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プリンセスタ☆ステラローグ -女児向けアニメ大好きな一八歳の私が変身ヒロインになった話-  作者: みづき木積
第八章 日香里と凛子の大決戦

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第一〇話 結末

 国吉さんに散々に怒られても、凛子ちゃんの決意は揺るぎなかった。

 そうしてついに、国吉さんも彼女の主張を認め、三つの条件を提示した。

「まず島に向かうときは、最低でも警官を二名以上同行させる。非常時に備えてと、あとはボートの操縦のためだ。それと状況は撮影用ドローンで逐一確認させてもらう。いいね?」

「わかりました。構いません」

「最後に一番大事なことだ。約束してくれ。危険を感じたらすぐに逃げて、同行の警官に助けを求めること。犯人(ホシ)の確保はあくまでも我々警察の目標だ。特殊な事例だから、失敗しても君の責任にはならない。署を出るときに小早川が親御(ご)さんに連絡したが、そのときに君らの安全は保証すると伝えてある。もし何かあったら申し訳が立たない。私達は君らを守る義務を負うている。そのことは忘れないで」

 凛子ちゃんはゆっくりとうなずいた。

 国吉さんは県警の人と話し合っている。この後のための調整だ。小早川さんは凛子ちゃんの服を用意しに行っている。高校の制服ではさすがにまずいからね。

 二〇分ほどして小早川さんが戻ってきた。店はまだ開いていないから、県警交通課の女性警官にお願いして借りたそうだ。

 ドローンの操作をしているのとは別のバンタイプのパトカー、そこの車内で凛子ちゃんは着替えた。

 グレーの細かなドットが入った白地の半袖トップス——首まわりにはブラックのリボンが付いている。ボトムスは黒色をしたハイウエストのワイドフレアパンツ。それを同色のナローベルトで留めている。シューズはホワイトのフラットミュールだ。

 やっぱりよく似合っている。繰り返すが、素材がいいのだ。

 不意に思った。私からもしてあげられることがあるのでないか。自分達の乗ってきた車に戻ると、トートバッグの中を探す。キャメルンを入れてきたものだが、一緒にしまわれているはず。あった。ホリゾンブルーで大きな花飾りのついたコスメポーチだ。

 ポーチを持って凛子ちゃんのところへ。

「これは私からのプレゼント。とびっきりかわいくしてあげるね」

 メイクで気持ちを高める。ある意味、勝負メイクだ。

 自分が使っている日焼け止めは化粧下地にもなるタイプだった。これを塗ってもらう。私はたずねた。

「休みの日とかってメイクする?」

「……日焼け止めは塗りますが」

「マジ⁈ 水族館行ったときは?」

「あのときも日焼け止めだけですね。香水はつけましたが」

 ほぼノーメイクであの美少女感が出せるのか——信じられない。素材のクオリティが高すぎる。

 下地の後はコンシーラーだ。車内で寝たせいで出来たかもしれない彼女の目の隈を、使い方を教えながら私がカバーしてあげた。持ち運んでいるのはパウダーファンデーションだったから、コンシーラーの後で顔全体に広げていく。

 アイメイクを済ませ、最後はリップだが。ちょうど、グロスプランパーを持っていた。私が凛子ちゃんに手渡す。

「これ少し刺激が強いかもしれないけど」

「刺激ですか……?」

「うん、唇はぷるぷるつやつやになるけどね」

 試してみますと話し、彼女は唇に塗り広げた。

「ヒリヒリします」

「これでも弱いほう。SNSとかだと涙を流しながらつける人もいるよ」

 メイクを終えたタイミングで、国吉さんと警官とがやって来た。 

「ボートの準備ができました。県警の警官二人が一緒です」

 凛子ちゃんに声をかけた。

「頑張ってね。でも、無理はしないで」

 彼女が警官達の案内されてボートへと乗る。一人の男性警官がうっかりしゃべった。

「まるで嫁入りみたいだ」

 小早川さんと私が彼をにらみつけた。あんな卑劣な人間に凛子ちゃんを嫁(とつ)がせてたまるか。許すわけがない。

 ぶおんとエンジンの音が響き、ボートが発進した。時刻は四時三八分、あたりは薄暗くなってきていた。ライトがなくてもはっきりと見える。

 バンタイプのパトカーの車内、私と国吉さん、小早川さんは撮影用ドローンからの映像を通して様子を見守った。警官によると、連絡用ドローンで凛子ちゃんが行くことを犯人に伝えてあるという。

 犯人のいる島へは距離にして一三キロ。ボートでは約三〇分がかかる。

 五時過ぎ、同行の警官から島に到着したとの連絡があった。犯人の声がノートパソコンのスピーカーから聞こえてくる。

「同行している警官はボートで待機しろ。女性だけまっすぐ歩いて島の奥に来い。どうせカメラで見ているんだろ」

 犯人の高校生がいるところ——島の奥にある断崖絶壁だった。サスペンスドラマじゃないか。崖の下では白い波がぶつかって細かく砕けている。

 警官達は犯人の指示に従った。島の奥へは一〇分程度でたどり着けるそうだ。

 やがてカメラの映像で凛子ちゃんの姿がたしかめられた。犯人が話す。

「結構若いな。いいね。楽しみがいがありそうだ」

 いやしすぎる。私の身体に震えが走る。小早川さんもあからさまに不快な表情を示した。

 凛子ちゃんがたずねる。落ち着いた口調だった。

「私はどうすればいいですか」

「俺に尽くす気があることを証明してみろ。まずはそうだな——キスだ」

 我慢できなくなったのか、小早川さんがノートパソコンに向かって叫んだ。このパソコンは連絡用ドローンともつながっていた。

「そんな無茶な要求を聞く必要はありません。すぐに戻ってください」

 凛子ちゃんは犯人のほうに目をやった。警官の一人がパトカーにやって来て、メモを見せてきた。


 狙撃用ドローンの準備中。三台。射程範囲に入るまで六秒。

 

 犯人へと凛子ちゃんが進み出る。あと二、三歩までに近づいたところで相手が両腕を伸ばし、彼女を抱き寄せた。

 思わず、私はパソコンの画面から顔をそむけた。こんな場面は見たくない。

 その瞬間、銃声が何発も響いた。驚いて画面を見ると、犯人の立つあたりの地面の何箇所から土煙が立ち上がっていた。

 彼は凛子ちゃんを突き飛ばした。そして、自身の唇を右手でぬぐった。

「俺を騙したな!」

 凛子ちゃんは尻餅をついた。犯人のほうをにらみつける。

「わかりませんか。このキスの痛みが理解できなければ、あなたに人を愛することは永遠にできません」

 犯人はよろめきながら後ずさりした。

「俺はこの世界で最強の人間なんだぞ。あらゆる物体を移動できるし、どんな奴らも殺すことができる‼」

「まだわからないんですか。あなたは、とてもさびしい人です」

「やめろ、そんな目で俺を見るな。金だって。俺は世界で一番——」

 じりじりと犯人が後退する。パソコンの画面を見ていた警官が声を上げた。

「落ちた!」

 映像から犯人の姿が消えた。どうも転落したらしい。ドローンのカメラが崖下の海面を映す。見えるのは白い波ばかりだ。

 凛子ちゃんに同行していた警官達もやって来て確認したが、発見できなかった。

 朝日に照らされてキラキラと輝く波間を、凛子ちゃん達を乗せたボートが戻ってきた。埠頭で出迎える。

 ボートが接岸し、彼女達が降りてきた。警官達が口々に凛子ちゃんへと声をかける。

「気分は悪くない?」

「欲しいものありますか」

「落ち着くまで休んでいいからね」

 国吉さんがつぶやいた。

「弾が犯人(ホシ)の脚に当たるなんてねえ。事件はこれでおしまいだろうけど、犯人の確保はならなかった。幸いか不幸か……」

 警官達と話し終わった後、私は凛子ちゃんにペットボトルの水を渡した。

「これ。よかったら」

「ありがとうございます」

 ペットボトルの蓋を開けながら、凛子ちゃんがしゃべった。

「弾は足元の地面を跳ねただけです。あの人には当たっていませんでした」

「でも、だったら不思議じゃない? どうして自分から落ちたの?」

 彼女は答えなかった。黙って水を口に含み、歯磨きの後のようにゆすいだ。海に向かってぺっと吐き出す。

「この水の価値……彼にはわからなかったのでしょう。少し前の私にも——ありがとうございます。日(・)香(・)里(・)さん」

「え? 今、名前で呼んでくれた? うれしい。もう一回お願い」

「もう言いません」

 凛子ちゃんは海のほうに視線をやった。朝日がまぶしい。そして、独り言のように述べた。

「あなたの境遇には同情できるところもありました。でも、だからといって、人を傷つけていい理由にはなりません。もし生まれ変わることがあるのなら、誰かを愛(・)し(・)、そして愛(・)さ(・)れ(・)ますように」

 彼女に返事をするみたいに、潮の香りを含んだ波が埠頭のコンクリートにぶつかって音を立てた。

 お久しぶりです。今回で第二部完結となります。

 いかがだったでしょうか? 楽しんでいただけたら幸いです。評価、感想なども是非どうぞ!

 第三部は2026年10月頃から連載開始予定です。

 よろしければ、またそちらでお会いしましょうね〜‼


 この次も、あなたの心に、楽しさきらめくお話でありますように〜♪☆彡.:*・゜

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