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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第341話 救済を名乗る影

 俺は逃げるようにフィールドを後にし、『四星の絆』の控室の扉を押し開けた。

 いつもなら愚痴を言い合える仲間たちは、今日はいない。

 広い控室のベンチに、一人腰を下ろす。


 大観衆から浴びせられた、信じられないほどのヘイト。

 まるで罪人の公開処刑のような空気だった。

 嫌われている自覚はあったが、今日のそれは桁違いだった。


 ———いや、もしかしたら、これまでも同じくらい嫌われていたのかもしれない。

『四星の絆』のみんなが、俺へのヘイトを和らげてくれていただけで。


「なんでいつも、足を引っ張っちゃうんだろう……」


 誰もいない控室で、独り言が漏れた。


『四星の絆』の仲間たちは、皆強く、才能に溢れ、容姿端麗で愛嬌もある。

 俺さえいなければ、きっと人気冒険者パーティになっていただろう。


 おもむろにスマホを取り出す。

 ミラから「試合前は見るな」と止められていたが、指が勝手にSNSを開いていた。


 エゴサした瞬間、画面いっぱいに広がる罵詈雑言の嵐。

 その99%が事実無根。

 DMには殺害予告まで届いている。


 フリックするたび、体が痺れ、頭がぐるぐる回った。


 いつもならきっと、こんなの受け流せる。

 でも、今日は違った。


 リリスに裏切られ、仲間も不在で、気持ちがひどく落ち着かない。

 誹謗中傷の一つ一つが、脳髄の奥にまで突き刺さる。


「……だからそれも、やったのはゼルなんだって!」


 思わず声が出る。

 フリックが止まらない。


 試合前に、こんなことしちゃいけないのは分かっている。

 集中しなければならない。

 でも、指が止まらない。


 うるさい。

 うるさい。

 うるさい。


「———こんな負け確の状態で、どうしろって言うんだよ!!」


 ———ガシャン!


 生まれて初めて、スマホを投げた。

 ロッカーに当たって落ちる。


 そのままベンチに仰向けになり、項垂れた。


「……ごめん、みんな……ごめん……」


 情けなさと申し訳なさで、目頭が熱くなる。

 今から俺は、『白銀の獅子』に一人で向き合わなければならない。


 まるで、あの頃に戻ったみたいだ。

『白銀の獅子』に在籍していた、あの息苦しい日々。

 いつもビクビクして、無力感に苛まれ、周りの顔色ばかり伺っていた。


 自分なりに頑張ったつもりだった。

 素敵な仲間に出会い、たくさん助けてもらった。

 それでも結局、何も変えられなかった。


 何も変えられない、ダメな人間。

 そういう星の下に生まれたのだろう。

 自分の運命を呪わざるを得ない。




「———お困りのようだね」




 背筋がゾッとし、跳ね起きた。

 誰もいないはずの部屋に、女性の声が落ちたから。


「……だ、誰……!?」


 いつの間にか、ロッカーの前に黒いフードの女性が立っていた。

 顔は見えない。


「ほんと、世の中って酷いよね。何も知らないくせに、熱だけは異常なんだから」


 女性は足元のスマホを拾い、こちらに近付いて来た。


「はい、スマホ」


 ひび割れたスマホを手渡される。


「……あ、あなたは誰ですか……?」

「はじめまして、ムビくん。私のこと、知ってるかな?」


 女性がフードを外す。

 その瞬間、雷に打たれたような衝撃が走った。


「……ミ、ミナリィ……!?」


 黒いマスク。褐色肌の、整った顔立ち。

 目の前にいたのは、紛れもなく世界一の『Mtuber』、ミナリィだった。


「あっ、僕のこと知ってるんだ? 嬉しいー♪ ひょっとして、ミナ友だったりする?」

「……あなたのことを知らない『Mtuber』なんていませんよ……」


 心臓がドクドクと跳ねる。

 自分の業界の頂点が、目の前にいる。


「実は僕、君のファンなんだ♪ だから、君のことを応援しようと思って」

「ファ……ファン……?」

「そう。君のことは、ずっと見ていたよ」


 柔らかく目尻が下がる。


「皆酷いよね。本当の君は優しくて頑張り屋なのに、だーれも君のことを評価してくれない。でも、僕は知ってるよ。君が仲間想いの、最高にクールなやつだって」


 心臓が震える。

 今一番欲しい言葉を、世界一のインフルエンサーが惜しげもなく投げかけてくる。


「悪いのは全部、『白銀の獅子』なんだろう? 僕は知ってる。君は潔白だ。本来罵声を浴びるべきなのは、あいつらの方さ」

「……し、信じてくれるんですか……?」

「もちろん。言っただろう? 僕は君のファンなんだ。例え世界中の人間が君を笑っても、僕だけは君の味方だ。君の言うことは、ぜーんぶ丸ごと信じてあげる♪」


 ミナリィがにっこりと笑う。


「でも、だからこそ許せないんだ。君がこんな不当な扱いを受けるのは」


 ミナリィは腕を後ろに組み、ベンチの周りをゆっくり歩く。


「一ファンとして、このまま君が負けてしまうのは忍びない。———だから、ささやかながら、君に助力をしようと思う」


 ミナリィが手を掲げると、空中に魔法陣が浮かび上がった。

 そこから一本の剣が現れ、地面に突き刺さる。


「ほら、魔剣だよ。これを君に進呈しよう。なーに、僕からのプレゼントさ」

「ま、魔剣……!?」


 マスクの奥で、ミナリィの口元がニヤリと歪んだ。

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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