*この人たちが特殊なだけです
まさかのアイリスが倒したのがS級指定だったという衝撃的告白から始まり、エイトからユリウスとトーリスそれから白の聖女に会いたがっている騎士たちにあってほしいと言われてから2日後。
アイリスたちは王宮に来ていた。
「早くない展開!!!?」
話は遡って数十分前。
何考えてるのかわからないと定評の笑顔を浮かべ、のほほんとした声をかけてきたケイトの言葉から始まった。
『前のエイト様が言っていたユリウスたちと云々の話だけれどね、今日みたいだよ』
え、と唐突な事には受けた声を出したのもつかの間、お迎えにあがりましたとやってきた騎士たちに連れられ(ちなみに先日のマニピュレ騒動の時の第3騎士団の団員たちだった)気がつけば王宮に、と言うわけだ。
何を言っているのかわからないと思うがアイリスたちもわからない。
「流石王宮だから豪華だねぇ」
驚きつつもそこは流石アイリス、キラキラ目を輝かせて辺りを見渡すその様子は愛らしい少女でしかなく、案内をしている騎士たちもほんわかとした目を向けていた。
「…………俺なんでこんなとこに……マナーとか……もう覚えてねぇよ……」
「………俺だって身分の高い人に関わるような立場じゃないのに……」
それに対して保護者枠のフランとミシェルは肩を落として表情は対照的に真っ暗。
いやいやだってさ、と言い訳するに曰く、騎士舎に案内されてで終わると思っていたわけで、さしものアイリスでもまさか王宮の中に、しかも割と深いとこまで連れてかれるなんて思ってなかったんだよ。
「前えーく……エイト王子にあった時はそんな気追ってなかったのになんで今回はそんなに」
「………あん時はテンションハイだったっていうか…王子様だけだったし……本人が結構いい意味で話しかけやすかったし……」
「……ていうかお嬢さんのやらかした衝撃の方がおっきかったし……後ろに学園長とかもいたし……」
「大丈夫だよー、えー……エイト王子が呼び出した形になるんだからそんな気張らなくてもだいじょぶだいじょぶ」
へらへらと笑うアイリスの顔には緊張の文字なぞある訳もなく、強いていうなら一応王宮だしエイトのことをえーくんて呼ぶのはまずいかなぁ、くらいのものである。
……実のところアヤメであった頃に何度か、かつてのスエルテではないものの王宮に入ったことは何度かあった、というのもあるかもしれない。
「_____エイト王子!アイリス・オークランド様、並びにフラン・ユースタス様、ミシェル・ケイネス様をお連れしました!」
いろいろ飲み込んで我慢はするが、わがままを言うなら様付けはやめてほしい。
_____入れ、とエイトの声。
ギィ、ィィィ……少し軋んだ、重たい音と共に扉が開く。
どちらかといえばシンプルな部屋、けれど置かれているものは素人目にも良いものだとわかる。
2日前に学園であった時よりも王子らしい装いで、側にはロメルスを控えさせたエイトが3人を迎えた。
「ご苦労だったな、もう下がっていいぞ」
「はっ」
3人を案内した騎士たちが頭を下げ、その場を下り扉が閉まる。
「さて_____アイリス、フラン、ミシェル、こんな所まで来てもらって悪いな。本来なら騎士の宿舎で、という予定だったんだが……ちょっとあってな」
その真剣な面持ちにごくりと息を飲む。
一体何があったのだろうか、エイトはゆっくりと口を開く。
「あいつら今クエストに行っててな、終わり次第こっちに顔を出すように言ってるんだ。ドッキリを仕掛けてやろうと思って」
「何それ面白そう!何すればいい!?」
「やっぱこの人アイリスの昔からの友達だわ!」
「類が友を呼ぶんじゃないよ!!」
きらーんとアイリスの顔が輝く。
類は友を呼ぶ、フランとミシェルはその言葉の意味を知った。
「いいんだよ、あいつらに迷惑かけられることの方が多いんだからたまにはあいつらも迷惑かけられるべきだと思わねぇか」
「騎士さんいいのかよこれ!」
「えぇ、ユリウス先輩を巻き込むのは少し心は痛みますがいいと思いますとても」
ロメルスの笑顔はとてもにこやかだった。
早速作戦を立て始めるエイトとアイリスのその手際の良さといったらもう、言葉にならない。
そもそも_____基本的に自分のやりたいこと最優先の自由人間と我儘人間ではないものの生粋の王族人間。
止めたところで無駄である。
ぽんと軽やかな音を立てて創り出されたのはどこかで見たことがある黒板で、これまたどこかで見たことのある丸メガネをかけたアイリスとエイト。
「……もう何も突っ込むまい」
「まず髪色を隠すために……」
「えーくんはここで……ロメルスさんは……」
「えぇお任せください」
「フランとミシェルは……」
カカカッ、音を立ててチョークで作戦が書き込まれていく。
配置、行動、それに伴う予測できるユリウスたちの動き……これで内容がドッキリなんてものじゃなければよかったのだが。
「ていうかこの作戦いいの?この部屋めちゃくちゃになるんじゃ……」
「ふっ、俺を誰だと思ってる。王家に伝わる結界術を用いればそんなこと気にするな」
「そんなことに使っていいのかよ!?」
「勿論だ、そもそもここでそういった騒動を起こすことに関しては父上たちにも許可は取っている」
王族っていうのはもしかしたら一般人よりもはるかに自由な人たちなのかもしれない、フランとミシェルはそう思った。




