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13:更なる躍動

ーーーー


 工房の中。

 作業台の前でひたすら作業を続ける俺がいた。


 砕いたアダマイトタートルの甲羅を、研磨しながら形を整えてゆく。

 何度も何度も、入念に怠り無く磨いていく。

 もう少しだな。


 眼球の外殻はもう組み上げてある。

 あとはこの作業を終えて、外殻の中にハメ込めば完成だ。



 とそこで、小屋の入り口からチリンチリンと高い音が響く。

 そして少し経ってから、工房の扉が開かれた。

 

「ーー作業中失礼します。ヒュドラの鱗、換金して参りました」


 一旦山から下りて町に向かっていたストレインが帰ってきたようだ。

 俺は顔を上げ、応えた。


「おつかれさん。道中大丈夫だったか」

「ええ。ふもとまでクマ吉殿も同行してくれましたし、この辺りには脅威となる魔物も少ないですから」

「それもあるんだが……町の様子とか」

「相変わらずでしたよ。まあ元騎士崩れの変わり者が凋落して、また山に住み始めたと遠巻きに見ているだけです。なんてことはありませんよ」


 ハハハと笑ってストレインは荷物を下ろした。

 

「そういえばアキュラ殿。頼まれていた品、換金した硬貨で揃えておきました」

「おお! でかした」


 ストレインの荷物の中には、米や調味料などが入っていた。

 俺が買い出しを頼んでおいた食料品だ。


 くう〜!

 この世界に来てから一年以上たつ。

 サバイバルオンリーの食事情で、米なんて食べていない。

 米食いてえ!


 今日の夕食を楽しみにしながら、俺は作業の手をさらに進めた。





 ストレインと契約を交わしてから1ヶ月ほど経つかーー

 俺は相変わらず工房で邪眼作りに勤しんでいた。

 

 ストレインも小屋に住み込み、あれこれ手伝ってくれている。

 クマ吉と外で手合わせなどして体を鍛え直しているようだ。

 最近クマ吉があまりにも人間じみてきている気がするが……まあ気にしないでおこう。


 今日は町に下りて買い出しに行ってもらっていた。

 色々入り用だったのは確かだが、ストレインが言い出したことだ。

 何かしらの意図があったのかはわからんが、気にするほどでもない。


 そして今日は、記念すべき邪眼第二号完成の日でもあった。




「ーーよし。できたぞ!」


 俺は額に流れる汗を拭い、一人叫んだ。

 クマ吉の第一号作成の経験があったため、以前よりスムーズにできた。

 それでも一ヶ月近くかかっちまった。

 次はもっと早く、上手くやらなきゃな……。


 製作の才能をもってしても手強い邪眼製造。

 だが、とてもやりがいを感じる。


 達成感に悦を感じてアホ面していると、工房にストレインが駆け込んできた。


「ついに完成しましたか! おめでとうございます!」

「ああ、ようやくな……。どうする? 試すのは明日にするか?」

「……!! いえ、今すぐお願いします!」


 ふふ、そう慌てるな。

 と言いたいところだが、俺もワクワクしている。

 善は急げ。

 さっそく試してしまおう。


 失敗する可能性など考えたくもない。

 大丈夫だ……大丈夫。



「じゃあ……いくぞ」


 期待と不安に胸一杯であろうストレインの前に立ち、手にした邪眼を近づける。

 そして、ストレインの右目にソレを押し込んだ。


 にゅるにゅるーー!

 っと、邪眼に繋いであるミネキシワームの体がストレインの右目の奥へと潜り込んでいく。

 

「うっ……! グッ、ああっ!」


 体に異物が入りこむ感覚に、苦しんでいる様子のストレイン。

 ……大丈夫なのか? 本当に大丈夫なのか?

 俺の首筋に嫌な汗が流れる。


 するとストレインが右目を手で押さえたまま、その場に膝をついた。


「ーーストレインッ!」


 俺は慌てて駆け寄った。

 やっぱり人に使うべきものでは無かったのか?

 

 息を飲み、ストレインの様子を窺う俺。

 しばらくすると、ストレインが急に立ち上がった。

 うおっ! びっくりした!


「……これは。こんな奇跡があるなんて……」

「ど、どうだ? 見えるか?」


 ストレインが俺の両手をガッシリと掴んだ。


「やりましたねアキュラ殿! 成功、成功です!」


 うおお。

 手を掴んだまま上下にブンブンするな!


「まだ視界はぼんやりとしていますが……ワームが目の周りと同化したのを感じます。今のところ、寄生虫の意思のようなものは感じません。ちゃんと、目の神経の代わりとして機能してくれているようです」


 元々のミネキシワームは半年ほどかけて意識を奪うからまだ油断できないがーー

 そうか……成功したか。  

 

 とりあえずの成功に、俺はどっと力が抜けてしまった。

 良かった、なんとかできたぞ。


 ふとストレインの方を見てみると、顔を伏せ、静かに涙を流していた。



ーーーー

ーーー

ーー



 夜。

 小屋の外。

 買ってきた米を、作っておいた飯ごうのような物に入れ、火で炊いていた。

 火の周りには俺とストレイン、少し離れたところにクマ吉が佇んでいた。

 俺は椅子に腰かけながら、ストレインに説明する。


「ストレイン、ちょっと右目に魔力を込めてみてくれ」

「魔力……こうですか?」


 そう言いつつ、ストレインが魔力を込めると、キイィ……ンと右目が赤く光り輝く。

 そしてストレインの全身から、光の粒子が溢れ出てきた。

 

「これは……!」

「その目に魔力を込めると、肉体が飛躍的に強化される。そいつはコドモドラという雑竜種の特性を利用したものだ」


 竜種には、竜法という種族専用の魔法のような強い特性が共通してある。

 能力値の上がり幅は個体によって違うが、魔力によって自らの肉体を強化するものだ。

 ランク★3の雑竜種なので本家には劣るが、竜法には変わりない。


「名付けて……竜化の魔眼、ってところか」


 ちなみに。

 邪眼では無く魔眼という名前にしたのにはワケがある。


 前も話したが、俺にとって邪眼とは見たものに強い影響、呪いや死を与えるような恐ろしいモノというイメージがある。

 しかも、その能力を制御しきれないような状態であったら、なお良しだ。

 だから、自分に対してのみ影響を与えたり、魔力によって制御できるような物は、魔眼という名称で区別しようということだ。

 いや、邪眼と魔眼なんて同じ意味合いの言葉でしか無いので、こんなのはただの気分の問題なのだが。


 フヒヒ、すまん、厨二全開ですまん。

 まあ、こちらの方が作る俺としても区別しやすいのでな。

 ものづくりに関しては、とことんこだわりたい。


「いずれ、その欠けた左目の方も邪眼を作ってやる。それまで、その右目を使いこなしてみてくれ」


 俺はストレインに声をかけるが、反応がない。

 自分が竜種の持つ特性を身に纏っていることに、まだ驚いているようだ。


 俺は炊きあがったご飯を椀によそい、口にいれる。

 んん〜!

 これこれ! 白米うめえ〜!


 驚いているストレインを無視して、俺はクマ吉と飯を食らっていた。

 するとストレインが突然、こんなことを言い出した。


「アキュラ殿、あなたの作り出す物はこの世界での常識を遥かに超える一品ばかり。あなたが作った武器や道具などを外の世界に売り出してみてはどうでしょうか」

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