0130・現実
第3エリアの犯罪者を殺しながら進む2人。ここなら罠の事を話せば簡単に襲ってきてくれる。ミクは多少知られているが、それでも大半は殺して喰ってきているので、そこまで危険な人物だとは思われていない。
だからこそミクを捕まえて売り飛ばそうだとか、消してしまえば済むと思うのだろう。頭が悪過ぎるが、知らないならばそんなものでもある。
「本当にね。知ってる私からすれば呆れて物も言いたくなくなるけど、バカは力を使えば何とかなると思うのよ。相手は最強なのにね?」
「私からすれば私は最強ではないけど、この惑星上では最強なんだろうとは思う。<星の神>が降臨している可能性は否定できないから、そこは何とも言えないけどね。<星の神>を喰う許可もあるから、喧嘩を売られたら喰うよ、私は」
「神喰らいって事? よくもまあ、って思うんだけど、それより上の神様から許可が出てるんじゃねえ。でも許可が出るって事は、ミクの実力は<星の神>より上………なんだよね?」
「まあ、そうなると思う。神どもからは、<星の神>が邪魔するなら喰らえと言われたよ。惑星1つ満足に管理できない程度のモノなど、喰い荒らせってさ」
「おぉう……思っている以上に神様が容赦無い。まあ、当然なのかもしれないけど、神様の世界も厳しいねー」
「仕方ないんじゃないかな。上手くやってれば神どもが爆発する事もなかったんだし、忙しい中で私を創り、ゴミの抹殺なんて考えないでしょ。でも神どもは考えて実行した。そのうえ私の教育にも時間が掛かってる」
「何というか、物凄い怒り? 執念? を感じるわね。それぐらい一番上の神様達が激怒してるんでしょうけど、私達には雲上すぎて理解出来ないわね。ただ、その怒りが落ちないといいなー、ってくらい」
「まあ、人間種はそれでいいんじゃない? <星の神>が何を考えてるかは知らないけど、今のところは私に手を出してこないから様子見なのかも。自分達が喰われるかもしれないって思えば、ゴロツキと同じく動くかと思ったんだけど……」
「いやいや、神様とゴロツキを同じ扱いにするのは不敬でしょ」
「同じ程度なんだから、どうでもよくない? 自分の立場を危ぶんで手を出す。ゴロツキじゃなかったら腐った貴族? どっちも大して変わらないと思うけどね。腐り具合に違いなんて無いんじゃない?」
「そこはノーコメントで」
暢気な会話をしつつも、犯罪者にとっては阿鼻叫喚の地獄絵図を作り出していく2人。ここは6階だが、ついにミク達に文句を言う者が現れた。
「貴女達! いったい何をしているの!」
「何って……死体を焼いてるんだけど? 他に何をしてるように見えるの?」
「なっ!? ………何でそんな事をしてるの。いえ、そもそもここに居た者達を殺したわね?」
「殺したけど、それがどうかした? ……そもそも相手は犯罪者なんだから、当然事情を聞くよね。そうしたらいきなり襲ってきたんだよ。まさか反撃するなって事? 貴女にそんな事を言う権利があるの?」
「いや、反撃するなとは言わないけど……でもね! 貴女達がこの「どうしたんだ?」階に来て……リオル、この2人がね!」
そう、声をかけてきたのは前にも見た、【魔力感知】の使える裏調査員ライセリアである。そしてライセリアが騒いでいる声を聞いたからかリオルもやってきた。その2人は現在話し合っている。
「魔力反応が消えているところに君達がいた。そして君達に聞くと、犯罪者を殺していたと言った。それは間違いないね?」
「間違いないよ。実際、犯罪者に声を掛けたら襲ってきたから殺しただけ。で、私達のやった事に何の問題があるの? 襲ってきた奴に反撃しただけじゃない」
「犯罪者だと勝手に決め付けて声をかけたんでしょう! だったら怒って攻撃してきても仕方ないじゃない。貴女のやった事は相手を犯罪者だと決め付けて難癖をつけ、殺して身包みを剥ぐ行為よ。犯罪者と何処が違うっていうの!」
「私は犯罪者じゃない、向こうは犯罪者。そもそも全然違うし、アレッサ、私は犯罪者?」
「まったく反応は出てないよ。そもそも反撃で殺しただけだから犯罪にはならない。っていうか、それを分かってやってる以上、私達が犯罪者だというのはあり得ないのよねー」
「何を言ってるのか意味が分からないけど、そもそも貴女達のランクは? 大人しく登録証を見せなさい!」
「何の権限があってそんな事を言い出してるのか、欠片も理解出来ないね。こっちからすれば、そっちが急に来て難癖つけてきてる形なんだけど、それを理解してるの?」
「いいから登録証を出せ!!」
「ライセリア、幾らなんでも言い過ぎだ。とはいえ、君達は疑われてる。それは理解してほしい」
「だから、何の権限があってそんな事を言ってきてるの? そもそも探索者に探索者を取り締まる権限なんて無いよ。貴方達こそ何様のつもりなわけ?」
「「………」」
「ねえ、ミク。流石にこいつら勘違いし過ぎじゃない? ギルドの裏調査員をやってるからって調子に乗ってるわよ?」
「「なっ!?」」
「私達が知らないとでも思った? ……ほら、私のランクは11。当然ラーディオンから裏調査員の事も聞いている。随分な難癖をつけてきたね? 狡い点数稼ぎでも考えてた?」
「な! 何を!!」
「えっ、カルティクに思うところがあるんでしょう? ランク13まで上がりたいから、難癖つけて点数稼ぎをしようと思ったんじゃないの?」
「えー、何それー? そんなのがギルドの裏調査員やってるって、かなり危ないと思うんだけど。冤罪で捕まったりしちゃうー?」
「しないわよ! そんなこと!!」
「でもさっきから難癖つけてきてるじゃん。何処がしないの? さっきしてたじゃない」
「………」
「まあ、しっかり凹んでくれたようだから、そろそろネタばらしをしてあげようかな。実はここに居るアレッサは【罪業看破】というスキルを持ってる。つまり、一目見れば犯罪者かどうかが分かるのよ」
「そしてわたし達は、犯罪者だと分かってる連中に声を掛けてるわけ。そして相手から手を出させて潰してるの。必要なら<白の壁面>でも何でも使っていいよ、恥を掻くのはそっちだから」
「うぐ……」
「最初から分かってやってたのか……。それはともかく、何故ライセリアがカルティクさんに思うところがあると知ってるんだい?」
「私達が泊まっている宿は<妖精の洞>で、イリュディナもカルティクも知り合いだよ。それで分かるでしょ? 彼女達にとったら微笑ましいお嬢さんでしかないからねえ」
「お嬢さん……」
「向こうは何百年と生きる方なんだし、お嬢さんと言われるのも仕方ないと思うよ。圧倒的に年齢が違うんだし、それにまつわる経験の量も違いすぎる。向こうからしたら、こっちなんてお子ちゃまだろうからね」
「………はぁ、そんなもんかー」
「そりゃそうでしょ。そもそも貴女みたいなのも何人も何十人も見てきたんだろうしね。カルティクにとったら、そんな数多くいた一人にしかならないよ」
「………そうなんだ。何か急にバカバカしくなってきちゃった」
「そもそもバカバカしい事をやってたと思うわよ? <鮮血の女王>の部下とも言える相手に対抗心燃やすって、普通に考えてもバカじゃない? 周りからもそう言われなかった?」
「うっ……」
「今までは対抗心もあって、周りの人達を諦めた奴等と思ってたんだよ。自分なら諦めずに対抗できる、いや超えられるって、そう思ってたんだけどね」
「うわー、勘違いが痛々しい。とってもとっても痛々しい。だって現実見えないバカって、これでもかとアピールしてるじゃん」
「止めてー! 恥ずかしいから止めてぇーーー!!!」
ようやく現実が見れたようで、ライセリアは恥ずかしさに悶絶している。
「いやー、良かった。やっと目を開けてくれたか。これで余計な苦労をしなくて済む」
苦労してきたのだろうリオルは喜んでいるのだが、この4人はダンジョンの中で何をやっているのだろうか?。




