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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
1章:球術のはじまり

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第2話 均形鍛冶

新連載です。

10話まで一挙に公開します。


毎日17:30投稿

「ちょっと、それ――」


背後から声をかけられて、エンは振り返った。


鍛冶場の奥から出てきたのは、作業着姿の少女

――いや、年上だろうか。エンより少し背が高く、煤で汚れた頬のまま腕を組んでこちらを見ている。


視線は鋭いが、怒っているというよりは、何かを確かめているようだった。


「それ、私のなんだけど」


エンは慌てて手の中の鉄球を持ち上げた。


「あ、すみません。落ちてたから、つい」


「売り物じゃないから別にいいけど」


少女はそう言いながら、エンの手元

――正確には鉄球をじっと見ている。


「……今、どうやって動かしたの?」


予想外の質問だった。


「え?」


「浮いてたよね。それ」


見られていたらしい。


エンは少しだけ言葉に詰まり、それから肩をすくめた。


「今日、スキルをもらって。球術っていうらしくて」


「球術?」


「球を……動かせる?みたいです」


自分で言っても、まだ実感がない。


少女は数秒黙り込み、それから小さく頷いた。


「なるほど」


納得したのかしていないのか分からない反応だった。


「もう一回やってみて」


「ここでですか?」


「うん」


迷う理由もない。エンは鉄球を軽く手放し、意識を向ける。


球体を掴むように。


鉄球はふわりと浮き上がり、空中で静止した。


少し前へ、右へ、左へ。


考えた通りに滑らかに動く。


少女の視線が、さらに鋭くなる。


「……回転が、乱れてない」


「え?」


「普通、投げた金属ってもっとブレるんだよ」


そう言いながら、彼女はエンの手から鉄球を受け取った。


軽く指先で回し、重さを確かめるように上下させる。


「それ、私が作ったやつ」


「そうなんですか」


「ウチ独自のやり方なんだけどね」


「均形のかかり具合を見る時、たまに球を作るんだ。形が一番分かりやすいから」


あっさりと言った。


エンは思わず首を傾げる。


「これが?」


「うん。特徴がないから」


少女は鍛冶場の隅を指さした。そこには剣や槍の穂先、盾の金具などが無造作に置かれている。


「私、均形鍛冶ってスキルなんだ」


「均形鍛冶?」


「形とか重さとか、全部平均に近づく。バランスは良くなるけど、尖った性能は出ない」


つまり、と彼女は続ける。


「強い武器にならない」


言い方は淡々としていた。悔しさも、諦めも混ざっていない。ただ事実を説明しているだけの声だった。


「だから売れない。冒険者は癖のある武器の方が好きだし」


そう言ってから、鉄球をエンに差し出す。


「もう一回。今度はこれ」


渡されたのは、見た目はほとんど同じ鉄球だった。


だが、手に取った瞬間、ほんのわずかに違和感がある。


重さの偏りがあるというか、握り心地が微妙に不安定だ。


「それは昔に作った失敗作」


「失敗作?」


「均形鍛冶のスキルを授かる前に作ったから」


なるほど。


と、エンは頷き、先ほどと同じように意識を向ける。


球を掴む。


浮かぶ。


……が。


「……あれ?」


動きが鈍い。


浮くことは浮くが、さっきほど滑らかじゃない。少し動かすだけで、軌道がわずかにぶれる。


「なんか、やりにくいですね」


「やっぱり」


少女は小さく呟いた。


「じゃあ、さっきの」


均形鍛冶の鉄球に持ち替える。


意識した瞬間、違いははっきり分かった。


軽い。


いや、重さは同じはずなのに、思った通りに動く。


余計な力がいらない。


回転が勝手に整うような感覚。


鉄球は空中を滑り、円を描いてエンの周囲を回った。


「……すごい」


思わず声が漏れる。


「これ、全然ブレない」


少女――カナは、少しだけ目を見開いた。


「普通だよ、それ」


「普通じゃないですよ」


エンは正直に言った。


「こんなに動かしやすいの、初めてです」


「とはいっても、スキルは授かったばかりなんですけどね」


カナは何か言い返そうとして、口を閉じた。


自分にとっては当たり前の出来のもの。


それが、目の前の少年には明らかに違って見えている。


鉄球が、エンの周囲を滑らかに回り続ける。


無駄な揺れが、一切ない。


「……変なの」


ぽつりとカナが言った。


「そんな使い方、考えたことすらなかった」


「俺もです」


二人で顔を見合わせ、少しだけ笑った。


しばらくして、エンは鉄球を手の中に戻す。


「これ、ダンジョンで試したらどうなるんでしょうね」


何気ない一言だった。


カナは少し考え、それから肩をすくめる。


「壊れても知らないよ」


「壊しませんって」


「鍛冶屋はみんな、そう言わなきゃいけない決まりなのよ」


そう言いながらも、完全に否定はしなかった。


店の奥では、炉の火がまだ赤く燃えている。


売りものではない鉄球。用途の分からないスキル。


どちらも、今までは価値がなかったものだ。


「……まあ、いいよ」


カナは小さく息を吐いた。


「どうせ鋳つぶす前の在庫だし。試すくらいなら」


「お代はちゃんと払ってもらうからね」


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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