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11:邪眼工房

 扉を開け、工房に足を踏み入れる。

 

 さきほどの部屋より大きな間取りのこの一室。

 部屋の中心には、木を切り出して作った幅広の机が置いてある。

 これが俺の作業台だ。


 壁周りには棚が並んでおり、素材などを収納している。

 そして右に行くと、完成した武器を保管するための部屋への入り口。

 工房の奥には、外に出るための大きな裏口がある。

 裏口は、ガレージのような押し上げ式の木製シャッターとなっている。


 だいたいの造りはこんな感じだ。

 俺は普段、この工房内で作業をしている。

 

 狩ってきた魔物は外で捌いて、工房につながる裏口から出入りするのだ。

 裏口からでてすぐ近くには石を積んで造った小型の窯もある。

 外で作業する日も多い。

 

 目が見えないストレインのために、工房内を歩きながら説明してやった。

 ストレインは俺の説明を聞きながら、しきりに感心している。

 俺も熱が入り、素材の効能や使い方の工夫などついつい語ってしまった。

 ヒュドラを倒したときの自作弓、エネルケスアローも見せびらかすように解説した。

 

 正直すごく楽しい。

 これまでいろいろな物を作ったけど、誰かに見てもらいたかったのかもしれない。

 

「……本当に驚いてばかりです。こんなにも魔物について詳しい御方は他にはいません」


 一通り聞き回った後、ストレインが感嘆の声を漏らす。


「それに魔物エネルケスの糸を利用したその弓。そこまで複雑で精巧なモノを作れる職人は王都でも聞いたことがありませんよ」


 あったりめえよ。

 魔物に関しては図鑑のおかげで骨の髄まで知り尽くしている。

 なので、魔物をつかった製作物に関しては、俺の右に出る者はいまい。

 他にも剣や槍などの武器は一通り作ってある。

 

「フォレストクロウベアを使い魔の如く使役していたのもそうです……アキュラ殿、あなたは一体……」


 ストレインが不思議そうに俺の方を向く。

 俺の正体を図りかねているようだ。


 異世界からものづくりのため転生してきました! よろしくねー!

 ……などと言ってもしょうがないだろう。

 不審がられるだけかもしれない。


 さてなんて説明したもんか……。

 そう考えて唸っていると、工房のシャッターが揺れた。

 なにかが外からぶつかっているようだ。


 あ、忘れてた。


 今頃、ヒュドラの死体をくわえたクマ吉が外でまだかまだかと待っているのだろう。

 しまいには体当たりまでかましてきたわけだ。

 ええい、短気なやつめ。

 俺は内側からシャッターを押し上げてやった。

 ガァア!と吼えるクマ吉をなだめつつ中に入れる。



 ヒュドラは一旦外に置いてきた。

 剥ぎ取りをしなければならないが、今は工房初のお客さんがきてるんだ。

 後でかまわないだろう。


 ストレインは工房内に入ってきたクマ吉に対して警戒態勢をとっていた。

 その手は今にも剣を抜いて襲いかかっていきそうである。

 まあ無理もないか。

 この世界において魔物は恐ろしい存在なのだろう。

 ストレインにとって、魔物と信頼関係を結ぶなど信じられないのだ。

 

「クマ吉は俺の友達だ。大丈夫だから手を降ろしてくれストレイン」

「いや……しかし……」

「あの時、身を挺してお前を助けてくれたのはコイツだぞ。わかっているだろう」


 

 ストレインは何事かを葛藤するかのように顔を伏せる。

 その後、大きく息を吐き、鞘にかかった手を下ろした。

 そうして顔を上げる。

 

「いえ……その通りです。助けて頂いた身でありながら、とんで非礼を致しました。申し訳ありません」


 ストレインはクマ吉の方に向き直る。


「そして助けてくれてありがとう。ええと……クマ吉殿?」


 ストレインが差し出した手のひらの上にクマ吉が爪先をちょんと近づける。

 あれがクマ吉流友好の証なのだ。

 お手、みたいなポーズでちょっとアレだが。 

 しかもちょっぴり痛い。


 なにはともあれ、二人?とも良い関係を築けたようでよかった。

 ストレインは良い奴だが、それでもクマ吉に手を出そうもんなら俺が黙っていない。

 せっかく出会えた初めての人間と殺し合いなどしたくなかった。

 



 そうしているうちに、クマ吉の方を見て、ふと思い出す。

 そういえば、まだ紹介していないモノがあった。

 この工房で作る完全オリジナルプロダクション。

 俺のスペシャルだ。

 

「ちょうどよかった。クマ吉、目の調子はどうだ」

 

 俺はクマ吉に近づき左目のあたりを撫でる。

 そこには生物本来の瞳とは思えない、明らかに異質な眼球のようなモノが埋まっていた。


 俺の問いかけに反応したのか嬉しそうにガウガウ吠えるクマ吉。

 どうやらうまくいっているようだな。


「……アキュラ殿、目の調子……とは? クマ吉殿の目に何かしているのですか?」


 目の見えないストレインが、俺とクマ吉のやり取りの意味を尋ねてくる。


「ああ。クマ吉の左目は俺が傷つけたせいで、目としての機能を失っていたんだ。だからある物を作った。それはなーー」


 クク、聞いて驚け。

 俺が開発した物の中でもかなりのキワモノ。

 思春期の頃、誰もが一度は憧れるアレーー。


 え? 夢見てんのはお前だけって?

 うるせえ!


「これはな……俺が造り出した、邪眼という代物だ」

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