第21話 神前2、魔王就任祭 【第1章 完】
夕食の場にて。
「ベリアは、神前は目指さなくていいよ!」
「なぜだ?」
「だって、既に下位神だから!」
ポクポクポク、チーン。
「……そうだった!!」
「うん! だから、目指すはレアスキル獲得! それから、神と神前が持ってるレアスキルは、神権って呼ばれて区別されてるよ!」
「神権……」
「神権! カッコイイな!!」
「マグティアは、レアスキルを持っているのか?」
「!! たしかに、知らんな!」
「ボクのレアスキル? うーん、秘密!」
「……そうか」
「なにぃ!? 知りたいではないか!」
「ギオン、こうなったマグティアは、引っぱたいても言わないから諦めろ」
「引っぱたいたことがあるのか……」
ギオンは神妙な顔をした。
「レアスキルって、どうしたら手に入るんだ?」
「簡単に言うと、その道を極めることだね!」
「……なるほど。なぁ、マグティア」
「なぁに?」
「私は何を極めたらいいだろうか?」
「……」
マグティアは一瞬黙る。
「……それを見つけるために神位昇天学園に行くんだよね!」
「な、なるほど!」
「神位昇天学園は楽しいよ! 何だって自由! 賭け事も、勝負も、支配も従属もね!」
「自由……」
「だからお前、あんなに賭け事してたのか」
「てへ☆ まぁ、そういう訳だから、色んな才能が伸びるわけ!」
「なるほど……」
神位昇天学園に想いを馳せる。
「……楽しいだろうか」
「うーん、ベリアは苦労するだろうね!」
「なぜ?」
「だって、ボクの神嗣だもん! 絶対喧嘩ばっか吹っかけられるよ!」
「嘘だろ!?」
思わず立ち上がる。
「……食事中だったな。失礼」
「うん笑 まぁ、頑張ってね! ボクもOBとして顔出すから!」
「それは楽しみだな」
「ねぇ、ベリア様、遠くに行っちゃうの?」
ライムが不安そうにベリアに問う。
「あぁ、少し学校に通ってくる」
「学校! ……。……スゴいね! 何を学ぶの?」
ライムは殊勝だった。寂しい気持ちを隠して、笑顔を浮かべる。
「マグティア、何を学ぶんだ?」
マグティアは笑う。
「神になる方法じゃないよ。自分が何者なのかを探すんだ」
「神ってね、強いだけじゃなれないんだ。自分だけの”在り方”を見つけるんだよ」
「!! そうか、なるほど……」
自分だけの在り方……か。
まだ、私には分からないが。
「本日は夕食をくださって、感謝する!! マグティア殿も、特訓ありがとう!」
「は〜い!」
「今日はありがとうな。それで、死さんは?」
「もう神前になってるみたいだよ!」
「そうか、それはよかった」
そして、その日を終わった。
さて、死は一体なにをしていたのか。
時間は数時間ほど遡る。
「うむ、まずはその目で動物を殺す感覚に慣れてもらうぞ」
「わかりました」
目隠しを外す。
クマがいた。
接近する。
「私の目を──────っ」
ブォン!!
パンチ。避ける。
「ふんっ」
ガン!!
死はクマの脳天にかかと落としした。ヒールが刺さる。
「よし。クマ、私の目を見ろ」
キュー……ガク。
「……この感覚を、どうするんですか?」
「うむ、そうしたら、念じながら目を合わせる!」
「はい」
「今度はイノシシか……」
突進してくる。
「ブオォォォ!!」
ヒラリと身をかわし、後ろからジャンプで接近して、キック。
目を合わせる。
(死ね!)
キュー、バッテン。
「これを何度も繰り返すのだ!」
「はい……」
心優しい死には、死を願いながらスキルを使うのはなかなか苦しいことだった。
およそ100匹は殺したか。
「では、今度は目を隠してやってみよ!!」
「……はい」
すっかり精神的に疲労した死は、早く終わらせたかった。
鹿がいた。
(死ね!!!)
「……?」
鹿はなんでもないように首を傾げる。
(……死んでくれ!!)
死は強く願う。とにかく、早く終わらせたかった。
キュー、バタン。
「!!! 倒れた!!」
「どれどれ」
脈を図る。
「うむ、死んでおるな───────」
ゴーン、ゴーン
「鐘?」
すると、上半身だけの天使が光とともに現れる。
「私は¿♠_×△。神の声を告げる天使」
「!!! 来たな」
死は身構える。
「個体名:白月。異名:死。個体は世界法則に対し、規定値以上の改変を確認。スキル進化を確認。条件を達成しました。天使から『神前』に昇格しました。神養成学校、『神位昇天学園』に招待します」
「個体の世界法則に対する改変に、異常値を確認。『特待生』として招待します」
「!!!」
「特待生? 何が変わるんだ?」
「卒業後、神王への挑戦権が得られます」
「なるほど……?」
死はいまいち理解できない。
「ととと、特待生!?!?」
「凄いのか?」
「凄いも何も!! 神王と戦えるのは、特待生と、神王に認められた数名のみなのだ!」
「!!!」
(神王!!!)
死には、願いがあった。
「神権:終焉宣告を授与します。直接見たもののうち、触れた者・思考した者へ、死を確定させます」
「!!!」
「ほぉ、中々強いではないか。やるな、死。いや、白月」
「……もはや、異名の意味が無いな」
「そう言いつつ、嬉しいのだろ? 口元が緩んでおるわ」
「!!」
そう、死は嬉しかった。
「……努力が報われるのは、嬉しいな」
それだけじゃない。
(私が神王になった暁には───────
────────ザドキエルを、生き返らせる)
「そうかそうか! ようやったの、白月! これでウヌとお主の特訓は終わりじゃ!」
「ありがとうございました、ゼロス様」
「うむうむ! 苦しゅうない! だが、安全のため3日はウヌの過ごしてもらうぞ! 我が家に来い!!」
「!?」
そうして連れてこられた、ゼロス邸。
「素敵な家ですね」
「そうじゃろう!」
夕食を共に囲む。
「あぁ、そうじゃ。神位昇天学園では異名はやめておけ」
「なぜ?」
「異名には価値があるからじゃ。勝手に名乗ると顰蹙を買う」
「……特待生な時点でダメなんじゃないですか」
「そうじゃないわい! とにかくやめておけ!」
「わかりました」
「それから、その堅っ苦しい話し方もやめぃ!」
「ですが、貴方は神であらせられる」
「ウヌの命令じゃ!」
「……わかった」
「この食材は?」
「よくぞ聞いてくれた! 神位昇天学園のある宇宙の食材でな! 5次元で育ったので、五次元豚という!」
「普通の豚と何が違う?」
「五次元豚は、生まれた豚を特殊な装置にいれ、未来で育った豚を現在に持ってくるのだ!」
「なるほど……?」
「ここが魔界マグティアであるのに対し、神位昇天学園のある宇宙は、神王宙と呼ばれるが! あそこは神々の中心都市じゃ。恐ろしい神ばかりじゃから、気を抜くと取って食われるぞ!」
ぐわー、と食べるふりをする。
「はは。面白いな」
「!?!(笑った!?)そ、そうじゃから! 気をつけていくのじゃ」
「あぁ、わかった」
ゼロスは胸を抑える。
(なんじゃ、この胸のドキドキは……! ウヌはマミリィちゃん一筋、マミリィちゃん一筋……!)
「にしても、暴走などはないな? ウヌの無効化の出番はないようじゃな」
「そうだな。今のところ、暴走はしていない」
「ふむ。ま、今夜は同じ部屋で寝るぞ!」
「それはイヤだ」
「なぬぅ!?」
結局別の部屋で寝たが。
夜中。死、いや、白月は水を飲みにキッチンに向かう。
「すまない、水をくれないか」
「はい! ただいま!」
待っている間、昨日の感覚をなんとなく、思い出していた。
「はい、どう、ぞ───────」
バタン。
ビチャリ、と水が零れる。
「!!! 大丈夫か!?」
「いえ、息が苦しく、すみません、医者とゼロス様を、」
「呼んでくる!!」
「なぬっ!? 暴発したか!?」
「いや、能力は使っていない」
「そのようじゃの……」
結局、ただの過呼吸とのことで、その者には休暇が出た。
「妙な魔力反応があった気がしたがの……」
僅かな疑問は残り。
そして、何事もなく3日過ごした。
〜〜
ベリアールの執務室にて。
「魔王就任祭をやりたいな」
私の一言で、国は動く。
「予算はこれくらい」
「屋台出店の募集完了」
「音楽隊に連絡完了」
「「魔王就任式、準備完了しました!」」
「よろしい」
新調した、黒と深紅のマントを翻し。
「祭りだーー!!!!」
「ウォオオォォ!!!」
私達は雄叫びを上げた。
「魔王様!! こちら魔王ワインでございます!!」
「魔王様!! こちら、魔王チーズでございます!!」
「魔王様!! こちら、ライムでございます♡」
「ありがとう」
ライムを膝の上に乗せて撫でながら、ワインを嗜む。
マグティアが悪い顔をしている。
「マグティア」
「ビクッ!」
「無粋なことはするなよ」
「……はぁい。あー、つまんなーい!」
「マグティア」
首を傾げるマグティアに、手招きする。
「おいで」
「!!! なに〜、イケメンじゃ〜ん?」
「ふっふっふ。なんたって」
なんたって!!
「私は魔王だからな!!」
「ジャジャーン」
真ん中に私。その下に、両手を広げたライム。皆でポーズを取る。
「ははは、浮かれすぎ!」
マグティアは腹を抱えて笑う。
「ボクが監修したワインどう? 美味しい?」
「あぁ、美味しい。流石マグティアだな」
お酒に関しては、全てマグティアに見てもらっているのだ。なぜなら、私は人間の頃は下戸だったので、酒の味が分からないから。
「よかったー! じゃ、ボク、ゲーム大会行ってくるね!」
「あぁ、私も見に行く」
「ホント!? じゃあ皆で行こうか!!」
マグティアはガチガチガチと忙しなくボタンを押している。
「うわっ、そう来るか!! これならどうだ!!」
「うわーっ、やられたでゴザル!!」
「ははは、ボクの勝ち!!」
ゲーム研究会とやらがいつの間にかあるらしく、そいつらと戦って勝ったらしい。
マグティアはホクホク顔で新作ゲーム機をかっさらってきた。
「よくやったじゃないか、マグティア」
マグティアの頭を撫でる。
頬を染め、軽く汗をかいている。照れているな。
「っ……。えぇー? なんか上からじゃない? ちょっとカスライムくん、ベリア調子乗ってるよね?」
「うん、乗ってるね! かわいい!」
「これは、分からせないといけないよね?」
「分からせ? あ! うん!」
「まて、お前達!?」
「そうと決まれば!」
「帰宅だー!!!」
「うおおぉ!?」
姫抱きされて、家に爆速で連れ帰られる。
「お前達どうしたんだ、突然」
「だって!! ベリア様が行っちゃうから、ぼく寂しい!!」
「そうだよー! ボクはともかく、カスライムくんは簡単には行けないんだから。明日出発でしょ? 最後くらい一緒に過ごそ?」
「……たしかに。わかった、好きにしろ!」
2人は顔を合わせて、ニヤーっとする。
「ベリアー!」
「ベリア様ー!!」
「わーーっ!」
夜は長かった。
〜〜〜
遂に、神位昇天学園へ向かう日。
「本当に何も持たなくていいんだな?」
「本当だって!」
「まぁ、いいだろう! ワレらでなんとかする!! ガーッハッハ!」
「ふむ、紅茶のセットが割れないといいのですが……」
招待状を持って並ぶ。
「さぁ、神位昇天学園へ行ってこい! 招待状を開くのじゃ!」
「あぁ。だが、入学時期とかはいいのか?」
「そんなの、時を操る神が調節してくれるわ!」
「わかった」
「では、開くぞ」
招待状は発光し、光は魔法陣を描いた。
「アタシは¿♠_×△!」
白月の前に立つ、前髪で目を隠した天使。
「私は%¿∴○◇△」
磔の前に立つ、修道院のような格好をした天使。
「オレは¿+^^◇+!」
ギオンの前に立つ、和服をアレンジしたような服の天使。
「私は♪○♡✿☆」
私の前に立つのは、ルルミエルと呼ばれていた天使。
「お前は、私に神権を授与した天使か」
「ワタクシの方もそうですな」
「左様にございます。召喚をお待ちしておりました、皆様」
「えぇ、よろしく頼みましょう」
「じゃ、行きましょっか!」
「参りましょう」
「行くぞー!!」
「行きますよ」
天使達により、魔法陣が浮かぶ。
4人は光になり、神位昇天学園へと向かった。
「おぉ!」
「綺麗だな」
「美しいですねぇ」
「素晴らしい景観だな!」
そこには、真っ白な桜が山ほど咲いていた。
4人の天使が、丁寧にお辞儀する。
「「ようこそ、神位昇天学園へ」」
真っ白な花びらが風に舞う。
空を泳ぐ島々。
雲を貫く、白亜の学園。
そこで待ち受ける、数々の出会いと試練を。
この時の四人は、まだ知らない。
【第1章 完!!】




