0502・新宿ダンジョンでの練習
Side:北条光時
昨日は軍の人達に対する<魔法の使い方講座>だったけど、今日はお休みというか別の訓練だ。朝から来ているのは新宿ダンジョンだけど、今日は俺達だけでダンジョン攻略とお金稼ぎをする。流石にいつまでもミクに手伝ってもらうのはなぁ……。
それと、ミクは私有地ダンジョンの破壊に向かった。まだ少ないものの会社に所属している人は居るので、その人が車で乗せていったらしい。何件か既に私有地ダンジョンの破壊を依頼されているらしく、その為ミクは1人で行ったんだけど……。
「むぅ……思ってるよりもリュックが重い。皆これぐらいのを背負ってるけど、大した物が入ってないのに重いとは思わなかった。これから素材を入れたら更に重くなるんでしょ?」
「仕方ないから諦めろ、っていうかまだ重くはない筈だぞ。ここから持って帰って売る素材を入れるにしても、他の探索者に比べれば【身体強化】が使えるだけマシだろうに。他の人達はもっと大変なんだぞ?」
「それはそうだけどさー。この辺りの魔物も大して強くないし、何処まで潜る事になるのか考えたら、結構な憂鬱を感じても仕方なくない?」
「まあ、言いたい事は分かる。今日はドローンカメラをもう一台用意してもらってるから、そのバッテリーを持ってる俺よりは軽いんだ。文句を言ってても始まらないから諦めろ」
「まあ、そうなんだけどね」
「それより絡んでくる奴等が居るかもしれないから、そっちの警戒をしておいてくれ。1人よりも2人、2人よりも3人だ。全員で警戒した方が良いんだからな」
「はいはい」
センは分かってないのか空返事だが、後ろからつけてきている奴等が居るんだけどな。面倒で索敵してないのか。葉月さんもジロウエモンさんも気付いているし、【気配察知】を持ってるユヅキさんも気付いてる。
なのに……って、センも気付いてたのか。気付いててあの態度って事は罠に嵌めようとしてる? それとも気付いてないフリで誘ってるのか? どっちにしても【見切り】持ちだからなぁ、センは。大事なトコはセンに任せた方が良いかも。
そういう風に結論付けて、俺達は新宿ダンジョンの6階まできた。ここがチャージボーアなんだが、次に高く売れる階層だと10階のオークになってしまう。そこまで行くのは大変なので、まずは6階で慣れようって事だ。
チャージボーアが突進してくるも横に避けた俺は、素早く相手を蹴る。前蹴りで蹴ればチャージボーアはコケなくても止まって振り向くので、そこをメイスでカチ割る。それだけで簡単に勝利できるのは楽で助かるな。
「俺は魔石と簡単に肉をバラすから、次はセンがやってみてくれ」
「りょうか~い」
何だか軽いなぁと思うも、妙に気を張ってる。つまりあのやる気の無い態度はワザとか。センも後ろからつけてくる奴等を警戒している証拠だな。とりあえず今は頭を切り替えて、足の方から尻までの肉をゲットしよう。
ミクから貰った解体ナイフも何とか使える様になってきたが、相変わらず使ってても切れ味の落ちないナイフだな。普通は血脂がついて切れなくなるのに、コイツはドラゴン素材だからかスパスパ切れるんだよなーっと。
とりあえず足から尻の肉は手に入ったので、【清潔】と【冷却】を使って綺麗にして冷やしておく。こうすると肉の傷みは少なく出来るそうだ。ミクなら解体前に綺麗にして冷やすんだろうが、俺達の場合は魔力を節約した方が良いと言っていた。
【清潔】を使って自分を綺麗にしたら、背中のリュックを下ろしてビニール袋を取り出し、中に肉を入れたら包んでリュックの中へ。魔石は適当にリュックの中に放り込み、これで解体は終了。センは面倒臭がってレティーにお任せだ。
それはどうなんだと思うも、ブツブツ文句を言い続けるよりはマシか。ついでに葉月さんに解体をさせる訳にもいかないし、そこはレティーにお任せしよう。それにしても解体するの早いなー、俺とは圧倒的なまでに違う。
それを見て凹んでいると、横から声を掛けられた。
「流石にレティーに勝てる人は居ませんよ。【解体】スキルを持つ人は世界にある程度居るらしいですが、やはり他の人とは違い圧倒的に速いそうですからね。それに【解体】スキルを持っていても駄目な方は居るそうですし」
「血腥いし、何より見た目がスプラッタだからだろうね。ダンジョンが出来る前から、野蛮だなんだと言う人が居るくらいだしさ。肉を食べてる癖にという批判をよく見たよ」
「私も見ました。自分の視界に入らないものは無いかのように思っている人も居ますし、世の中には理解できない人が多いなと、つくづくそう思います。っと、そろそろ私の番のようですね」
「葉月さんなら余裕で勝てるけど、余裕だからこそ足を掬われないようにね。まあ、言わなくても大丈夫だろうけど」
「いえ、ありがとうございます」
そう言ってチャージボーアに向かって行ったけど、ユヅキさんとジロウエモンさんが居るから問題なし。それよりも後ろに居る、ずっと動かない連中だ。俺達をつけてきているのは分かってるが、何で後ろでずっと動かないんだ? ここは人が多いからか?。
だからこそ、ここで狩りをしてるんだが、後ろの奴等は近くに居る人達が居なくなるのを待っている? だとしたら俺達が持ってるミクから借りた武具が目的かな。アイテムバッグ自体はミクが持ってて俺達は持ってないし。
ドローンカメラを操作して、あいつらを映しておいた方が良いか。そう思い、ドローンカメラを後ろからつけてきて隠れている奴等に向けると、いきなり「ガシュッ!」と音がして「ガン!」という音と共にドローンが傾く。
「盗賊!!」
俺は誰かに襲われた際の言葉を口に出す。魔物は元々敵なので、「敵襲」と言うと間違ってしまうかもしれない。そんな話をしていた時にミクが、「だったら盗賊だと言えばいい」と言ってきたんだ。
確かに現代日本で盗賊が出る事は無い。なので盗賊と言えば、確定でダンジョン内で襲ってくる人間という事になる。大変に分かりやすいという事で、人が襲ってきたら盗賊だという事に決まったんだ。
後ろから襲ってきたのは7人。何れも剣を持った連中だ。重いからか盾を持ってる奴は居ない。俺が襲ってきた連中に【火弾】を放つと、連中はビックリしたのか足を止める。
「お前達はなんだ? 俺達を襲うって事は自分達も襲われるって事だぞ。それを自覚してるのか」
「ウルセェ! ガキが御託並べんじゃねえよ! さっさと殺すぞ!!」
「「「「「「おうっ!」」」」」」
何だか不良っぽい感じの奴等だが、ダンジョンでは誰であれ、襲ってきたら殺していい事になっている。これは法律で決まっていて、諸外国でも同じ法律だ。最初は自称人権派弁護士とかが騒いでいたらしいが、襲われる者が多発した為すぐに成立して施行された。
俺は盾を構えつつ再び【火弾】を、今度は真ん中のヤツの顔面に向かって放つ。ミクは襲われた場合、「一切合財の情け容赦をするな」と言っていた。「相手は魔物と変わらない連中だから、さっさと始末しろ」と。
流石に顔面に火の玉が飛んでくれば、慌てて避けるか防ぐかしか出来ない。防御しながら突っ込んでくるヤツとかは滅多に居ないので考慮しなくていい。ミクはこういう反射を上手く利用しろと言ってたっけ。本人は反応できない速度の一撃で殺すんだろうけど。
俺は慌てている真ん中の男を無視し、右端の男に近付く。そいつは剣で切り込んできたものの冷静に盾で止め、【身体強化】をした一撃で頭を潰す!。
その一撃は勢い余ったのか、一撃で相手の頭を潰した。……ヘルメットごと。




