「既に何度か言葉を聞いた。とても高く、か細い可愛らしい声だった」
「そ、それは・・・本当でしょうか?」
「ああ、ナズも1度聞いている。
後はエミーがどれだけ努力してくれるかに掛っているが、
姉を手に入れた事はきっと良い方へ向くだろう」
「そ、そうですか。それは・・・楽しみですね」
「お前の名を呼んでくれるのが、だな」
「ち、違いますっ。本当です!」
「エミーの病気の方も、何とかなると思う」
「ええっ!?
ユ、ユウキ様は怪我の治療だけでなく、病気まで治せるのですか?」
「正確に言うと、治療する方法を知っている。
実際に治すとなるとその方法は困難を極めるのだが、
エミーを迎えた時からずっとその治療法を準備しているのだ」
「ユ・・・ユウキ様は・・・」
「うん?」
「ユウキ様は神様なのでしょうか・・・。今日の戦いも、物凄かったです。
自爆玉の噂は聞いた事がありますが、本当に相手が爆ぜました。
この目で見るのは初めてです。
2回もお受けになったにも係わらず、
ユウキ様は・・・生きておられます。
それに、あの英雄タロスを倒してしまわれるとは・・・」
「それなんだがな」
ジョブを英雄にセットする。
インテリジェンスカードを開き、ジャーブに見せた。
「なっ!ユウキ様!こっ・・・」
「騒ぐなよ。エミーを治療できたら、お前の嫁にと思っている。
子供を儲けさせ、うちの子として育てよう。
大きくなったら実家に戻してやっても良いんじゃないかな」
「そっ・・・そんな・・・」
「そういう訳だ。ほら、エミーの所まで行くぞ」
・・・・・・
「あっ、ありがとうございますぅぅ!」
自分はエミーのいるブティックへ少しだけ進んだが、
ジャーブはその場で動かず深々と頭を下げていた。
こっ、こらっ!
ここは人が多いし目立つので止めてくれ。
「バカッ騒ぐな!早く来い!」
「は、はいっ!」
***
「おお、これはお客様、お帰りなさいませ。
既にそちらのお2人は服を選ばれたようです。
いかがでしょうか?お2人によく似合う、貞淑そうな服でございます。
それから後から来たお2人のお客様には、
動き易く丈夫な物を選ばせて頂きました。
活気溢れるお2人の力強さをとても引き出しております。
こちらの服はポケットが合計4つも付いておりますので、
冒険者の方に人気の装いとなっております」
お、・・・おう。
長ったらしい説明は困る。
最初に何言ってたかもう覚えていない。
要約しよう、似合ってるから買えって事だ。
「ではその服と合わせて、エプロンをまた1つ。・・・この女に着せたい。
合う大きさの物があるかな?」
「はい、大丈夫でございます。
お客様の考案されたエプロンは大変評判が良く、
常に4つの大きさを揃えるよう準備しております」
ほ、ほう。
そんなに好評なのか、凄いなミチオ君。
君の趣味はこちらの世界で幅広い人たちに受けているらしい。
「ではそれで。全部で幾らかな?」
大丈夫だ、ちゃんと3割引きは付けた。
「ええと、4800ナールのドレスが1着、
こちらは最初にお伝えした通り私どもからお贈りさせて頂きます。
それから4000ナールのドレスが1着、
3500ナールの冒険服が2着と、
追加のエプロンが1000ナールでございます。
合計1万2千ナールの所でございますが、
こんなに買って頂きましたので更に引かせて頂きまして
8400ナールとさせて頂きます」
良いねえ、3割引。
もう1着無料になったような物じゃないか。
早速着せてやりたいが、それにはまず風呂だろう。
ホクホクしながら、全員を家に送った。
∽今日のステータス(2021/12/12)
・繰越金額
金貨 4枚 銀貨 57枚 銅貨 49枚
ジトミールへの褒賞 10000й
家具購入費用(ナズ) 20000й
雑貨購入費用(アナ) 5000й
払戻金 (2500000→31250000й)
250万 ×12.5 3125万й
服購入 (12000→8400й)
ドレス(イルマ) 4800→ 0
ドレス(クルアチ) 4000
冒険服(ヴィー) 3500
冒険服(ラティ) 3500
エプロン 1000
白金貨+31枚
金貨+21枚 銀貨-34枚
------------------------
計 金貨 25枚 銀貨 23枚 銅貨 49枚
白金貨31枚
・公開決闘札相場
ユウキのオッズ 12.5倍(支持率 06.9 %)
ボルドレックのオッズ 1.8倍(支持率 93.1 %)
・掛け金
シラー 500万й (+6250万й)
女将さん 300万й (+3750万й)
ユウキ 250万й (+3625万й)
ウッツ 5万й (+ 62万й)
・異世界57日目(12時半頃)
ナズ・アナ52日目、ジャ46日目、ヴィ39日目、エミ32日目
パニ22日目、ラテ4日目、イル・クル1日目
サンドラッド到着まで4日




