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0102・真偽官バレンダ




 魔物寄せを入れた飲み物を配っていた商人風の男を縛り上げたミク達は、ギルドへと連れて行こうと歩きだそうとした。すると、遠くからこちらに走ってくる者達がいる事に気付く。


 その先頭の人物に見覚えがあるミクは、下らない事で揉めないといいけどなぁ……と思いながらも待つ。



 「はぁ、はぁ、はぁ。申し訳ありません、その男が魔物寄せの飲み物を配っていた男でしょうか?」


 「そうだが、ワシらが先にふん縛った以上、こっちが先に調べさせてもらうぞ? そっちが同席するなら好きにすればいいが、こちらのやり方に文句を言うな。いつも通りの形なら、こっちは同席を断らん」


 「分かりました。私以外にもオーレム殿と他数名で探索者ギルドに行きます。ただし向こうのやり方に口を出さない者にして下さい。もし口を出すなら、私が出て行かせます」



 その言葉に少し感心したような顔をするラーディオン。彼は権力嫌いだが、当然そうなった理由がある。若い頃から探索者として横暴な貴族を見続けてきたのだ、連中の性根など完全に理解している。


 とはいえ、未来ある若者まで全て嫌っている訳ではない。少なくとも自分の責任で叩き出すと明言した事は評価した。それさえ濁して都合のいい事ばかり言う貴族がそれだけ多いという事である。


 ゾロゾロと連れ立って歩き、探索者ギルドに入る一行。そのギルドのド真ん中で木の椅子に座らせ、周りを囲んだうえで尋問が始まる。



 「おい、真偽官を呼んでこい。他国の工作員である可能性が高い以上は、バレンダの野郎を呼んでくるんだ。あの昼行灯も工作員相手なら真面目に働くだろ。あいつは何だかんだといって愛国者だ」


 「分かりました、行ってきます」



 受付嬢はラーディオンの言ったバレンダという真偽官を呼んでくる為にギルドを出た。それを見送った後に口を開く。



 「さて、真偽官が来る以上、貴様が言い逃れをするのは不可能だ。そのうえで聞いてやるが、今の内に喋れば命は助かるかもしれんぞ? まあ、喋らなくても構わんし、どうせお前らのような連中は喋ったら”コレ”だろ?」



 そう言って、ラーディオンは首の横に持って来た手で、首を切るポーズをする。それを見た商人風の男は顔を下に向ける。おそらく事実なのだろう。つまり、喋っても喋らなくても死は確定しているという事である。



 「まあ、そりゃそうだ。他国に工作活動や破壊活動をさせに行く連中なんぞ、使い捨てに決まってる。ワシら探索者は好き勝手に生きてるが、そのワシらより憐れな連中がお前らだ。所詮は使い捨ての駒。他に幾らでも居る」


 「ぐっ………」


 「ほう、使い捨ての駒と言われるのが、そんなに嫌か? だが事実だろ? お前はこうやって捕まり、喋ろうが喋るまいが死ぬ。そしてお前の祖国はそれが分かって送り出している。それが捨て駒でなくて何なんだ?」


 「違う! オレは祖国からの命を立派に果たしたのだ!」


 「ああ、だから言ってるだろ。立派な捨て駒だったじゃないか。そうだろう?」


 「違うと言ってるだろうが!!!!」


 「いや、事実として唯の捨て駒だろう。そもそもお前を助ける奴が居るのか? 居ないだろ? なら最初から捨て駒だ。使われて殺されて、ごくろーさん」


 「ふざけるな!! オレは捨て駒じゃない!! 国の為に命令を遂行したんだ!!!」


 「ああ。だから他国の者を殺すっていう汚れ仕事で、捨て駒という立派な命令を遂行したな。お前がどう思おうと自由だが、他人から見たら唯の捨て駒だ。ポイッと捨てられて終わりのな?」


 「ああぁぁぁぁぁぁーーーー!!!」


 「自分でも事実だって分かってるんだろ? 冷静になってみりゃ捨て駒でしかないし、薄々は勘付いていたろ? ワシはな、お前みたいなのを何度も何度も見てきたんだよ。お前みたいに、国に使われるだけの憐れな存在をな?」


 「ガァァァァァーーー!!!」


 「最早まともな言葉も喋れなくなったか。どうせアレだろ? 故郷の家族には汚れ仕事の分、多くの金が渡されてるとか思い込んでるんだろ? 捨て駒の家族にそんな金を渡す訳がねーだろ。アホか」


 「ウアァァァァァァーーー!!!」



 どうやら”現実”を突きつけられて心が折れたようである。最初とは違い、喚くだけになってしまっているのが証拠だ。しかし、男も心の何処かでそう思っていたのだろう、発狂して心が壊れるところまでは行っていない。


 その時、妙な雰囲気になっているギルドの入り口が開き、面倒臭そうな顔をした男と受付嬢が入ってきた。



 「……また面倒な事を。俺が来るまでに心を折ったな? まあ事実を話しただけなんだろうが。ここからの【真偽判定】も面倒臭いんだが、分かっているのか? 追加料金取るぞ」


 「構わん。コイツは飲み物に魔物寄せを混入していた奴だ。ゴールダームの探索者が危険に晒される。お前ならその意味が分かるだろう?」


 「……工作、または破壊活動か。他国の手先だが、妙に迂遠な方法だな? 今まではもっと直接的だったと思うが、随分な搦め手を使うじゃないか。それで俺を呼んだ訳か」


 「その通りだ。こいつの背後を洗わんと、これから先も妙な攻撃は続く。直接的なもんなら潰しちまえばいいが、搦め手は厄介だ。唯でさえ上の連中は鼻薬を嗅がされて碌に動かん。そっちもそうだろ?」


 「まあな。ウチの真偽官協会の中にも金を掴まされているバカがいて、その所為で動けない事もよくある。何より真偽官は依頼されなきゃ動けん、そして指名制だ。こっちから手を出す事ができん」


 「腐ってる真偽官を指名されたら、どうにもならんからな。だからこそワシはお前を指名する訳だが……。まあ、それはいい。それより【真偽判定】を頼む」


 「了解だ」



 そう言って真偽官のバレンダは紙を取り出し、テーブルを持って来させると男の手を紙の上に置かせた。


 真偽官も紙の上に右手を置き、左手は商人風の男の肩に置いて【真偽判定】がスタートする。これは古い時代から変わらないやり方なんだそうだ。


 そしてバレンダが目で合図を出すと、ラーディオンが尋問を開始する。



 「お前は魔物寄せを混入させた飲み物をタダで配っていた」



 ラーディオンが質問すると紙が青く光る。真偽判定において、青く光る場合は正しく、赤く光る場合は間違っているという事になる。そして通用しない者に対しては光らないという結果を返す。


 魔石を粉にして水に溶かし込んだ物を魔水と言い、その魔水に浸してから乾かした紙を使用する。魔力の通りが良く周囲からも見えやすい為、古くから採用されている方法であり、それはどの真偽官も変わらない。


 真偽官は相手を触って嘘を見抜く事も可能。というより、その結果を紙で周囲に示しているというのが正しい。


 目の前で見ているミクは、至極あっさりと【真偽判定】を理解した。相変わらず肉塊のスペックは異常に高いと言わざるを得ない。


 ただし【真偽判定】は相手に触れていないと使えないので、使いどころが限られるだろう。密かに魔水に浸した紙を用意しようと思うミクであった。


 この世にはミク以外にも呪いを利用して【真偽判定】を無効化する者が居るかもしれない。しかしミクは呪いでさえも喰えるので、【真偽判定】に掛けられる。


 それを利用する日が来るかは分からないが、ワイバーンの魔石で早速本体が作成中だ。信じられない程の無駄使いであり、もし誰かが見ていれば慌てて止めるだろう。


 本体空間には本体しか居ないし、誰も止める者などいないので好き勝手に作っていく。12個もあるワイバーンの魔石など、ミクにとっては然したる価値も無いのだ。


 いつでも取りに行ける物など、その程度の価値しかない。そういう事である。


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