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0135・透明トカゲの生態




 <竜の牙>と<鮮烈の色>が十分な休憩をとれた頃、ミクとアレッサは戻ってきた。



 「いやー、大量に居るから大量に倒したけど、本当に買い取ってもらえるのか疑問ね! 全部で100頭以上殺したし。9階って魔物の数が多すぎない?」


 「いやいや、それを律儀に虐殺するあんたもあんただろう。よくもまあ、そこまで魔物を殺すもんだ。むしろ魔物に同情するね、あたしは」


 「ダンジョンの魔物なんて幾らでも復活するんだから、どうでもよくない? これが外なら………うん、外でも虐殺するわ。だってお金だし」


 「お金って言うのは止めなさい。一応生きてるんだから、せめて生物扱いしなさいよ。本当にミクと一緒に居られる感性してるわね。貴女達って何処か達観しすぎなのよ。ミクに関しては元々そうなんだろうけど」


 「私は人間種じゃないからね。人間種の擬態をする為に色々学んでるけど、本質は肉塊だし。だからそこまで気にしないと言うか、気にならない。人間種の感性は学べても同じものは持てないね」


 「でしょうね。それは生まれた立場が違うから、どうにもならないわよ。人間種でも生まれた立場でおかしいヤツとか居るもの」


 「人間種を喰うヤツとか? 昔は結構見たものよ、人間種を喰う子供。孤児で浮浪児だと、スラムで死んでるヤツの肉を喰ってる子供なんて普通に居たしね。当時の私ですらあり得ないって思ったけどさ」


 「腹を空かせてるヤツは何でも喰うさ。飢えて死ぬほど人間種は綺麗じゃないし、生き汚いものだよ。それでも死ぬよりはマシ。こういう話は、その1点に尽きる」


 「あー、流石に雰囲気悪くしちゃったわね。私がまだ人間だった頃、今から500年ほど前の話よ? 今は多分違うでしょうから、古い時代の話ってだけ」



 そう言ってアレッサはボス部屋に近付く。他の者達も顔を見合わせた後、ゆっくりとボス部屋に近付き、シャルが合図を出して全員が一斉に入った。


 後ろで扉が閉まる音を聞きつつ、ボス部屋に入った全員は戦闘態勢をとる。大きな魔法陣が地面で輝いた後、ミクの言っていた通り10の気配が出現。この時点で気を引き締める面々。



 「よし、まずは全員で近くの1匹に近付こう。案内はカルティクさんで、前衛はバッズだ。相手さんは急所を狙ってくるらしいから、気を付けてくれ!」


 「たてはおれにまかせろ」


 「ここから真っ直ぐよ。盾を構えてゆっくり行きましょう。ミクが言うには、1匹やられるまで他のは動き出さないらしいし」



 木々の密度の薄い場所を真っ直ぐ進むが、バッズは何処から攻撃を受けるか分からない為、ジリジリと近寄っていく。そして、カルティクが5メートル先と言ってすぐ。盾に大きな衝撃がきて尻餅をつくバッズ。


 すぐにセティアンがフォローに回ったが、まさかバッズが尻餅をつくとは思わず慌てる<竜の牙>。しかしバッズはすぐに立ち上がる。



 「おれ、だいじょうぶ! たてにこうげきうける、たいみんぐがわからない。だからこらえられなかった」


 「成る程、そういう事か。バッズでさえ防げないのかと焦ったぜ。【頑健】持ちのバッズで駄目なら、オレ達は一撃で殺されかねん。押し倒された形なら、大丈夫な筈だ」


 「本当に焦ったよ。不動ともいえるバッズが尻餅つかされるなんて初めてだからね。危うくパニックになるトコだった」


 「とりあえず、あの辺りの風景。そこを確認すれば分かると思う。カルティクさんだけじゃなくて、私にも判別できるから」


 「エリュスターの【魔力感知】に掛かるって事は、やっぱり見えないだけなんだな。それ以外なら何とかなるかと思うんだけど、どうする?」


 「他の判別方法の実験かい? まだ倒してないからか他の連中は動いてないけど、流石にこいつらに有効な手段は難しいんじゃないかねえ。そもそも音は殆どしないし、臭いに関しては諦めるしかない」


 「そうなの?」


 「ああ。狼系であるあたしだって、あいつの臭いは近付かないと分からない。でも5メートルの距離で攻撃されるんじゃ難しいよ。狼なら大丈夫だろうけど、あくまでも狼系種族なだけだからね」


 「そこまで鼻は良くないか……。音も駄目で臭いも駄目ってなると、やっぱりスキル持ちが居ないと難しいね。流石に敵の位置が分からないと無理だし、1匹倒した後に動き出されるとボコボコにされて殺されるよ」


 「舌の威力はバッズさんに尻餅をつかせるくらいだもんね。ミクだって吹き飛ばされたって言ってたし。何故か2度も直撃受けた筈なのに、何の問題も無かったみたいだけど」


 「とりあえず、スキル無しの攻略は無理と判断。オレ達の命を守る意味でも、ボスを倒そう。ここでゴチャゴチャ言い合ってても始まらねえ」


 「ここのボスって近付くまで攻撃してこないし、適当に矢でも射って判断すれば良い気もするけど……?」


 「そして刺さったヤツが全部動き出したらどうする? 1匹を倒せば動き出すが、倒すまでは絶対に動かない……とは限ってないだろ」


 「そもそも本当に1匹倒したら動くの? 一番近い奴を倒したら駄目って可能性は?」


 「………試してみたいんだが、いいか?」


 「とりあえず真っ直ぐ後ろに下がりましょうか」



 真っ直ぐ後ろに下がった面々は、一番近いボスから離れ、一番遠いボスから倒す事にした。ぐるっと迂回して周り、一番遠いボスに近付いていく。


 その時ふと、ミクが碌でもない事を思いつき、それを行うべく動き出す。



 「バッズ、ちょっと盾を貸して。………これを盾に塗ったら上手くいく気がするんだよねー」


 「ミク、なんだいソレは?」


 「これはレッドアイスネークの麻痺毒。透明トカゲは盾に攻撃してくるんだよ、舌で。ならそこに麻痺毒が塗ってあったら?」


 「「「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」」」



 本当に容赦の欠片も無いトラップに、何とも言えなくなるミク以外。そもそも毒を持ち歩いているのなんて、ミクぐらいであろう。


 盾の前面に麻痺毒が塗られたタワーシールドを持ち、バッズはゆっくりとボスに近寄っていく。すると「ドンッ!!」という音がして、バッズが尻餅をついた。


 しかし木に張り付いていたのだろう透明トカゲも地面に落ち、今は姿を完全に晒しながらビクビク痙攣している。どうやらミクの作戦は成功したようだ。



 「おいおい。ボスがビクビク痙攣してるぞ。レッドアイスネークの毒なら難しくはないし、第3エリアで集めれば済む。ボスの位置が分からないと苦しいが、全員で盾を持ち込めばどうにかなるか?」


 「随分とビクビクしてやがるけど、今の内に倒さないとマズくない?」


 「今思ったんだけど、1匹殺されるまで動かないって事は、1匹殺された時に何かあるんじゃないの? 例えば音とか、もしくは血の臭いとか」


 「死ぬ前に悲鳴をあげて味方に知らせるっていう魔物も居るし、その可能性はありそうね。なら麻痺している今の内に倒す?」


 「今なら声を上げられないだろうし、アレッサ、首を切り落としちまいな」


 「りょうか~い」



 ドスン! という音と共に透明トカゲの首が落ちると、ミクとシャルは素早くレティーとドンナに血を吸わせる。


 一行が息を潜めて警戒している間も、2匹は血を吸い上げ続け乾涸びさせた。それ以降も待ってみたが、他の透明トカゲが動く様子はない。それを確認し、一行は息を吐いて気を緩める。



 「そもそも結構近付かないと攻撃されないって事は、もしかしてこのトカゲ、相当目が悪い?」


 「かもしれない。さらに臭いか音かを聞いて敵が居ると判断してる」


 「多分だけど悲鳴というか、仲間の声だと思う。幾らレティーとドンナが素早く吸い上げたとはいえ、それでも血の臭いはする筈。にも関わらず、動いてない」


 「つまり、上手く倒せばこちらが有利なまま戦えるってこった」



 どうやらボスである透明トカゲの事が分かってきたようである。それにしても先駆者とは大変だ。


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