§159 親子
55層では、その後4グループと戦った。
敵の体力が大幅に増加しているので、1戦1戦が長い。
毒のお陰なのか、入った敵とそうで無い敵の落差が激しく、
どうしてもパットバット優先となりがちで、ラフシュラブは後回しとなる。
魔法の使用量は増えるものの、
毒を意識して矢を放ったためMP枯渇は無かった。
ただこれまでよりも相当長い戦闘時間に皆疲労しているようにも思う。
ギリギリで戦っている一般探索者はもっと大変だ。
そりゃあ中間部屋やボスの待機部屋で休憩を取りたくもなる。
何度か出会った休憩中の彼らを見た時は、
ダメージが蓄積して自然回復をしているのかと思っていたが、
彼らが休んでいたのは単純に疲労回復だったのだ。
時間は掛かるものの、負ける事は無いと判ったのでそこで切り上げた。
56層のゴーレムのパンチ力も、
パットバットを叩き付けたナズを見る限りでは威力は変わらないのだろう。
上がっているのはダメージのみと考えられる。
ジャーブがしっかりと防御を張れば多分耐えられる。
早めに帰宅し、自由時間とした。
買い取りカウンターが混雑する時間にはまだ早い。
これまで色々貯め込んだアイテムを纏めて売り払う事にした。
アイテムボックスは岩だらけなのだ。
普段から入り切らない分のアイテムは整頓のために納屋へ置いていたが、
岩は・・・なんて言うか、1つ1つがデカい。
・・・のでこれだけはずっとアイテムボックスへ納めていたが、
今後納屋の片隅が瓦礫置き場化してしまわない内に、
他のアイテムも早めに撤去すべきだ。
***
探索者のギルドに飛び、買取カウンターで岩を並べ始めると、
受付の女性に止められた。
「申し訳ありませんが、これをお幾つお持ちでしょうか?」
「ええと、多分100以上はあると思う」
「ひゃ・・・申し訳ありませんが、
このトレイに乗り切らない分はここでの買取を致しかねます」
「ええっ?じゃあどうすれば良いの、コレ?」
「大口の買取は専用のお部屋で買い取らせて頂きますので、
あちらの椅子に座ってお待ち下さい」
ああ、そう。
確かに、100個も200個もこの女性が運ぶのは大変だ。
ギルド専用の巨大なアイテム収納箱があり、
そこに職員が運んで入れているのだとしたら、
客に直接入れて貰った方が早いと言う事だろう。
指示された場所の椅子に座って待っていると、
大口担当らしき男から声を掛けられた。
「どうも、大量の岩をお売りになるとかで」
「ああそうだ、宜しく頼む」
「いやー、ゴーレムですよね?
稀にアイテムボックスが溢れるまで貯め込む方もいるのですよ。
そうならないように10個か20個位集まったら、
小まめにお売り下さると助かります」
無茶を言う。
1日で集まった量が多分1枠分よりちょっと少ない位なのだ。
大体50個程度集まるとして、小まめに売ったら3日掛かる。
「いや、まあ、はい。気を付けます」
「ではこちらへ1つずつ積み上げて下さい。数えますので」
大きな箪笥のような物がある部屋に通されて、
目の前に置かれたトレイ状になっている頑丈そうな机を指定された。
大量の買取はここで行うと言う訳か。
自分でも幾つ持っているか知らなかったが、
全て積み上げると324個あった。
勿論机から食み出したので、200以上からは床に置いた。
「こ、これほどまで大量に持ち込まれたのは初めてですね」
「こんなに有っても岩なんて誰も買わないんじゃないのか?」
「いえ、岩は建材ですからね、いつでも需要はあるんですよ。
かなり在庫が貯まったとしても、迷宮が現れたら一気に枯渇です。
奪い合いですね」
そういえばそうだった。
迷宮ができれば国の予算で道が、町が、井戸が、城壁が整備されるのだ。
更に民家や各種ギルド、宿屋なんかが場所取りを始める。
建築ラッシュだ。
そうで無くても家の建て替えや新居を構えたり、
既存構造物の老朽更新などもあるだろう。
こんな物はそれ程沢山使わないだろうと思っていたが、
意外と鉱石類って大事なのだな。
「ええと、324個ですか、かなり長い期間籠られましたね?」
「い、いやまだ4日程だが」
「ええっ?またまたご冗談を。
強靭なパーティでも1日籠って40個が限度でしょう」
そうなのか、40個・・・。
1グループ辺り平均2.5匹出るとするとすると、16グループ
1戦闘当たり15分から20分を掛けて倒すのだと言っていた。
魔物と接触するまで迷宮をぶらついて5分程度掛かるとすると大体5時間。
それは休み無くの計算で。
55層で戦った結果、5グループ戦って休憩が欲しいと感じた。
3回休憩を入れて合計6,7時間。
そう考えると40個が限度なのは大体合っている。
4日で324だと倍は倒した計算だ。
14日にして置くか?
変な悪目立ちは良くない。
「じゅっ、14日の事だよ」
「そっ、そうですよねっ!いやあ、びっくりさせないで下さいよ。
他にも売却品あればどうぞ一緒に出して下さい」
言われるままにアイテムを取り出す。
鑄やコウモリの羽なんかも大量にあったので、これも床へ並べた。
「14日分だけあって凄い量ですねえ、全部売却で宜しかったですかね?」
「ああ、どうすれば良いんだ?」
「そこのギルドボックスの扉を開けますので、中にどんどん入れて下さい。
終わりましたら扉を閉めれば自動的に換金されます」
な、・・・並べる必要あった?
変な物突っ込まれてギルドボックスを壊されないようにするためかな?
目視確認と言う奴だ。
そういえば濡れたコボルトソルトは買い取れないと、
ミチオ君がギルドカウンターの受付の女性から聞いていた。
並べさせた事は品質チェックも兼ねているのだろう。
男が扉を開けると、これまた黒い壁が現れた。
迷宮とは違い、油を引いたようなマーブル模様である。
それが壁・・・と言うか立体的にモヤモヤと蠢いている。
言われるがままに、恐る恐るアイテムを突き入れた。
アイテムは吸い込まれるようにして消え、
手は暗闇に弾かれて押し戻された。
ぶよぶよ、ブニブニしていてクッションみたいだ。
「もっと乱暴に入れて頂いて大丈夫ですよ?
1個1個入れられたら日が暮れてしまいますから」
担当の男も一緒に投入を手伝ってくれているが、
その方法はかなり乱暴だった。
2,3個を纏めて掴むと、ギルドボックスの空間に放り投げている。
それで良いのか。
そういえば荷役をした時に同行した冒険者も、
グミ状のアイテムをしまう際には乱雑に入れていた。
彼に倣い、自分も掴めるだけ掴んで闇に向かって放り投げた。
「もうございませんかね?」
「ああ、これで全部だと思う」
買取アップを付けているが、カルクは人に対して発動するのでは無いのか?
人では無い魔法的なアイテムであるギルドボックスに対しても、
果たして有効になるのだろうか。
買取カウンターの受付女性は商人では無く村人であった。
となると、査定をしたのはこのギルドボックスだ。
アイテムを入れれば自動的に発動するのだろう。
金貨3枚と銀貨が10枚前後、
それからやや多めの銅貨がギルドボックス横の小窓から排出される。
担当の男は数えもせずこちらに渡して来た。
「これで買い取りは終了です」
「えっ、幾らか数えてくれないの?」
「ギルドボックスが間違える事はありませんので、
心配せずとも大丈夫ですよ?」
そういう問題なのだろうか。
合計幾らですと言ってくれた方が、
報酬の有り難みも判ろうものだと思うのだが。
数えるのすら手間だと言う事だな。
買い取りカウンターで引き渡し時に金額を伝えるのは、
買い取れない物が含まれていた場合トラブルになるからだろう。
或いは職員によるネコババだってあるかもしれないし。
「そ、そうだな。ところで、ちょっと疑問なのだが」
「ええ?何でしょうか」
「ギルド神殿はどうやって増やしているのだ?
どの町にもギルドがあるが、トリアやシルクスは一部撤退したと聞いた。
簡単に増やせたり減らせたりする物なのか?」
ミチオ君たちの冒険録の中で見る事になった騎士ギルド神殿は小箱だった。
商人ギルドでは壁に埋め込まれているようであった。
ここ探索者ギルドでは買取ボックスも兼ねており、
その実態は箪笥だった。
簡単に設置できるものなのか、予てより疑問だったのだ。
「ああ、皆さん良くお尋ねになりますね。
ギルド神殿はギルド管理者の同意の下、子を儲ける事ができます」
「子?」
「はい、そして上位のギルド神殿の管理者は、
下位のギルド神殿をいつでも殺す事ができます。
このギルド神殿は王国にあるギルド神殿を親に持つので、
そこの管理者の意向によりここへ設置される事が許されているのです」
「それじゃあ強権を持っている者から不当な要求されたりするじゃないか」
「そうならないように、ギルド神殿の管理者は厳正な審査をしております。
強欲な方は管理者の職に就けませんね」
「どうやってそんなの調べるんだ?」
「さあ、こればかりは私にも」
「と言う事は、あなたは管理者では無いのか?」
「はっはっは、私はただの職員ですよ。ジョブも商人です。
職員は全員、アイテムボックスを持てないジョブと決められております。
管理者や迷宮案内人はちゃんと探索者の方ですがね。
利権が及ばないように、普段はこちらにおいでません」
へ、へー・・・、そうなのか。
確かにここでギルド管理人が詰めているようであれば、
買取査定に色を付けろとか、安く売ってくれとかの腐敗に繋がるだろう。
権力者が現場にいないと言うのは大事なリスクマネジだ。
職員がアイテムボックスを持てないと言うのも、これもリスクマネジだ。
貴重なアイテムや換金したお金を自分の懐に入れてしまえば、闇と消える。
本人の自供以外では回収不可能となってしまうからだ。
その前に盗賊か?
そしたら当然そのまま逃げるだろうし、
盗賊になってしまえばそもそも取り出せないからやっぱり回収不可能だ。
それにしたってもうちょっとギルドボックス?の数を増やして貰いたい。
大口取引の窓口が沢山あれば、売却査定の順番待ちも多少は改善されよう。
「もう少し利便性を高めるため収納箱を増やしたって良いんじゃないのか?」
「ギルド神殿の子を分ける場合、核となる素材も必要となるのです。
これがなかなか手に入らない物でして」
「えっ?そうなの?何なのか聞いても?」
「さぁ・・・こればかりは私も。
貴重であると言う事位しか存じませんねぇ」
そうなのか・・・。
確かに、貴重な材料が必要で勝手に増やせないとなると乱立は難しい。
設置した街が廃墟になりつつあるのならば、
移転させて別の場所で使いたくなるのは当然だ。
ギルド神殿のエネルギー源は魔結晶だとロクサーヌは言っていた。
この世界の魔法的なアイテムたちは大体迷宮に繋がりがある。
であるならば恐らくその素材とやらは迷宮産であるはずだ。
この国は討伐できないように50層以降は制限されている。
貴重だ、と言う事ならば50層以降のアイテムなのだろう。
となると外国産・・・。
それなら確かにお高く付きそうだ。
一度は手に入れてみたくはあるが、
それすら20層前後を攻略中の我々が入手できるような物では無さそうだ。
ミチオ君たちの・・・。
クーラタルは80層以降も攻略が可能だったはずだ。
そこら辺のアイテムだとして、まずもって挑むパーティは少なさそうである。
あの物語の中でギルド神殿が乱立されていなかった状態を顧みるに、
どうせレアアイテムなのだろう。
強敵に挑んでも出ないなら丸損だ。
そもそも一般人にギルド神殿なんて運営できっこない。
そんでもって国の許可も必要になるだろう。
興味はあるが我々が興味本位で手を出していい領域じゃないな、これは。
一般人である自分たちはアイテムを売るか転職するか位にしか用は無い。
「じゃあ探索者へ成りたい場合はこの部屋で転職するのか?」
「いえ、この反対側の部屋に壁越しに繋がっていまして、
講習や登録はそちらで行っています。
探索者へのジョブ変更をされた事がありませんでしたか?」
おっと、そうだった。
何かの職に就くにはまず探索者だ。
ギルド神殿で転職をしていないとなると色々ボロが出て来る。
多分この国の探索者ギルド神殿は全て「こう」なのだろう。
「そ、そうだな。自分はもっと小さい街で転職したので知らなかった」
「そうですか。転職は昼食後の人が少ない時間に行いますので、
買取や購入に来られるだけですと気が付かれないかもしれませんね」
「そ、そうか、ありがとう」
「いえいえ、また大量にお持ちになった際はお呼び下さい」
今日は色々ためになった。
買い取りカウンターの秘密やギルド神殿の秘密を知れた。
いや、特に秘密では無く公言しているようだ。
知った所で一般人にはどうせ成りようが無い。
探索者の職をそれなりに極めただけの実力があり、
そして何かしらの審査をパスしなければ成れないのだし。
転職の時間を聞いたが、それは昼過ぎなのだと言う。
時間を数える講習などがあり、その後に試験と認定式があるのだろう。
朝と夕は職員全員が大忙しなので、隙間時間に転職業務を行うのは当然だ。
金貨3枚と銀貨十数枚をアイテムボックスにしまい、
銅貨は小銭袋へしまって探索者ギルドを後にした。
家に帰り自室へ戻る。
いや、自室に直接戻った。
台所事情に参加しないアナがベッドで横になっていると思ったが、
部屋には誰もいなかった。
庭でも打ち合いの声はしない。
皆部屋にいるのだろうか?
肩掛けポーチを机へ置き、ベッドに臥せるや否やアナから声が掛かった。
「ご主人様お帰りになられましたか、皆台所に集まっております」
「え?何かあったっけ?」
「食事の用意が整っております」
全て任すとお願いした手前、エミーは前もって準備してくれていたようだ。
普段よりはやや早い夕食を取った。
魚のスープに焼いたラム肉だ。
スープはどこかピリッとした風味に、
香りの良いハーブが加えられている。
唐辛子の辛さでは無いので、恐らく辛パセリの味なのだろう。
これまでも頻繁に使っていたようだが、
薄味のスープだとその頭角がより一層引き立つ。
ハーブの一種だとは思うが、高級品だった辺り恐らく輸入モノだ。
一般的な味付けに使う黒胡椒は迷宮で出土するが、
やはりこの世界にも黄金一粒と言わしめる貴重な食材があるのだろう。
文明の発展段階的にまだ未発見な物が多そうだ。
そういった物を発見して一財産築くのも悪くは無い。
自分だっていつかは老人になる。
いつまでも迷宮に行ける訳では無い。
何かしら手に職を付けるべきなのだ。
勿論、老後の資金として貯蓄を心掛けてはいるが。
「今日のスープも旨かったぞ、エミー」
エミーは無言のまま深く頭を下げた。
料理を毎日作ってくれているので感謝をするのはこちらなのだが、
この文明の発展段階ではまだジェンダーの理解は無さそうだ。
いや、逆の家庭も普通にあると思う。
女性が探索者で男性は家事を行う。
と言う事は、役割分担的な意味では男女平等は当たり前なのか。
何でも感謝な日本人はどの世界に行っても異質なのかもしれない。
「そういえば明日の休みだが、皆には課題を出そうと思う」
先に食べ終えてしまったので、スプーンを置いて皆に尋ねた。
「課題・・・ですか?」
「どういった事でしょう」
「難しい事は俺にはちょっと・・・」
「かだいって何ー?」
(やっておきなさいと言うご命令の事です、ヴィー様)
(ふんふん)
「明日それぞれ銀貨を5枚ずつ渡すので、
この家に足りないと思う物、
あったら自分の仕事が楽になると思う物、
或いは誰かの仕事が楽になりそうだと思う物を買って来い。
余ったら甘味を買ったりして自由に使ってくれ、返却は不要だ」
(ど、どういうコト?)
(生活に必要な物を買って来いとの事です。
誰の物でも良いし、自分の物でも良いと仰せです)
ヴィーとパニが顔を寄せ合って内緒話をしている。
聞こえているが。
竜人族の言葉は他の誰にも理解できないので、
何を言い合っているのか自分以外は解らないだろう。
それなりに仲も良くなって来ているようで安心した。
ポケットに入れてあった金袋を取り出して、
それぞれの前に5枚ずつ積む。
「好きな食べ物を買って来ても怒らないので安心しろ。
買う物が無ければ、生活に必要な物を何か選んで来い」
改めて念を押して配った。
建前上課題とは言ったが、これはただの小遣いなのだ。
恐縮して何も買って来ないと言うのを防ぐために、
何も思い当たらなければ家の物を、と付け足しただけに過ぎない。
ヴィーの服にはポケットが付いていない。
アナはズボンで、ナズはワンピースだがアイテムボックスがある。
エミーの服もポケット付きの物を選んだ。
ジャーブもズボンだし、パニもそうだ。
ヴィーには金袋ごと手渡した。
「手で持つと誰かに盗られるかもしれないから気を付けろよ」
「何でっ!とられないよ!」
「以前、自分はうっかり盗られたから念のためにな」
「とらないよ!」
「ははは」
「もー!」
「管理が不安ならパニに持って貰え。アイテムボックスがあるからな」
「だいじょうぶっ!」
威勢良く突っ掛かって来たが、その後パニに袋を手渡していた。
金を預ける位には信頼しているようで何よりだ。
どうせヴィー1人では難しい買い物ができない。
買い物をするならパニとセットだろう。
「エミーは1人で買い物は難しいだろうから、
ナズとアナ、3人で一緒に行け。2人とも頼む」
「かしこまりました」「お任せ下さい」(こくり。)
ジャーブは元一般人だし、買い物にあーだこーだ言う必要は無いだろう。
それに必要な物と言ったらどうせ畑道具だと思う。
銀貨5枚で足りる範囲の農具を買って来そうだ。
予想に反して別の物を買って来たら、逆に褒めてやりたい。
年上の男に何を買うかなんて指示をしたくない。
しかし奴隷が金持ちの身の回りの世話をするこの世界では、
細かく指示する事は本来ならば当たり前の事なのだろう。
やはりまだ地球の感覚が抜け切っていないのだと反省した。
「それから、今日は──」
「ハイハイハイ!行きます!」
まだ言い掛けた途中なのだが、何かを察したヴィーが真っ先に手を挙げ、
やれやれ顔でジャーブも手を挙げ、アナも続く。
エミーも遠慮がちに半分程手を挙げた。
「今日酒場に行くのは4人か?」
「あ、あの、僕も宜しいのでしょうか」
「宜しいも何も、行くかどうかを聞いているのに、
それを答えるのにもわざわざ許可を出す必要があるのか?」
「い、いえっそのような事は無いかと思います」
「いい加減慣れろ。行くか、留守番か。パニはどうする?」
「ご、ご一緒させて頂きます」
「じゃあナズは申し訳無いが、着いたらタコスを6個注文して置いてくれ」
「多分、もう注文せずとも用意してあるかと思います」
「そ、そうか」
あいつまた来たよ、今日もどうせ同じ物だろ?
とか思われてそうで微妙な気分になった。
たまには斜め上の注文もしてみたい。
「ついでに、おすすめの肉料理でも追加するように言って置いてくれ」
「かしこまりました、ラムのチーズ焼きですね」
ほう?
チーズと聞くだけで、もう何だか凄く旨そうである。
肉の間に挟んだりして焦げ目が付くまで焼くのだろうか。
是非エミーに食べさせてレシピを盗んで来て欲しい。
エミーを見詰めると頷かれた感じがあった。
考えた事は同じと言う事だ。
会話は無くとも、たった今エミーと心が1つになった気がした。
「それじゃあ風呂を入れて来るので各自きゅうけーい」
「はーい!」
「それでは、まだ少し明るいので俺は畑を」
「武具の手入れをしますので、私が必要な時にはお呼び下さい」
「じゃあエミーちゃん一緒に片付けましょうか」
(こくり。)
***
正直、アナの助けは必要無くなっていた。
MP回復速度20倍と遊び人のスキルをMP中上昇にセットするだけで、
後は強壮剤2粒だ。
MPの総量に応じて自然回復量が上がる、この仮説は正しかった。
風呂の際にアナを呼ばなくなると、
また役割がどうのこうのとモヤモヤされるだろう。
だから1戦だけアニマルトラップをお願いした。
中間部屋、ボス部屋付近での人影の確認、
そしてアニマルトラップのターゲットを取って貰い、石化。
以上、終了だ。
半夏を強壮剤に変えて補充をした。
風呂で、自室で楽しんだ後はナズを連れて酒場へ。
女将さんには次回ナズを派遣できない事を伝えた。
騎士団の宴席に呼ばれるのだと説明すると驚かれていた。
女将さんは大慌てでパピルスを張り合わせて何かを書くと、
これからナズの立つであろうステージの裏側に貼り付けた。
多分、次回はお休みだとかそういった事を書いたに違いない。
うん、読めない。
ボーナスポイント1ポイント支払うから、
どうか文字理解のスキルを追加してくれ。
勿論不要な時は切り替えさせて貰うが。
ズルは駄目か。
***
いつものようにそのまま一旦帰宅して、
自室で休憩と言う名目でアナとちょっとだけイチャイチャし、
エミーの風呂が終わるのを待って酒場に向かう。
夜も更けた酒場はいつも通り混雑しており、
ナズの歌もそれなりに盛況であった。
明日の休みで気が緩んだのか、
珍しくアナは酔い潰れて寝てしまいジャーブに背負われて帰宅した。
アナをベッドに寝かせた後、
ナズの仕事の終わりを待つ際にはジャーブを連れて行った。
追加の酒をジャーブと交わす。
ここではあくまでも一般客だ。
これまでもカウンターに向かって身内風を吹かせた事は無かったが、
ナズの件が発覚してからは特に常連客の振りで過ごすよう注意していた。
「・・・ユーアロナの酒場にいた者が数名いますね」
「そうなのか?」
「はい、あの髪型の男とその連れに見覚えがあります」
「では作戦は概ね順調のようだ」
「流石はユウキ様です」
次回はナズが来ない。
順調に噂が浸透するまではまだまだ掛かるはずだ。
たとえボルドレックの子息アイザックの耳に入った所で、
本人は騎士団管轄にいるのだから、そう簡単に偵察へとは赴けないだろう。
とすると、ボルドレックの2番奴隷が冒険者なのだっけ?
そいつが確認をしに来る、
或いはボルドレック本人を連れて来るかもしれない。
もう少し噂が広まった際には気を付けなければ。
∽今日のステータス(2021/11/03)
・繰越金額 (白金貨2枚)
金貨 86枚 銀貨117枚 銅貨 63枚
アイテム売却 (24100→31330й)
蜜蝋 × 11 330
鑄 × 136 4080
コウモリの羽 × 170 5950
コウモリの牙 × 12 780
岩 × 324 12960
酒代 (1710й)
ミード ×3 300
タコス(大) ×12 780
カクテル ×3 150
カルーア ×3 240
ジュース ×3 90
煎り豆 30
ラム肉のチーズ焼き 120
金貨+ 3枚 銀貨- 4枚 銅貨+20枚
------------------------
計 金貨 89枚 銀貨113枚 銅貨 83枚
・異世界42日目(夕方)
ナズ・アナ37日目、ジャ31日目、ヴィ24日目、エミ17日目
パニ7日目、56層同行まであと3日




