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第98話 虹喰いスライム

 2日前。

 ゼルは、『白銀の獅子』のメンバーを、とある地下室に集めていた。


「どうしたんだよゼル、こんなところに呼び出して?」

「なぁに、ちょっとお前らにプレゼントがあってな」


『白銀の獅子』がしばらく待っていると、影が収束し、濃密に浮かび上がり―――。

 目の前に、『両面宿儺』のノームが立っていた。


「あっ!お前、『両面宿儺』の!」

「ほっほっほ。皆さん、お久しぶりですね」


 ノームはリラックスした様子でケタケタ笑う。


「てめぇ・・・!何の用だ!?」

「そう構えずに。今日は、ゼルさんに頼まれたものを持って参りました」

「ゼルの頼まれ物!?」


 ゴリはゼルを見る。


「お前、こいつに連絡したのか!?」

「まぁ、ちょっとな」


 ゴリは、目を細くする。


「・・・もしかして、一部で噂になってる、お前と『両面宿儺』が繋がってるって話、本当なんじゃ・・・」

「その話は後だ。とにかく、お前も喜ぶものを調達してきてもらったんだよ、ゴリ」


 ゼルは笑顔で、ゴリの肩をポンポンと叩く。


「ノーム。早速見せてくれ」

「ほほ。分かりました」


 ノームが大きな保存袋をひっくり返すと、中から4体の魔物が現れた。

 魔物は拘束されており、全身虹色のまばゆい光を放っていた。


「な・・・なんだこいつは!?」

「『虹喰いスライム』だよ」


 ゴリは目を見開き、息を呑んだ。


「嘘だろ・・・これが、伝説の・・・?」


『虹喰いスライム』。

『金喰いスライム』の完全上位互換で、ミスリル以上のレア鉱石を主食とする。

 魔力を帯びているレア鉱石は虹色に光る性質上、全身が虹色に発光する。

 討伐時に得られる経験値は、『金喰いスライム』の比ではない。


「ほほ。しかも、こいつは特別です。相当にレア鉱石を喰って肥え太った、いわばスライムの王です」


 確かに、大きさは『金喰いスライム』の十倍以上はある。


『虹喰いスライム』の討伐は、10年に一度あるかないかと言われている。

『Mtube』上でも、討伐動画はおろか、姿を映した動画さえ存在しない。

 それなのに、こんなに肥え太った個体が4体も・・・。


「こいつを倒せば、レベルがいくつだろうと、即、臨界者の仲間入りです」


 ノームの言葉にゴリは驚いた。


「なっ・・・なぁ・・・!?」

「そう驚くなよゴリ。これは、お前へのプレゼントだ」


 莫大な経験値を吐き出すであろうスライムの王。

 それが、目の前で拘束され、無防備に転がっている。

 倒すまで、何度でも攻撃できるだろう。


「おい・・・これ、倒しちまっていいんだよな!!?」

「ああ。一人一体ずつだ」

「よっしゃーーー!!!」


 ゴリは全力の拳の一撃を『虹喰いスライム』のお見舞いした。


 ――ガキィン!


「いってぇぇぇーーー!!!」


 ゴリは拳を痛め、『虹喰いスライム』には傷一つ付かなかった。


「ほほほ。ゴリ様のお力では、ダメージは与えられますまい。これをお使いください」


 ノームが保存袋から、虹色の斧を取り出す。


「これは最強金属、オリハルコン製の斧です。それから、ゴリ様にバフをかけましょう」


 ノームが手を翳すと、ゴリの体に力が漲った。


「おっしゃあー!これならイケるぜ♪」

「ほほ。だいぶ弱らせてますから、少しダメージを与えれば倒せますぞ」


 ゴリは何度も『虹喰いスライム』に斧を振り下ろす。

 キーン、キーンという金属音が、何度も部屋に響く。


「はぁ・・・はぁ・・・なかなか死なねぇな・・・」

「ほほ。もう少しです」

「おい、ゼル。これ一体、いくらぐらい金詰んだんだよ?」

「まぁ、一体あたり100億ってところだな」

「ひゃ・・・ひゃく・・・!!?」


 ゴリは思わず斧を落とした。


「気にするな。『幽影鉱道』で得た金の半分くらいは使っちまったが、『白銀の獅子』が最強になるためだ。全員臨界者のパーティなんざ、Sランクパーティでもそうそういないぞ?」


 ゴリは震えながら、ニヤリと笑った。


「よっしゃーーー!燃えてきたぜーーー!!」


 ゴリは懸命に斧を振り続けた。

 すると、ついに―――まばゆい光を放ち、『虹喰いスライム』が砕けた。


「うひょーーー!!!力が漲ってくるぜぇぇぇ!!!」


 ゴリは、ステータスウォッチを装着し、自分のレベルを確認する。


「100!100!!100!!!レベル100だってよおおお!!!!がぁっはっはっはっはっは、これで俺様も臨界者だぜぇぇーーーーー!!!!!」

「おめでとう、ゴリ。次は俺の番だ。斧を貸してくれ」


 ゼルはゴリから斧を受け取る。

 ゴリは有頂天になって、リゼとマリーに話しかける。


「うひょひょひょひょwwwなぁ見ろよ、レベル100だぜ!!これで俺達も最強だ!!」


 リゼとマリーは、静かに俯いていた。


「・・・?なぁ、どうしたんだ?そういえば今日、えらく口数が少ねぇじゃねぇか?」

「ははは。驚きのあまり言葉も出ないんじゃないか?」


 斧を振り下ろしながら、ゼルが笑う。


(・・・まぁ、その二人は俺の奴隷だからな)


 ゼルは、二人が『白銀の獅子』の方針に疑問を持っていることを感じ取っていた。

 だから、『両面宿儺』に住所を教え、攫って奴隷市場に出させた。


(・・・まぁ、戦闘用奴隷と性奴隷の兼任ってところかな)


 無能なムビとは違い、二人とも使える。

 それに、華がある。

 パーティを抜けるなんて、絶対に許さない。


(・・・くくく。住所が特定できれば、『四星の絆』の連中も攫っちまうか。いい奴隷になりそうだ)


 屈辱に満ちた顔の『四星の絆』に、ゼルの命令を強制させる。

 想像するだけで、下半身が膨らむ。


(まずはどんな命令がいいかな・・・そうだ、ムビの八つ裂きなんてどうだ?あいつら、どんな顔をするかな・・・)


 ゼルの堪え切れない笑い声が、地下室に怪しく反響していた。

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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