0126・アレッサの探索者登録
「武器を格好良さで決めるほどマヌケな事は無い。しかも怪力が自慢のヴァンパイアが、その怪力を碌に活かせない武器を持つって頭が悪過ぎる。その怪力に見合う武器を持つ知能も無いのか」
「あいつは特別そんな感じのヤツだったけど? 紳士を気取ってたけど、紳士なら少女を眷属にして手篭めにしたりしないっての。結局どこまでいっても欲塗れの醜いヤツでしかなかったわ」
「そもそもヴァンパイアなんてそんなものよ。あいつらの始祖は既に滅んでるけど、未だに残ってるのは欲のままに襲って眷族を増やすからでしかない。特に自我を確立して自立したヤツはそうなるの」
「呪縛に囚われてたアレッサは自立するまでには至らなかったと、そういう事だね?」
「そう。本来ならヴァンパイア・ロードである以上、すぐに自立する筈なのよねえ。よほど貴女に依存していたのか、かなり強力な呪縛が使われていたんじゃないかしら? 執着とも言い換えられるけど」
「うげぇ………」
「まあ、今はミクの血肉で変わったんでしょ? だったら良かったじゃない。自立してたら今ごろ男を侍らせてたかもよ? 少女の姿だけど……」
「わたしが男を侍らす……? ないわー、この体で男をでしょ? 漏れなくロリコンだらけじゃん。呪縛で好きになるだけなんでしょうけど、それもそれで気持ち悪いわぁ……」
「言いたい事は分かるけど、中身は500超えだから何とも言えなくなってくるねえ。今は新生したとも言えるから微妙だけども。……それよりミクはこの子、アレッサをどうする気だい?」
「ん? 探索者登録をさせて連れて行くよ。私が保護者みたいな感じかな? そして大々的に周知させる。アレッサが【悪意感知】に【罪業看破】、そして【真偽判定】を持つ事を」
「「「トリプル!?」」」
「本当は【血液操作】も持つからフォースなんだけどね、流石にヴァンパイア由来のスキルは説明出来ないからトリプルっていう事になるのかな? 目立たせるって事は、もしかしてわたしを襲わせようとしてる?」
「大当たり。心配しなくても私が喰うからアレッサが何かをする必要は無いよ。私の食料だから私が喰らう。そのお手伝いをしてもらう感じかな」
「そ、そう……。まあ、どれだけ血を飲まないで居られるかも調べないといけないし、血を飲む気は今のところ無いから食べてもらって構わないんだけど……。そこまで寄ってくるかな?」
「大々的にアピールするんでしょう? 絶対に寄ってくるわ。探られたくない腹を持ってるヤツなんて山のように居る、それがここゴールダームよ。商人どもも慌てふためくでしょうね」
「抜け荷を含めて、後ろ暗い事をしている商人は多いからねえ。ちょっとぐらいと思ってやると【罪業看破】で見抜かれる。少しでも罪を犯してたら【罪業看破】に引っ掛かるらしいからねえ」
「伝説のスキルと言えるほど超絶レアなんだけど、自分が持ってたら嫌すぎるスキルよねえ。間違いなく長生きできないし、すぐに殺される未来しかないわ。貴女よく12歳まで普通に生きてこれたものよ、本当」
「わたし農村の生まれだし、そもそも周りに人は殆ど居なかったのよ。エルフィンの片田舎だし、両親は人間だもの。エルフが私達に目を向ける筈も無いじゃない? だからバレなかったわね。何より罪が見えるヤツからは離れるに決まってるでしょ」
「【悪意感知】も持ってるしねえ。戦闘スキルは無い癖に、他人の悪を明らかにするスキルだらけ。どう考えても農村の少女が持つべきスキルじゃないし、そこに神様の作為を感じなくもない」
「アレッサに何かをさせたかったのか、それとも戯れに持たせてみたのか。神なんて連中が考えてる事は、たいていの場合において碌な事じゃないよ」
「それも、凄い意見ねー……事実なんでしょうけど」
「さて、そろそろ話を終えて探索者ギルドに行こうか。登録もしなきゃいけないし」
このまま雑談をしていても仕方ない。そう思ったのかミクは席を立ち、アレッサを連れて探索者ギルドに行く。中に入ると周囲の連中が一斉に見てきて、一斉に目線を逸らした。
それを見たアレッサは、「コイツ何かやったな?」と思うも、黙ってミクの後をついて行く。そして受付で探索者登録をするのだった。
「はい、小銀貨2枚。………どうしたの、手続きをお願い」
「いえ、まあ、12歳ならばギリギリで大丈夫ですけど……。本当にこんな小さな子に探索者をやらせるつもりですか?」
「小さいけどパワーはあるし、それに戦いをさせなきゃいけないのよ。私と一緒に居させるけど、それも万全じゃないでしょ?」
「何か理由が?」
「この子、トリプルなのよ。それも【悪意感知】と【罪業看破】に【真偽判定】という、犯罪者を敵に回す可能性の高いものだらけ。戦闘技術や危機感を持たせないと危険なの。自分を最後まで守れるのは自分自身だけ」
「【罪業看破】……」
「そ。見ただけで犯罪者かどうか分かってしまうレアスキル。絶対に犯罪者どもに襲われるスキルよね、後ろ暗いヤツ多いし。秘密にしたっていつかはバレるなら、早急に力をつけさせた方がいい」
「それは、そうなんですが……」
「どのみち受付嬢が拒否なんて出来ないんだから、さっさと登録してくれる?」
「分かりました……」
受付嬢は仕方なし、という感じで登録用紙を持って裏へと行く。面倒臭い偽善を持ったヤツだなと思いつつミクが待っていると、近くにきたオドーが話し掛けてきた。
「受付嬢の言い分も分からなくはないんだが、本当にその子を連れて行くのか?」
「下らない偽善なら、お断りなんだけど? 私はこの子と居る。そのうえで実力が必要だと判断した。何もしない貴方達が、自分の偽善に合わないからって口を挟むの? 何もしないのに?」
「あ、いや、そりゃ……」
ミクに対して何も言えなくなったのか、オドーはスゴスゴと退散していった。そう、ミクはアレッサと共に居るのだ、それは責任を果たしていると言える。だが、他の連中は何もしないのだ。
にも関わらず、自分が気に入らないという理由で口を挟んできている。ミクはその事が腹立たしいのだ。何もしないなら、口も挟むなという事である。何もしない者に文句を言う資格などないのだから。
そんな中、上から下りてきた者が口を挟んできた。白銀に輝く煌びやかな甲冑を着た者達で、リーダーは女性のようだ。
「ならば私達がその子を預かろう、【罪業看破】を持つ子供でも私達なら守れる。……ああ、すまない。私の名はイェルシュ・ウム・アラバール。神聖キルス法国から、ここゴールダームへとやってきた」
「ふーん。……で、アレッサはあの騎士についていくの?」
「え? 絶対にイヤだけど? 神聖とか自分で言っちゃってる時点で怪しいし、そういう国って碌でもない国が多いの。東にあったっていう、神聖インバム王国とかいう国も酷かったって聞いた事あるし」
「あのような国といっしょにするな!! 我が国はあの腐った国を打倒して出来たのだ!!」
女性騎士の後ろにいた男性騎士が、急に声を荒げて話に割り込んできた。その後すぐにリーダーの女性騎士が止めたものの、この場の雰囲気は随分と悪くなってしまい、無言で騎士達はギルドを出る。
何を急に怒りだしたのか周りは理解できないが、何となく関わりたくない連中だという事は一致。こういう時の探索者の嗅覚は優秀である。でなければ生き残れないからだが。
裏から戻ってきた受付嬢は、若干気まずそうにしていた。




