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0464・オーク戦とこれからの話




 ユヅキとオークとの戦いが始まったが、2メートル程度の短い薙刀とはいえ、流石にリーチが長いからか迂闊うかつに攻めて来ないオーク。目の前で見せられているので、流石に飛び込んでは来なかった。


 内心でユヅキは驚いていた。何故なら単細胞に女性に向かってくるのがオークだと思っていたからだ。その割にはヤエのカウンターをスカすなど、理知的な部分も感じられるのでおかしいという気持ちはあった。


 その答えが目の前に居る、迂闊うかつに踏み込んで来ないオークである。流石に舐めていた訳ではないが、事前情報と違うという所には腹を立てており、そのままオークと睨み合う。


 その後ろでは、ヤエがさっきのお礼をコウジに述べていた。コウジとしてはミクに言われるまで気付いていなかったのだが、フォローをしたのは自分なので素直に受け取っておく。


 睨み合いを続けていたユヅキとオークは、遂に痺れを切らしたオークが突撃するという形で始まった。しかしユヅキは脇構えから即座に下段水平切りに移行、そのままオークの左太腿を切った。


 太腿を深く切られたオークは体重を支えられなくなり倒れ、そこに薙刀を戻したユヅキの突きが決まる。頭に深く突き刺さった薙刀の刃はオークの脳を破壊し、その一撃でユヅキの勝利が決まった。



 「……ふぅ。薙刀も練習してきた事がございますが、やはり実戦で使うのは違いますね。正しく攻撃に威力を乗せて放つ必要があります。これは唯の対人練習では得られないものでしょう」


 「明確に敵を殺す為の力を篭めねばならん。それは刀でも同じ。竹刀や木刀での練習では決して身につかぬもの。相手を殺してはいかぬので、どうしても力を緩めてしまう。そのうえ敵を殺す力の入れ方は実戦でしか知る事ができん」


 「はい、ここまで自分が知らないとは思いませんでした」


 「仕方あるまい。大奥様もおっしゃっておられたが、この平和な国では刀を持って人を殺す事など無い故にな。実戦と練習の区別がついていない者が多い。それが死亡原因の1つではないかと思う」


 「剣道などの修練をしてきたからこそ、自分は大丈夫という勘違いをするのでしょうね。私もしてきましたが、ここまで実戦が違うとは思いませんでした。そして敵の命を奪うというのが難しい事なのだという事も」


 「とりあえず次は私なのですが、オークという者は果たしてこちらに相対してくれるのか……」


 「二郎衛門さん、それは無理です。俺もセンやミクに向かうオークを倒すぐらいしか出来ませんでしたから。隠れていてもらえば戦えるでしょうが、それをする意味があるのかと言えば……」


 「無いな。で、あるならば、女性に集るところを始末するか」



 オークが現れたが、一番近くにいたミクに対して向かってきた。ミクは後ろに跳ぶ事を言って待ち構える。そしてオークが抱きつきに来た直後、後ろへと派手に跳ぶ。


 その隙に横から首へと斬り込むが、ジロウエモンの脇差では浅い皮しか切れなかった。



 「む? まさかこれ程とは……」


 「ブルゥ!!!」



 怒ったオークはジロウエモンを殴ろうとするも、それより速いミクが股間を蹴り上げた。



 「ブミョ!!!?!?」



 股間を【身体強化】で蹴り上げられたオークは失神してしまい、うつ伏せに倒れた後で股間から血を流しながら泡を吹いている。それを見たコウジ達の顔は引き攣っているが、今さらなので止めを刺そうとするジロウエモン。


 しかし鋼鉄製の武器では浅く切るのが限度であった。仕方なく突き刺し、何とか頚動脈を切る事に成功。派手に血を噴き出しながらオークは死亡した。



 「ふぅ……それにしても鋼鉄製如きではどうにもならぬか。これは大奥様にも御報告しておいた方が良いな。ついでに映像の方も御嬢様に渡すと言っていたし、そちらも大奥様に御覧になっていただかねば」


 「もしかして葉月グループってダンジョン攻略に乗り出すんですか? 幾つかの企業がダンジョン攻略をサポートするとかニュースになってましたけど」


 「うむ………。如何いたしますかな?」


 「構わないのではありませんか? ミク殿の事もありますし、お祖母様もこちらで守るという形を整えられるようですしね」


 「先ほど言っていた探索者のサポートではなく、葉月グループでは自社に所属する形で援助をするという方針なのだ。それ専門の会社も立ち上げるとの事でな、その第1号が御嬢様となる」


 「御嬢様を大々的に発表する事で、所属する探索者を増やすという形ですね。代わりに給料制になりますが、コレは仕方のない事です。安定した収入か、不安定な収入かは個人の判断に委ねられます」


 「儲かっていない人とかは所属するんじゃないかと思いますけど、実力のある人は所属しないのでは?」


 「それで良いのです。そういう者達の実力を伸ばす事も始められるようですので、「あそこに所属すると実力が伸びる」。そう思われるのが最も望まれている形なのですよ。それ故の給料制と手厚いサポートなのですから」


 「葉月グループにも幾つか浅い所で強力な魔物が出るダンジョンはある。最初は無理だろうが、実力のついた者はそういう所に派遣されるだろう。今は宝の持ち腐れになっておると聞く」


 「宝の持ち腐れって……スタンピードは大丈夫なのですか?」


 「そこは問題なく押さえ込んでいると聞いておる。現地の者の報告が正しければ大丈夫であろう」


 「坂村はよく知っていますね?」


 「御嬢様。私にも現役の時の伝手は色々とございますし、新しい情報は逐一入れております。そうせねば御嬢様をお守り出来ませぬからな」



 そんな話をしている近くで情け容赦なくオークの頭を潰しているミク。3人はワザと見ないフリをしているが、嫌でも目に付くのだ、その凶行は。


 ウォーハンマーが振り下ろされ、「ドゴンッ!」という音と共にオークの頭が潰れて飛び散る。そしてその後にレティーが血抜きを行い収納し、再びオークを倒して血抜き。


 もはやオークは屠殺されているといっても過言ではなく、あまりにアレな光景に言葉も出ない3人。


 その近くではセンが囮になる形で、コウジがメイスを頭に振り下ろす。コウジはオークの死角から攻撃しており、その一撃で大ダメージを受けたオークに対し、センが十字槍で首か足を突く。


 それだけで大きなダメージになっており、オークはどちらに集中するべきか迷う。既に挟み撃ちの状態なので、後は攻撃された方が回避に徹し、もう片方が攻撃を加えればいい。それで勝てる。


 コウジとセンの必勝パターンだが、これと同じ事を他の探索者もしている。むしろ綺麗に決めている分、他の探索者よりも優秀であろう。



 「やはり大奥様のおっしゃられる通り、あの2人も新会社に所属して貰った方が良いのでは? 兄の方は御嬢様と同じ【魔力操作】、妹の方は珍しい【見切り】のスキル。それに御嬢様と我々。十分にパーティーとして機能すると思いますぞ?」


 「そう、ですね。あまりクラスメイトを巻き込みたくなかったのですが……」


 「そもそも葉月の家を継ぐ事は無いので、意図的に平民の学校に進ませられましたからね。とはいえ市井しせいに下り、いきなり平民の生活をせよと言われても困りますから、慣れさせるというのは親心でもあります」


 「分かっていますよ。それでもクラスメイトを巻き込みたくはなかっただけです。経営ともなれば非情な事もありますが、それに納得できるかと言えば……」


 「我々でも承服しかねる事はあるのです。そういった事に慣れていない者達であれば……。とはいえ、やってみねば分からぬのも事実。まずは映像を見てもらってからですが、場合によっては我等もカメラを着ける事になるやもしれませぬな」



 これから先の事を考えると、溜息の止められないヤエであった。


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