0153・第6エリア・2階
中央に近付いていくミク達は、何度か蛇やモグラの襲撃を受けつつも辿り着いた。そこは一面花畑であり、中央には蜂の巣が………無かった。
「あれ? 蜂の巣が無い?? 何で蜂の巣が無いんだろ、昨日は普通にあったのに。それに蜂の巣の根元に剣とアイテムバッグがあったんだから、昨日の出来事は間違いなく夢じゃなくて事実の筈」
「あれだけ巨大な物だったんだし、1日では復活しないんじゃない? 流石に元に戻すのは時間が掛かるんだと思う。それぐらい巨大だったんだしさ。どのみち2階に行ったらあるんだから、さっさと2階に行こうよ」
『お魚! お魚を食べてないの!! 一番新鮮なヤツを食べてから!』
「あー、はいはい。分かった、分かった。……という事なんだけど、いいかい?」
「別にいいよ。一度東に出て魚を獲ってから進もうか。どのみち2階への階段は入り口の東だから」
そう説明すると、ミク達は階層の中心から東へと向かって移動する。厄介ではあるものの、それなりに警戒するコツを掴んだのか、最初の頃に比べれば落ち着いているシャルとカルティク。
東へと移動し続け砂浜に抜けたら、早速マーマンを倒す。そして解体した肉を適当に海に放り込むと、すぐに魚が寄ってきて食い始める。
魚の群れに近付いたミクは、槍を構えて狙いをつけたら次々に刺していく。1匹刺す毎に後ろに放り投げ、それをアレッサやシャルにカルティクがキャッチしていく。
10匹ほど獲れたら戻り、1匹を貰うと触手ですぐに捌いた。後は木の皿に乗せて全員で食べていく。
「うん! 新鮮なヤツは生でも美味しいねえ! こりゃいい。でも、これは酒を飲みながら食べるべきだよ」
「たしかに。濃厚なお酒というか、重いのが合いそう。これだけの魚なら十分に重いものでも釣り合いがとれるわ。それにしても美味しいわね」
『うーまーいーぞー!!!』
『栄養的にはあまり良くないので、私には美味しさが分からないんですよね。まあ、ハチミツの事があるので、味覚に関しては微妙な気分ではあるんですけど』
「昨日も食べたけど、相変わらず美味しいね。魚は肉と違って新鮮な方が美味しいのかな? 肉はちょっと置いておかないと美味しくならないじゃない?」
「熟成ってヤツだね。殺してすぐの肉は硬いから、あれは飢えてる時に無理して食うぐらいさ。もしくはミクのように硬さを気にしないヤツが喰うもんだよ」
『熟成!? ふぉぉぉ! 私も食べる、熟成のお肉を食べる!!』
「いや熟成と腐るのは紙一重だから難しいのよ。外側を削り取って内側の腐ってない部分というか、悪くなっていない所だけ食べるの。美味しいんだけど、勿体ない気もするのよねえ、アレ」
「分かる。あの捨てた部分も、早ければ食べられるんだよ。それを考えると流石にねえ、勿体ないとしか思えない。純粋な貴族なら気にもしないんだろうけど、あたしは駄目だ。元々は平民だから納得できない」
「新鮮な踊り食いが一番美味しいんだけどね? 生きてないと悲鳴が聞けないし……」
「「「………」」」
だから熟成だって言ってんだろ。そんな言葉が聞こえたような気がするが、きっと気のせいであろう。
十分に魚を堪能したミク達は2階への階段を目指して進んで行く。そこまで時間も掛からず到着した4人は2階に下り、再び中央を目指して早歩きで進む。相変わらず奇襲を受けるものの突破し、蜂の巣を見て愕然とする。
「…………なにあれ? あんなのアリ?」
「分かる。言いたい気持ちはよく分かるし、アレッサが小馬鹿にした目で見てくる筈さ。なんだい、あのメチャクチャな大きさの蜂の巣は。というか蜂が多すぎて真っ黒になってるんだけど?」
「だから言ったでしょうが。この大量にいる蜂どもと戦える? あの蛇よりも強力な毒を持つ、これほどの群れとだよ? 自殺行為を超えて、唯の愚か者としか思えないでしょ」
「もともと戦う気なんて無いよ。とはいえ想像してたのより遥かに酷い。ここまでの物は完全に想定外だ。本当に蜂の巣が巨大な木のように聳え立ってるじゃないか」
「何と言うか、形容し難い地獄よね。流石に冗談でもなんでもなく、近付いたらいけない場所だし危険地帯でしかないわ。これに対して争おうという気にならないもの。そもそも手を出しちゃいけない相手でしょ」
「そうなんだけど、ミクは蜂を食い荒らして巣をゲットするし、そうしないとハチミツは手に入らないんだよ? まあ、あれほどの甘さのハチミツが欲しいかどうかは微妙だけど」
「いや、欲しがる奴はいっぱい居るんじゃないかい? ミードが出来てからだけど、美味い酒が出来る可能性は高いし、ゴールダームでしか採れないハチミツでもあるしね。特産という意味では欲しがる奴は多いと思うよ」
「確かにね。まあ、ここで話してるのも若干怖いから、さっさとミクに食い荒らしてもらいましょう。どうせ毒の事も考えて食べるんでしょう?」
「当然。今のところ、こいつらの麻痺毒が一番強力なんだ。だから出来るだけストックしておきたい。毎日採れるならそこまで集めなくてもいいんだけど、次にいつ採れるか分からないから今の内にね」
そう言うと3人を下がらせてから、アレッサにアイテムバッグとレティーを預ける。その後、一気にダッシュして接近したら、肉塊に変化しつつ蜂を徹底的に食い荒らしていく。
蜂の側も抵抗はするものの、肉塊に敵う筈もなく飲み込まれる。毒だけは傷つけずに確保し、それ以外は食われていく蜂達。圧倒的強者には食われるしかない、そんな自然の摂理を体現していると言える光景だ。
それを見ている3人は何とも言えない表情をしつつも、怪物の捕食シーンを見守りつつ、襲ってくる蛇とモグラに対処し続けた。空気の読めない連中である。
「全部食べ終わったけど、こっちもこっちで色々あったみたいだね。死体が結構散乱してるけど、どれも乾涸びてるから吸われた後か」
『あんまり美味しくない。これなら魚を食べてる方がマシ』
『亀の血は美味しいんですが、それは栄養的に美味しいだけですからね。味覚的な事は分かりません』
「空気の読めないバカが襲ってきたと言うべきか、それとも音が気になってやってきたと言うべきか。どっちかはちょっと悩むところだね」
「まあ、どっちでも倒すべき魔物である事に変わりはないし、さっさと倒すだけよ。それでも空気が読めないというのは分からなくもないけど」
「確かに空気は読めてないね。来たところで勝てないという実力差も分かってないし、どっちにしてもバカで終わる話かな」
「十分な毒もゲットしたし、ハチミツも大量だよ。蜂の巣を含めて邪魔な物はここに捨てて、次の階へと行こうか?」
「そうね、ゴミは捨てて行きましょう。私もちょこちょこ入れちゃったままなのよ。やっぱり便利だから」
「言いたい事は分かるんだけど、その使い方は良いのかね? 流石に怒られはしないだろうけど、あんまり良い事でもないと思うよ?」
「ミクは神様が小さい事を気にしたりしないって言ってたし、この程度ならセーフだと思うんだけど……」
「大丈夫でしょ。あいつらは余程酷いというか、壊すような使い方じゃない限り、怒ったりはしないよ」
「なら、大丈夫そうね」
そう言ってカルティクはゴミを捨て、ミクもゴミを捨てていく。蜂の巣の残骸が主なゴミだが、中には関係のないゴミもあった。
ゴミを捨ててスッキリした一行は一度階段へと戻り、そこから東へと進む。すぐに次の階への階段を見つけたので進み、そして3階に着いた。
ここからは未知の領域ではあるものの、パターンは分かっているので気楽なミク。果たして考えている通りのパターンなのだろうか?。




