06.『彼』の生い立ち、そして転生 [なるほど、わからん]
やっと主人公が書けた!!
彼は『不運』をもって生まれた。
それは、比喩ではない。
『白鷺 蓮』は、生まれた瞬間から『歪み』の影響を受け、神々の干渉から外されていた。
天使や悪魔はもちろん、銀河の均衡を維持する神々ですら、彼の存在を正しく認識できなかった。
だが、それは『自由』を意味するわけではない。
むしろ、運命の枠組みから外れたが故に、彼は苛烈な試練を受け続けることとなった。
――両親からの愛はなかった。
むしろ、その逆だ。
父も母も、何かを怨むように彼を殴った。蹴った。怒鳴った。
彼が泣いても、叫んでも、誰も助けてはくれなかった。
近所の大人も、外で出会った人たちも、彼に無関心だった。
それは、『歪み』によって、両親以外から認知し難くされていたからだ。
では、なぜ両親だけが彼を認識できていたのか。
それは――『歪み』が彼を生かしておくために必要な役割を、両親に課していたからだ。
親として守ることも、愛することもなかった二人が、『邪魔な彼を捨てずにいた』のは、そういうことだった。
しかし、彼にとって唯一、幸福と呼べることがあるとすれば――『他者からの悪意』すら、世界が彼を『認識できなかった』せいで訪れなかった、ということかもしれない。
本来なら、彼はとっくに壊れていたはずだった。
耐えきれず、心が折れ、身体も傷つき、どこかで壊れているはずだった。
だが、彼は壊れなかった――いや、壊れ『られなかった』。
死後、彼の『魂』は完全な球体――それは疵痕すら存在しない『完璧』な魂だった。
それが何を意味するのか、当然彼は知らない。
だが、それゆえに、彼の存在はあまりにも異質だった。
通常、生物の魂は感情、苦悩、愛憎など、様々な感情によって形が歪む。
だが彼には『執着』も『願い』もなく、魂はまるで無垢なる虚無。
『名前』だけしか与えられず、誰の記憶にも残らず、世界からも見放された。
故にこそ、彼は『世界の物語』にさえ存在できなかった。
心が折れず、身体は耐え、飢えても衰弱せず、傷ついても――口を裂かれ、爪を剥がされても、大事には至らず治ってしまう。
それを、両親は疑問にすら思わず、むしろ暴力をエスカレートさせた。
彼は『痛み』を感じた。
――だがそこに、『苦しみ』はなかった。
彼は『悲しみ』を知っている。
――だがそれを、『絶望』とは認識できなかった。
だから、助けを願うことすらしなかった。
そもそも、『願う』という概念が、彼には存在しなかったのだ。
願うには、まず『希望』が要る。
誰かの信じる心が、世界を肯定する意思が。
だが彼には、そういった心の『起点』が与えられなかった。
だから願うことも、祈ることも彼にはできなかった。
それこそが――『歪み』の影響だった。
――彼は死ななかった。
どんなに痛めつけられても、身体は動き続けた。
どんなに絶望するようなことがあっても、精神は折れなかった。
どれほどの苦痛を受けても、『それだけ』で済んでしまう。
泣き叫んでいたのだって、子供特有の『そういう機能』だったに過ぎない。
通常、人間は耐えきれない環境に置かれれば、『死』や『逃避』という解放を迎えたがる。
だが、『歪み』によって世界のルールから外された彼に、その選択肢はなかった。
『死ぬことさえ』、許されなかった。
――しかし、『運命』は訪れる。
彼はある日、『悪縁』の少女に『見つけられた』。
『不運』が『悪縁』を呼び、『悪縁』が『不運』と出会わせる。
偶然か、必然か。
それは午前に大雨が降った、曇天の日だった。
夜逃げ同然に逃げ出す両親に連れられ、彼は盗んだ車に乗っていた。
しかし、途中で事故に遭い、道路脇の氾濫した川へ投げ出されてしまう。
水の冷たさを感じる暇もなかった。
暗い激流に翻弄されながら、ぼんやりと、何かが見えた。
こちらに近づく、黒く長い髪。
土砂と激流で汚れた薄着の恰好。
腕を掴まれ、強引に引っ張られる。
一瞬の解放感。次に訪れるのは、暗転。
その日、川で溺れた彼は、そこで一人の女子高生に『見つけられ』、救われた。
だが、その時。
――『歪み』の一部が、彼女に移ってしまった。
それは、彼女が彼の『運命』に触れてしまったから。
触れた唇から、まるで感染するように『歪み』は彼女へと這い移った。
そしてそれは、彼の『運命』を変えるきっかけにもなる。
『耐えられる暴力』と『変わり映えしない日常』が、唐突に終わりを迎えたのだ。
――月の見えない帳に、彼は『六歳の誕生日に死んだ』。
それは、事故から数日後の出来事であった。
黙って間借りしたアパートの全焼によって。
いや、『死なされた』と言うべきか。
原因も、証言も、すべてが何の捻りも、事件性すらない『不慮の事故』。
今まで生きてきた彼は、そんなあっけない最期でこの世を去った――
時を同じくして、彼が亡くなった場所からほど近い場所。
『旧華族』の所有する、取り壊し予定の『道場』で、『男性一名』『女子高生一名』が亡くなる、『死亡事件』が起きていたらしい。
―――――――――――――――――――――――――
――――――
――――
――リンッ、リンッ、リンッ、リンッ、リンッ、……――
((……ぼぉ)…………)
『俺』は今、真っ暗闇の視界――ごわごわの袋を被せられ、ひどい悪臭と四肢(?)、それから首をがっちりと固定された状態で目が覚めた。
それは、この『リンッ』という、『頭の中に響く澄んだ高音がうっさいから』、ということの他に、瞼を閉じた状態でも見える、『この音と連動した文字羅列』も原因だった。
[リンッ――【苦ハ楽ノ種】を発動]
⇒今までに受けた『苦』で『耐性』が与えられます
[リンッ――〈痛覚耐性〉を得ました]
[リンッ――〈苦痛耐性〉を得ました]
[リンッ――〈鈍痛耐性〉を得ました]
[リンッ――〈激痛耐性〉を得――
瞼を開けても閉じても映るこの文字列の意味を、不思議と冷静に読み取り、自分が濡れた衣服――血塗れの服を着て、左腕と左の膝先がもう『無い』のだと察する。
寝心地の悪いベットの上に拘束され、欠損した体に血塗れた恰好……これはどうみても―
(拷問されてた人の『それ』……なんだよなー)
[リンッ――〈切断耐性〉を得ました]
[リンッ――〈断片耐性〉を得ました]
[リンッ――〈断裂耐性〉を得ました]
[リンッ――〈圧迫耐性〉を得ました]
――――――
――――
――
次々と流れる拷問されていた事実に、それでも俺は冷静だった。……というか、俺の意識がいま、別のところに向いているから、ということでもあった――
[【名前】レン(白鷺 蓮)【年齢】10(6)【性別】男
【種族】白夜人・変異種
〇Level:1
〇状態異常:正常
〇魔力:E→--
〇筋力:E→__
〇潜在力:C→__
〇耐久力:E→__
〇抵抗力:D→__
〇体力:E→__
〇敏捷力:D→__
○技能
――――
――
((……ぼぉ)……なるほど、わからん)
『耐性表示』と同様に、意識がはっきりしてすぐに浮かんできたこの文字列。『音と文字? 俺、今どういう状態?』と疑問に思ったら、『ポロンッ』と目の前に現れたものだ。
その時、『耐性表示』は視界の右端の方へ追いやられたまま、今なお鳴り続けている。
(……名前は、憶えてる通り。年齢は多分……違うか? 『10歳』じゃなかったと思うから、隣の(6)がそうかも? ……やばい、何も思い出せねぇ……。ってか、手足欠けてんのに、『正常』って何だよ。これもバグか?)
『表示』は、多分『自分の情報』を示してるんだろうけど、この形式には馴染みがない……それなのに、見方や意味がちゃんと理解できる。
まるで、知らないはずの知識を、当然のように持っているような――そんな、矛盾した感覚だ。
(まぁ、それはいいんだけど……問題があるとすれば、この『魔力』『筋力』とかのアルファベット表記が消えてることだよなぁ。…………あ、んん?『これ』のせいで『バグ』ってるのか?)
そう思うに至った理由が、『表示』の下の欄に記載されていた――
[【異界しゃノたマシい】:『転生者』の魂を器に同調、定着…………不測の…態に…調、定着……程に…不備が…生じ、失敗……た。再実…………一部…敗……。再……緊急処置実行に伴い、魂の同調、定着を最低限行い終了。不具合により、Level上昇不可。魔力回路消失。技能・称号の習得、取得、継承不可
└〈異界ノ適応体〉:共通言語理解・ニホン語、共通文字理解・ニホン語、✕自己理解翻訳/○他者共通翻訳:サク]
[【遊戯盤ショu】:任意発動。『認識、意識したあらゆるもの』の能力、状態などを盤上に符号として明らかににすするルルr]
(……やっちゃってんなぁ。……あと、『他者共通翻訳:サク』ってなんだよ? 人の名前か? ……わからん)
この二つの表示だけに、ノイズ混じりの文字が滲んで見えている。読めないようで読めるこの内容的に、『記憶喪失』と『表記のバグ』はこれのせいなのかもしれない。
さいわい、表示のバグは『アルファベット表記』と『二つの説明』以外には見当たらなかった。それに、こんな状態なのに冷静でいられる『ワケ』もわかった――
(……うん?)
[リンッ――〈苦悶耐性〉を得ました]
[リンッ――〈絞縛耐性〉を得ました]
[リンッ――〈拘束耐性〉を得ました]
[リンッ――〈束縛耐性〉を得ました]
――――――
――――
――
その時、視界の端で流れていた『耐性表示』に、たまたま気になる文字が映った。
(あー……上の読み方は知らんけど、これって今の状態に関することじゃないか?)
今の状態――ベッドへギチギチに縛られている自分の現状を客観的にみて、ふと気になった。
(……ちょっと力入れたら、抜けたりして? ――あ)
――――ブチッブチッ!
思いつきで右腕に力を込めて持ち上げると、少しの抵抗感の後に、手首と二の腕の拘束が千切れ解放できてしまった。
(おぉー、いけたやったー! 耐性スゲー!?)
[※【運否天賦】を発動]
⇒一時的に[不運]極化補正
腕を解いてすぐに、俺は他の拘束を引きちぎり、被せられた布袋を取り払って力の限り叫んだ。
「立゛っ゛だ、俺゛は゛立゛っ゛だ――
「何勝手に起き上がってるんだいっ! まだ『施術』の途中だよっクソガキ!!」
――――ザッシュ!!
異世界転生しての第一声は、口内と喉に絡まった血溜まりのせいで、低くガビガビのものになってしまった――と思ったら、俺の視界に片腕のない上半身が――あ、いや下半し――
――――ゴットッ!
(無茶苦茶痛い。そして、なぜか顔面を床にたたき……ん? いや、くびがとれたの……――)
そこで視界は、最初同様の真っ暗闇へと沈んでいった。……しかし、澄んだ音だけはずっと聞こえ続けていた……。
[リンッ――〈奇襲耐性〉を得ました]
[リンッ――〈奇襲耐性〉が強くなりました]
[リンッ――〈急襲耐性〉を得ました]
[リンッ――〈急襲耐性〉が強くなりました]
[リンッ――〈背襲耐性〉を得ました]
[リンッ――〈背襲耐性〉が強くなりました]
[リンッ――〈斬首耐性〉を得ました]
[リンッ――〈斬首耐性〉が強くなりました]
[リンッ――〈斬首耐性〉が強くなりました]
[――〈斬撃耐性〉が強くなりました]
[――〈切断耐性〉が強くなりました]
[――〈断裂耐性〉が強くなりました]
――――――
――――
――
[――〈即死耐性〉が強くなりました]
[――〈絶命耐性〉が強くなりました]
[【死ンデモ命ガアルヨウニ】を発動]
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◇白鷺蓮のステータス
(※は非表示、見えていないものとする)
【名前】レン(白鷺 蓮)【年齢】10(6)【性別】男
【種族】白夜人・変異種
〇Level:1
〇状態異常:月詠
〇魔力:E→--
〇筋力:E→__
〇潜在力:C→__
〇耐久力:E→__
〇抵抗力:D→__
〇体力:E→__
〇敏捷力:D→__
※技巧:B→A+
※素質:A-→S-
※運気:I→--
〇技能
≪New≫【夜目Ⅳ】:暗い場所でものがよく『視認』できる
≪New≫【気配察知Ⅳ】:周囲の『気配』を少し感知できる
≪New≫【気配隠密Ⅲ】:自身の『気配』を察『知されにくく』なる
《習得、取得、継承不可》
〇上位技能
≪New≫【不撓ノ肉体】:任意発動。体力上昇補正。耐久力激化補正
≪New≫【不屈ノ精神】:任意発動。体力上昇補正。抵抗力激化補正
≪New≫【大悪食】:『モノ』を何でも食べられ、普通に感じられる。『消化機能』『吸収効率』激化補正。耐久力微上昇補正。抵抗力上昇補正
≪New≫【生ヘノ執着】:『吸収効率』上昇補正。『瀕死時』のみ効果発動。一時的に全能力激化補正
≪New≫【苦シテ楽ナシ】:『苦』に対し『耐性』を得る
《習得、取得、継承不可》
〇血統技能
・【--】
└(技能:〈--〉)
《習得、取得、継承不可》
〇固有技能
≪New≫【運否天賦】:※不定期に[幸運][不運]のどちらかを一時的に極化補正。|???
・【--】
≪New≫【静謐ノ心】:精神状態を安定、制御できる。抵抗力極化補正
・【--】
《習得、取得、継承不可》
〇…………Unknown……
≪New≫【異界しゃノたマシい】:『転生者』の魂を器に同調、定着…………不測の…態に…調、定着……程に…不備が…生じ、失敗……た。再実…………一部…敗……。再……緊急処置実行に伴い、魂の同調、定着を最低限行い終了。不具合により、Level上昇不可。魔力回路消失。技能・称号の習得、取得、継承不可
└〈異界ノ適応体〉:共通言語理解・ニホン語、共通文字理解・ニホン語、✕自己理解翻訳/○他者共通翻訳:サク
≪New≫【遊戯盤ショu】:任意発動。『認識、意識したあらゆるもの』の能力、状態などを盤上に符号として明らかににすするルルr
≪New≫【死ンデモ命ガアルヨウニ】:???
└【--】
└【--】
└(技能:〈--〉)
└【死ニタモウ事ナカレⅠ】:解放技能。耐久力、抵抗力、体力激化補正。死んだ際Levelが『1』になる
└Ⅰ〈苦ハ楽ノ種〉:全ての『苦』に対し『耐性』を得る。『物理耐性』『超常耐性』を得られる
《習得、取得、敬称不可》
※vjれlせhs――異能力
・【--】
※称号
(器)
・【夜人ノ血族・白夜】
・【勇敢ナ者】
・【支配サレシ者】
・【失ワレシ肉体ノ者】
・【刃ニ刻マレシ者】
・【耐エ忍ブ者】
・【死線ヲ越エシ者】
・【無慈悲ナル再生者】
(前世)
・【歪ミノ申シ子】
・【理カラ外レシ者】
・【認識ノ薄レシ者】
・【不運ノ申シ子】
・【忌ミ子】
・【滅ビヌ者】
・【歪ナ中身】
・【悪縁ト縁ヲ結ブ者】
・【新タナ歯車】
・【炎ニ焼カレタ者】
・【転生セシ者】
・【見知ラヌ理ノ訪問者】
・【異能者】
・【歪ミノ因果ヲ持ツ者】
・【天運ナキ者】
・【運命ニ弄バレタ者】
・【苦痛ニ染マリシ者】
・【痛ミニ慣レシ者】
・【静カナル観測者】
・【不運ヲ終エタ者】
・【異界ヘ導カレシ者】
・【天主神ノ恩恵・創造】
・【天主神ノ加護・幸福】
・【深主神ノ加護・不幸】
・【天主神ノ恩恵・奇跡】
・【天主神ノ恩恵・娯楽】




