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0290・ラーディオンへの更なる説明




 『僕はねー、セリオって言うんだよ。ミクに助けてもらった御蔭で、今は生きていられるんだけど、あの狭い箱の中は辛かった。お腹が空いて堪らなかったし、体が動かなかったんだ』


 「そ、そうか……。あ、そういやお前さん、飢えて死にかけてたんだったか。そりゃキツかったろうさ。飢え死にはシャレにならねえほどキツいって聞くからなあ。それにしても生きられて良かったな」


 『本当にねー。こうやって美味しいもの食べられるようになったし、美味しい味も分かるようになったよ!』



 ベルが去った後のテーブルの上で、小型犬の大きさのセリオは干し肉やチーズモドキを食べていた。味覚が変化した事による違いで、今まで食べていた草を美味しいとは思えなくなっている事などを説明している。



 「まあ、実際に美味しいと思っているかは定かじゃないけど、不味いとは思っていない筈だよ。もし不味いと思っているなら好んで食べない筈だからね。草食動物が草を食べる以上、ある程度の好き嫌いはある」


 「それが栄養的な好き嫌いなのか、味的な好き嫌いなのかは別だけど、少なくとも草を嫌わない味覚はしている筈って事。でも雑食になったセリオは味覚まで変わってる訳で……。もう戻れないわよね、それじゃ」


 『えっ!? 僕、戻されるの?』


 「違います、違います。そんな事はありませんよ。単に戻る事は出来ないというお話です。通常のライノ種や、ワイズライノとも違ってしまっていますからね。更に言えば寿命も……」


 「あー、つまり女将軍や姫様と一緒って事かー……。そりゃ益々そっちで何とかしてもらわなきゃ困るな。まあ、元々そのつもりみたいだから良かったが」


 「そうね。不老になってる以上は、種族に関係なく不老仲間として居るしかないしねえ。他の者達と居ても見送るだけにしかならないもの。同じ生き方が出来ないんだから、どうしようもないわ」


 「不老っつうのも、良いもんじゃねえなあ。昔から追い求めてる連中なんかは居るが、何でそんなもんを求めるんだか。寿命で死ねるっていうのも、それはそれで幸せだろうにな」


 「バカだからよ。バカだからミクに喰われて国がガタガタになるんだしね。今でも王子と王女が骨肉の争いをしてるんでしょ、あのマヌケな国は」


 「………そっちもお前さんだったのか。手に負えない事は止めてほしいが、この場合は見て見ぬフリが一番だな。どのみち言ったところで頭のおかしいヤツ扱いしかされんだろうし、丁度いいか」


 「それの原因は、そもそもイリュとカルティクを捕まえて、不老の真相を解き明かそうとしたからよ。それでミクが始末しに行ったわけ」


 「バカすぎるだろ、あそこの王は。マヌケ過ぎて何も言えん。知らないヤツからすれば解明出来ると思うのかもしれんが、神の御業を真似ようなんぞ、頭がイカレてるとしか思えねえな」


 「元々は<狂乱王>の所為なのよ。エルフィン3代目の王である<狂乱王>が、闇ギルド<黒の墓石>のトップだった。そして、こいつが私に喰われた王をそそのかしてた」


 「おいおい。そりゃあ、エルフィンにとって秘中の秘じゃねえのか? 3代目の王が生きてて闇ギルドのトップってなあ、ちょっとシャレにならんぜ」


 「挙句、死にたくなくて【死霊術】で自分をゾンビにした奴よ。私の心臓を奪って<ノーライフキング>になったけど」


 「前に聞いてた<ノーライフキング>って、エルフィンの3代目の王だったのかよ! 流石は<狂乱王>と呼ばれるだけはあるぜ、頭がおかし過ぎるぞ。しかも、確か一撃で滅ぼされたんだよな?」


 「そうよ。ミクの【浄滅】で一撃ね」


 「……ま、この世から頭のおかしい奴が消えたんだから、万々歳ってヤツだな。それはともかくとしてだ、こっちからもコソッと上に情報として上げとくが、他に何も無いだろうな? あったら言っといてくれ」



 流石にビックリ箱みたいなミクからは、何が飛び出してくるか分からない。今の内に聞けるだけ聞いておこうと思うラーディオン。



 「他に? 何かあったかなー………。ああ、闇ギルド<強欲の腕>は壊滅したよ。ドルム地下王国を根城にしてた<強欲の腕>だけど、トップは<旅のセドン>っていう探索者だった」


 「………また探索者のイメージが悪くなるような事しやがって。そいつはお前さんがキッチリ潰してくれたんだな?」


 「微妙に違う。私はドルム地下王国に散らばってた<強欲の腕>の支部を潰していってた。もちろん進路上にある町などだけなんだけど、連中は<ソムシウル>という商会を経営してた。っていうか、<強欲の腕>そのものが<ソムシウル>だったよ」


 「成る程なぁ。だがお前さん、ボスを殺した訳でもないみたいだが、それはどういう事なんだ?」


 「ドルムに<強欲の腕>の本部は2つあって、そこにあった金貨は根こそぎ奪って王城の王の執務室に置いてきた。それはいいんだけど、そうやって潰してたからか王都の支部の跡地で、<旅のセドン>は下っ端に襲われて傷を負ったみたい」


 「おいおい、下から叛逆されたのか。組織が瓦解する際には、ありがちな事だな」


 「それを笑ってた護衛の<剣のレーグス>ってヤツに怒ってたけど、ナイフで刺そうとして失敗。逆に<旅のセドン>は<剣のレーグス>に切られて死んだよ。で、コイツを喰った。他の死体は置いてきたから、きっとコイツの所為になってる筈」


 「つまり、既にこの世に居ねえヤツを探し回ってるって訳か。大変だなぁ、ドルムの連中も」


 「ここまで話したから話すんだけど。ウチのレティーは脳を食えば、そいつの持っている知識や記憶をだいたい奪える。で、<剣のレーグス>の知識はというと、グランセンドの工作員だった」


 「グランセンドだと!?」


 「そう。グランセンドには何人か神の名を持つスキルの持ち主が居て、<剣のレーグス>もその1人だった。どうも<強欲の腕>を支配して乗っ取るつもりだったみたい。その前に自分で切って潰しちゃったけどね」


 「ああ。まあ、そりゃそうだな。<旅のセドン>とかいうヤツを自分の手で切ったんだ、工作員としちゃ下の下としか言えねえ。事の始まりが、お前さんだとしてもな」


 「という事で、ゴールダームまでは伸びてないと思うけど、ドルム地下王国にはグランセンドの手が伸びてた。これぐらいかな、話しておく事は」


 「それも重大な話だな、話してくれてよかったぜ。とはいえ、お前さんらがドルムに行ったのはつい最近だ。帰ってきたのも少し前らしいから、別に隠してたって訳でもないしな」


 「隠す必要があんまり無いからね。面倒になる相手なら隠すけどさ。ベルは微妙かな? 大騒ぎに発展させる可能性が無い訳じゃないのが何とも……」


 「まあ、姉上は色々と、人に問われれば答えなければいけない立場でもあります。仕方がない部分はあるので、許してあげて下さい」


 「許すも何も、そこまで話さないだけだよ。別に全てを話さなきゃいけない訳でもないし、必要な事柄だけで済むでしょ」


 「そうですね。姉上も知らなかったからこそ助かるという事もありますし」


 「何だか怖い事を話してる気がするが、怖い事を話すのならワシの居ない所でしてくれ。流石に聞いちゃマズいものは聞きたくない」


 『そろそろお話は終わりー? なら帰って何か食べようよ』


 「そうね。夕日も出てきてるし、さっさと宿に戻って夕食にしましょうか」


 「おっと、もうそんな時間か。ワシも今日の仕事は終わりだし、片付けて帰るかな」



 セリオの一言で解散となり、ミク達はギルドを出て帰り道を歩く。何故かアレッサがセリオを抱いたままだが、気に入ったのだろうか?。


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