魔物
今俺が居るのは、来た時に通って来た坑道のすぐ外だ。俺の目の前にはオーガの群れがいる。
そのオーガの中からひと際大きなオーガが俺の前に出て来た。
「俺たちの一族を全員集めて来たぞ」
そう言ったオーガは、両手に持っている丸太のようなこん棒を振り上げて掲げ、仁王立ちで威圧するように立った。
俺もそれを見ながら魔手を召喚して、その手のひらの上に乗る。
「そんなデカブツ、サクッとやっちゃって下さい!」
俺たちを囲んでいるオーガたちにちゃっかりと混じったルシルフが、両手を振りながら応援をしている。
オーガのブーイングとルシルフの声援を聞きながら、俺はルシルフが言っていたことを思い出した。
「魔王様は魔物を従えるために、魔物のリーダーを決闘で倒してその力を認めさせました!」
ルシルフが楽しそうに言った。
「決闘!?何というか、凄く……」
脳筋っぽいと言おうとしたが、オーガの姿を思い出したらまさしくそんな感じだったので、何も言えない。
ルシルフが笑顔で俺をズバリと指を指して言う。
「ですので、貴方様もオーガのリーダーをぶっ飛ばせばいいのです!簡単ですね!」
俺は不安な顔を隠さない。
「簡単に言ってくれるよね……」
その俺の顔を見てもなお、ルシルフが確信に満ちた顔で俺に言う。
「大丈夫です!貴方様であれば瞬殺です!」
目の前のオーガは自信に満ち溢れたような表情をしてこちらを見下ろしている。
俺は中のアクストリウスを呼び出す。
「毎度、悪いね!」
アクストリウスには本物にも偽物にも世話になっている。
「いえいえ、お安い御用です!」
アクストリウスが前髪をかき上げながら、オーガを見据えつつ爽やかに言った。
審判の居ない決闘が始まる。
俺とオーガが距離を取って睨みあう。オーガは両手のこん棒を打ち鳴らすと、腰を下ろして重心を下げていく。
オーガが突進しようと足に力を込めた瞬間、アクストリウスが小さく調節した爆裂魔法を放ち、オーガの顔面で爆発させた。
オーガは一瞬だけ怯んだが、それでも構わずに突進を開始する。が、踏み出した二の足を魔手で引っ張られた。爆発に紛れて足元に魔手が飛ばされていたのだ。
つんのめったオーガは膝を付いて片手の拳を地面についた。アクストリウスがそれに合わせて距離を詰める。
それを見たオーガは、残ったもう一方の手に持ったこん棒でタイミングを合わせて薙ぎ払った。こん棒のタイミングは完璧だったが、それは当たらずにすり抜けた。一瞬で真っ白な灰になったからだ。
アクストリウスが灰を潜り、オーガの喉首に青剣を突きつける。
「参った!」
勝敗は一瞬で決まった。
ルシルフが俺に向かって走ってきた。
「お見事でした!やっぱり一瞬でしたね!」
俺はアクストリウスを中に戻した。全身に灰を被って真っ白になった服をバサバサと払いながら答える。
「確かに思ったよりも楽だったかも」
単純にアクストリウスが強いのもあるが、それでも想定以上に楽だった。ルシルフがそれに答えるように言う。
「魔物は黒魔法使いを相手に戦い方を変えるような、頭を使うような戦い方はしませんからね!黒魔法使いは魔物相手には有利なのです!」
それを聞いて、俺は以前王国で聞いた白魔法使い、黒魔法使い、軍隊の三竦みを思い出した。
「そうなると、白魔法使いは魔物相手には不利なのかな?」
ルシルフが意を得たりという顔をして言う。
「そうです!旧魔王軍が国力に勝る帝国と戦い続けられたのは、まさにそこに理由があります!」
俺は起き上がったオーガに近寄る。
「俺の勝ちだね。約束通り、俺の配下になって貰うよ」
オーガは残ったこん棒を肩に担ぐと、少しだけ悔しそうな顔をしながら言う。
「分かった」
こんな感じで、俺はいくつかの魔物グループを配下にしていった。
魔族に黒魔法を教え、魔物を配下に収めていく。
新生魔王軍は少しずつ形になり始め、その中での俺の立場も上がっていった。




