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0154・第6エリア・3階




 再び階段を下りて真っ直ぐの方向を北とし、地図を描いていく本体。それと並行して樽の作成とハチミツの詰め替えを行っている。何故か幾つかの樽を神が持って行ったが、ミクは気にしない事にした。


 まずは適当に方向を決めるのだが、今回は真っ直ぐ進む事に。その方がシャルとカルティクが安心するからだ。ミクとしてはどちらに進もうが戻れるのだが、2人は森の中という事で戻れる方向に行きたがった。


 そのまま蛇とモグラを蹴散らしながら進むと、あっさりと蜂の巣に到着。再びミクが蜂の巣を荒らす事に決まったのだが……。



 「ミクがまた蜂の巣を食い荒らしてるけど、見慣れてきたからか特に何も思わなくなってきたよ。まあ、流石に3回目ともなると慣れるんだろうね」


 「あたしはもう慣れたけどね。あの「ギィ!」という声が悲鳴なんだろうけど、特に何も思わないし、最強の怪物を相手にしたら誰だってああなるんだよ。それ以外に道は無いしね」


 「そうだけど、今さらと言う程にはまだ慣れないわ。私はあまり見てないからかしら? それとも血肉を受けていない所為? いえ、関係無いわね」


 「そこは関係無いと思うよ。ミクの血肉は凄い肉体にしてくれるけど、精神はそれとは違うだろうしね。血や肉で心が強くなるって意味が分からないし」


 「まあねえ。おっと、終わったみたいだ……けど、こっちに来ないね? 何かあったかな?」



 そう言って他の2人と顔を見合わせたシャルは、ミクの下へと歩いて行く。そのミクは、とある方向をジッと見ながら何かを考えているようだ。



 「ミク、いったいどうしたのさ? そっちの方を向いてジッとしてるけど。何かおかしな物でも見つけのかい?」


 「見つけたっていうか、魔力反応が向こうにあるんだよね。おそらくだけど魔道具か魔剣か、そのどちらかだと思う。服を着るからちょっと待ってて、終わったら調べてみよう」



 ミクは素早く服を着ると、アレッサからアイテムバッグを受け取り背負う。その上にレティーが乗ると、向いていた方角へと歩き始めた。


 慌てて3人はついていき、ミクは迷う事なく森を進むと、そこには木の根元に立て掛けてある剣が2本あった。それを見た瞬間、渋面になるミクと驚く3人。ミクの内心は「また剣か……」というものだ。



 「おお! ダンジョン内で見つかる魔力の篭もった剣。それは魔剣以外あり得ないからねえ! とりあえず抜いて試してみるかい!!」


 「ちょ! こっちに向けないでよ。あっちに向かって魔力を篭めなさい、あっちに向かって!」


 「ごめん、ごめん。ついはやっちまったよ。あっちに向かって使うけど良いかい?」


 「大丈夫よ。とりあえず使ってみての結果を見ないと、使える剣かどうかが分からないわ。だからさっさと使ってちょうだい」


 「かさなくても、すぐに使う、よ!!」



 シャルが魔力を篭めた瞬間、剣から放射状に冷気が飛び出した。シャルは剣を前に突き出す形で持っているが、その鍔元近くから放射状に出ている。しかし持っている本人はちょっと冷たい程度で済んでいるらしい。



 「冷た!! 凍る、凍る。これ凍っちゃうほど冷たいんだけど!? 持ってる本人的にはどうなの?」


 「ちょっと冷たいかなー? って感じだね。特に凍えるとか、そんな事もないよ。だから上手く使えば……っていうか、コレじゃないのかい? 蜂を倒せる武器は!?」


 「「「あー……」」」



 シャルに言われてミクも納得した。肉塊なら楽勝で勝てる相手でしかないが、普通の探索者では絶対に勝てない。何かがおかしいと思っていたが、この魔剣があるなら納得できる。



 「これを持って2階や1階で戦う訳だ。そして1階の剣を見つけて、新しい金属を作りだすと。いや、どうやって作るかは知らないけどさ、何となくそういう感じだと思うんだよね」


 「誰かが想定しているって事? まあ、エリア内に蜂を攻略できるようになる武器があるんだしね、誰かが配置したと考えた方が納得出来るわ。おそらくは神様なんだろうけど……」



 そう言いつつカルティクはチラリとミクを見るものの、ミクは顔を左右に振る。



 「残念だけど、私は何も知らないよ。ダンジョンに関しては多少の知識を教えられただけ。教える必要の無い事は教えないし、現地で学べって感じだったから」


 「まあ、神様だって何でもかんでもミクに教えたりはしないだろうさ。こうやって現地の者である、あたし達に喋ったりするんだしね。下界の者に教える必要の無い情報はそもそも教えないだろう」


 「言い換えれば私達に教えていいものは、ミクに教えられているって事よね。私達が知らない知識も凄く多いんだけど、それらの問題はないのかしら? もしくはどっちでもいい?」


 「どっちでもいいんじゃない? それよりカルティクが持ってるスモールソードの方はどうなの?」



 先ほどシャルが使ったのはブロードソード。つまり幅広の剣だが、あくまでもレイピアに対して幅が広いだけなので、そこまで幅が広い訳ではない。全長は70センチ程で、幅はショートソードと変わらない。


 対してカルティクが持っているスモールソードのような魔剣は、全長が60センチぐらいと小さく、スモールソードと言えるギリギリのサイズであった。


 それを抜き放ち、仲間の居ない方向に向けて魔力を篭めると、こちらは炎が噴き出した。スモールソードは刺突剣に分類されるが、このスモールソードは断面が菱型で剣身が細い。


 つまりは敵に突きこんだ後に炎で追加ダメージを与えるのだろう。ミクがそう話すと、カルティクは違う意見だった。



 「多分だけど、これも蜂を駆除する為の剣なんじゃない? 冷気だけで倒せればいいけど、倒せない時用に炎の魔剣も用意しておいたって思うのよ」


 「冷気で動けなくしたら焼き払っておけって事かい。なかなかに凶悪だけど、使う側にとったら助かるねえ」


 「………もしかして、コレを使うから復活してない? 例えば一度で蜂が全部倒せる訳がないから、何日かに分けて全部倒す。っていうのが本来の戦い方で、いきなり肉の怪物が暴れるのは想定してないでしょ」


 「そりゃ想定してないだろうね。その考えが正しい場合、蜂の巣は一週間に一度くらいしか戻らないって事だろうさ。まあ、あたし達からすれば、それでも早いって思うんだけど」


 「ミクからすれば遅いでしょうね、毎日でも問題ないんだし。それでも復活するだけマシなのかしら? 今のところ復活するかどうかすら分かってないけど」


 「私としては、それでも可能性が出てきただけマシだよ。ダンジョン内の物は絶対に復活する、とは決まってない。今さらながらに、復活しない可能性もあるんじゃないかと思ってる」


 「確かに絶対復活するとは決まってないし、私達が生まれる前の初期にダンジョンに入った人達ぐらいしか分からないでしょ。もしかしたら、今は居ない凶悪な魔物も居たのかもしれない」


 「そいつらが倒されて今がある……って事だね。可能性としては無い訳じゃないけど、難しいところだよ。そういうのがあれば片鱗ぐらいは残ってるものだけど、そういう情報は全く残ってない。フィグレイオにもだ」


 「ゴールダームだけ……は流石に無理がありすぎるね。ま、考えたって答えは出ないんだし、昼食を食べに一旦戻ろうか」


 「そうだね、それでこの魔剣はどうするんだい?」


 「別に2人が持てばいいんじゃない? 私、剣なんて使わないし」


 「わたしも使わなーい。だって脆いし」


 「ま、なら受け取っておくよ」


 「私も、ありがたく受け取っておくわ」



 それで話は終わり、一行は昼食の為にダンジョンを脱出するのだった。


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