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魔法少女カノンの初配信 後編


 魔法少女総合病院改め……クラン『福音少女エヴァンゲリウム・プリムス』本部・撮影スタジオ内。


 カノンは、顔を消防車のように真っ赤に染め上げて、恥ずかしい気持ちを我慢していた。


「きゅるる~ん★ハロハロカノ~ン!クラン『福音少女エヴァンゲリウム・プリムス』所属魔法少女アルカナ・カノンで~す!」

【ウニャ~ン!】


〖は?カノンちゃん?ゲリラライブ?魔法少女アルカナ・カノンちゃんが生ライブ始めたぞ〗

〖可愛い!!今回も誰か殴るの?〗

〖黒い魔法少女衣装可愛い過ぎるだろう。スパチャしてええぇぇ!!〗

〖カノンちゃんカノンちゃんカノンちゃんカノンちゃんカノンちゃんカノンちゃん!!!!!!!右肩に乗ってる黒猫。そこを変われ、俺の特等席だぞ!!!〗


(とんでもないコメントばかりしやがって……ただ挨拶しただけだろうが!これだから、魔法少女ファンはとんでもない集団とか言われるんだろうが)

【ご主人様……本音が漏れてます。本音が】


 撮影スタジオ内から、フーチュウブにライブ告知の動画の生配信を行っていた。夜の本番の練習として……


「今夜の20時に、オ……私、魔法少女アルカナ・カノンのデビューライブを配信します~!良かったら、カノンの初めてのライブ見守っていてほしいんだぞ♡応援よろしくね~!魔法少女アルカナ・カノンちゃんからの大切な、告知宣伝動画でした~!ありがとカノン~!」


〖こちらこそ、ありがとうカノン~!(可愛い可愛い)〗

〖スパチャ!スパチャは、もう送れないのか?くそおぉぉ!!!〗

〖……超大型新人は、やっぱり『福音少女エヴァンゲリウム・プリムス』所属だったのか。こりょあ、魔法少女の勢力図が一気に変わるな〗

〖カノンちゃんマジ天使~!ありがとカノン~!〗


 魔法少女アルカナ・カノンが元男の子とは知らずに、歓喜乱舞する魔法少女ファンたちだった。そして、撮影が終わり。本性をあらわにするTS美少女と腹黒黒猫。


【……たった3分の生配信で、合計スパチャ額100万越えです!?ご主人様!もっと配信しましょう。もっと配信してスパチャ……ムギュ】


「黙れ。銭ゲバ暗黒猫……オレは疲れた。なにがきゅるる~ん!だ。こんなのオレじゃない。オレは男の中の男……式波カノンなんだ!!」


【情緒が壊れちゃってますね。ご主人様……家に帰ったら、モフモフさせてあげるんで落ち着いて下さいニャン♡】


「うわぁ、キツイ……何なの?お前」


 アイの可愛らしい鳴き声に、ドン引きするカノン。顔はひきつっている。


【ご主人様をいやそうとしてあげたんです。なんで、そんなにいやそうな顔をするんですか?きゅるる~ん!】


(こいつ、オレのことを完全にめきってやがるな。家に帰ったら、軽くやり返してやる)


 可愛らしくきゅるる~ん!するアイを見て、再びドン引きしながら、心の中で復讐ふくしゅうを誓うカノン。


「カノンちゃん。宣伝配信お疲れ様~!はい、タオル……汗が凄いね~!」


 タオルを持ったシズクが、カノンへと抱き付いた。


「ちょっ!シズク……いきなり抱きつくな!」


「え~!良いじゃん別に、女の子同士なんだから」


「ばっ!違、オレは男の子だっつうの!」


「いやいや、オ●ンチン切除したんでしょう?女の子じゃん」


「切除してねえよ。アホ猫の呪いで、TSしただけだっつうの!!」


 じゃれ合う2人を見つめて、ニヤニヤする腹黒猫アイ


【シズクさんと随分仲良しさんですね。ご主人様。よきかな、よきかなですよ~!女の子同士でぇ(ニチャア)】


「お前……その笑み。オレが慌ててるところを楽しんでやがるな?」


【いえいえ、とっても楽しいですよ。ご満悦です。ニャホホホ!!……フギャラッパァァ!?な、何ですか……この強い握力は?握り潰されちゃいますぅ】


 腹黒猫アイは勝ち誇っていた。この後、天罰が下ることも知らずに。


「へ~、これが喋る使い魔なんだね?ねぇ、使い魔さん。なんでカノンさんを馬鹿したの?説明してくれるかな?」

「……使い魔なら、ご主人様を困らせてはいけないわよ。カノンに代わって私がしつけてあげましょうか?使い魔さん」


【ご遠慮致します~!ご、ご主人様……たしゅけて下さい~!】


「お前等は、灰七はいな黄麗キレイか。なんでこんな所にいるんだ?……それとアイを返してくれ。(口から泡吹いてるし……何かの魔法か?)」


「あ!ごめんね。カノンさん……腹黒猫ちゃんをどうぞ……カノンさんの初ライブ配信の練習にコーチとして来ました!」

「そう、コーチよ……それと私はカノンを馬鹿にしてたから許せなかっただけよ。ただそれだけなんだから!」


 ハイナとキレイは、顔を熟した林檎のように赤くしてカノンを見つめていた。その様子はまるで恋する魔法少女のように。

 

「そう……なのか?コーチね……それは助かるわ。ありがとう」

「本当!?」「……そ、そう!それは良かったわ!」


(なんだ?……なんで、こんなに2人は喜んでるんだ?)


「カノンちゃん、カノンちゃん……ちょっと」


 先ほどから静かにカノンたちの様子を《《観察》》していたシズクが、少し離れた場所へカノンに手招きしている。


「シズク?……………なんだよ?ヒソヒソと」


「カノンちゃん。今後、魔法少女生活を円滑にしたいなら、覚えていた方がいいよ」


「……だから、なにをだよ?」


「魔法少女はね。だいたいの娘が脳内お花畑で熱しやすいってことをだよ。大先輩魔法少女シズクちゃんからのアドバイスってやっさ。ふっ!……相変わらず、罪な子だね。カノンちゃんはさぁ」


「だからなにが?」


 ……カノンは鈍感だった。とてもとても鈍感で、そういう事にはうとかった。



 その後、カノンは地獄を見ていた。超人気魔法少女配信者たちによる、スパルタ教育である。


「カノンちゃん。配信者になるんだから、笑顔を絶やしたら駄目だよ!ファンの皆には、いつも元気いっぱいの魔法少女でいてあげないといけないんだから」


「笑ってるだろう!さっきも、可愛い可愛いコメントきて……お尻痛い!」


「口答えは駄目だよ!カノンちゃん。ライブのレッスンは真剣にやらないと」


【シズクさん。ご主人様のお尻を、笑顔で叩かないで下さい。ご主人様が泣いてます!】


 シズクからは、ライブ中の笑顔のきついレッスンを受け……


「カノンさん。それじゃあ、一流の魔法少女配信者になれませんよ。頑張って、配信で見せるダンスを覚えましょう。ハイナが一生懸命、カノンさんに教えてあげますから!はいっ!イチ、ニー、イチ、ニ~!」


「……イチ、ニー、イチ、ニ~!……少しは休ませてくれ」


【お、お水です。ご主人様!しっかりして下さい~!】


 ハイナからは、ダンスのキツイレッスンを受け……


「……ライブ中の声はハキハキ喋らないといけないわ。魔法少女配信者は、ファンを落胆させては駄目。歌って戦える魔法少女を目指すのよ。カノン。本番前に、カノンのデビュー曲『ハレハレカノンのダークマター』を完璧に歌えるようにするのよ」


「なんで、オレの新曲がもう作られてんだよぉ!あーぁあーああーあああああああぁぁあ!!!やること、覚えることが多すぎだろう!!」


【あの、強靭な精神を持つご主人様が発狂するなんて……しっかりして下さい~!ご主人様~!】


 こうして、カノンは軽い精神崩壊を起こしつつも。本番のデビュー生配信ライブのためのレッスンを、現役で人気の魔法少女配信者たちに鍛えられたのだった。


◇◇◇

《午後8時 魔法少女アルカナ・カノンのデビュー生配信スタート》


〖始まった!始まった!魔法少女アルカナ・カノンちゃんのデビューライブ配信スタートダアアァァ!!〗

〖司会はシズクちゃんだと?最高かよおぉ!!〗

〖お前ら!!スパチャの貯蔵は充分か?〗


「皆~!こんシズ~!昨日ぶりだね~!」


〖〖〖こんシズ~!シズクちゃーーーん〗〗〗


「うんうん。皆、今日もいつも通りの可笑しなテンションだね……それじゃあ、待たせるのもあれだし。呼んじゃおうか!『福音少女エヴァンゲリウム・プリムス』に新たな魔法少女が爆誕だよ!お~い!出ておいで、カノンちゃん~!」


「は~い。シズク大先輩~! きゅるる~ん!こんカノン~!初めましての人は初めまして~!クラン『福音少女エヴァンゲリウム・プリムス』所属魔法少女アルカナ・カノンだよ~!」

【ウニャ~!】


〖恥じらいカノンちゃーん降臨!!!可愛い、可愛い!!〗

〖偽装自己紹介キター(゜∀゜ 三 ゜∀゜)〗

〖暴力オラオラ魔法少女カノン、可愛い!!!〗

〖カノンちゃん。オーラ半端ない~!可愛いよおおおぉ!!〗

〖超新星・大型魔法少女!!カノン爆誕!!!〗

〖相棒に黒猫……金髪美少女……フッ!勝ったな〗


 カノンのデビュー生配信が始まった。ここまでは、順調そのもの……それも当然である。カノンがデビューライブ配信に失敗でもすれば。

ライブ終了後、大先輩の魔法少女たちになにをされるか分からないからだ。


「ジーッ……(ライブの失敗は許しませんからね。カノンさん)」

「ジーッ……(私たちは、魔法少女配信者。ファンの人たちを落胆させては駄目よ。カノン!)」


「わぁ~!素敵なコメントの嵐~!カノン、すごく嬉しい~!……(くそおぉぉ!!監視するように見てやがる。こんなの失敗できねえじゃねえか!!)きゅるる~ん!カノン!」


〖うおおぉぉ!!ダンジョン遊戯の時とは全然違う魔法少女だあぁぁ!!〗

〖大量のスパチャをお布施するぜ……はぁ!?今回のスパチャ金額の上限を超えているため、お客様たちにはスパチャを投げさせられませんだと?〗

〖今回のカノンちゃんのライブのスパチャ上限って……たしか100万だよな?……もう上限に達したのか?早くね?〗

〖……恐るべき逸材。カノンちゃんだな〗

〖あ~!スパチャ代は返金するってよ。『福音少女エヴァンゲリウム・プリムス』はいつも通りだな。スパチャ上限は設けるけど、謎の返金システム〗

〖たしか、ライブ配信ごとのデータ取ってんだろ?パラメーターだっけか?それよりも、今はカノンちゃんに全集中しようぜ〗

〖確かに!!!!カノンちゃん!!〗


「み、皆~!カノンなんかにスパチャを送らなくていいのに~!(男のオレに送るなよ。もっと自分のために使えや)」

【ご主人様。おさえて下さい。大先輩たちが、厳しい目でご主人様を見守ってます】


「「「ジーッ!!!」」」


「つっ!……き、聞いて下さい。今日、オ……私のデビューライブ生配信を見守ってくれている皆のために一生懸命覚えた(強制的に)歌です。カノンのデビュー曲『ハレハレカノンのダークマター』!……3、2、1、はい!私の本性をダークマター~♪」

【ニャンニャン!!……(ご主人様が壊れていきます~!)】


〖……天使の歌声?可愛い〗

〖……女神が歌ってる?可愛い〗

〖俺たちはこの魔法少女に出会うため生きてきたんだ〗

〖魔法少女アルカナ・カノンちゃん……輝いてるぜ〗


 ライブ配信を見ている視聴者からは、歓喜のコメントが絶えず続き……


「カノンちゃん。歌上手かったんだね……ていうか、上手!」

「カノンさん……素敵です」

「……可愛いわよね。カノン」


 さっきまでカノンに厳しい視線を向けていた、魔法少女の大先輩たちの目からは涙腺が緩み涙を流し始めた……


「私の全てはダークカラー~!……(あぁ、オレの男としての人生、今日で終わっちまった……くそおぉぉ!!!)」


 デビュー生配信ライブ同接20000人。

 

 新人魔法少女の同接数としては、異例中の異例の同接数。この日のデビューライブは成功を収め、カノンは伝説となった。


 そして、カノンの魔法少女配信者としての、活動が本格的に始まった。


《副院長プライベートルーム内》


〖……カノン。元気そうね〗


「カノンちゃんのデビューライブは成功したよ。ユメノ」


〖そう……それじゃあ、学園の手続きはやっておいたから。悪いけど、これからもカノンのことよろしく頼むわ。藍〗


「いや当たり前だよ……全く、それにしても子供思いの立派な母親だね。ユメノは……」


〖つっ!それじゃあ、私は依頼があるから。電話切るわ……ブツンッ!〗


「全く……母娘揃って不器用だね。元男の子のカノンちゃんを魔法少女たちが通う学園に通わせるなんて、トリッキーだね。アルテミス様。フフフ」


 電話を終えた藍は、不敵に笑った。そしてTS美少女カノンは、魔法少女のことを学ぶため、魔法少女育成学校―――アルテミス魔法女学園に通うことになる。


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