第127話 解釈
インフルB型初めてかかった。しんどすぎて三日くらいスマホとパソコンをまともに触れなかった。
スカイラン・スクワールとの戦いを終え、天野のところへマンティスガントレット用の電力供給をしてもらうため、拠点の電力の全てを賄う巨大充電スタンドのところへと向かうと、凄まじい光景が繰り広げられていた。
「ゲコ、ゲコゲコ……ゲコ……」
カエルだ。緑、緑、緑。大小様々なカエルが地面を埋め尽くし、跳ね、鳴き、充電スタンドの鉄骨をよじ登り、ケーブルの上をぴょんぴょんと移動している。そしてカエルのカーペットの中心に座り、楽しそうにカエルと戯れる天野の姿があった。俺が来たことに気付いたのか俺の方へと振り向いた。
「あ、星谷さん。マンティスガントレットの充電ですか?」
「ああ、そうだけど。その、え、なにこれ?カエル!?」
天野は小さく首を傾げると、空へと手を掲げると、ふわりと白い雲が生まれ次の瞬間。
ぽた。
ぽたぽたぽたぽた。
「ゲコッ!?」
雲の底から、カエルが何匹も降って来た。
嵐の後にカエルが道路にうじゃうじゃいるとかいう異常な現象、いや異常気象、怪雨。常識的に考えて空から降ってくるはずのないものが降ってくる。確かファフロツキーズ現象とか書いてあったな。日本だとおたまじゃくしが大量に降った事例があったはずだ。
「どんな原理でカエルが降ってんだ?」
「私にもわかりません。奇妙でしかありません。」
奇妙か。確かにその一言に尽きる。
「確かに奇妙だ。というか、なんでこんなことできるんだ?前に能力見せてもらった時って小規模な太陽と雨雲、雷雲とかだったよな?」
「実は、このサバイバルフォレスト中に能力を使い過ぎて一度気絶しかけたことがあって。」
「あー、十中八九充電スタンドの充電のせいだろうな。雷バンバン撃ってたし。無茶をさせた。」
俺は顎に手を当て少し考え話す。
「確証はないけど、能力の使い過ぎで体が、ZONEの方が適応すると同時に若干の進化でもしたんじゃないか?」
「進化……」
天野は空を見上げた。
「前にも話したけど、私は父のように大規模で強力じゃないし、ジョーカーさんのような雷に特化した能力でもないから威力は低い。そう後ろ向きな姿勢で自分のZONEと向き合っていた。」
それは静かな告白だった。
「あの狩人育成機構の社長さんが行った授業で、改めて自分はどう在りたいか考えたことがあるんです。」
「それでどう在りたかったんだ?」
「父のようにとか、ジョーカーのようにだとか全部無しにして、何者でもない自分で在りたいと思った。」
その言葉は軽くはなかった。
「その結果がこれなのはちょっと悲しいですが。」
天野は苦笑する。だが俺は悪くないと思った。何者でもないということは、何者にでもなれるということだ。
それに、何者でもない自分か。俺自身にも大分刺さるな。前にも自分のことについて懸垂しながら考えたことがある。何者になりたいか。目標ならその時に決めた。あいつらが俺を見て安心できるくらいに強く、この世界を守れるほどに強くなること。だが、何者になりたいかと言われると考えさせられるものがある。
「そっか……カエル以外には何か試してみたのか?」
「いいえ、まだ試してはいませんし、カエル以外出るのかどうかもわからないので。」
「試してみようぜ!ミッション更新までまだ時間はあるし、運動場も俺が朝一で均しておいたから使いやすい。試すには持って来いだぜ?」
天野は一瞬だけ迷うように視線を伏せ、それから小さく頷いた。
「……はい。」
俺たちは早速運動場の方へと移動した。地面は均され、砂が均一に敷かれている。青空の下、何もない広場が広がっている。よく均した俺。
「準備はいいかー!」
「いつでもいけます。」
「じゃ、初めてくれー!」
天野は空へと手をかざす。そうすると天野の頭上に雲が現れた。そして、それをある程度離れた場所まで移動させ、天野は雲へと呼びかける。
「空へと祈れ!何か降らせて!」
その声に呼応するように空へと祈れによって作り出された雲の内部が一瞬、鈍く光る。次の瞬間、重い風切り音。巨大な影が地面に落ち、衝撃が砂を爆ぜさせた。舞い上がる砂塵の向こう、露わになったのは無骨な鉄塊。角張った巨大な塊が地面にめり込み、余波で足元が震える。
「これさっき移動させてなかったと思うとゾッとするな。天野大丈夫か―!」
「焦りましたが、平気です。」
天野は息を整えながらも、視線は雲から逸らさない。
「よーし!じゃあ次頼む!」
再び雲が膨らむ。今度は光なくそこから降ってきたのは――親方!雲から屈強な黒髪褐色のオオカミ高校生が!
「痛ぁっ!?!?!?」
「ガロウ!?」
ガロウだった。
「なぜガロウ……?」
「なぜ黒条さんが……」
「おいテメエら!何しやがる!俺はさっきまで修行をしてたはずなのに何でこんなとこに俺がいるんだ!?」
事情を説明すると、ガロウは腕を組み、空を睨んだ。
「なるほど。誰者でもない自分になりたいっていう餓えに答えたZONEの能力検証。それで俺が落下してきたと……すまん、やっぱり俺が降ってくることに納得いかねえ。どうなってるんだ。」
「納得も何も超常現象じみてるからな。操作系のZONEの範疇を明らかに超えてるし、異能系の方に成長していってるんじゃないか?ガロウ、具体的にどうやって落ちたか聞いていいか?」
「ああ、いいぜ……たしか、俺は拠点周辺でデカめの木を見つけては折れるまで拳で殴りつける修行をしてた。数本ぶち折って今度は魔剣の制御の練習をするために一度休憩をしていた。そしたら、突然足元に霧みたいなもんが集まりだして、敵襲かと警戒して辺りを見回そうとしたら空中にいた。」
「やっぱり、瞬間移動してるのか。」
空を経由した転移。落下という形で顕現する瞬間移動能力なんだろうか?
「天野、俺を呼び出した時何か考えたことはあるか?」
「いえ、何も考えてはいませんでした。ただ、何かを降らせてとしか。」
「もう一回、俺のこと落としてみろ。カエルを降らすことが二回ができたんなら、俺でも同じことができるはずだ。」
「わかりました……空へと祈れ。ガロウを降らして。」
天野がそう言うと、隣にいたガロウが落下するように消えたかと思うと、運動場の中心に空へと祈れで作った雲の中から落ちてきた。ガロウは落ちていることを確認すると空中で体勢を整え、影へと滑り込み、瞬間影移動で木陰へ退避した。
「やはり、一度降らせたものは再度降らせることはできるみてえだな。再現性はこれで証明された。もう俺のこと瞬間移動させるなよ心臓に悪いから。」
「となると、後はランダムで降るものに規則性があるのかどうなのか。鉄の塊を降らせた時も何も考えては無かったんだよな?」
「はい。」
「もう何回か試してみるか……ガロウは修業に戻るか?」
「俺はそうさせてもらう。頑張れよ。」
そう言ってガロウは瞬間影移動で拠点の外へと移動していった。
「天野さん続けるか?」
「星谷さん、もう一度一人で見つめ直してみようと思います。」
「そっか。そんなに思い詰めるなよ。苦しくなるならそうだな……冰鞠とか巴に相談乗ってもらえ。あいつらも一度乗り越えたやつらだからいいアドバイス貰えるかもな。」
内容が薄いって?うるせえ、テメエの口の中に俺が幾重にも吐き出した痰入りティッシュねじ込むぞ。
というよりも実は、127話をどうしようかと、天野メインの話とそのまま3日目のミッションに続く2パターン作ってたんですよ。そのまま3日目のやつ書いてたんですけど、天野メインも使いたくなって今に至り……ゴボゴボゴボ




