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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
3章:流れを繋ぐ者たち

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第100話 崩れる流れ

毎日20時投稿

奥へ進むほど、空気が変わっていった。


モンスターの気配が途切れない。


一度戦闘が終わっても、すぐ次が来る。休む間がない。


「……さっきより増えてますね」


エンが小球を浮かせたまま言う。


「増えてるね」


カナは短く答え、周囲を見回した。


「しかも引かない」


ノアも頷く。


「普通なら、一度間隔が空きます」


通路の先から、二体。


さらに横の分岐からもう一体。


小球が動き、進路を制限する。


ノアが踏み込み、一体を倒す。


カナが残りを押し止める。


戦闘そのものは問題ない。


だが終わらない。


「……これ、長引くとまずいですね」


エンが息を整えながら言う。


「うん」


カナも同意した。


「強いわけじゃない。でも、減らない」


疲労だけが溜まっていく。


それが一番危険だった。


その時、奥の通路から複数の足音が近づいてきた。


装備の音。荒い呼吸。


別パーティだった。


「撤退する!道空いてるか!?」


先頭の冒険者が叫ぶ。


「大丈夫です!」


エンが即座に答え、小球を前方へ動かす。


迫っていたモンスターの進路をずらす。


通路に一瞬だけ空間ができる。


冒険者たちがそこを抜けていく。


「助かった……!」


通り過ぎざまに声が飛ぶ。


だがその表情には、余裕がなかった。


「奥、維持できねえ!数が異常だ!」


そのまま彼らは出口方向へ消えていく。


静かになる。


だがすぐに、また気配が増えた。


押し出されるように、次のモンスターが現れる。


エンは小さく息を吐く。


「……流れが崩れてます」


いつもなら、戦闘には波がある。


押して、引いて、整える時間がある。


今は違う。


常に押され続けている。


カナが前に出る。


「ここで止めるよ」


「はい」


エンは頷き、小球の動きを速めた。


通路の中央で球を巡らせる。


敵の足が止まる。


ノアが確実に一体ずつ仕留めていく。


だが、終わらない。


倒しても、また来る。


数分後には、全員の呼吸が少しずつ重くなっていた。


「……これ、奥に原因ありますね」


エンが言う。


「だろうね」


カナも同じ結論だった。


「普通じゃない」


ノアが短く続ける。


「押し出されています」


その表現が、一番近かった。


何かが奥から、モンスターを前へ流している。


自然な湧き方ではない。


通路の奥から、さらに強い魔力の揺らぎが伝わってきた。


今までとは質が違う。


重い。


粘つくような感覚。


エンは無意識に球の位置を調整していた。


流れを崩さないように。


「どうする?」


カナが振り向く。


撤退するなら今だった。


判断としては正しい。


だが。


エンは少しだけ奥を見つめる。


球はまだ安定している。


流れは保てている。


「……もう少しだけ、確認してもいいですか」


カナは一瞬だけ考え、肩をすくめた。


「無理はしないよ」


「はい」


ノアも、帰還石を用意しながら静かに頷く。


「いつでも引けます」


三人は再び奥へ進む。


戦闘の音が、遠くで途切れずに響いている。


誰かが戦い続けている音だった。


そしてその奥で。


ダンジョンの魔力とは異なる、歪んだ脈動がゆっくりと強まっていた。


流れは、確実に崩れ始めていた。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の別作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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