§191 画板
「ユウキ殿は既に4名も当館で奴隷をご購入ですが、
これも一応私どもに課せられた義務でございますので、
申し訳ありませんがお聞き下さい」
「解っております」
「主人は奴隷に食事と住まいを与える義務がございます。
これらが履行されなければ、
権利を停止される事もありますのでお気を付け下さい。
それからラティは初年度奴隷ですので、
今年の冬に掛かる税金は3万ナールとなります。
他の奴隷とは値段が異なりますのでお気を付け下さい」
「解りました、ところでこの国ではどこで税金を払いますかね?」
「ええと、ユウキ殿は別の国のお出でしたかな?」
「ええ、まあ、はい」
「この国でも、所属ジョブのギルド神殿で払えば宜しいかと思います。
特殊なジョブをお持ちの方や所属のギルド神殿が近くに無い場合は、
最寄りの騎士団ギルドでも受け付けております」
「そ、そうですか。自分の生家の町では商人ギルドが無くてですね、
独り立ちしてまだ間も無いので自分で払った事がありませんでしたので」
「左様でございますか。
それでしたらトラッサにも小さいですが商人ギルドはございますので、
そちらで結構かと思われます。
家人全員分を同時に払う事ができますので、
奴隷の分は勿論、ご伴侶やご子息が居らっしゃれば同時に払えます」
「解りました、教えて頂き感謝致します。
それではラティ、行こうか」
「はっ、はい。あああの、な何とお呼びすれば」
「ええとそうだな。女性陣は自分の事を主人・・・ご主人様と呼ぶので、
ラティもそれに合わせてくれるか」
「わ、わ、分かりましたッ!ごっ、ご主人様、でよっ、宜しいですかっ?」
「ああ、それで宜しく。一番奴隷はこの2人だ、粗相が無いように。
この2人に逆らったら明日はミンチになる」
「ご主人様!」
「なりません」
「おー、恐っ」
「ご主人様!」
「冗談がお過ぎです」
「え、えっと・・・」
「ハハハッ、とても良い関係をお築きですな。
ユウキ殿の人となりがよく表れております」
「ところでヨシフ殿の帰りが遅いので、
何かしらギルドにて契約を行っていると思って良いのでしょうかね?」
「おお!そういえば帰ってきませんな!
転職に満たなければそのまま直ぐ帰って来るかと思うので、
これはもしや・・・、そうだとしたらこうしてはいられない。
妻に祝いの支度を頼まなくては。済みませんな、慌ただしくて」
「いえいえ、それでは忙しくなるかと思いますのでこれにて失礼します」
商館を出て旅亭の裏の大木へ回る。
ここならラティが騒いでも何とか凌げる。
トラッサの大岩で騒がれたら絶対注目を誘うだろう。
無詠唱のワープも無詠唱のパーティ編成も、
28歳にもなる大ベテランの前では異次元な存在なのだから。
アナはジャーブを呼びに行った。
同じパーティ内ならばシルエットで居場所が判るのはとても便利だ。
ジャーブの隣にヴィーのシルエットも見えるので、
2人とも一緒に行動しているのだろう。
それもそうだな、ヴィーはこの町に土地鑑が無い。
では3人が戻って来るまで木陰に座って休もうか。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「あ、あの、ナズ様・・・で宜しいのでしょうか」
「えっ?あの、はい。さんで大丈夫ですよ?
ラティさんのような大人の女性に様なんて付けられたら困っちゃいます」
「おおおっ、大人の女性だなんてと、と、と、とんでも無い!
むっ、無駄に歳だけ取った・・・中身の無い寂しい女です・・・」
「そんな事ありませんよ、一緒に頑張りましょう?」
「あっ、あのぅ、ご主人様はどのようなお方なのでしょうか・・・。
さっ、先程一緒にいた方もどっ、奴隷なのですよね?」
「はい、アナさんも私と同じ一番奴隷です。
普通は驚いちゃいますよね?2人も一番奴隷がいると。
私達は分け隔てなく扱って頂けるので、2人とも1番で良いのです。
あっ、何か困った事があったら何でも聞いて下さいね?」
「アッ、アナ様、いっ、いえアナさんでよ、宜しいのでしょうか?」
「はい、アナさんも様付けは困るかと思いますので、さんで大丈夫です」
「え、ええと、ご、ご主人様はここでなっ、何をしておられるのでしょう」
「私達は先程迷宮に入っていました。
ご主人様が商館でのご用をお済ましになる間、
他の皆さんは自由行動になさいましたので、
今アナさんが呼びに行っています。
ご主人様は・・・ご休憩なさっておいでですね、お疲れなのでしょう」
「そっ、そうなのですか。
・・・あ、後何人位おっ、お仲間がいるのでしょうか?」
「私とアナさん、ジャーブさん、ヴィーちゃんの4名が戦闘奴隷です。
その他に、家事をするエミーちゃん、雑役奴隷のパニちゃんが居ます」
「わわわ、私を入れてナッ、7人も奴隷をももも持っているんですかっ!
すすす、すっ、凄いおか、お方なのですね、ご主人様はっ」
「はい、物凄いお方です。特に戦闘は物凄い事になります。
戦闘以外も物凄いので、いちいち驚いてはいけませんよ?
有り得無い事が次々と起こる、不思議なご主人様なのです。
びっくりして騒いだりするととても怒られますので、
そこだけは注意して下さいね?」
「えっ、ええっと・・・」
「ご主人様は目立つ事がとてもお嫌いですので、
騒いだりして注目を集めますと、お叱りを受けるかもしれません。
逆に上手く人目を引かないよう立ち回りますととても褒めて頂けます」
「は、はあ・・・ふっ、普通の方とは逆ですね・・・」
「そこがご主人様の素敵な所です!
以前ラティさんのパーティを助けた際も、
大急ぎで助けに向かわれましたが、
その後は目立つのが嫌だからと仰られ、直ぐ立ち去る事になりました」
「や、やはりあの時は偶然通り掛かったのでは無く、
わっ私達を助けるためにやって来たのですか!」
「私たちのパーティには魔物や人の気配を感じ取る事のできる、
凄い方がいるんです。
ラティさんのパーティが魔物の部屋で人数が減った事を察知されまして、
それをご主人様に報告をなさったのです」
「そ、それでは私達を助けて頂いたのは、ごっ、ご主人様とその──」
「アナさんです」
「ええっと、さっ、先程一緒にいた猫人族のかっ、方ですか?」
「はい。ですので、お礼ならばアナさんに是非お願いします。
あまり多くの事を語らない寡黙な方ですが、
いつもみんなの事を気に掛けてくれる、とても優しいお姉さんなんです」
「わっ、分かりましたッ。
あっ、あの、立場も弁えず色々聞いてしまって申し訳ありませんっ。
おっ、教えてくれてあっ、ありがとうございました」
「大丈夫ですよ!家での様子を見たらもーっと驚きますので!」
「はい?ええっと・・・?」
「あっ、ほら、帰って来ましたよ?
男の人がジャーブさんで、小さい子がヴィーちゃんです」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
ボソボソとラティがナズに色々尋ねていたので任せていた。
ナズも一番風を吹かさずに優しく対応している。
元々優しいのだ。
本当に良い子である。
「お待たせしてしまって申し訳ありません」
「ただいまーナズ姉ちゃん」
自分の位置からは見えなかったが、ジャーブとヴィーの声がした。
起き上って伸びをする。
「あれっ?この人だれ?」
早速ヴィーがやらかす。
チョップだチョップ。
「コラッ!この人は失礼だろ」
「イデッ。あっ、そ、そうだった。この人はだれですか?」
「変わってない!」
「えっ、ど、どうすればっ。
このおんなのひとはだれですか・・・ちがう?だめかなあ・・・」
「後で説明するからまずは帰るぞ」
「あっ、あいっ」
パーティ編成を念じてラティを追加する。
先程ナズが驚くなと説明してくれたおかげで遠慮無くスキルを発動できる。
放置しておいて良かった。
奴隷同士の方が話も早くて助かる。
自分から騒ぐなと言ったら、それは脅迫になってしまう。
逆に余計騒がれても面倒だ。
ラティがパーティに入った事を確認してゲートを開いた。
「ナズ、押し込め」
「えっ?はい。それではラティさん、失礼しますね?」
「いや、あの、あ、はい。だっ、大丈夫です、じじ自分で行けます」
ラティは若干ナズに押されながらも、自分の足でゲートをくぐって行った。
全員がくぐった後、自分も遅れてゲートに入る。
納屋の横へ繋いだゲートは、最後に自分がくぐると消えた。
パーティ全員が同一方向へ向けてくぐると、ゲートは自動的に消えるのだ。
「さて、装備を置いたら居間へ集合してくれ」
「「かしこまりました」」「分かりました」「おっ、はーい!」
「ええっと、わ、私もですね?」
6人掛けのテーブルにはもう空きが無い。
お誕生日席の逆側が空いていると言えば空いているが、
そこはいつか来るであろうエミーの姉の席にと思っていた。
結果的には6人目のパーティ候補へ与える事となってしまった。
現状最大で8人分の席は用意できるが、
人が増える分の椅子は買って来なければ。
取り敢えず今直ぐ必要な分を自室から1脚台所へ運び込む。
イルマを迎えた場合はどうしようか。
エミーとイルマ、窮屈だが同じ場所に座って貰っても別に構わないだろう。
それよりも地図が作れそうな人材が、
たった9万ナールで手に入ったのは素晴らしい。
思うような地図が作れなかったとしても、何かしら役には立つだろう。
19層まで攻略して来た実力はあるのだから、きっと戦いには慣れている。
どうせどのジョブに変えてもLv1からのスタートだし、
そこは無経験の奴隷を買ったとしても同じ事。
但し培ったノウハウは必ず生かされる。
それが19層分と言うのは大きなアドバンテージ足り得る。
パニと組ませて自分の後を付いて来て貰い、
延々と地図を描いて貰っても良いと思う。
完成した地図を売って一儲けも夢では無い。
エミーが淹れてくれたハーブティーを1口啜り、
今日増えた1人分の食事の追加をお願いした。
パニが戻って来たら8人で、イルマを迎えたら9人か。
大丈夫かな?
竈門や石窯を設置して本当に良かったと思う。
五徳では調理スペース的に全然足りないし厳しい。
装備を脱ぎ終わったナズ、ジャーブが居間に入って来た。
続いてアナとヴィー、最後にラティが、
申し訳無さそうな猫背の低姿勢でヒョコヒョコと入って来る。
何だろう、この漂う腐女子臭は。
──イヒヒ、セ、拙者ラティでござるよ何卒おお見知り置きアレ!
や、やだなあ。
見てる分には楽しいけど扱いに困る人材は。
そんな事無いよね?
・・・無いよね?
「ラティは一番奥に座ってくれ、・・・そう、そこ。自分の正面だ」
「し、失礼します・・・」
「さて、エミーは解らないと思うのでざっくり説明しよう。
このラティは先程商館で身請けして来た。
現在28歳でお前たちの誰よりもお姉さんだ。
迷宮や生活面の知識は豊富だと思うので、何でも聞いてやってくれ」
「ど、どうも、ラッ、ラティです・・・」
「一緒に頑張りましょうね」「宜しくお願いします」
「どうも、宜しく。ジャーブです」「おー、そうなのかー」(ぺこり。)
「以前19層の魔物の部屋で救出したパーティがあっただろう?」
「あの時のパーティは結構ギリギリな感じでしたが、もしや?」
「エート、そんなコトあったっけ?」「あったのですよ?」
「そう、その時に助けたパーティにいた探索者だ。
迷宮の構造や地図に精通しているらしいので、助けになると思う。
今後は迷宮での探索に1つ手が加わる事となる。
アナは手数が増えて煩わしくなるかもしれないが、
何とかラティを助けてやって欲しい。
慣れて来たら必ず探索が楽になるはずだ」
「かしこまりました。概ね想定内です」
そういえばラティを身請けると決めた際に、
アナは何をするか解ったと言っていたな。
流石である。
「それではラティにパーティメンバーの紹介をする」
「あ、は、はい。あっ、ありがとうございます」
「まずはナズ、一番奴隷で鍛冶師だ。・・・無茶苦茶強い」
「い、いえ、それは流石に言い過ぎです・・・」
「は、はぁ」
「何せロールトロールを槍1本で薙ぎ倒し、レムゴーレムの膝を折り、
あまつさえ振り払っただけで人をぶっ殺すほどの怪力だ」
「い、いやっ、そのお話は止めて下さい」
ナズが両手で頭を抱えてぶんぶんと首を振る。
少しイジリが辛辣だったか?
「ええと、ともかく強いのだ。強過ぎて本人もこのように気に病んでいる」
「わ、分かりました」「えっ、それは違いますっ」
「そしてアナ。同じく一番奴隷で暗殺者だが、今後はどうなるか解らん。
ウチのパーティのエースだ」
「えっ、エースとは・・・何でしょうかっ?」
「あー。ええっと、最強?」
「いえ、最強は私などでは無く・・・」
「アッ、アナ様、でででは無くて、アッアッアナさんッ。
そっその節は私たちを救って頂きまして、
あの、あっありがとうごっ、ございました。
わっ私がこうして生きているのは、
アッアナさんとご主人様のおお、お陰でありますッ。
ずっ、ずっとおれ、お礼を言いたかったのです。
ああありがとうございましたッ」
「は、はあ・・・。
何でも無いような事でこうして深く感謝されると、不思議な気分ですね」
「それだけアナの力は素晴らしい物なのだ。
自信を持て、1番だと何度も言っているだろう?」
「そ、そうですね」
「それから3番奴隷のジャーブだ。
珍しくカウンター型の戦士で、多分ソロでも25層は余裕だ」
「い、いえ、流石にそんな事は俺でも無理です・・・」
「あ、あの、はい・・・」
「畑仕事の方もかなりの物で、裏庭のハーブはジャーブが育てている」
「そっ、それは・・・その、す、凄いですね」
「まあその、言う程大した事はしていませんが」
「4番奴隷のヴィーだ。竜騎士でウチでは壁役だ。飯を狙うので注意しろ」
「アタイそんなにヒドいコトしない!」
「えっと・・・そうですね?」「してますね」「してるな」(こくこく。)
「きっ・・・、気を付けます」
「もー!ちがーう!パニだけ!パニだけなの!くれるってゆーから!」
「そうですね」「可哀想ですが」「言われてみれば確かに」(こく。)
「だ、大丈夫なのですかッ?」
「そして番号無しのエミーだ。序列に関係無く、多分1番偉い」
「えっと、そ、それはどういう・・・」
「飯を作るのはこのナズとエミーだ。飯を作れる者が1番偉いのだ」
「えっ、ええと、そそれは何故でしょうか」
「怒らせたら飯抜きだ」
「そ、そんな事は今までに一度もありませんからね?
ご主人様のお戯言です」
(こくこく。)
「エミーは今、療養中なので声が出ない。
いつの日かきっと話してくれると思うから、急かさずに待って欲しい。
それからエミーには指1本触れるな、これは命令だ」
「えっ、あっ、あの、はいっ」
「エミーはちょっと今慎重を要する時期なのだ。
ジャーブが虎視眈々と狙っているので、
うっかり恋敵だと認定されたら切り落とされるかもしれん」
「し、してませんよ、俺は!」(こくこくこくこく。)
エミーの顔が赤くなり、必死で否定する。
何だ、お互い両想いか。
じゃあもう良いよ、治ったらくれてやる。
それまで待っててくれ。
「それから5番奴隷は今この場にいないが、パニと言う竜人族の男だ。
ゆるカワ恰好イイ愛玩竜人なのできっと気に入って貰えると思う。
但しこちらも指1本触れるな?
ヴィーが怒って丸齧りにされてしまうでな」
「しっなぁーーーい!」
「え、えっと、かっ、可愛い男の子、と言う事なのでしょうか」
「大正解だ。小さい男の子好きには大変残念だが、ヴィーが恐ろしくてな。
この前もウチの奴隷が手を出し、ヴィーに齧られて骨になった」
「だからそんなコト、してなぁーーーい!」
「そういう家なので後は仲良くやってくれ」
「えっ、ええと、あの・・・」
ラティはキョロキョロと全員の顔色を窺って、
ニコニコとした顔で返答を受けると、明るい笑顔で挨拶を続けた。
「しっ、新参者ですが、よ宜しくお願いしますっ」
良いね、みんな仲良く。
気が合いそうな人材でホッとした。
淡々と名前と役職を説明して行くだけでは打ち解けるのは難しい。
適度に弄って人柄を見せて行くのも采配の1つだ。
家の中の雰囲気が解ってくれればそれもなお良し。
「それで、ご主人様。
ラティさんの服や椅子、ベッドなどをご用意しませんと・・・」
「あっ、そうだった。ではナズ。
ラティと共に服屋へ行き、下着も合わせて3着買って来てくれ」
「は、はいっ、かしこまりました」
「かしこまりました。頂いた食費から出せば宜しいですかね?」
「服飾費は別にしよう、後で精算するから金額を覚えて置いてくれ。
それからヴィーとジャーブは一緒に来てくれ、ベッドと椅子を買う」
「ええと?運べば宜しいですかね」「はーい」
「アナは日用品の小物を。金は銀貨10枚もあれば足りるか?」
「それ程必要は無いかもしれませんが、余ればお返し致します」
「では各自出発」
「「かしこまりました」」「分かりました」「ほーい」
「えっ、ええっと・・・」
「ラティさん、ほら、行きましょう?」
「あっ、は、はい。あの、宜しくお願いします」
「フフっ、それはさっき聞きましたよ?
ホドワの衣料品店の場所はご存知ですか?」
「いっ、いえ、わわわ私は──」
「それでは──」
ラティはナズに連れられて出て行った。
自分は2人を引き連れて家具屋へ。
似たような椅子2脚とベッドを購入する。
運搬をジャーブとヴィーに任せたので、即日の引き取りとなった。
続いて大工の所だ。
ラティが迷宮での地形を理解できたとしても、それは頭の中での話だ。
それを描いて伝える事ができると言っていたが、
当然それは宿に帰ってからの事である。
覚えていられる量は時間と共に減るだろう。
かと言って移動中に描ける道具なんて雑貨屋でも見た事が無い。
ならば作るしかない。
ウッツを訪ねると、今日は弟子たちが何かを共同で作り上げていた。
家具の注文でも入ったのだろうか。
「ウッツさんは?」
「おお、ユウキの旦那ですか、ちょいとお待ちを」
以前うちでパーティをした時に来たお弟子さんだ。
随分この街でも顔が売れて来ている。
限られた世界での話ではあるが、
気の良い身内の仲間が増える事には大歓迎である。
「おう、何でぇ。今日はどうした」
「ちょっと簡単な道具を作って欲しいのだ、数分で終わる」
「何だぁ?大工に数分で終わるような仕事を振るなよ」
「いや、それがウッツさんにしか任せられない特別な道具なのだ」
「ほう、何だそりゃ」
「移動中に絵を描く道具だ」
「はぁ?」
「いや、だから、こう移動中に絵を描こうと思っても、
まずパピルスを置く台が無いと描けないだろう?」
「まあそりゃそうだ」
「でも作業台を運んでは邪魔だ。だからこう首から紐を通してこう・・・」
「ほう、そんで?」
「紙と台があっても、固定しなければ移動中に描く事は難しい」
「そりゃそうだ」
「で、こうここの部分にパピルスを止めるこういう挟み機構を作ってだな」
「あー、なるほど、お前ェ頭良いな」
「更に、ペンとインクが要るじゃない」
「あー、そうだよ、それどうすんのよ」
「だからここにこう、インク壷を固定できる穴を開けて、
勿論、台はしまう事を考えなければいけないので、穴だけでは駄目だ。
落ちないようにこういう構造を用意する」
「確かにそうだ」
「ペンは穴を開けたキャップ・・・いや固定具をこう嵌めて、
更にそれに紐を通して本体と結べば・・・」
「おおおおお!分かった、確かにこれは俺にしかできねぇな」
「では頼む。幾ら位だ?」
「5枚だ5枚!」
「分かった、安いなあ」
大急ぎでウッツが携帯用の画板を作成した。
折り畳めるような機構は残念ながら無理だろう。
首から下げて位置を固定でき、
紙もペンもインク壷もしっかりと止められる機構だけで十分である。
「どうでぃ?中々良い出来だ。
おう、これもしかして俺っちたちが家建てる時に使っても良いのか?」
「良いんじゃないか?客前で完成図描いてみせれば話も早いだろう」
「おお!そりゃ良いな、早速もう1個作ろう」
「ははは、それではまた頼みたい事ができたら宜しく」
「おう、任せとけ!」
──斯くして、ダンジョンマッパーラティの名前が世に轟くのは、
それから数年後の事であった。
とかかな!
まずはラティにやってみて貰わなければ話にならないのだけれどね。
道具屋でペンとインク壷とパピルスの束を買って帰路に就く。
帰り掛けに徒歩で落書きをしながら帰ったが、
予想以上に上手なラティが描けた。
∽今日のステータス(2021/12/01)
・ラティ 人間 女 28歳 探索者 Lv20
・繰越金額 (白金貨2枚)
金貨 55枚 銀貨 45枚 銅貨150枚
家具購入 (2400й)
ベッド 1200
イス ×2 1200
画材道具 (500й)
画板 500
雑貨購入 (300й)
パピルスの束 100
インク 150
ペン 50
雑貨購入 (90й)
房楊枝 15
コップ 10
平皿 10
椀 15
櫛 30
手拭い 10
服代 (950й)
上下服 ×3 600
シャツ ×2 200
下着 ×3 150
銀貨-41枚 銅貨-140枚
------------------------
計 金貨 55枚 銀貨 4枚 銅貨 10枚
・異世界54日目(2時頃)
ナズ・アナ49日目、ジャ43日目、ヴィ36日目、エミ29日目
パニ19日目、ラテ1日目
サンドラッド到着まで7日、決闘まで3日、仮面完成まで1日




