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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第十章 結実
182/394

§170 お古

アレクスムの商人ギルドは静かだった。

朝のオークションは既に終了しており、

残っている者は受付位だ。


入口に居ても声を掛けて来る商人はいなかった。

仲買人たちは皆昼休みに入ってしまったのだろう。

オークション会場の方にも立ち入ったが、やはりジャミルの姿は無かった。


それならばと以前ジャミルに連れられて入った食堂にも向かってみたが、

そこでもジャミルの姿を見る事はできなかった。

仕方あるまい、また昼食後だ。


せめて掲示板の文字を読めたのならば、

昨日のオークション結果を見る事ができただろう。

誰が幾らで落札したかも記載されているらしい。


ん?・・・待てよ、読むだけなら受付に聞けば良いじゃないか。

買ったの誰?ってね。


再び商人ギルドに戻り、受付の男に昨日の結果を読んでくれとお願いした。


「ええっ?ブラヒム語を話される方で読めないのは珍しいですね」


「そ、そうなのか。ちょっと自分は生まれが特殊でな。

 人間族語が判らないから共通語でしか話せなかったのだ」

「はあ、そうなんですか。ええと、昨日の結果ですね?

 大楯、大楯・・・おおた、あっこれですね。

 19万7千ナールで落札者はジャミルとなっておりますね」


「そ、そうか。ありがとう、ジャミルにお願いしたのは自分なのだ」

「そうなのですかっ!それはおめでとうございます。

 ただ、仲買人たちは今昼食だと思いますので、

 どこかで時間を潰されてからお越し下さい」


「ああ、そうする。ありがとう」


落札したのはジャミルだった。

値段も相応に収まっている所を見ると、スキル付きでは無いノーマル品だ。

騎士たちの遠征の日だったため、そういう需要が消えたのだろう。


渡りに船だった。

いや、実物を見ていないのでどんな物なのかは判断できない。

どうせなら自分の出品した剣の売却価格も聞いて置けば良かったかな?

それはホドワで売ったんだっけ?

何れにせよ特需に間に合ったのかどうなのか、気になる所だ。


ともあれ、ここに居ても意味は無い。

昼食後にまた来てみよう。


家に帰ると丁度アナがピザを切り分けていた所だった。

全員既に着席しており、ヴィーは今か今かと身を乗り出していた。


「あっご主人サマお帰りなさーい」

「「「お帰りなさいませ」」」(ぺこり。)


「ああ、ナズも帰っていたのか、どうだった?」

「はい、とても喜んでおられました。

 今は家人が出ているので、夕食に召し上がるのだと」


「そうか。焼き立ての方が旨いんだが、渡す時間を誤ったかもな」

「そ、そんな事はありません。

 ご主人様のお考えになるお料理はいつ食べても美味しいです」


「いや、自分が考えた訳では無いがな・・・」


自分も椅子に腰を落とし、持っていたポーチは椅子の首に引っ掛けた。

置かれていたティーカップを拾い上げて1口を啜る。


「そういえばユウキ様はどこの国からおいでになったのでしょうか?」

「えっ、ご主人サマ、ガイコクのひとなの?」

「私達は以前聞かせて頂きましたが、それが何処とは聞いておりませんね」

「やはりそうだったのですね。

 お名前もこの辺では聞かない不思議な響きでしたので、

 僕もそうなのかなとは思っていました」


うーん・・・。

日本、と言っても彼らは外国の事をよく知らないので大丈夫かな?

ルスラーンにはシュメールから来た事にされてしまっているので、

少なくともそちらの方面、それよりも遥かに先と言う事にするべきだろう。


「シュメールと言う国があってな?」

「以前仰っていた国ですね?確か・・・お皿の名前の」

「シュメール皿ですね、そういう国があるだなんて初めて聞きました」

「シュメールは工芸の国ですね、俺は聞いた事があります。

 ガラス製品なんかはそこで作られていると言う話ですが、

 もしかして、廊下にある冷たい桶もそこで売られているのでしょうか?」


「ん、ああ、まあそうだな。そこで教えて貰ったのかな?」


のかな?

知らないが。

本で見ただけだし。


「あの不思議な火を点ける道具や、明るい光を放つ道具も、

 シュメールで購入された物なのでしょうか?」

「なにそれー?」


ヴィーが来てからは種火をヴィーに任せたし、

その後は魔法で着火できるようになったので、

ヴィー、エミー、パニはライターを知らない。


ジャーブもキッチンは手伝わないので、恐らく見た事は無いのだろう。

LEDライトはアナだけだ。

ちょっとそれ以上は追及しないで貰いたいのだが。


「いや、実はもっとその先にある国で作られた物だ。

 自分はそこから来た。

 そこではブラヒム語が標準で、他の種族の言葉が無くってな。

 自分の知識も、持って来た物も、そこで作られた物なのだ」


「石鹸を作る技術や不思議な料理などもですか」


アナはやはり的確な所を見ている。


この国の技術では無いと言う所をだ。

誰でも作れる物であるならば、石鹸はもっと広まっているはずだろう。

水が大量に無いと使い難い以外に、

量産ができない、或いは手に入り難いと言う事も関係している。


「うーん、まあそういう事になるかな?」

「ユウキ様の料理はとても珍しく、どれも旨かったです。

 他にどんな料理があるのでしょう?

 もし良ければ、他の料理も教えて貰えないでしょうか」


「それは自分に何か別の物を作れと言う催促だな?」

「えっいや、それはその、そういう意味では」


「ははは、冗談だ。どうせ自分が恋しくなって作る事になる。

 ナズやエミーへ共有させないと食卓に上がって来ないしな」

「も、申し訳ありません、決して催促したつもりでは無く・・・」


「そうだなあ、自分の暮らしていた国ではコメが主食で、

 煮込んだ野菜が中心の食事だった。

 勿論肉や魚もあるが、味付けはもっと手が込んでいたな」

「も、申し訳ありません、私の食事はお口に合いませんでしたでしょうか」


ナズとエミーが深々と頭を下げた。


「い、いやいや、ナズの料理もエミーの料理も美味しいからな?

 決して悪い意味では無いぞ?

 文化や使える食材の違いなのだから仕方無い。

 コメは聞いた事無いか?」

「申し訳ありません。以前にも聞かれたような気が致しますが、

 私は聞いた事がありません」

(ふるふる。)

「私も、あまり食べ物の事は詳しくありませんので、申し訳ありません」


まあ、アナはそうだろうな。

生まれも育ちも奴隷では仕方無い。

エミーも知らなかったのだから、やはりこの地では無いのだろう。


大体、あった所でどうやって炊くんだと言う話になる。

電子ジャーでピッとやるならともかく、

この世界の物を使って炊くのは困難を極める。


飯盒炊爨はんごうすいさんなんて小学校以来だろう。

その時は焦げ付いて失敗した組だったので、

救済用に炊かれた別のご飯を食べた。


その調理道具すら無いので、そもそも論そこからだ。

釜炊きなんてもっと難しい。

昭和の主婦ってスゲー。


「こめって何?」


食に対し最も業の深いヴィーが聞いて来る。

彼女は旨い物に敏感だ。

米の味を知ったらひたすら米ばかり食べて丸々となりそうで怖い。


「パンの元に成るのは小麦だ。豆を粉にして水で練って焼く。

 それは分かるな?」

「そのくらい分かるよ」

(・・・ヴィー様、お言葉が少々良くないです)


「コメと言うのは小麦によく似ているが、豆の状態で煮てそのまま食べる」

「えっ、そんなのおいしくないじゃん」


「美味しいんだナァ、これが・・・」


腕を組みり繰り返って、自慢げに答えた。

いずれにしてもコメの味は知らない方が良いだろう。

最も太り易く糖尿病のリスクが高い食物、それが米なのだから。


「ズルい!ご主人サマだけ食べたコトがあって!」

(ヴィー様いけませんっ、その言い方はユウキ様に失礼です・・・)


さっきからパニが小声でフォローを入れる。

小姑みたいに面倒臭そうで笑ってしまった。


「どのみちこの国に無いんじゃあ食べられないし仕方無いな」

「買ってきてヨ!まほうで行けるじゃん!」

(だからヴィー様っ!)


くっ、無茶な事を。


痛い所を突かれてしまった。

自分が何処にでも行ける移動魔法を持っている事は、皆もう判っている。

ヴィーの目からは冒険者のスキルを使っているように見えるのだろう。


「ちょ、ちょっと遠過ぎてな。

 移動魔法で飛べる距離の限界を超えているのだ。

 船に乗ってこの国へやって来たのでな」

「ふぅん・・・」


「それでしたら、シルクスから乗り継いで来られたのですか?」


珍しくパニが話に参加した。

船、と言えばそうだろう、この国の港はそこしかないらしい。


「ああ、まあそうだな」

「シルクスからはサンドラッドへ船が出ていると聞きます。

 どのような国だったのでしょうか。

 とても豊かな国だと聞いた事があります」


「ほう?パニは外国に詳しいのだな、どこで聞いた?」

「そ、それほど詳しくはありません、申し訳ございません。

 僕の家が貧しかったので、近所の方から食べ物を頂いていた時に、

 サンドラッドで生まれたら食べる物には困らなかったのにねと、

 言われた事がありまして」


「そうか、お前も苦労したのだったな」

「よかったね、ここならおなかいっぱい食べてもオコられないよ!」


「少しでもそう思うなら、ヴィーはパニの食事を取り上げるのは止めろ」

「えっ、あっ、はいっ!」

「あ、あの、僕なら大丈夫です。十分頂いておりますっ」


・・・サンドラッドで生まれたら食べ物に苦労しない、か。


穀倉地帯で、食べ物が豊富にあるのだろう。

或いは牧草地で肉となる動物が沢山飼育されているのかもしれない。

そういえば唐黍粉トウキビコも輸入品だった。

食しても良いし飼料にもなる。

この国では作られていない。


シルクスで陸揚げされるのだし、

当然輸入元はサンドラッドと言う事になる。

穀倉地ならばコメがあるかも知れない。

行ってみたい。


しかしここで行ってみたいとか発言してしまうと、

そこを経由して来たと言う前提が壊れてしまう。

面倒臭いなあ、もう。

秘密はコリゴリだよ・・・。


迷宮も一段落付いたのだしちょっと行ってみようか。

ミチオ君だってペルマスクまで遠出したのだ。

冒険者のジョブも手に入れたし、何かあったら身分を正しく偽れる。


どうせナズの一件も、もう暫くは時間が必要になる。

それなら良い機会だし行ってみようじゃないか、外の世界へ。

最終目的地はシュメールだ。


残りのピザを掻き込んで、

迷宮の支度をして置くように言ってアレクスムへ向かった。



   ***



入口手前は仲介人を探す者達で少しだけ列ができていた。

午後のオークションに戻って行く仲買人や、

商談を求めに来た者達でロビーはごった返す。

今が最も混みあうピーク時間なのだろう。


列の3番目に並んだが、後ろから声を掛けられた。


「よお、いつも早いな。商談室は多分一杯だから、外でも良いか?」


声の主はジャミルだった。

外の食堂へ昼食を取りに行っていたようだ。


「ああ、宜しく。大楯が手に入ったんだってな?」

「ああ、そうだ。思ったより高くなかったな。

 騎士団が引いたのも大きいと思う、武器やカードも軒並み安値だった」


「そうか、自分もその場に居られたら良かったんだがなあ」

「ははは、それも後で話す」


以前一緒に行った事のある食堂へ2人で向かう。

先程様子を見に来た時はいなかったので、食事は別の所だったのだろう。

ジャミルはよく判らないジュース、自分はハーブティーを注文した。


「それで大楯の方だが、ちょっと重たくてな。

 引っ張り上げるから一緒に持って欲しい」

「そんなか」


ジャミルがアイテムボックスを詠唱し、

空間から何かを両手で引っ張り上げると、

タライ位のサイズが有りそうな鉄の弧が顔を出した。


「も、持ってくれ」

「あっ、ああ。せーの、よっこい・・・しょ」


──ゴトン。


2人で抱えても結構ある重さの楯をテーブルに置いた。

このテーブルは2人用で小さいので、み出す程の大きさだった。

そこに乗せてしまうと、もう大楯がテーブルであるかのようである。

そもそもこんな物を、ジャミルはどうやって受け取ったのだろうか。


「相当重いな、これでは我々人間には持てんのも頷ける」

「だろう?相当鍛えた奴か竜騎士でしか持てないって言う話だ。

 竜人族ってだけでも駄目らしい・・・あ、それで代金だが──」


「ああ、さっき昼前に来た時に掲示板で確認させて貰った」

「そうなのか、入れ違いだったようなら済まなかったな」


「良いんだ。それと、剣はどうだった?」

「まあ待て、剣はおかげで高値が付いた。それからカードだ」


ジャミルはカード4枚を取り出すと、大楯の上に並べた。

丁度そこに店員がジュースを持って来たので、

大楯は完全にテーブルとなってしまった。


「ええと、セットにしてしまったからどちらがどちらか判らないが、

 使うのもどうせ同時だろ?

 分割して使用したいならギルドの方で鑑定してくれ。

 こっちがコウモリ、こっちが牛だ」


2枚で1セットにパピルスで巻かれたカードを見せられた。

パピルスに記号が書いてあるので、解り易いようにしてくれたのだろう。

HAHAHA、だが読めない。

・・・早く勉強しよう。


「相変わらず準備が早いな」

「こういうのはホドワの方が買い易いな。

 こっちは競合者が多くって。金持ちも多いしな。

 コウモリが4800ナール、牛が4200ナールだ。

 コボルトが4300と5300、こっちで買うとやはり高い」


1000ナールも差があるのでは確かに高いだろう。

ホドワは探索者の町で、金持ちはユーアロナに住む。

そちらには直ぐ傍に迷宮が無い事も関係していそうだ。

ここでは豪邸が並ぶ通りもあるし、迷宮も郊外ではあるが近い。


「コボルトはもう1枚あるがセットで渡した方が良いんだろ?」

「あ、いや、コボルトはいつでも欲しいんだ。

 ついでに6枚位注文しようと思っていたので、あれば助かる」


「お、おう。凄いなユウキは」

「何がだ?」


「普通はカード1枚を合成するのがやっとなんだが、

 敢えて全部コボルトを付けて上位武器を狙っている。

 中々の勝負師だよ、そういう所は誰にも真似できん」


絶対に成功するからですとは言えないな。

そもそも作って売るための物では無く自分達で使っているのだ。

その中で払い下げた物がたまたま高値であったと言うだけで。

だが、芝居は必要だ。


「まあな、タクトに神籬ひもろぎが付いた時は流石に足が震えたぞ」

「そうだろうなあ、1発で150万ナールだからなあ・・・。

 羨ましいが、絶対真似なんてしたくないな」


「それで、剣の方は?」

「おっ、そうだそうだ。

 騎士団の需要が終わりそうだって言う話だったから、

 こっちでは無くてホドワで出させて貰ったんだ」


「そうだな、動いたのはトラッサ騎士団だし、ホドワの方が近い」

「そしたらビンゴよ、30万6千ナールだ。

 相場的には28万ナール位だからな、凄いぞ」


「おお、やったな。2万ナールも増えてる」

「と言う事で、差し引きだが、コボルト6枚の注文も併せて良いのか?

 もう1枚のコボルトが5100ナールだったから、

 ええっと・・・、21100のお釣りだ。

 あの剣のアガリが凄いな。こんなに渡すのに更にこっちが払うなんて」


ジャミルから金貨2枚と銀貨11枚を受け取った。

正直、ちょろまかされてしまっても全然判らない位になって来た。

そんな事は無いと信じているので、

詳しく調べるような真似はしていない。


大体両方の街の掲示板には落札値が貼り出されているので直ぐにバレる。

・・・取り越し苦労だよ。

セリーが異常に警戒していたので、

自分も疑心暗鬼になってしまうじゃないか。


「コボルトが追加で手に入って良かった。残りの依頼も頼むよ」


コボルトが追加で手に入った事はラッキーだった。

ついでにコボルト6枚を注文したし、

これでようやく手持ちのカードも合成が行える。


欲を言えばアナの耐性装備も準備したい所だが、

そちらはまだ集まっていないようだ。


「ああ、そこは任せて置いてくれ。

 で、その楯どうやって持って帰るんだ?

 持てる奴を連れて来てないのか?

 郵送してやっても良いが、別途送料がいるぞ?」


そうだ。

自分は体面的に商人の設定だったから、

当然の事ながらアイテムボックスにしまわずに、

どうやって大楯を持って帰るのだと言う話になる。


「そ、そうだな、こんなに大きいとは思わなかったから困るな。

 ちょっと連れて来る」

「まあそうだよな。早くしてくれよ」


店を出てダッシュで冒険者ギルドに行き、

そこから自分でゲートを開いてナズを連れて来た。

ヴィーは家にいなかったので庭だったのだろう。

それなら持たせるより収納した方が早い。

ナズならアイテムボックスもあるし力持ちなので大丈夫だ。


冒険者ギルドから急いで店に戻った。


「おおう、早いな。ユウキの自宅は冒険者ギルドの傍にあったっけ?」

「い、いや、そこで待たせていたのだ。こういう事は彼女の仕事だからな」


「ドワーフだしまあそうだよな。

 商人ギルドへ連れて歩いたら鍛冶師と判ってしまうからな」


勝手に想像して貰ったおかげで納得してくれたようだ。


と言うか、今鋭い事を言われた。

ドワーフをオークション会場に連れて行けば、鍛冶師だと思われる。


モンスターカードが飛び交うのだし、

買うのは扱える者、或いはその仲介人だ。

それがドワーフの奴隷を連れているとなると間違い無くクロだ。


ナズの安全を考えると無暗むやみに連れて歩かない方が良い。

木を隠すなら森の中、連れ立って歩く際は全員で行動する時に限る。

迂闊であった。


「ナズ、これをお前のアイテムボックスへ」

「ええと、これはお店のテーブルでは?」


「そう見えるが、実はテーブルの上に楯が乗ってるだけだ。

 横の机を見てみろ、四角だろう」

「はわっ、本当ですね、良く見たら持ち手が付いていました」


ジャミルのジュースと自分のハーブティーを横の机に移動させた。


何も乗っていなければ、これが机では無いのだと判る。

ナズは持ち手を片手で掴んで拾い上げると、

アイテムボックスの詠唱をして彼女の懐へと納めた。


「凄いな・・・ドワーフは」


「ホントホント、こんなの我々は1人で持てない」

「ええっ、そんな事はありませんよ!」


ジャミルと苦笑いをし合ったが、ナズは照れ臭そうだった。


「それじゃ、また」

「あいよ、次はようやくサイクロプスも出て来ると思う。

 楽しみにして置いてくれ」


そういえばそんなものを注文していましたね。

誰に付けるんだ?攻撃力2倍だろう?

今後も魔法で倒すし、武器に付ける必要なんて全く無い。


それは換金用にしても良い。

付けたら売ろう。

なるべく高そうな・・・、高過ぎても売れないのだったな。

中堅の武器に付けよう。


帰り掛けにアレクスムの武具屋で竜革の靴を購入した。

空きスロットは2つ、残念ながら3つの物は無かった。


店員は白銀の剣を見せて来たが、両手剣はアナでは扱えないので断った。

以前にも高級装備を買っているのである程度忖度してくれたのだと思う。


ミスリル製の片手剣はサーベルだと言う。

刺突剣で慣れているアナにはぴったりだろう。

次までに入荷して置くと言われたが、当然空きスロットは確認させて頂く。

モノを見てから考えるから絶対に買う訳では無いぞ、と念を押した。


たとえ自分達が買わずとも、いつかはこの町のお坊ちゃんが買うだろう。

仕入れ損にはならないと思う。


2つを購入しなかったので割引は無く、1万ナールを支払った。

他に目星めぼしい物が無かったので仕方あるまい。


家に戻って庭からヴィーを呼ぶ。

ジャーブもパニも一緒だ。


「ナズ、さっきの楯を」

「は、はい。

 八百やお千五百ちいほのお宝を、収めし蔵の掛け金の、

  アイテムボックス、オープン!」


やはり片手で大楯を掴み上げ、居間の机の上に置いた。

6人用の机2/3を占める大きさの大楯がその上に鎮座する。

全員が初めて見る大楯に、驚嘆と興味で一杯になった。


「こ、これは・・・」

「で、デカいですね」

「これなーに?」

 (恐らくヴィー様専用の盾です)

 (ふんふん)

「アタイのー?」


「そうだ、それを持ってちょっとジャーブと打ち合って来い」

「分かったー!」

「だ、大丈夫ですかね?」


「大丈夫も何も、軽々と持ち上げてるぞ?」


ヴィーが大楯を持ち上げると、

ヴィーの体格に合う位の大きさへ縮まったように見えた。

それでもアナの持っていた鉄の盾よりはデカいし、

ヴィーの体が全て隠れる程だ。


チビのヴィーの足と頭がちょこっと出る位なので、

それでも120センチ以上あるのではなかろうか。

マンホールよりデカい金属製の長円盤だ。

分厚いし相当重かったのも頷ける。

自分やジャミルが持ち上げた時はもっとデカかったのだし。


「重くないか?」

「おもいけど、もてなくはないかなー?」


ヴィーが大楯ごとブンブンと振り回した。

シ、シールドバッシュ、行けそうな気がして来た。

だがここで振り回されると、多分机や椅子に当たったら破壊される。


めなさい。ここで何かにぶつかったら家具が壊れる」

「はぁい・・・」


「兎に角、今後のヴィーの盾はそれだ。

 敵に押し当てて殴ったりしても良いらしいので、

 色々考えて使ってみろ。あ、ジャーブにはぶつけるなよ?死ぬぞ」

「えっいや、流石に死にはしないと思いますが、相当痛そうですね」


「練習したければホドワの迷宮かな・・・」

「それでしたら、私が案内致しましょう」


「ああ、じゃあパニも連れて、皆で行って来い。無理はするなよ」

「「かしこまりました」」「分かりました」「はーい!」


「パニ、早く!」

「えっ?何の事でしょう?」


「パニがいないと行けないじゃん!パーティ!パーティ!」

「あわわ、そ、そうでした。申し訳ありません、ヴィー様っ」

「パニ君、落ち着いて、ゆっくりで良いから」


「ナズ、以前ヴィーが使っていた盾にこれを」


コウモリとコボルトのモンスターカードを手渡し、

ヴィーに与えていた鋼鉄の盾に合成させた。


 ・浮草の鋼鉄盾(回避2倍 空き)


装備を整えて居間に戻って来たアナに、

さっき買って来た竜革のブーツに履き替えるよう指示をした。


「今日から靴はこっちだ。その靴はパニへ」

「ええと、こんな良い靴を宜しいのでしょうか」


「流石に皮の靴ではもう心許無いし、もっと良い靴が手に入った」

「はい・・・確かに、こちらはとても優れた高級品です」


そして、靴を履いたまま牛のカードを合成させる。

身に着けたまま合成できるのか、実験してみたかった。


「よ、宜しいのでしょうか・・・」


「良いからナズ、やってみてくれ」

「は、はい。それでは失礼しますアナさん。

 今ぞ来ませる御心の、言祝ことほぐ蔭の天地の、

  モンスターカード融合!」

「ご、ご主人様、何だかくすぐったいですね」


「一応できるにはできるんだな」

「そうみたいですね・・・大丈夫でしょうか?」

「特に痛くはありません、くすぐったいですが」


光が収まると、アナの靴は駿馬の竜革靴となっていた。


「よし、それは今日からアナの靴だ。

 より素早く動けるように成るはずだ」

「いつも私達のために高級な装備を用意して頂き、ありがとうございます」


アナとは大分時間を共にしているが、

初心はずっと変わらず、今でも彼女は義理堅かった。

頭を撫でてその忠義を受け取った。


ヴィーがパニに鎧を着けて貰って、全員が居間に集まった。

そこでパニの皮の靴を、先程までアナが履いていた柳の皮靴に交換させる。


鉄の盾も、アナのからの払い下げ品だ。

ヴィーからアナへ、アナからパニへ、

装備品のローテーションが行われた。


「その靴は魔物の攻撃を避け易くなるから、初心者のパニでも安心だ。

 無理はしなくて良いが、頑張ってカッコ良い所を見せても良い」

「は、はいっ!頑張って来ます!」

「そんなのだれに見せるの?ご主人サマこないんでしょー?」


お前だよ、お前。

事情を知る者達がそう心のツッコミを入れた。

∽今日のステータス(2021/11/13)


 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 暗殺者 Lv45

   硬直のエストック(石化添加 +)鉄の盾(+)

   竜革のカチューシャ(+++)竜革のジャケット(+)

   竜革のミトン(++)柳の皮靴(回避上昇)

   身代のミサンガ(身代)

 ・ヴィクトラ    竜人族  ♀ 12歳 竜騎士 Lv44

   克服の白銀剣(防御軽減 +++)鋼鉄の盾(++)

   プレートメイル(++)抗縮の鉄籠手(麻痺耐性 睡眠耐性 毒耐性)

   鉄のグリーブ(+++)身代わりのミサンガ(身代)

 ・パニ       竜人族  ♂ 15歳 探索者 Lv44

   皮の靴(-)


  ↓


 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 暗殺者 Lv45

   硬直のエストック(石化添加 +)浮草の鋼鉄盾(回避2倍 +)

   竜革のカチューシャ(+++)竜革のジャケット(+)

   竜革のミトン(++)駿馬の竜革靴(移動力増強 +)

   身代のミサンガ(身代)

 ・ヴィクトラ    竜人族  ♀ 12歳 竜騎士 Lv44

   克服の白銀剣(防御軽減 +++)鋼鉄の大楯(+)

   プレートメイル(++)抗縮の鉄籠手(麻痺耐性 睡眠耐性 毒耐性)

   鉄のグリーブ(+++)身代わりのミサンガ(身代)

 ・パニ       竜人族  ♂ 15歳 探索者 Lv44

   鉄の剣(++)鉄の盾(+)チェインメイル(++)

   柳の皮靴(回避上昇)



 ・繰越金額 (白金貨2枚)

     金貨 89枚 銀貨 79枚 銅貨 57枚


  仲介料             (21100й)

   売却 克服の鋼鉄剣     △306000

   仲介手数料           61200


   購入 大楯          197000

   仲介手数料             500


   通信費               100

   依頼料              2400


   モンスターカード コウモリ    4800

   モンスターカード 牛       4200

   モンスターカード コボルト    4300

   モンスターカード コボルト    5300

   モンスターカード コボルト    5100


  装備品購入           (10000й)

   竜革のブーツ          10000


     金貨+ 1枚 銀貨+11枚

  ------------------------

  計  金貨 90枚 銀貨 90枚 銅貨 57枚



 ・異世界46日目(13時頃)

   ナズ・アナ41日目、ジャ35日目、ヴィ28日目、エミ21日目

   パニ11日目

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 大盾スロット付いていましたが暫くはカード待ちかな?
[気になる点] 本文) >帰り掛けにアレクスムの武具屋で竜革の靴を購入した。 >空きスロットは2つ、残念ながら3つの物は無かった。 >装備を整えて居間に戻って来たアナに、 >さっき買って来た竜革の…
[気になる点] 本文) >そうだ。 >自分は対面的に商人の設定だったから、 >当然の事ながらアイテムボックスにしまわずに、 >どうやって大楯を持って帰るのだと言う話になる。 間違いとまでは言えませ…
感想一覧
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