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神獣キメラの育成日記 ~転生時のお願いを、神様が誤解しているようです~  作者: ARATA


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第21話 ニジと用水路

 聞けばパメラは“相手を眠らせる魔法”や“鍵のかかった扉を開く魔法”などが使えるらしく、ゴドリックの屋敷に侵入することは難しくないと言う。


 パメラは一体いくつの魔法が使えるんだろうか? そんな疑問が頭に浮かぶ。



 「でも捕まったら、パメラたちも自警団に突き出されちゃうよ。やっぱり辞めた方がいいと思うけど」


 「何、言ってんだルウト! 悪いのは向こうなんだぞ!!」


 「そうよ! それに捕まったって、十二才の私たちを裁く法律なんてないわ。まあ……親には迷惑をかけるでしょうけど」



 二人とも覚悟を持って言ってくれてる。僕も覚悟を決めないと。



 「分かったよ。みんなでコロを取り返そう!」



 アルが手を伸ばし、手のひらを下に向けた。僕とパメラが上に手を乗せると、アルがニッと笑って、激励を飛ばす。



 「必ずコロを取り返すぞ!!」


 「「「おーーーっ!!」」」



 僕たちは手を上に跳ね上げ、互いに笑いあった。


 みんなで“悪いこと”をしようとすると、テンションが上がってしまうのは何故だろう。何年も前にみんなで一緒に家出をした時のことを思い出す。


 あの時も楽しかった。後でめちゃくちゃ怒られたけど。



 「そうだ、アルとパメラに見せたいものがあるんだ」



 僕はバッグから、大きめの水筒を取り出した。



 「なに?」


 「何だよ、見せたい物って?」



 水筒の中からは、キラキラと光る粘度の高い液体が出てくる。地面に全て落ちると丸っこいスライムの形になり、プルプルと揺れていた。



 「これって、まさか……スライムなの!?」


 「え!? スライムって“魔獣”じゃないか! どうしたんだルウト」


 「実はね……」



 僕は二人に、昨日の夜の出来事を話した。虹色のスライムが卵から生まれたこと、不思議な能力があり“ニジ”と名付けたことなど。



 「へー、面白いな。変身するスライムか」



 二人はニジの変身能力を何度も試してみる。自分で触って小さな自分に変身させたり、近くにある石に変身させたり、興味深々で観察していた。


 特に夢中になっていたのはパメラだ。



 「なに、これ……スゴイ、小さくなると軽くなるの? 重量が変化するってこと……? 物理法則はどうなってるの?」



 ブツブツ言いながら、ニジとガラスの板を交互に見ていた。



 「ねえ、ルウト。そのガラスの板、貸してもらってもいい?」


 「うん、いいよ」



 僕はガラスの板をパメラに渡した。すると――



 「え?」



 パメラの手の中でガラスの板は、スーと消えてしまった。


 僕の手から離れると消えちゃうのか、出し入れが簡単に出来るから今まで手から離したことがなかったけど。



 「ルウト以外には使えないってことなのね。もう一度出せるルウト?」


 「うん、大丈夫だと思う」



 僕は手と手の間にガラスの板を出現させる。いつも通り問題なくガラスの板は出てきた。パメラは横に立ち、僕が操作するガラスの板を覗き込む。



 「この【形状変化】の能力は分かったけど、問題はこの【質量変化】の方ね。説明分が書かれているんでしょ?」


 「僕も読んでみたんだけど、よく分からなかったんだ」



 【質量変化】の表記をタップすると、詳細情報が出てきて説明文が表示される。そこにはこう書かれていた。



 《同じ成分であるスライムを取り込むと質量を増やすことが出来る》



 「要するに、スライムを食べさせると大きくなるって事かしら?」


 「多分そうだとは思うんだけど……」


 「でも、スライムって魔獣だからガリアの森の奥に行かないといないだろう。行くのはかなり危険じゃないのか?」



 アルの言う通り、基本的に魔獣はガリアの森の奥にしかいない。スライム自体は弱い魔獣だけど、そこまで行くのは危険すぎる。



 「待って、確か田んぼに水を引く水門の近くにスライムが溜まってたって話聞いたことがあるわ」


 「そう言えば俺も聞いた事があるぞ、街の東に住んでるセオドラーさんの田んぼじゃなかったっけ?」



 僕は知らない情報だったけど、二人が言うには一部の用水路が、ガリアの森の川に繋がっていて、魔獣が流れてくることもあるらしい。



 「場所はそんなに遠くないから行ってみようぜ」



 時間はそれなりにかかるけど、僕たちは行くことに決めた。それはニジの変身能力が、コロの奪還作戦で役に立つんじゃないかとパメラが言ったためだ。


 いつもとは違う帰り道、東にある用水路を目指す。




 日が傾き始め、少し肌寒い風が吹く中、僕たちは目的の場所に着いた。


 田園風景が広がり、奥にはガリアの森が見える。


 森の中から蛇行するように川が流れていて、その川から田んぼに水を引くため、水門を通して用水路に水を入れていた。


 それほど大きくない水門だが、穀物を栽培するためには必要不可欠な物だ。僕たちは水門に向かい、中を見下ろす。



 「あ! いるぞ、スライム!」


 「一、二、三……十匹以上は居るわよ」



 水門の下には張り付くようにスライムがいた。アルは鉄製のハンドルを少しだけ回して水門を開ける。用水路から水が流れ込み、一緒にスライムが入ってくる。


 すぐに水門を締めれば、水の無い用水路にスライムだけが残る状態を作れた。



 「おっし! これで捕まえ放題だ」



 僕は水筒からニジを出し、用水路でプルプル震えているスライムの上に乗せてみる。すると徐々に二つのスライムは融合して完全に同化してしまう。



 「これでいいのかな……?」


 「確かに……量が増えたか分からないわね」



 僕たちはそれを何度か繰り返し、十二匹目のスライムと同化した所で、ニジの変身能力を使ってみる。パメラが触り、僕がガラスの板の画像をタップした。



 「あ!」



 変化は明らかだ。さっきまでは変身しても、三十センチくらいの人形のようだったのに、今は一メートル以上の大きさの“パメラ”になっている。


 ニジの見た目は変わらないけど『内容量』は増えてるんだ。



 「小さいとはいえ、自分と同じ姿の人間を見るのは不気味ね」



 パメラはそう言いつつ、ニジの変化にご満悦のように見える。僕たちは他の水門も見に行き、そこにいたスライムもニジに取り込ませた。


 もっとスライムがいないだろうかと探し回ると、川の端で(つた)(えだ)に引っ掛かってるスライムを見つける。


 結局、数十匹のスライムをニジに取り込ませると――



 「スゲー!」


 「完全に本物と同じね」



 ニジが僕の姿に“変身”している。姿形を含め、大きさもまったく同じだ。



 「何だか……不思議な気分になるね」



 僕は自分の姿で動いているニジを見て、ちょっと困惑していた。言葉こそ発しないが、アルやパメラでも見分けが付かないようだ。



 「でも、これだけ再現度が高いなら、コロの救出にも必ず役に立つわ」


 「ニジが現れたのは偶然じゃない、神様がコロを助け出せって手助けしてくれてるんだよ、きっと!」



 アルの言う通りだと思う。そして僕たちはその日の深夜“ニジ”と一緒に、コロを助けに行くことにした。


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