0128・罪業看破というスキルについて
「で、そいつどうするの? 私達としてはどっちでもいいけど、そのまま放っておいて脱走とかだけは止めてね。私達が捜索に駆り出されるとか面倒臭いから」
「それ以前に明確な犯罪者だから、王都防衛守備兵団の牢屋を借りて押し込んでおいたら? お金払えば許可してくれると思うけど、その辺りどうなの?」
「さあ。私に聞かれても分からないけど、そもそも必要無いなら首を落とせば良いと思うよ。生かしておいても邪魔でしょ。こんな犯罪者を連れて国に帰るって、完全に苦行じゃない?」
「左手の使えない面倒な奴を連れて、エルフィンの東まで旅をするって考えたら……大変だし、御愁傷様ってぐらいかな? わたしが苦労する訳じゃ無いからどうでもいいし」
「ま、ボス戦も終わったから、とっとと出ようか? 後続にとって邪魔になってるだろうしさ」
そう言ってミクとアレッサは脱出。それに騎士達も続いた。外に出た騎士達は眩しさに顔を顰めるも、ミク達は男性騎士を好きにしろと言い、第2エリアへのショートカット魔法陣に乗る。
イェルシュが声を掛ける暇も無く2人は転移してしまった為、見送ることしか出来なかった。
「隊長……私達は如何しましょうか?」
「仕方ないわ、彼女たちが言っていた王都防衛守備兵団の建物に行きましょう。牢を借りる必要があるわ。そいつを逃がさないようにして」
「「「ハッ!」」」
「それにしても他国に来て余計な騒ぎを起こすとは。罪を犯した者は後ろ暗くなり、どうせバレるというのに。いったい何の為に法があると思っているのやら」
「グッ……」
「本国に戻った際には父に話し、盛大に伯爵家に抗議しなくてはね? 貴方の父親が外務に嘴を突き込んできたのだから、その責任はとってもらわないといけないでしょう?」
それなりに温和な態度を崩さなかったイェルシュという女性騎士だが、罪を犯した男性騎士を見る目は冷え切っていた。まるで無価値なゴミを見るような目に、罪を犯した男性騎士は噂通りの女性ではないと悟る。
気付いた時には既に遅く、自分のやった事のマズさを考え頭を抱えるのだった。
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こちらはミクとアレッサ。第2エリアも順調に早歩きし、一気に進んで行く。途中の探索者はアレッサに【罪業判定】させ、犯罪者だと少し長めに確認していく。
今までは犯罪を犯している現行犯しか手を出せなかったが、今はアレッサが居るのだ。だからこういう事もできる。
「なんだ、てめぇ! オレ達を犯罪者扱いするとはどういう了見だ!!」
「この子は【罪業看破】という非常にレアなスキルを持っててね。その【罪業看破】で貴方達が犯罪者だという事は分かってるの。それだけじゃない、この子は【真偽判定】も持ってるのよ。そしてここに魔水に浸した紙がある。後は分かるよね?」
「……ヤっちまうぞ! てぶぇっ!?!!?」
「バカだねえ、最初からお前らを殺すのが狙いって分からないかな?」
「な、なんだぐぼぉ!?!!?」
「あらら、ざーんねん。わたしこう見えて弱くないんだよねー、そもそもお前ら如きより弱くなる方が難しいけど」
「なんだとこのガぎっ!!?!」
「私相手に余所見とか、よっぽど死にたいんだねえ。ま、一撃で死んでいく脆い奴等だから仕方ないのかな?」
「お、お前ら何なんだよ! オレ達より狂ってやがるぞ!!」
「狂ってないって。お前らみたいなゴミが犯罪を犯すから、わたし達が出てきたんだっての。いい加減に理解しろ、ゴミども」
「はい、終わり。所詮はチンピラに毛の生えた連中だけど、第2エリアで徒党を組まれると捕まる探索者は出てくるし……こうやってしっかりと潰しておかないとね」
「そうそう。わたし達って本当に良い事をしてるわ。これが善行ってヤツね!」
聞いている者が居れば絶対に違うと言うだろうが、ここにはそのツッコミをする者が居ない。なので彼女達の行いは善行という事になってしまった。もちろん彼女達の中だけだが。
死体を一ヶ所に集め、【聖炎】で周りを燃やしてその隙に喰らう。後は適当な物を置いて燃やすだけだ。最初から身包みを剥いでいるので、燃え残りが無くても不思議には思われない。
それが終わったら出発。そうやって進み、幾たびも声を掛けては怒らせ、相手に手を出させては殺戮していく。既に10組は潰しているので、相当程度の犯罪者を潰せたと言えるだろう。
「んふふふふ、久しぶりに肉がたっぷりと喰えてるからか、本体も私も気分が良いよ。………あっ、そういえばさ、何故か【罪業看破】のスキルが模倣できないんだよねー。だからおそらくそのスキル、神の権能が絡んでる」
「えっ? 神様の権能………マジで!?」
「こんな事で嘘は吐かないよ。私が模倣できないのは神の権能ぐらいだから、それは間違いなく神の権能を含んでる。そりゃレアな筈だよ、神が与えなきゃ持てないんだし」
「お、おぉぅ、マジで神の権能なのかー………でも何でわたし? わたしって元々は唯の農村の娘なんだけど?」
「さあ? 当時の状況とか分からないし、考えても無駄じゃないかな。多分だけどヴァンパイアにされた段階で失敗っぽいし」
「という事は、つまり私が何かを暴く事を期待してたら、あのロリコンが横からしゃしゃり出てきたと……。うん、何か物凄くありそう」
「今は役に立ってるんだから、それで良いと思うけどね。でも何の目的で持たせたのかは分からない。今となっては神にとっても、既にどうでもいい事なのかも」
「500年以上経ってるもんねー」
雑談をしつつ死体の処理を終わらせ、階段の方へと歩く。既に9階であり、10階への階段はすぐそこである。辿り着いたミク達は、そこで揉めている探索者チームを見た。
「おいおい、オレ達は親切で声を掛けてんだぜ? オレ達と一緒なら間違いなく突破できるって言ってるだろ?」
「必要無い。あんた達が居なくたってオレ達だけで攻略できる。そもそもあんた達が先に居たんだから、さっさとボス部屋に行けよ」
「ああ? おい小僧、あんまり舐めてるとボス部屋に入る前に死ぬぞ? ん?」
「やっぱりこいつら迷賊だ! 皆、こいつらはここで倒さないと危険すぎる! 絶対にオレ達を後ろから襲ってくるぞ!」
「ハッハッハッハッ! てめぇら如きガキがどれだけ頑張っても無駄なんだよごぉぇ?!?!!」
何だか鬱陶しかったので、ついついククリナイフを投げたミク。お前らボス部屋前で騒ぐんじゃない、そう言わんばかりの一撃である。額にククリナイフが突き刺さった男は、その一撃で絶命していた。
深く刺さりすぎたのが原因だろう。「く」の字の半ばまで頭蓋にめり込んでいる。アレでは助かるまい。
「な、なんだ急に!? そこの女か!! てめぇ、覚悟はでき」
ドゴォン!! という音と共に喋っていた男は吹き飛ばされ、壁に染みを作った後、床にドサッと落ちた。迷賊らしき男達も、戦おうとしていた探索者チームも目が点になっている。
そんな中、一切止まる事なく動き続ける2人。頭が吹き飛び、胴体が輪切りにされて臓物をブチ撒ける。そんな状況も迷賊の全滅で終わったが、後は死体だらけの凄惨な現場。当然そんな所に居れば……。
「「「「「「ヴォォェェェェェ!!!」」」」」」
男性2人と女性4人が正常な感性を持っていて何よりである。怪物と元ヴァンパイアはまともな感性を持っていないので、普通の人間種のリアクションを期待しても無駄だ。そもそもこの状況を作り出した元凶でもある。
その元凶2人は、淡々と迷賊の身包みを剥ぐのだった。




