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0291・シャル達との説明と雑談




 夕日の照らす帰り道を歩き、<妖精の洞>へと帰還した3人。食堂に行くと、既にシャルとイリュとカルティクが食事をしていた。その隣のテーブル席に座り、注文をしたら大銅貨12枚を払うミク。


 そのまま雑談でもしようかと思ったら、シャルから話しかけられた。



 「今日は随分と遅かったけど、3人は何をしてたんだい?」


 「第7エリアに行って狼と狐を倒して戻ってきて、解体所で売った後で<肩トゲ>の股間を蹴り上げたよ。で、ベルが来てラーディオンのトコに行く事になって、さっきまでラーディオンに説明してた」


 「物っ凄い端折はしょったわね。まずは第7エリアの事が先じゃない?」


 「そうね。第7エリアに行ったのなら聞いておきたいわ」


 「第7エリアは結局のところ、殆ど分かっていません。ミク殿の感覚を頼りに真っ直ぐ歩いていっただけです。白い狼は体長4メートルほど、白い狐は体長3メートルほどの大きさです」


 「随分と大きいのね? 更に言えば、あの夜の雪山では持って帰るのは困難を極めるでしょうし……。アイテムバッグがなければ、根本的に持って帰れなそうね」


 「最初の狼が出てくるまでに時間が掛かってるから、多分だけど脱出の魔法陣の近くには魔物は居ないと思う。元々居ないけど、結構な距離を移動しなきゃ戦えないんじゃないかな?」


 「そうだね。魔物が出てこないのは変だなと思った辺りで出現したから、それなりの距離は歩いてたと思う。しかも雪の下に隠れてるから、目視に頼らざるを得ない場合は、高い確率で不意打ちを受けるだろうね」


 「あの猛吹雪の吹く夜の雪山で、雪の下に居る魔物に気づけと? スキルでもなきゃ無理だろう、流石に。ミクなら可能だろうけど、匂いも無理、音も無理、視界は最悪。これでどうしろって言うんだか」


 「そういう地形と環境だから仕方ない。それでも攻略自体は決して不可能じゃないと思うんだけど、今のところ階段も見つかってないんだよね。一方向の突き当りまで行って、帰ってきただけだし」


 「で、その狼と狐の売値はどうだったんだい?」


 「狼が1頭で大銀貨2枚。狐が1頭で小金貨1枚。狐の方は毛皮が柔らかくてフワフワなのよ。だから貴族の奥方連中に高く売りつけられるってさ」


 「成る程。見栄の張り合いに使えるって訳ね。そうやって高い物で貴族から金銭を吐き出させないと、市場にお金が回らないから仕方ないわ。決してバカが踊ってるのを嘲笑あざわらってる訳じゃないの。本当よ?」


 「「「「………」」」」



 わざわざ念押しをしている時点で、そう思っているという事である。皆そう思っているのだから、わざわざ念押しなどする必要が無いのだが、それでもわざわざしたのだ。余程に嘲笑あざわらいたいらしい。



 「ゴホンッ! それは横に置いといて、その後の<肩トゲ>ってなんだい?」


 「肩にトゲ付きの肩当を着けてる探索者のこと。頭の頂点1列しか残さずに剃ってる、訳の分からない髪型をしてた。そいつが今日3回も絡んで喧嘩売ってきたのよ。3回とも股間を蹴り上げてやったけど」


 「あー……なんか居たねえ。あたしは殴って気絶させたかい。あたしを下っ端か何かと勘違いして、ついていってやるとかホザいてたね」


 「私達にも同じ事を言ってきたわよ。ミクが邪魔だからどけって言っても、無視して喚いてたわ。だから股間を蹴り飛ばされるんだけど」


 「そいつ、レザーアーマーにやたら鋲を打ってるヤツでしょ? 女性探索者に絡んでるのを何度か見たわ。大した事の無い実力しか持ってないみたいだけど、逃げ足だけは妙に速かったのを覚えてる」


 「逃げ足だけじゃ稼げないけど……ああ、だから仲間が欲しいと。そして男よりは女が良いって事ね。分かりやすいヤツ」


 「そんなのが3回絡んできたんだけど、3回目はギルド内で受付に登録証を預けてたのよ。受付嬢が気を使ってくれて、わざわざランクを大きな声で言ってくれてさ、ようやく高ランクに喧嘩を売ってたと自覚してた」



 ミク達の食事が運ばれてきたので食べ始めるも、早速セリオがガッツいて食べている。お腹が減っていた訳ではなさそうだが……。食事が娯楽になったのだろうか?。



 「大分遅い気がするけど、バカなんてそんなもんかい。で、その後は王女が来たんだったかな?」


 「そう。何でもデゴムトの所から救助された女性達の中に、探索者が居たらしいから、そのリストをラーディオンに持って来てたよ。そこでわたし達に会って、ミクがやったと悟ってた」


 「気の毒なぐらい頭を痛めていましたね、姉上は。色々立てた対策が全て無駄になったとも言っておられましたし、この後は適当に終わらせるのではないかと思います」


 「ああ、デゴムトの事。それならあの子がギルドに行くのも納得ね。セリオの事は説明したの?」


 「ぼかしながらティアが説明してたね。まあ、ミクも態度で分かるようにしてたけども」


 「まあ、ベルカーラ王女に対して明確に答える訳にもいかないだろ。そういうのは向こうだってあるもんだし、分かってるだろうさ。口に出さないのが答えなんだ」


 「納得された姉上はラーディオン殿の執務室を出られ、その後はラーディオン殿に対して細かい説明です。流石にそこではミク殿もお話になられてました」


 「話したのはデゴムトの事とエルフィンの事に、<強欲の腕>の事だよ。デゴムトはともかく、エルフィンは王を喰った事と<狂乱王>の事。<強欲の腕>は<旅のセドン>がトップで死んだ事と、<剣のレーグス>がグランセンドの工作員だった事ぐらいかな」


 「「「ぶっ!」」」



 いきなり噴き出した3人と、それにビックリする3人の構図。訳が分からないが、セリオは気にせずに食事を続けている。肝は豪胆らしい。



 「ちょっと待って! <剣のレーグス>とかいうヤツが神の名を持つスキルを持って、調子に乗ってたのは聞いたわ。でもグランセンドの工作員だなんて聞いてないわよ!」


 「あれ? ……そうだっけ? まあ、いいや。グランセンドには神の名が入ったスキルを持つ奴が複数いて、<剣のレーグス>もその1人だったみたい。<強欲の腕>を奪うつもりが、自分で殺して終わらせちゃったからねえ」


 「それで困ってゴールダームに逃れようとしたんだっけ?」


 「そう。本国から人が送られてきたらマズいって、ブツブツ独り言を言ってたよ。だから各国から人が来るゴールダームに来て、有象無象に紛れようとしたみたい。ま、それも出来ずに殺されたけどねー」


 「そりゃそうもなるだろ。ミクを敵に回して勝つ事なんて無理なんだからさ。ま、グランセンドが色々工作をするのは昔から変わらない。あそこはそうやって内部から他国を崩して奪ってきたんだ」


 「国には適正な大きさというものがあるのにね。それを超えたら後は弾けて壊れるまで膨らむしかない。どんな物事にも限度がある以上、いずれは破滅する運命なのよ」


 「その程度の事すら分からない連中なんだから、何を言っても無駄さ。おそらくカムラに工作活動をしても上手くいってないんじゃないかい? だからドルムにやってたんだろうねえ。よくやるよ」


 「ドルムは手に入る物も多いけど、あの寒さをどう考えているのかしらね? それとも銅や鉄に石炭を欲しがったのかしら?」


 「そこら辺は手に入るなら、どんな国だって欲しがるさ。ただしドルムの寒さも含めてとなると大変だろうけど……あの膨張主義の国が、新しく手に入れた所の民の事なんて考えるかね?」


 「考えないでしょうねえ。だからこそ常に内部で叛乱の火種がくすぶるのだし」



 どうやら常に危うい国らしいグランセンド。喰える事も多そうだと内心でほくそ笑む肉塊。1度行ってみてもいいかと思っているようだ。


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