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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
1章:球術のはじまり

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第29話 制御できない力

毎日17:30投稿

緑層の樹界に入って三度目だった。


最初に感じた違和感は、はっきりした問題に変わっていた。


「……やっぱり、動きすぎますね」


エンは大球を戻しながら言った。


斜面に触れた瞬間、球が思った以上に進む。


止めることはできる。


だが、そのたびに余計な集中力を使う。


「うん」


カナは短く答えた。


ここでは、何もしないと球が動く。


それが今までと決定的に違った。




段差のある広場で、獣型の魔物が三体現れる。


素早い。


上下に動き回る。


エンは小球を動かす。


一体に当たる。


だが、当たった小球が斜面を滑り、予想外の方向へ流れた。


「あ」


エンはすぐに戻す。


問題はない。


だが、今までなら起きなかった動きだった。


「……読めないですね」


「うん」


カナは周囲を見ている。


足場が複雑で、どこに傾きがあるか分かりにくい。




少し奥へ進んだときだった。


開けた斜面に出る。


敵は一体だけ。


「ここなら」


エンは巨大球を取り出した。


広さもある。問題ないと思った。


前に送る。


巨大球が転がる。


獣型を弾き飛ばす。


そのまま、斜面へ入った。


「……速い」


予想より加速する。


エンは止めようとする。


だが、回転が乗っている。


重い。


止まりきらない。


巨大球が大きく弧を描き、横方向へ流れた。


「エン!」


カナの声。


エンは慌てて操作を強める。


ようやく止まった。


静寂。


ほんの数秒だったが、嫌な汗が背中を流れる。


「……今の」


エンは息を吐いた。


「危なかったですね」


「うん」


カナの声は落ち着いているが、少しだけ硬かった。


巨大球は何もなかったかのように静かに止まっている。


だが、もし位置が違っていたら。


もし足場が狭かったら。


そう考えると、少しだけ怖くなった。




その日は、巨大球をしまったまま進んだ。


小球と大球だけで戦う。


時間はかかるが、安定している。


危なくない。


ダンジョンの出口が見えてきたところで、エンが口を開いた。


「……強くなったと思ってたんですけど」


「うん」


「なんか、逆に難しくなりました」


正直な感想だった。


静床の遺跡では、巨大球は明らかに強かった。


だがここでは違う。


強いほど、扱いづらい。


「場所が違うから」


カナが言う。


「同じじゃない」


エンは小さく笑った。


確かにそうだ。


同じ戦い方が、どこでも通じるわけではない。


「……でも」


エンは少しだけ前を見た。


「使えないのは、もったいないですね」


まだ諦めるつもりはない。


あの押し切る感覚は、確かに強かった。


ただ、今はまだ――。


使い方が分かっていないだけだ。


緑層の樹界の奥から、風が抜ける音がした。


強くなったはずの力は、まだエンの手に馴染んでいなかった。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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