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花のない薔薇  作者: 愁
第二章 賢王と愚王
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ギノアの抵抗も空しく、名物のミートパイはクロノの胃に収まりクロノを大変満足させ、トマトパスタも最初の一口以外はクロノが食べた。

途中からギノアは「あれ?間接……」と、何かに気づいて大人しくなるどころか、ちょっと気持ち悪いぐらいににやけてクロノにまた蹴られていたのだった。



終始気のいい女将に礼を言ってから二人は店を出る。


「いい店でしたね!また来ましょう!」


「そうだな。ミートパイも美味かったし」


次の目的地は魔法に使う道具やらを売っている“ちょっと怪しい店”。

ギノアはクロノに大人しくついて、段々と人気のなくなっていく路地を歩いた。


「うぅ……不気味っす」


「魔法使いなんて人に顔を見られたくない奴らばかりだし、見られないほうがいいしな。人が寄り付かないような所のほうが都合がいいんだよ」


「そうなんすか?」


「そうだよ」



魔法使いによっては、相手の顔を見ればピンポイントに相手を攻撃できる魔法を使う者もいる。

特に戦場では魔法使いは重宝される、国家戦力だ。早く削ってしまうに限る。

故に魔法使いは自分の身を守る為顔を隠したり、上司に命じられて顔を隠すことがほとんどだ。

今はどことも戦争をしていないこの国だが、戦時中は常に魔法使いは顔を隠し生活し、暗殺やらから身を守っていた。


そんな魔法使いが大きな魔法の行使に必要とする道具や贄となるものを売る店が、堂々としているわけがない。


二人が行き着いたのは、路地裏に看板も出されずにある扉の前だった。


「こ、ここであってるんすか?」


「あってる。つか、お前こーゆー店初めて?」


「はい。俺が魔法使いになったの、一年ぐらい前っすもん。革命の後っすから、超新人っす」


「……まじかよ」


クロノは、無自覚に馬鹿みたいな才能の話をするギノアに気が遠のいた。

確かに「素質は新人一」だとアイジスは言っていた。言っていたが……。


一年で基本魔法を習得し、魔法師団に入れるだけの魔法使いとなったという、あまりにも桁外れな「素質」に開いた口が塞がらないクロノ。

驚きを通り越して呆れ果ててしまうレベルだ。


どんな素質だよ、どんな才能だよ、この野郎。


クロノの内心は可愛げに首をかしげて見つめてくる馬鹿犬への様々な感情で溢れた。


「もういい。わかった。お前、その話すんの禁止な」


「へ?あ、はい」


どうしようもない才能の話しなどするだけ時間の無駄だ。

第一、どれだけ才能があろうと中身がこの残念犬である以上、なんだか恐ろしくない気がしてしまう。

つまり、性格からして恐くもなければ敬意などをはらおうとも思えないのだ。


それが癒し系と称されるものなのか、ただのアホをさすものなのかはわからないが。


クロノは頭を切り替えると、ぽつんとある扉を押し中へ入った。

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