5:ハー君の恩返し
繰り返すがハー君は、人間には、馴れず媚びず気も
許さず、近づくと「ハーッ!!」と威嚇する強面の
ハードボイルドキャットであった。しかし、大抵の
野良猫がそうであるように、情に厚く義理堅かった。
したがって、いつもご飯を用意してくれる大家さん
には、ひとかたならぬ恩義を感じていたようだ。
この人にはいつか必ずきちんと感謝を伝え、恩返し
せねばと考えていたのだろう。機会を得て、それを
実行した。実に情に厚く、義理堅く。
ある朝、私のLINEに大家さんから緊急の連絡が
届いていた。若干 (かなり)センシティブな表現も
含まれていたので、文言をアレンジして紹介すると、
以下の通り:
『ハー君が、お皿の傍に、哺乳類齧歯目の生命活動が
停止した個体を定位していきました。我、驚愕悲鳴
卒倒寸前なれば、怖いしキモいし、手が出せませぬ。
かくなるうえは、お手数ながら万難を排し、貴殿に
該当個体の早急なる除去を、伏してお願い奉る次第。
あらあらかしこ。早く片付けて~!何とかして~!』
何で私が…… と思いながら下に降りてみると、ご飯
のお皿に並べるように、ドブ鼠もとい哺乳類齧歯目
の生命活動が停止した個体が定位されていた。正直
そのときは嫌悪感よりも、うわあ野良猫って本当に
これ=餌をくれる人間への恩返しをやるんだなあ、
ホワッツマイケルじゃん!という驚きと感動の方が
大きかった。私も初代飼い猫の健太に、枕元にGを
持ってこられたことはあった(死ぬかと思った)が、
さすがにMは初めてだった。
可哀想なチューチューは頭はそのまま、しかし体は
背中の皮だけ残して中身は綺麗に平らげられていて、
これではまるで、ちっちゃなマウスの耳付きフード
パーカーだねっ♪ ハハッ!(←笑っただけで何かの
キャラを真似したわけではありません)しかしまあ
器用に食べるものだよと感心しながらコンビニの小
レジ袋を手袋みたく手に嵌めて、気の毒なご遺体を
問答無用で(ちょっと我慢して汗)むんずと掴んで
持ち上げ、袋をインサイドアウトにする形で全身を
包み込むと、きゅっと縛って無事に収容。このあと
マウスヒェンのライヒエ(※ドイツ語です)を一体
どのように処理したのか? それはまた別の物語、
いつかまた、別のときに話すことにしよう。
(話さなかったりして)
なお、恩返しをしたのは、ハー君だけではなかった。
隣のマンションのKさんは、三毛猫のコンちゃんが
ちょっと立ち寄って挨拶だけして去っていった後の
ベランダに、さりげなく置かれていた贈り物を見て
悲鳴をあげた。それはやはり、生命活動が停止した
哺乳類齧歯目の(以下略)ハー君がアドバイスした
のか、コンちゃんの自発的な贈り物かは分からない。
いずれにせよ、猫がいかに情に厚く義理堅い生き物
であるかを如実に伝えて、思わず心がほっこりする
微笑ましいエピソードとは言えよう(言えるのか?)




