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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第370話 神々の遊び

 ムビとミラは服を着直し、温泉から二つ離れた山の頂上で向かい合った。

 夜風が吹き抜け、二人の髪を揺らす。


「こいつは犯罪じゃのう。ワシとお主の対決なぞ、中継すれば世界中が注目するじゃろうな。『Mtube』なら数千万回再生は固いじゃろうに」


 ミラは肩を回し、腕を伸ばし、軽く体をほぐす。


「ミラ、本当にやるの? 今の俺、ほんとに強いよ?」


「かっかっか♪ そりゃ楽しみじゃ。遠慮なくかかってこい」


 ミラの周囲に魔力が吹き荒れる。


「じゃ、まずは軽く……」


 ムビはミラにパンチを放つ。


 パシッ。


 が、あっさり受け止められた。


「なんじゃ、その弱々しいパンチは?」


 バキィィィィッ!


 次の瞬間、ミラの拳がムビの顔面を撃ち抜き、ムビは隣の山へ吹き飛んだ。


 ———ドゴオォォォッ!!


 衝突の衝撃で山が揺れ、無数の鳥がギャアギャアと鳴きながら飛び立つ。


「どうした? まだボーっとしておるのか?」


 ふわりと、ミラが目の前に降り立った。


 ムビは頬の痛みに目を見開く。


(うそ……ちゃんとダメージを受けてる……。ミラって、こんなに強かったの……!?)


 ゆっくりと立ち上がり、ムビは息を整えた。


「はは……すごいね、ミラ。こんなに強かったなんて、知らなかった」


「かっかっか、何を言うておる♪ ワシはまだ、半分も力を出しておらんぞ?」


 背筋がゾクリとした。ハッタリではない。

 それなのに、心の奥がワクワクしていた。


「……そっか。じゃあこっちも、半分くらい出すよ?」


 バチィィィンッ!!


 ムビのパンチをミラが受け止める。

 その衝撃で地面が割れ、木々が揺れた。


「……いったいのう。人のパンチが痛いなんて、何年ぶりじゃろうか」


 余裕で受け止めたミラに、ムビは背筋がゾクゾクした。

 まさか、この力を受け止めきれる人間が、この世に存在するなんて。


「はは……すごいや、ミラ! ほんとにすごいよ!」

「バカ抜かせ、それはこっちのセリフ———じゃ!」


 ミラの蹴りが突き刺さるようにムビの腹を打ち抜き、山の頂上まで木々をなぎ倒しながら吹き飛ばす。

 それでも勢いは止まらず、空中に投げ出された。


(すごい……すごいや、ミラ……!)


 当然のごとく一瞬で距離を詰めるミラ。

 ムビに追撃を与えようとする。


 だが、ムビの周囲に透明化したカメラが浮かんでいた。


(スローカメラ起動!)


 世界が1000分の1の速度で動き出す。

 ミラの攻撃を見切ったムビは、逆にカウンターの蹴りを叩き込んだ。


 ドゴオォォォッ!!


 ミラは隣山まで吹っ飛び、小さなクレーターを作った。

 瓦礫の中から、むくりと起き上がる。


「かっかっか、なんちゅうカウンターじゃ!……こりゃいよいよ、本気でやって良さそうじゃなぁぁあああ!?」


 闇夜を照らす、巨大な魔法陣が展開される。

 異変を察知した魔物たちが、一斉に鳴き始めた。


 ———カッ!


 昼になったかと思うほどの閃光。

 空から無数の流れ星———いや、ミラの魔法が降り注ぐ。


「うわあああああっ!」


 反射神経もクソもない。

 山二つ分にも及ぶ攻撃範囲に、ムビはまともに被弾する。


 地形を変えるほどの攻撃魔法。

 だが、ムビはピンピンしていた。


「やったなミラ!? お返しだああぁぁぁっ!!」


 ミラは空を見上げる。

 巨大な魔法陣が展開され、太陽と見紛う巨大な火球が降ってきた。


「"終焉の業火フレイム・アポカリプス"!」


 ———ゴオァァアアアアアッ!!


 山一つを完全に覆うほどの巨大な火柱が立ち上がった。

 木々を一瞬で灰に変え、岩をドロドロに溶かしていく。


 しかし、その火柱の中からミラが飛び出してきた。


「ははは! なんちゅう呪文じゃ!」


 ミラに殴り飛ばされ、ムビはさらに隣山まで吹っ飛ぶ。


「やったな、このーーー!」


 二人は空中で殴り合った。

 一発ごとに山々が震え、風が嵐のように吹き荒れる。


 そんな戦闘が10分ほど続いた頃、ムビは興奮で震えていた。


(すごい……すごい……! これならほんとのほんとに、全力を出して良さそうだ!)


 ムビは剣を抜いた。


「行くよ、ミラ! これが俺の全力———」


 ピタリ。


 ムビは剣を止めた。

 ミラが笑顔で、ムビを制止するように手を掲げていたからだ。


「どうじゃ、ムビ? 頭のもやもやは晴れたか?」

「えっ?……あっ」


 言われてムビは気付いた。

 決勝戦から続いていたふわふわした感覚が、いつの間にか消えていた。


「ワシもたまにあるんじゃ。急激に強くなり過ぎて、力を制御できんときが。頭がふわふわしてボーっとするじゃろ? そんなときは、思いっきり発散すると体に馴染むんじゃ」


 ミラの周囲に吹き荒れていた魔力が消える。

 戦闘終了の合図だった。


 ムビは苦笑しながら剣を鞘に納める。


「ありがとう、ミラ。楽しすぎて、思いっきりやっちゃうところだった」


 ミラはにっこり笑う。


「ワシもじゃ♪ 楽しすぎて、お主を殺しても気付かんところじゃった」


 ムビは笑う。


「またまたー。ははは」


 二人が笑っていると、ちょうど東の空が白みはじめた。


「おっ、そろそろ夜が明けるな。ムビ、日の出を拝みながら一杯どうじゃ?」


「あれっ? お酒持ってきてるの?」


「当たり前じゃ♪ お主がボーっとしてるせいで、3日間飲めなかったのがな」


 ムビとミラは、周辺で一番高い山の頂上に腰を下ろす。

 戦いで変わり果てた地形が眼下に広がっていた。


 それでも朝日の美しさは微塵も失われず、ミラが持ってきた酒は美味しかった。

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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