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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第304話 準決勝・中堅戦6

 私が選んだ選択——それは“完全時間停止”。


 スキルを発動した瞬間、世界は真の静寂に沈んだ。

 音も、風も、光さえも凍りついたように動かない。

 この感覚を味わうのは何年ぶりだろう。少し不安だったが、成功してよかった。


 私は周囲を見渡す。

 先ほどまでと変わらない光景のはずなのに、空気だけが異質だ。

 この世界は嫌いだ。

 まるで異世界に迷い込んだような、現実から切り離された孤独がまとわりつくから。


 完全停止した世界では、私が何をしても物理的影響を与えられない。

 殴ろうが蹴ろうが、それは“0秒の出来事”として世界に記録されない。

 逆に、私も一切の影響を受けない。

 灼熱の炎に触れても、触れた事実そのものが無効になる。


 絶対に安全な世界。

 これならサヨのトラップに触れても、私はダメージを受けない。


「さて……終わらせましょう」


 今殴ってもサヨにダメージは与えられない。

 ならばどうするか。


 私は杖をサヨに向けた。


「私の魔法で取り囲んであげる。時間が動き出した瞬間、あなたは魔法の嵐に飲まれる。それでおしまい」


 長かった。

 ヒヤヒヤしたが、どうにかサヨを仕留められる。


 そういえば、完全停止した世界でもサヨの意識はあるのだろうか。

 最後に、少しばかり興味が湧いた。


「どう? 私の姿は見えている?」


 なんとなしに、声をかける。

 私が笑みを浮かべた瞬間———


 ガッ!


 ———()()()()()()()()()()()()


「ええ。よく見えていますわ」


 心臓が跳ね上がる。

 悲鳴すら出ない。


 な……なんで!?

 う、動けるはずがない!

 だって、完全に時間が停止しているのよ……!?


「このときを待っていましたわ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 煌々と魔眼を輝かせながら、狂おしいほど笑みを浮かべるサヨ。


「ど、どうして動けるの!? 私の無敵のスキルが発動しているのに……!?」

「確かにあなたのスキルは、現代では最強クラスと言っていいでしょう。しかし残念。()()()()()()()()()()()()()()()()()


 私の時代……?

 何を言っているんだ……?


 今この場で起きている全てが、何一つ理解できない。


「あ、あり得ない! さっきまでならともかく、完全な時間停止下で動くなんて……!」


 震える私に対し、サヨは目を細めて微笑む。

 まるで勝利を確信しているかのように。


「私は逆に、完全時間停止下ならば動けるんですよ。だから、あなたがそうするように仕向けました。あなたにトドメを刺さず、あえて泳がせてね」


 意味が分からない。

 なぜ、そんな無用なリスクを冒す必要があるのか?


「は、はぁ……!? 何よそれ、何の意味があるのよ!?」

「時の流れを止めなければ、できないこともあるのです。本当にこの瞬間を、長らく待ち望んでいました。お前に家族を奪われた、あの日から」


 家族……?

 あぁ、冤罪をかけた父親と、首を吊った母親のことか。


「あはは! あなた、まだ根に持ってたの? 私を恨むなんてお門違いでしょ? 強姦殺人する男から生まれた出来損ないは、物事の道理を知らなくて困るわ! 母親だって、あんたみたいな出来損ないを産んで、人生に絶望して首を吊ったんじゃないの!?」


 ———バキィッ!


 サヨの握力に耐えきれず、杖が折れた。

 私の体がビクリと震える。


「別に、あなたを恨んでなどいません。ただ、私たち家族は運が悪かっただけ。道を歩いていたら、たまたま野蛮な獣に遭遇してしまった……ただ、それだけです」


 ……は? 嘘でしょう?


 杖を折るなんて、あり得ない。

 いや、普通の杖ならまだ分かる。


 だが、この杖は普通の杖ではない。

 聖装なのだ。

 人の力で折るなど、到底不可能だ。


「な、なんなのあんた、その力……ほんとに人間なの!?」


 もちろん、私の言葉は比喩にすぎない。

 人間とは思えないほどの力、という意味の。


 しかし、サヨから返ってきたのは、全く予想外の答え。


()()()()()()()()()()()


 時が止まった。

 いや、既に時は止まっているのだが。


「は? 何の冗談……」

「なかなか勘が鋭いですわね。その通り、私は人間ではありません。本来の力を行使するために、時間を止めてもらう必要があったのです。時間が流れていては、この脆弱な体が負荷に耐えられませんからね。でも、今なら肉体に負荷はかかりません。なんせ、何が起ころうと所詮0秒の出来事……元の世界では、"なかったこと"になるのですから」


 ———バサッ。


 サヨの背中から、黒い堕天使のような羽が生えた。

 私は目を見開いた。


「あ、あなた……人間じゃ、ないの……?」


 次の瞬間、サヨの魔力が周囲に満ちて———。


「う……、おえぇぇッ!!」


 私は膝をつき、嘔吐した。

 あまりの苦しみに涙が止まらず、パニックに陥る。


 な、なんなの、この魔力……!?

 到底、人に許容されるレベルじゃ……!


 咳き込む私を、サヨは冷たく見下ろしていた。

 まるで、虫でも見るみたいに。


「失礼ですわね。人の姿を見て吐くなんて」

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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