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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第1章 『動画編集者』の覚醒

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第70話 激闘のあと

 炎が消えた後も、ムビはしばらく立ち尽くしていた。

 デスストーカーを倒し、体から徐々に呪いが消えていくのが分かる。

 体に残る、数多の呪文の感覚。

 このまま魔力切れになるまで、呪文を放ちたい気分だった。

 呪いが完全に消え去り、心地良い疲労と達成感がムビを包み込んでいた。


 あぁ―――最高。


 立ち尽くすムビに、駆け寄る足音があった。

『四星の絆』が全員、ムビに抱き着いた。


「うわっと――!」


 惚けていたムビは、一気に現実に意識が引き戻された。


「ムビ君……ありがとう……!私、もう本当にダメかと思って……」


 ユリが泣いている。

 どうやら呪いは解けたようだ。


「本当に―――本当に、良かった――」

「私、怖くて怖くてどうしようもなくて……。皆生き残れるなんて思わなかったよぉ……」

「流石に、もうダメだと思いました。一人で戦わせしまって、ごめんなさい」


 皆泣いていた。

 ムビも緊張の糸が切れて、涙が出てきた。

 しばらく皆で輪になって泣いた。


「そういえばサヨさん、配信はどうなりました?」

「あぁ、そうでしたわね」


 サヨは涙を拭う。


「すみません。実は、魔物の呪文で吹き飛ばされたときに、壁に打ち付けてしまって……」


 サヨは壊れたカメラを皆に見せた。


「しょうがありませんね。全然OKです」


 外の状況を知りたかったし、帰り道はガエンに案内してもらおうと思ったが、まぁいいだろう。

 命があればなんとでもなる。


「それよりもムビ君……さっきのあれ、何なの!?」

「そうです……ムビさん、あんなに強かったんですか?」


 ユリとシノがムビに尋ねる。


「いや……自分でも、何がなんだか。無我夢中で戦ってたら、なんかいけるなぁと思って……」

「なんかいけるなぁって……。完全に人間の動きじゃなかったよ?」

「そうですわ。魔法も、とんでもない威力の呪文を連発して……神話の戦いを見ているようでしたわ」


 ルリとシノが呆れた声を出した。


 そんなに凄かったのか。

 戦っている最中は必死で考える暇が無かったが、確かに冷静に考えると、討伐推奨レベル240のデスストーカーをタイマンで倒すなんてあり得ない。

 一体俺の身に何が起きたんだろうか。


「スキルを発動したとか?」

「いえ、『エンパワーメント』はユリさんにしか使ってなかったので、スキルではないと思うのですが」

「ひょっとして何か隠された能力があるとか?」

「うーん、どうなんでしょう」

「でも、スキルの真価は、相当高レベルの鑑定士でもない限り分からないといいますわ」


 確かにサヨの言うとおりだ。

 一般的に自分のスキルの効果は、15歳になったときに国の制度で一度鑑定してもらうことができる。

 国から派遣される鑑定士のレベルで分かるのは、およそ全体の7〜8割程度だと言われている。

 未解明の部分が、何かしら作用した可能性はある。


「そうですね。今度、レベルの高い鑑定士の人にスキルを解明してもらうのも良いかもしれません……あれっ?」


 ムビは足元がフラつき、コテンとその場に尻もちをついた。

 どうやら思った以上に体が消耗しているみたいだ。

 安心したら、一気に筋肉痛と疲労が押し寄せてきた。


「あはは……だいぶ疲れちゃったみたいです」

「無理もありませんよ。あんなに凄まじい戦闘の後ですからね」

「どこかで休みましょう。……あら?」


 サヨが何かを発見する。


「どうかした?」

「あそこ、壁の向こうに空間がありますわね」


 ムビの放った魔法により壁に穴が開いていた。

 その向こうに空間が広がっているようだ。

 なにやらいい匂いがする。


「この匂い……ひょっとして温泉!?」

「行ってみようよ!」


 ムビはユリとシノに肩を借りて歩く。

 穴の中に入ってみると、奥に温泉が湧いていた。


「うわー!ガチの温泉だー♪」

「ここで休憩していこうよ!」

「そうですね、ここでゆっくりしていきましょうか」


 全員、ここ数日風呂に入っていない。

 疲労もピークに達していたため、このタイミングの温泉は本当にテンションが上がる。


「念のためと思って、一応全員分のシャンプーと石鹼もありますよ」

「まじか!!?ムビ君神過ぎ!!」

「それは本当に有難いですわ」


 ムビは保存袋からシャンプーと石鹸、タオルを取り出し、全員に手渡す。


「僕が見張りをしておくので、皆さんお先にどうぞ」

「いやいや、ムビ君が先に入りなよ!」

「そうですよ、一番の功労者なんですから」

「いえいえ。どうぞ皆さんお先に」

「……じゃあ、一緒に入る?」

「……えぇっ!!?」

「こらっ、ユリっ!」


 こんな会話ができるのが嬉しい。

 命のやり取りの緊張が少しずつ解けていく。

 譲り合いの末、結局女子達が先に温泉に入ることになった。


「ふあああああああああっ!!??」

「気持ちいいいいいいいいい!!!!!」


 ユリとルリの絶叫が鉱道内にこだまする。


「これは……本当に……天国ですわ……」

「体が……溶けるぅ……」


 女子達は完全に風呂を満喫していた。

 ムビはその間、晩飯の支度をする。


 一応、周囲の探索をしておくか。


 ムビは探知魔法を発動する。


 ―――うおっ!?めちゃくちゃ広範囲まで探知できる!!?


 体感で、2〜3キロ先まで探知できているようだ。

 恐らく、かなりレベルが上がったのだろう。

 元のレベルは43だったが……。

 近くに魔物がいないことを確認し、ムビはステータスウォッチを確認した。


 レベル欄には、100と表示されていた。


 ―――嘘でしょう!?

 いや、でも禁忌指定の魔物を倒したなら、当然か……。


 ムビのレベルは人類の限界に到達していた。

 世界でも数十人しかいない、臨界者の仲間入りを果たしていた。

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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