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10:ビフォーアフター

 ふふふ。

 あの打ち捨てられていた廃小屋は、今や俺の城だ。

 1年かけて築いた俺の匠の技を紹介しよう。

 

 

 長年の風化で傷んだ木造小屋。

 その外装を魔物の鱗や皮膚などでコーティング。

 耐熱・耐寒ともに良好、雨風にも強しだ。

 さらに衝撃を吸収する特性をもった素材等を使用。

 よほどのことがない限り外部の衝撃で崩れることは無いだろう。


 中に入ればあら不思議。

 天井には電灯が点いているではありませんか!

 でも山の中に電気が通っているわけでもない。

 これは魔力を電気エネルギーに変換するモンスターの一部を使って作ったものだ。

 魔力源は魔物の牙や爪に蓄えられているものを使用している。

 これで夜でも問題なく作業ができるようになった。


 自分の魔力に関しては、使い方が今だにわからん(あるのかどうかもわからない)。

 なので、魔力が蓄えられている魔物の部位などはとても重宝しているのだ。

 ……もしかして俺、魔力ゼロとか勘弁してや?


 元々あったこの部屋は、内装を綺麗にした以外あまり手をつけていない。

 調理場などもそのまま使っていた。

 しかし、部屋の奥には、以前はなかった扉が存在する。

 本来、この1部屋かぎりの山小屋だったのにだ。


 何を隠そう、勝手に小屋を増築した!

 後ろに1室、さらにその隣にもう1室。

 外に出て少し離れたところには物置小屋まで作ってしまった!

 ついつい楽しくなってしまったのだ。

 ははは! すまんな!

 ……まあ落ち着け俺。



 


 小屋の中に入り、周りをキョロキョロと見渡す仕草のストレイン。


「これは……すごい。あの小屋がこんな風に……」


 いやお前見えてへんがな。

 それともこの世界の住人は基本ツッコミ待ちなのか?

 

「見えはしないのですが感じるのです。以前とは全く違う気配、雰囲気といいますか」


 へえ、凄い。

 五感を一つでも失うと、他の機能が飛躍的に発達することがある、とは前世で聞いた覚えのある話だ。

 周囲の気配を感じ取り、断片的に頭の中でイメージしているのだろう。

 そこに至るまで、並大抵の努力ではなかったはずだ。

 

 しかし待てよ。

 さっきからストレインの言葉がなにかひっかかる。


「以前……って、ここに来たことがあるのか」

「はい。というより、ここは元々僕の家です」

「ーー!?」


 なにぃ!?

 ままま、まさか。

 人が住んでた形跡はあるものの、何年も手つかずだったのだ。

 てっきり捨てられた廃屋とばかり思っていた。

 写真とかも残ってなかったし。


「家を出るときに、荷物はほとんど持ち出したのですよ」


 こんな危険な山に人がいるあたりおかしいとは思っていたが……。

 まさか自分の家に帰ろうとしてる最中だったとは。


 はわわ。

 勝手に人の家改造して自分のものにしちゃった……。

 

 そ〜っとストレインの様子を窺う。

 すると、ニコッと微笑むストレイン。


「アキュラ殿。つまりあなたは僕の家であったこの小屋を好き放題してくれちゃったんですね。あまつさえ部屋まで増やして……完全に私物化したというわけですか」


 ひえっ。

 ストレインさん怖い。

 さっき初めて挨拶したときの清涼感が嘘のようだ。

 実は真っ黒ストレイン!


 まあ何年かぶりに実家に帰ってきてこれじゃ、そりゃー怒るよな。

 俺は焦って弁明し始めた。

 

「い、いや、すまんかった。てっきり人の手を離れたものかと……」

「だが悪気があったわけじゃないぞ! 俺も生きるためにだな……!」

「そうだ金か!? いいぞくれてやる! ただし無一文だがなぁ!」


 などと情けなく(ホントに情けない)半ば狂乱状態に言い訳する俺。

 すると、その様子を聞いていたストレインがクスクスと笑いはじめた。

 え……?


「なんてね……フフ。すいませんアキュラ殿。戯れが過ぎました。お許しください……」


 笑いながら頭を下げるストレイン。

 これは……一杯食わされ奴〜?


「あの時は、もう帰らぬつもりで家を出たのです。僕にアキュラ殿を責める資格などありません」


 も、もーう。

 ちょっと焦っちゃったじゃないの! このおバカ!

 

 何故かオネイ口調で平静を保とうとする俺。

 ……でもさっき感じた怒気はホンモノだったよ?


「それにアキュラ殿がいなければ僕はここに着くことなく死んでいました。命の恩人に使っていただけるのなら、僕も本望です」


 うーん、なんて真っすぐな奴だ。

 気持ちのいい誠実っぷり。

 初めて会った人間がストレインでよかった。


「ところでアキュラ殿。あちらの新しく建てられた部屋は何があるのです?」

 

 ストレインが興味深く奥の扉を指差す。

 その先はーー。


「俺の製作工房だ」

「製作工房……ですか? 小屋をここまで変えてしまったことから相当の職人であるとは感じていましたが……。工房ではどんなものを作っているのですか?」


 見た方が早い。

 そう思い、ストレインを連れ奥の部屋へと向かう。

 あ、そういや目が見えないんだったな。

 まあいいか、アレを知ったら驚くだろうな。

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