表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この壊れて、それでも尊き世界で−Errifate 002:Malvane Has Distorted−  作者: 仙台赤べこ
第一章【DARK SOULSな『現実』へようこそっ】
10/36

10.『竜人』=『角んちゅ』[服着るの大変そう……]


「――――はぁぁぁぁぁぁ……! ツカレタァァァァァ!!!」


 私は長い溜息をつき、熱が充満する廊下に立ち尽くす。

『黒炎』で生じた石材の発熱と発光現象が徐々に収まり、鉄錆と血の匂いが染みついた『ジメっ』とする空気が肌に張り付いてきた。


「……ひぅ……、……ヒゥ――」


 後ろの牢屋から浅い呼吸が聞こえる。私は頬を伝う汗をぬぐいながら、そちらを振り向く。

 そこには、未だに熱気が立ち込めた牢――そこに囚われる『角の生えた女』が、か細い呼吸を繰り返しながら頭を垂らしていた。


 右腕はなく、左腕は手枷と鎖で吊り上げられている。脚の切断面は布切れと鎧片が血で固まりひどい有様だ。形を失った金属鎧が体を覆い、その隙間からは焼け焦げた衣装と、爛れた肌が垣間見える。

 そして一番に目がいく、()()()()()()()()()()()()()()』。片方は半ばから折れ、反対には『角飾り』と呼べるような装飾品が付いている。


「おい……『あんた』だい……じょうぶではないと、見てわかるんだが……生きてるか?」


 聞いてから『息してるんだから生きてるだろ』と、心の中でツッコむ。さすがに、命の恩人に対して男勝りな性格と口調全開では当たれず、言葉遣いがぎこちなくなってしまった。


「……大丈夫、すぐに……落ち着く……すぅ……ヒゥ……」


(……ぜったいに平気じゃないんだよなぁー)


 彼女の力ない返答や、細い呼吸にそう思う。なぜなら、私の視界には『彼女の状態が映っている』からだ。


――――ポロンッ



[【名前】カラミディア


【種族】黒銀竜人(変異種)


【レベル】130 


【状態異常】霊視/瀕死/空腹/衰弱/失明/欠損/骨折/貧血/灼傷/枯渇(魔)/感染――



(――エグいな、この量はっ!)


 一部分からないものを除き、『盤面』に並ぶ『状態異常』の数々。恩人じゃなくても、こんなのを見てしまったら要介護だと思う。


「いま牢屋(ここ)から出すから待っていろ……待って、くれ?」


(あれ……私ってこんなに『敬語』下手だっけ?)

(……まぁ、鍵なんか『血』で作れるんだからヌルゲーだがなぁ! なっはっは!!)


 改めて牢屋の前――区切られた扉を見る。


「……、……え、鍵穴は??」


 なんと、この牢の扉には鍵穴が見当たらないじゃないですかやだー……why?


「……カギは……『深淵の聖女』が……持っている……ひぅ……」


角の生えた女(角んちゅ)』が喋るのもキツいだろうに教えてくれる……いや、『聖女』以前に、そもそも鍵穴がないんだが……。


「――あ、そもそも鍵が無くても入れるじゃないか」


 そこで私は、自分が『どうやって牢屋から出た』のかを思い出した。



――――パンッ(柏手)



「『摩多羅門』――」


 私の真横と『角んちゅ(彼女)』の背後に、まるで画像のフレームが切り替わるように『門』が静かに(一瞬で)現れる。


(さっきは見てる余裕がなかったが、『扉』ってこう出てたのか)


「――『(ひらけ)』」



――――スゥーーッ!



 今回は『障子』をイメージした。彼女は壁に背を預けた状態で座っているため、背中との隙間がほとんどなく、自然と中腰サイズの『スライド式』になった。大きさの調整も出来るらしい。


「おじゃましま~す」


「……えっ?」


『背中越し』に、『角んちゅ』の肩がビックっとなるのが分かる。そりゃ、『目の見えない相手に』いきなり後ろから話しかけたら驚くよな……場を和ませようとしたお茶目なんだ、許せ。


「……封印の牢を……越えるとは。……君は、奇妙な技を……使うのだな……」


 最初に比べると言葉が流暢になってきた。本人の言う通り、幾分か落ち着いてきたらしい。『竜人』、だからか? 生命力が高い的な。

 そして、案外切り替えの早い相手で助かった。驚いた雰囲気がすぐに消え、冷静な返答がくる。


「……まぁ、『他の奴ら』から見たらそうかもしれないな。……そんなことより、あんたをここから出すぞ。まずこの手枷を――」


「……この枷は……壊せない。……わたしの……『竜人』の力、でも……」


『角んちゅ』が言う。しかも案の定、この手枷にも『鍵穴』がなかった。欠陥だろこれ。


(それともあれか? 『魔法的な方法で開ける鍵』が必要、ってことなのか? ……ふっふっふ。しかし、甘いぞ異世界。これには、『必勝法』がある!)


「ふん、壊す? それは凡人の考え方だな。こういう時は――根元から引っこ抜けばいいんだっ!」


『バッ』っと、鎖の先である『根元』を見上げる。

 そこには、『白い揺らぎ』――『夜ヲ纏ウ者(技能)』の『魔力を可視化』、で映る『魔力』だと思う――が広範囲に纏わりついていた。……おそらく『破壊防止』的なものかもしれない知らんがなっ。


「――う~ん、これは現実的(リアル)!」(やるな異世界っ)


「……金具は……魔術的、処置で……固定してある。……どうしても、鍵が必要だ…………それよりも――」


 そこで言葉を区切ると、『角んちゅ』が、なぜか躊躇いがちに言った。


「……君は……『竜人(わたし)』を見ても……何も、思わないのか……?」


 と、そんなことを聞いてきた。それに対し、私は――


「え? あぁ……この角、上着きる時に邪魔そうだな?」


(え? なんで突然、自己顕示欲が高いタイプみたいなことを聞いてくるんだ、この『角んちゅ』??)

(なにか? 「『胸の大きい(わたし)を見ても何も思わないのか?」って、遠まわしに喧嘩売られた?? 私の『つる』と『ぺた』を揶揄したのか??? ――お前も『巨乳じゃない(せいぜいC)』だろう!!)


 風評被害に被害妄想。さすがに言いがかりだと自覚はしている。……言った言葉の意図は分からないがな。


「……はは……そんなこと、初めて、言われました……」


(なんか笑われた。……まぁ、『脳死』で答えたからそうだろうな)


「……『ありがとう』………それと、もう一つ……図々しいが、頼む……わたしの角飾りにある『爪』を……割って、飲ませてくれないか……」


 そして、なぜだか知らないが今度は礼を言われた。……優越感に浸れるから受け取っておこう。


「『爪』? あぁ……これ、ただの飾りじゃないのか」


(それ)』は、後付けのように『角飾り』の紐で巻き付けてある五センチほどのモノだった。それを解き、言われた通り爪先を折ろうと力を込める。中に薬でも入ってるんだろうか?



――――ぎゅーーーっ!!



「ふんっ……ぬぉぉぉーーーっ!!」


(くっ、まるで鉄板を素手で曲げようとしているような硬さだなぁ!)


「――ふぅ……こんなもの、私の力でどうにかなると思ったのか?」


「……割れないのか……?」


「そうとも言う」


「…………わたしの手に……持たせてくれ……」


「あ、はい」


(後ろからで表情は見えないが……今の間は呆れられたか?)


『割れない』と言うのが負けたようで、素直になれなかったんだからしかたない。

 そして言われた通り、『爪』を枷に吊り上げられた左手に渡す。



――――パッキ!



 直後、小気味いい音をたてて、爪先が折れて吹っ飛んだ。


(え~。そんな、瓶の蓋を親指で開けるみたいにあっさりと……)


 己の非力さに敗北感を覚える。しかし、そんなことを知らない目の前の『角んちゅ』。


「……この加工した爪には……『神薬』が入っているんだ。……ふぅ、すまないが、少し飲ませてくれ……」


『しんやく』……『神薬』か? ……知らないけど、名前がなんかすごそう(小並感)。


「全部じゃなくていいのか?」


「……ああ……残りは、君が飲んでくれ……」


「……了解」


 なんか『予感』を覚えたが、私は言われるがまま、後ろから『恩人様』の口元に欠けた(容器)を寄せ、飲ませる。



――――ぐじゅぐじゅっっ!!



「……うっ……!」


 するとあら不思議。『角んちゅ』が苦し気な呻き声をあげたかと思えば、切断された二か所の断面が蠢き――『少し』生え治ったのだ。ついでのように、見える範囲の火傷痕も引いていた。



[【名前】カラミディア


【種族】黒銀竜人・変異種


【レベル】130 


【状態異常】霊視/空腹/衰弱/失明/欠損/貧血/火傷/感染――



「うおっ、キモいなっ!!」


 私は見たまま、感じたままを口にした。


「……ぐっ……はは……歯にもの着せぬのだな。君は……」


 飲む前に比べ、声には活力が宿り、心なしか『魔力(白い揺らぎ)』まで立ちのぼっている。……異世界の『薬』、マジでヤヴァイ。


「感謝する。これで、少しは動けるようになった……だが、ふっ――」



――――ジャリンッ――ギィーーー!!



 彼女は枷をはめられた左腕に力を込めた。鎖が『ピン』と張り、金属が悲鳴のように擦り鳴く。


「ぐぅっ!! ――ハァ、やはり、駄目なようだ」


 力を抜き、『角んちゅ』は落胆のため息をつく。どこか結果を分かっていたような反応。特別製の鎖なのかもしれないな。


 ――そこで会話が途切れた。……だから、気は全然進まないが、私から『望んでいるであろう話』を振ってやる。


「はぁ……あんたからじゃ言いずらいだろうから言うが……はぁ~、『(ワタシ)()(カギ)()()ってくるよ(ッテクルヨ)』」


 ため息が漏れるのは仕方がないだろう。片言になるのも仕方ないだろう。だが――


(――『恩は返す』。それが道理だよな。……ジジイにも口酸っぱく言われたし)

(でも……報いる以前に、『鎧騎士(あんなの)』がわんさか居たら死ぬかもなぁ、ははっ……だるっ!)


「君は……いや、頼む。この鎖さえ外せれば、君を『ここ』から連れ出すと……必ず報いると、約束しよう」


『角んちゅ』が首を回し、私を『見てきた』。その目元は、浅くだが依然として傷跡が残り、見えていないようだったが――『魔力』が纏わりついている。


(『ニホン人』にそれ言ったら『恩』の『無限ループ』になるぞ……ん?)


「その『目』、もしかして見えてるのか?」


「いや『見えていない』……だが、『霊視』という、一時的だが『視界に頼らず周囲を探る術』で把握している」



[リンッ――詳細判明、【奇術】〈竜識視〉を開示]


[〈竜識視〉:一時的に視力を失うが、『霊視』で障害物を無視して周囲を把握できる]



「なにそれ便利」


 なるほど。それでさっき、牢屋の前を通った『マニュラ騎士』にドンピシャで黒炎を当てられたのか。そんで、聞くだけでも『情報』を得られる、と。


(……あ、私も似た『技能(もん)使()()()()()



[【気配察知Ⅳ】:周囲の『()()()()()()()()()()



 これも、『目に頼ってない』ってところは一緒なんだよな。それに――


(――いま気づいたんだが、『上』から『(多分)叫び声』とか『動いてる気配』がしてるなぁ。人数は知らん)


気配察知(これ)』は『任意発動』と書いてないから、『常時使ってる』状態なのかもしれない。意識しないと気づけないが……使えるもんは有効活用するか。


「んじゃぁ、パッと行って、スタッと戻ってくるか~」


「行く前に、『神薬』は飲んだか?」


「『大丈夫だ、問題ない』」


「ん? 飲んだと把握できて――

「いえ、飲んでませんでした。いただきます……ごくっ」


 ボケをつぶされ、内心『シュン』としながら、手に持っていた『爪』をあおる……たった数滴分しかないけど。

『神薬』なるものは、リンゴジュースのような色合いの液体だった。味は……感じたことのない優しい甘みがした……もっと飲みたいぞ。



――――ぐじゅぐじゅぐじゅっっ!!



「――イッ!!」


 すると、体中――主に手の指先と足裏に鋭い痛みが走り、肉が泡立つ感覚。


「――(つう)ぅー。……っあ、指先が治ってる。足は……まだ痛いな」


「わずかだったから仕方ない。それでも、動ける程度には治癒したはずだ」


 それはもう、たった数滴で指と体中の痣とか擦り傷が無くなったもん。コスパ良すぎか。


「『鍵』の場所を教える前に、言っておくことがある」


 彼女が真面目な雰囲気を漂わせながら言う。


「――もしも、『深淵の聖女』に見つかるようなことや、鍵の奪取が不可能と判断したなら、すぐに逃げてほしい。ここは地下二階に位置している。そこの螺旋階段を二階分上がり、仕掛けを解けば『屋敷』に出られるはずだ。そうしたら静かに、時を掛けながら抜け出すんだ。……無理をしないと、約束してくれ」


 その言葉は、まるで家族を死地へと送り出す親のようであった。


(この『人』、ほんっとにタフだな。視界と手足が奪われるような状態でもこっちの心配してくるとは……)


 私は『障子』を閉じ、格子越しになった彼女に言った。


「……勝てない勝負に正々堂々と挑むほど、私も馬鹿じゃないんでな。命あっての物種ってやつだ。無理だと感じたらさっさと退くさ。――でも、もし勝てると思ったら、『どんな手を使ってでも』鍵を取ってきてやる。それが私のやり方だ」


「……ふふっ、『こんな時代』に、君のような先を見据えられる者は貴重だ。でも、安心したよ。……『鍵』は、『深淵の聖女』の――飛び出した『はらわたの中』だ。『聖女』は肉塊のような体をもつ老婆だから、一目でわかるだろう……もう一度言うが、無理なら素直に逃げてくれ」


 そんな彼女の情報に、私は返答せず、階段へ続く廊下を歩きだした。

『血の層』を纏った足で石床を踏みしめながら、心の中では――



(――『飛び出した、はらわたの中』に、『鍵』だと……? 『飛び出したはらわたの中』って何だァァッ!!? そんなの普通、『腰に吊るしてる』とかじゃないのか!? 『看守室にある』とかさぁ! ……まさか本当に『はらわた』って……うえぇぇ!! 計画丸ごとぶっ飛んだわっ! 『隠密』でこっそり取りに行く予定がご破算だド畜生ォーー!! ……っち、本当ならマジで逃げ出すからなコンニャローー!!)



 やっぱりこの世界、クソゲーだわ。



[【明鏡止水】を任意発動]

[【隠密】を任意発動]




―――――――――――――――――――――――――


◇カラミディアのステータス


(※は非表示、見えていないものとする)

【名前】カラミディア


【種族】黒銀竜人・変異種


【レベル】130 


【状態異常】霊視/空腹/衰弱/失明/欠損/貧血/火傷/感染


【属性】物理・魔術・黒炎(変異)・奇術・竜属性



【生命力】38

【持久力】37

【筋力】46

【技量】36

【耐久】35

【魔力】33

【理力】18

【信仰】12

【運】10

【人間性(特性)】10/10



※【右手武器1】なし

※【右手武器2】なし


※【左手武器1】≪焦黒の竜爪(左)≫

・右と対になる黒い鉤爪。黒炎の熱を宿し、鉄すらも切り裂く竜人の証


※【左手武器2】なし


※【頭防具】≪赫鱗の角飾り≫

・竜族の高位個体にのみ与えられる、赫き鱗の角飾り。今は亡き同胞の血が染みついている


※【胴防具】≪焦げた竜装≫

・戦いの果てに焼き焦げ、形を溜めていない竜装の残骸


※【腕防具】≪漆黒の片籠手≫

・左腕にだけ装着された黒き籠手。主を守るために作られたそれは、今や形が歪んでいる


※【脚防具】≪血痕の断脚帯≫

・左足が断たれたままにされ、布と鎧片が血で固まったもの

 

※【指輪1】≪砕けた指輪≫

・力を失い、意味を忘れられた指輪


※【指輪2】≪炎誓の紅輪≫

・竜の炎を高める信仰の残光。魔術との親和性がある



【魔術】

・〈焦黒の吐息〉:『黒炎』を広範囲に吐き出す。魔力量で威力拡大。『変異種』固有魔術

・〈???〉


【奇術】

・〈???〉

・〈竜識視〉:一時的に視力を失うが、『霊視』で障害物を無視して周囲を把握できる


【戦技】

・〈???〉

・〈???〉




あれ……合流してないぞ???

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ