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DIE A LOG  作者: さまー
2章 ~Die a Loger~
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29.後藤晴久より

 「今すぐ車を出せ近藤曹長」

ある男の低い声が響いた。

「ちょっ、急にはさすがに無理っすよ」

楽天家の男は笑いながら答えた。

「今すぐだと言っている」

ものすごい剣幕で近藤を睨んだ男、志場魁皇。さすがの楽天家も、このときばかりは表情を真剣なものに変えた。

「わかりましたよ。でも、最低でも1分は待っていただかないと無理がありますよ?」

そう言って踵を返し、小走りで去っていく近藤。

不安を煽る戦地からの煙。

志場は気が気でなかった。


 ―何が起きているというのだ…


 いてもたってもいられなくなった志場は、すぐさま柴田に連絡を取る。彼は後衛の人間だから大丈夫なはずだ…そう信じた。

しかし、通信中を表す電波の音を聞くと不安になる。柴田は前衛的な男だから、きっと前に出ているかもしれない。

そんな思いが近藤と車を待つ彼を襲う。



 目を覚ますと、かなり時間はたっていたらしく、日の差していた方向も変わっていた。

法寺理貴は、痛み焼けるように熱い全身を起こし、辺りを見渡す。

煙による霞はだいぶなくなり、視界も少しばかりクリアになっていた。

しかし現していたのは残酷な情景そのものだった。

周囲の人々で起き上がっているのは、自分を含め数人しかいない。柵で見えないが、おそらく向こう側にも多くの死体が転がっているのだろう。


 「菅さん!!」

背後に倒れていた菅特等兵らの姿を見つけた。自分以上に焼け爛れる彼の身体は、もはや生きているとは思えない。

力なく倒れるその姿。しかし、右手にはしっかりと、何かが握られていた。

「写真だ…」

推量に過ぎなかったが、確信はあった。

だから辛かった。

「畜生!!」

法寺は座り込んだ。跪いた。泣いた。喚いた。叫んだ。


 絶望した。


 自分が、後藤と対話し、菅に話しておけば……

これでは、後藤も菅も誰もかもが無駄死にしたかのようではないか。そう自らを責める。

「後藤さん、あなたの声を聞かせてください…」

まだ痛む頭を抑えながら、焼け野原の中央で、能力を発動した。




 「おう法寺か…まさかお前が本当に能力を使えたとはな」

視界が真っ暗になる中で、後藤晴久伍長の声だけが聞こえる。

「はい、お疲れ様です後藤さん」

「ふっ、最期は呆気なかったぜ…、まああの言葉が届いてくれてるといいんだがな」

「あの言葉…?」

後藤の話に引っかかった法寺は問う。

「ああ、『生きろ!』って菅たちに叫んでやったよ。あいつぁ…家族がいるからな…そいつらのためにも死んじゃいけねえ」

法寺の顔が固まった。本能は、これから聞こえてくる声をシャットアウトしようとする。

「あいつの嫁がよぉ…またどエライ美人でな! そらもう魂消(たまげ)るぜ」

発する言葉の一つ一つが棘となって法寺の胸に刺さる。

柔らかく鋭い彼の言葉の棘が、痛くて痛くて仕方なかった。

「この言葉、もし聞こえてなかったら、いや、聞こえてたとしても、あんたからも届けてやってくれねえか? あいつら、きっと俺のこと恨んでるだろうから…お前から言ってやってくれた方がいいかもしれないな」

法寺はまた泣き崩れた。自分をまた責めた。

「どうしたんだよ法寺…何でお前が…」

申し訳なさが胸から溢れた。嗚咽(おえつ)となって吐き出そうとするが、どうにも減らない。

罪悪感に駆られる。


 自分の目的って…一体―――


 「俺から頼めることはそれ以外にねえや…本当にそれだけ伝えてくれりゃ、俺はこの世に未練を残すこともなさそうだな…サンキューな法寺」

後藤が会話を締めくくりだした。言わなければ、真実を…謝罪しなければ…

「お前がいてくれて…ホントによかったよ…」


 とうとう、彼は言えなかった。

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