§019 眼福
洗濯を終えたナズと、アナが何か話している。
「xxxxので、xxxxxxxxxx」
「では、xxxxxxxxxxxます」
「xxxxxx先にxxxxxxxですね」
会話が終わると、ナズはチラチラこちらを気にしながら服を脱ぎ始めた。
ドワーフ用の服は、子供服で賄われる事が多い。
とりわけ女性用では、上からすっぽり被るワンピースのような物が多い。
町で暮らすならそれで十分だろう。
皆が皆、鍛冶師に成れない世界なのだし、
それ以外は迷宮でもやって行けない無能者。
小さい頃に、お前には無理だと言われたら地道に暮らす道を選ぶ。
ドワーフの女性が危険と隣り合わせの迷宮で、
活躍したいと言う願望を持っている。
更に力も才能も有って鍛冶師に成るというのは、
針の穴に糸を通すような難しい事なのだろう。
ナズの方が一般的なドワーフであり、
村一番の力持ちだと自負していたセリーは異質な存在だったのだ。
いや、セリーの場合は祖父が有能で父親が無能者だったから、
その負い目もあったはずだ。
そうはなるまいと、日頃から鍛えていたのだと思う。
セリーは迷宮で活躍できるように、動き易い服を選んだ。
恐らく奴隷商が用意した衣装では無く、
売られる前にそういう服を見付けて来たのだろう。
自分は戦いたいです、と。
有用なジョブに就いていなかった事から、
奴隷商のアラン氏からは迷宮では活躍できないと思われていたようだが。
特注で作らせたりやんちゃな子が着るような服でなければ、
女性で子供の戦闘服と言うのは難しいはずだ。
まだ彼女たちには一度も戦わせていないが、
今後纏まった資金が用意できて大きな町のブティックに行けるまでは、
暫くの間先程買ったワンピース2着で頑張って貰うしか無い。
もう1着は商館から着て来た払い下げ品。
妾用と言うだけあって見栄えは良いのだが、
その分薄地で引っ張ったら破れそうだ。
当然だろう。
戦いをさせる用途の奴隷では無かったのだから。
引き渡しの際に1ヵ月着っ放しでしたって事は無いだろうから、
恐らく今の時点で洗濯は必要無い。
愛人として並べる商品が小汚くて異臭を放っていたら売れないだろうし。
他の服はさっき買ったばかりなので、これも洗う必要が無い。
ナズはスカートから捲くし上げて、下着が見えたと思ったら、
そのまま可愛らしいサイズの胸まで見えた。
チラ見えだチラ見え。
これが日本であったならば、ここでガン見すると通報されかねない。
その意識が抜けないのか、見えた瞬間目を逸らしてしまった。
ここは異世界なのだ。
そして彼女は自分の愛人だ。(で、いいよね?)
見てはいけない事なんて何も無いのに、自分のバカッバカッ!
葛藤している間にナズは向こうを向いてしまった。
アナも服を止めている紐を緩めて、肩を捻りながら上着を脱いでいる。
アナの胸は特大と言う程では無いが、
ちゃんと重量感を得られる程にはある。
童貞を殺すには十分なサイズだ。
対してナズはAよりあるか、Bよりは無いか位。
上を向いて寝たら消え、四つ這いになったら現れるサイズ。
発育途中の胸ってやつだ。
これ以上発育するかどうかは知らない。
そもそも途中かどうかは知らないし、聞いてはいけない。
それが世界のルールだ。
このままで良い、それ以上大きくなってはいけない。
貧乳はステータスなのだ。†
少し恥ずかしそうにしているのも眼福だ。
これから長い夜を重ねれば、見られる事も見る事も慣れてしまう。
恥ずかしそうにするナズと、ドキドキする自分。
この時は今しか無いのだ。
コラ、向こうを向くんじゃありません。
手で隠してもいいからこちらを向きなさい。
ナズばっかり見ていたら、
いつの間にかアナもズボンを脱いで下着だけとなっていた。
この世界にブラは無い。
上着を脱いだらシャツだけだ。
奴隷にはシャツが無い。
上着を脱いだらパラダイスだ。
い、いや、可哀そうなので今度買ってやろう。
マラソン等で胸や乳首が擦れると痛いと聞いた。
これからマラソンより過酷な戦闘をして貰うのだ。
命と隣り合わせなら、より快適な方が良い。
それにしても流石アナは脱ぎ慣れていると言うか、
チラッとこちらを見たが隠したり臆したりしていない。
寧ろ「どうでしょうか?」とか言って来そうだ。
だからと言って、じっくり見ていたら嫌がられるかもしれない。
──ご主人様もおっぱい星人だったのですね。
蔑んだ目で踏み付けられそうだ。
あ、それはちょっと良い。
でもナズには悪い気もする。
セリーは控えめだった胸を気にしていたし。
──ご主人様もそちらの人だったのですね・・・。
済みません足りなくて・・・私なんていない方が・・・。
いやいや、それは拙い。
そんな事思って無いから安心しなさい。
気持ちはそこに置きながら、
目を逸らして余裕のある振りで誤魔化してみた。
そんな自分を他所に、2人はお互いの背中を拭き始めた。
ナズは小さい事もあって、アナの後ろに隠れて良く見えない。
・・・いや、これはわざとだ。
アナの後ろに隠れる位置取りを選んでいる。
見せろと言えばそれまでの事だが、このチラ見えも有効に活用したい。
慣れて来たらいつでも堪能できる。
じらしプレイ、大いに結構じゃないか。
これは眼福なのだ。
アナが背中を拭かれる番の時は、こちらに胸を向けた。
幾らでも見て構いませんよ、と目を閉じている。
いや、目が合ってこちらが気恥ずかしくなったり、
主人に対し、何見てるんですか?と威圧を与えないようにするためだ。
こちらの心境を理解した上でのアナの配慮だった。
ただ体を拭いているだけなのだから、
いちいち恥ずかしがったりしていたら身が持ちませんよ、
と言う余裕の表れか。
解っている、と言うか手慣れている。
一瞬だけ片眼を開けてこちらを見た気がした。
くそう、何もかもお見通しか。
非処女だし手練れなのだ。
アナは更に気を利かせた。
「ナズさん、先程からご主人様は苦しそうですので、
今度はナズさんが介抱して差し上げて下さい」
「はっ、はい」
そう言われて絞った手拭いを渡されたナズは、
片手で胸を隠しながら、ゆっくりとベッドに上がって来た。
「そ、それでは失礼します」
***
しかし、それは大失敗の形で終わった。
「ゴホッゴホッ・・・」
アナと同じようにやろうと努力したのは伝わったが、
経験の差なのかそれは雲泥の差だった。
「も、申し訳ありませんご主人様・・・」
「い、いや、別に大丈夫だぞ、無理するな?」
手と顔をぶんぶんと振った。
初心者に無理強いはしない。
無理なら無理で、そのうちで良いんだ。
そのうちで。
「そんな・・・申し訳ありません!
次はもっと上手に致しますので、
お願いです、どうか捨てないで下さい」
ん・・・はて?
何故、上手にできないと捨てる事になるのか。
お前は80万ナールもしたんだぞ。
割引で56万ナールだけど。
56万ナールをホイホイ捨てるなんて頭のおかしい奴じゃないか。
アナもギュっとナズを抱き寄せて庇い、
まるで悪い奴から守っているような素振りだ。
え・・・、なにこれ。
自分悪いの?
「ちょっと話が見えないんだが」
アナを見詰めて聞いてみる。
「あの・・・妾や愛人として買われた奴隷は、
そういう事を目的としておりますので・・・。
その・・・ご主人様を満足させられなければ、
商館に売り戻されたり、娼婦に落とされたり致します」
え、なにそれ、1発不合格なら人生終了?
判定厳しくない?
まあ、それ以前に教育やら練習をさせられたりしているのだろうけどさ。
ホントにこの世界は人生の落後者を救済する世界なの?
自分はある程度上手に世の中を渡って来た方だと思うけれど、
うっかり奴隷に転落したらこちらの世界でやって行ける自信は無いぞ。
自殺を決意するような奴だから、
1発逆転に1回だけベットしてみませんかって事かな?
何だか妙に納得した。
「いや、ナズは可愛いが、愛玩目的で買った訳では無いからな?」
そうだよ。
確かにそういう事も望んではいるが、真の目的は鍛冶師だ。
56万ナールを捨てるなんて、とんでもない。†
「他にも、厳しい奥様に見付かったり等すると、
迷宮に捨て置かれる事などもございます」
いや、奥様はいない。
寧ろ君たちが奥様なのだが。(で、いいよね?)
「つまり、床上手で上手に立ち振る舞えなければ、
簡単に捨てられたり殺されたりするのか?」
「そういう主人もいると聞きます」
「うーん・・・」
ミチオ君たちの冒険録の中では、妾の枠は奴隷の華だと言っていた。
しかしそれは自らの美貌や技に自信がある者に取っての話であり、
どちらかしか持たない者、上手く立ち回れない者は戦闘奴隷と等しく、
身持ちが危なかったりするのだろうか。
愛人として奴隷を買うような金持ちだ、それならば金は余っている。
100万ナール捨てた所で端た金、と言う訳だ。
貧乏人が背伸びして買うような代物では無いと言う事は良く判った。
アレだ、外車と同じ感覚だ。
一般市民が無理して買った3000万の高級車。
撞けたら大ショックだ。
高額過ぎると保険だって下りないかもしれない。
大金持ちは・・・当てちまったわ、また新しいの買うか。
こういう感覚だ、間違いない。
ナズは戦闘奴隷として買われたアナよりも上手くできなかったから、
妾としては劣る奴隷・・・つまり見放されると。
そんな事をするつもりは無いし、そもそもナズは未経験じゃ無いか。
知識だけで最初から完璧に熟せる奴がいたら、それは天才だ。
天才だったらこんな所で奴隷なんかになっていない。
「そんな事で捨てたりしないから、これからも宜しくな?」
気の利いた言葉を掛けてやりたかったが、この位しか思い付かなかった。
「アナも宜しく頼む。こっちの方でもナズを助けてやってくれ」
「かしこまりました。ナズさん、良かったですね」
「あ・・・。は、はい、ありがとうございます、頑張ります」
ナズがペコペコと頭を下げて来た。
そういうのは不要だってば。
正面で謝罪を受ける振りして胸をガン見したけど。
堂々と見れて嬉しいが、これは眼福では無い。
「とりあえず・・・、それ拭こうな?」
ナズの胸を指さす。
さっき咽た時に、口から涎を噴き出していた。
拭いてやろうかと横にあった手拭いへ手を伸ばそうとしたが、
アナに止められた。
「ナズさん、駄目ですよ。ご主人様の手を煩わせてはいけません」
そう言ってアナはナズの裏側に回り、
がっちりホールドしてナズの胸を拭いた。
「ひゃっ、ひゃひゃはは・・・」
ナズは擽ったそうに体を捩った。
「お、おぉ・・・」
これは眼福だ。
やはりアナは素晴らしい。
自分が拭かなくて良かった。
いや主人が拭くのは駄目なんだと思う。
経験者勝るとはこの事だ。
解かっている。
いや、知っていると言った方が良いのだろうか。
これは教えられて成った物では無いはずだ。
前からでは無く、わざわざ後ろから拭いた当たり。
どうすればご主人様に好かれるか、
ちゃんと理解した上で行動している。
心を読んでいると言っても良い。
魔物の気配が判ると言っていた。
多分そういう才能があるのだ。
中々侮れないな。
アナの行動が計算ずくだったとしても、全く悪い気に成らない。
全ては自分に気に入られようとしてやっているのだ。
非処女で2番目の主人だと言う負い目を感じているのかもしれない。
いじらしい。
アナがナズに指示する。
「ナズさんはご主人様の方を」
「わ、解りました。ご、ご主人様、き、綺麗にいた、致します」
「ナズ、済まないがもう一度お願いできるか?」
ナズが上目遣いでこちらを見る。
「かしこまりました、・・・今度こそご満足頂けるように頑張ります」
アナのレクチャーを受けながら、ナズは頑張った。
理解した。
ナズは教えればできる子なのだ。
だから歌手に成っていたのだ。
教えられたら直ぐに自身の物にできる。
これは才能だ。
「ナズ、そんな感じでこれからも頼む」
一定の満足感を得た後、
仕事を終え離れようとしたナズの頭を抱えて緩く抱き締めた。
「お上手でした」
アナもナズの頭を撫でた。
「ご主人様もお疲れ様です」
「えっ?・・・あ、ああ。大丈夫だ」
何が大丈夫なのかさっぱり解らん。
意味不明の受け答えをして自分でも混乱した。
いや、混乱しているんだろう。
ナズを抱き寄せて頭を撫でた。
ついでにアナも手招きして呼んで、横から抱いた。
日も落ちて、外はすっかり薄暗くなっていた。
∽今日の戯言(2021/07/24)
初回からこんなにトばしていくユウキ君に嫉妬です。
異世界迷宮の世界が許しても私は許しません。
誰か、文章から映像化する技術を早く!
・異世界6日目(夜)
ナズ・アナ1日目、トラッサの市の日、宿泊3日目




