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契約-2

 俺は部屋から出て、廊下を歩いている。その後ろからルシルフが付いて来た。俺に横並びになったルシルフが、俺を心配そうに見上げながら言う。

「大丈夫ですか?」

 その言葉を聞いて、俺は申し訳なくなった。

「ごめん、心配をかけて。俺は別に何も失っていないのに……」

 失ったのは、母を生贄にした彼だ。俺は何も失ってはいない。そんな俺が、彼ら魔族に心配をかけさせるのは失礼だろう。

 ルシルフが少し安堵したように続ける。

「彼の母は既に先が長くありませんでした。感情的なことはさておき、理屈で言えば合理的な判断です。彼の母もそれを分かっていました」

 ルシルフの言葉が俺の耳に届く。俺もそれは分かっている。だが、それを他人に言ってもらえるのはありがたかった。

 俺は軽くため息をついて、報告のためにアクストリウスの部屋に向かった。

 

「そうですか。これでこの城のランク9の黒魔法使いは彼を含めて2人。順調ですね」

 アクストリウスいつものように車椅子に座り、手に掴んだ書類をエアリスに見せて、その内容と受け取りながら言った。

 いつもの様子と変わらないアクストリウスを見て、俺は少し気になったことを聞いてみた。

「アクストリウスは、どうやってランク7になったの?」

 それを聞いたアクストリウスの動きが止まった。そして俺の方に見えない目を向けて、いつもの調子で聞く。

「突然、どうしたのでしょうか?」

 自分で聞いたにも関わらず、俺は言葉に詰まった。辛うじて言葉を紡ぐ。

「いや、なんとなく気になっただけだよ。本当に何となくだから、気にしないで」

 そう言って俺は立ち去ろうとした、ドアに向かおうとした俺に、アクストリウスが話し始めた。

「私がランク7になったのは、私の引き継いだ領土で戦争が起き、城に攻め込まれた時でした。もう、70年以上前の話です……」

 そして、アクストリウスが語り始めた。


 私は王国の貴族として生まれました。

 当時は帝国や王国以外にも様々な国があり、互いに熾烈な争いを繰り広げていました。私たちの一族も、自分たちの領地や王国を守るために戦っていました。

 私の一族は、代々黒魔法使いを輩出してきました。以前にも言いましたが、防衛において黒魔法は有利に働くからです。私も15の歳になった時に、黒魔法の契約を交わしました。エアリスはその時の私の教育係でした。

 

 そう言って、アクストリウスがエアリスに顔を向ける。俺は赤髪の召喚体であるエアリスを見つめた。生前は目を奪われような美女だっただろう。

 アクストリウスが続ける。


 ある時、私の領土で戦いになりました。私も戦いに参加していたのですが、この時は敗戦になりました。私たちは城に逃げ込みましたが、その城も包囲されてしまいました。

 日に日に尽きていく糧秣。いくら待っても味方の援軍が来ません。兵士たちも限界が近づいていました。

 そんな最中、事件が起きました。味方の兵士が裏切りを企てていたことが分かったのです。城主である私を敵に突き出し、自身の命を救ってもらおうという算段です。しかも裏切りを企んでいたのは、私の信頼していた部下でした。

 私は、絶望しました。

 そんな最中、私の教育係だったエアリスが私に選択を突きつけました。

「ランク7の契約をしなさい。契約条件は自身の支配している者を生贄に捧げること。私を含めてこの城の者を生贄に捧げれば、条件は満たせます」

 私は選択をしました。

 そして、ランク7となったのです。

 

 一気に話したアクストリウスは、肩の荷を下ろしたかのようにため息をついた。そして、召喚体となったエアリスの手の甲を愛おしそうに、優しく撫でる。

「そうか……話しにくいことを話してくれてありがとう」

 俺はそう言うと、静かにアクストリウスの部屋を後にした。


 廊下を歩く俺と横並びに歩いているルシルフが悲しそうに言う。

「辛い選択の話でしたね……」

 俺はその言葉を胸に、次の仕事に取り掛かるために歩みを進めていった。

 

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