0504・新宿ダンジョンでの練習 その3
Side:北条光時
結局レティーが探ってくれた以上の事は分からないので、俺達は戦闘と魔法の練習をする事にした。ここは公的ダンジョンなので攻略する訳にはいかないが、元々練習の為に訪れているだけなので攻略する気は無い。
俺達はどんどんと進んでいき、前回の7階を越えて先へと行く。8階はイエローラビット。【土弾】を使ってくるが、それだけとも言える魔物だ。盾で防いでいれば、そのうち魔力が枯渇するか、それに近くなり魔法は止む。
それが面倒なら盾で防ぎつつ一気に近付いて倒してしまえばいい。盾が無くても【身体強化】で一気に近付く事は出来るので、【身体強化】が使えれば然して強くもない相手だ。
「【身体強化】が無くても、武器で弾けばどうにでもなるね。ただ、その武器が欠けたり壊れたりする可能性はあるけど……」
「確実なのは盾でしょうね。そういう意味でもパーティーに1人、ないしは2人ほど盾持ちは必要でしょう。武器だけでは厳しいと言わざるを得ません。今後、更に魔法が強力になってくるのなら、盾の重要度は増すでしょうし」
「でも、ミクが言うような範囲魔法が登場すると、もう盾でも防げない可能性はあるけどね」
「いや、そんな事は無いだろ。その分だけ大きな盾を持てばいいだけだ。ただ、それを運搬するだけの腕力とか体力とかが求められるけど」
「ですね。ミク殿も大きな盾を持っていました。アイテムバッグで持ち運んでいるので違うと言えば違うのですが、それでもあの程度の大きさであれば安心なのでしょう。御嬢様も盾を持ちますか?」
「どうなのでしょう? 盾を持つ場合は片手武器でしょうが、私は片手用の武器など練習した事もありません。そうなると使えるかどうかが……。それに北条君を見ていると盾の扱いも難しそうです」
「流したり、弾いたりと忙しいですからな。出来得る限り防いではならず、盾は相手の隙を作る物……でしたか。確かに技術を必要とするでしょう」
「メイスは技術を必要としないから、どちらかと言うと盾に集中は出来ますけどね。むしろ剣とかを持つより、楽な武器を持っていた方が盾は使いやすいですよ」
「武器にまで集中していられないって事だね。盾を細かく動かしたり、相手の攻撃に合わせて柔らかく使うんだっけ? 確かに盾に集中しないと無理だよね。お兄ちゃんにしては上手く使ってるんじゃない?」
「俺にしてはってなんだよ?」
足変わらずセンは一言多いな。そう思いつつも会話は止めず、9階のホブゴブリンも突破して10階に到達。ここはオークの階層で、新宿ダンジョンのベテランが来る階層だと言われている。
「新宿ダンジョンのトップ層ってどこまで行ってるんだろうね? 15階とか? それとも20階かな」
「いや、新宿ダンジョンの最高階層は14階だった筈。11階がウォーキングウッド 12階がウィンドラット、13階がファイアクロウ、14階がクラッシュカウだそうだ。かなりのパワーとスピードで突っ込んで来るらしく、倒せればトップ層の仲間入りなんだと」
「一応15階を覗いたパーティーいわく、15階の魔物はオーガだろうとの事ですね。……そこまで行きますか? 御嬢様」
「……オーガの皮があれば銃弾を弾く鎧が作れるのですよね。それを考えると行った方が良いのかもしれませんが、ここは公的ダンジョンです。持って帰る事は認められていません。なのでそこまで行く必要は無いでしょう」
「ですな。オーガを倒すなら私有地ダンジョンで倒し、葉月グループの企業に渡して研究をしてもらわねば。あれだけ獲物が手に入っておるにも関わらず、碌な研究結果も出ておりませぬからな。いったい狩った獲物はどこに消えておるのやら?」
「魔石は発電所なのは分かるし、お肉は市場に流れてるんだろうけど……皮とか角とか牙とかは不明だよね? ミクが作る武器には魔石が必須だけど」
「ドラゴン素材の武器には、ドラゴンの魔石が練りこまれてますからね。だからこそ魔力の通りが驚くほど滑らかなのでしょうけれど……」
「グリードベアの素材の物とドラゴン素材の物を比べると、天と地ほどの違いを感じますからね。少なくとも素材としての価値がそれほどまでに違うのは明らかです。流石はドラゴンと言うべきなのでしょうが……」
「これも十分な切れ味をしておるのだがのう……。それでもドラゴン素材とは違うのだから呆れるしかない。この刀でさえ十分な切れ味を持っておるというのに、これが効かぬ魔物が居るというのだからな」
「確かにそうですね。ミク殿が仰るにはワイバーン素材にすら届いていないそうですので、全く足りていないのでしょう。とはいえ深層域まであるダンジョンなら出るでしょうが、浅いダンジョンでワイバーンなど出ないでしょうし……」
「持って帰る事を考えたら困り物ですね。っと、10階に来ましたか。いつも通りにオークを倒せば良いのですが、【浅穴】の練習も致しましょう。アレが上手く使えるかは重要です」
葉月さんのその言葉を皮切りに、それぞれが【浅穴】の魔法の練習を始める。練習と言っても、オークが走ってきた所を落とすだけだ。【浅穴】ではオークそのものを落とす事は出来ないが、オークの足を落とす事は出来る。
そして足を落とせば転倒は殆ど確実で、仮に転倒しなくてもオークは止まる。その瞬間に攻撃すれば勝てるのだから、決まれば簡単なんだ。そしてそれを確実にする為にも俺達は練習をしていく。
最初はセンが囮になり俺が魔法を使う。センの近く2メートルくらいまで来た時に【浅穴】の魔法を使い、見事にオークの右足を落とした。突然できた穴に足をとられて派手に転ぶオークと、その無防備な頭部に槍を突き刺すセン。
その一撃であっさりと死亡したオークは、レティーに血抜きをされてハラミの部分だけを取られる。センはリュックを下ろして肉を大きいビニール袋に入れ、リュックに入れたら背負う。その瞬間、肩に重さが来て顔を顰めた。
「重いのは分かるが諦めろ。他の皆もそうやって運んでるんだ」
「それはそうなんだけど、やっぱり重いのは嫌だよ。あーあー、どっかでアイテムバッグが手に入らないかなぁ……」
「それは誰もが思う事だから諦めろ。ミクが言うにはゴールダームのダンジョンにはアイテムバッグが確実に手に入るエリアがあったそうだが、ゴブリン500体だろ? どうにもならないって」
「そもそもゴブリン500体の魔石だけで結構な稼ぎになると思います。ゴブリンが出てくる階層で確かめますか?」
「ミクが言うには1人で500体を倒さなくちゃいけないんだけど……この中にそれだけの体力がある人は居ます?」
「「「「………」」」」
「ですよね。俺だって無いですから、根本的に無理でしょ。そのうえ最後はゴブリンキングで、それに勝たなきゃアイテムバッグは得られない。どう考えても難易度が高すぎますよ。そもそもパーティーで狩ってよくても、おそらくゴブリンキングに勝てません」
「じゃろうの。相手は【身体強化】を使うてくると言うておった。おそらくこちらよりは格段に上手いじゃろう。キングなんて名が付いておるのだから弱い筈が無いのだが」
「ですね。そういう意味では確実に手に入るとしても、勝てるだけの実力が無ければ無理です。そして私達にそれがあるかと言えば……」
難しいって言うか、無理だよなぁ……。どう考えても。
誤字報告にありましたが、491話の「うん? 【清潔】に【清潔】?」という台詞は、聞いた時に【清潔】と【聖潔】が区別できなかったという意味の台詞ですので誤字ではありません。
分かり難かったかもしれませんが、そのような意味となります。なので訂正は致しません。あしからずご了承下さい。




