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閑話:動物との初めての出会いのようだった

彩芽がこの世界に転生もどきトリップしてから早数週間。

主にアロガルのお陰で着々とこの世界のこと、魔法を覚えていっている彩芽だがノーフェイスの面々との関係については微妙の一言であった。


ノーフェイスの、といっても先生役を買って出てくれているアロガルと何故か超絶的に“アヤメ”を気に入っているマーリン以外、である。

ノーフェイスでもっぱら料理係をしているリードとは少し話をすることもあるのだがその程度。

その他4人に関しては、ほぼ無言でじぃっと見つめいるのに話しかけようとすると即座に姿を消すリリアナ、一見好意的だがのらりくらりと気が付けば煙に巻かれているモルガン、基本的に眠っているかうつらうつらとしているため話しかけることすらままならないラジ、嫌悪的とまではいかないが野生の動物のような視線を向けるホルン。


要するに、マーリンが「アヤメをここにいれる!」といった為あからさまな敵意や嫌悪感を抱いているわけではないが関わる気もないので無関心気味、と言うわけである。(リリアナに関してはもしかしたら興味は持ってはいるようだが)



さて、話は変わって現在アヤメはアロガルにいつものように魔法の授業を受けてのお勉強中だった。

勿論、マーリンも一緒である。

といっても自他共に認める天才魔法使いマーリンは人にものを教えるのがとんと苦手なためアヤメの後ろできゃいきゃいとはしゃいでいるだけなのだが。


「創造魔法は名の通り“想像”したものを“創造”する、魔法の最も根本的で基礎、そして単純故に才が無ければ使えぬ魔法じゃ。アヤメは最初見事ラパンのぬいぐるみを創ってみせた。創造魔法の才があるとみてまず間違いない。故にこそ、何も知らぬ今きちっと基礎を組み立てねばならん」


ぴしりと3つ指を立てたアロガルは指を一本一本折りながら説明を続ける。


「まず1つ、創造魔法は作り出すものの色形、構造から始まりその感触など事細やかに設定せねばならん。まぁ言葉で言えば難しく感じるが、そうじゃのぅ……アヤメ、このクッションはどういった形でどんな感触に思う」


すっと何処からか取り出したパステルカラーのクッションを指差す。

アヤメは首を傾げ律儀に手を挙げてからその答えを口にする。


「パステルカラーの四角いクッションで……中は羽毛?ふわふわしてて顔を埋めると気持ち良さそう」

「うむ、つまりはな、事細やかに設定といったところで普通に何かを思い出す時、例えばこのクッションにしても何にしても、人は自身の記憶を参考に大概のことは勝手に想像できてしまう。重要なのは細部まで考えが当たるか、否か。そして2つ、何事が起ころうとも想像できるか、否か。……さてアヤメ、そうじゃな、何でも良い、何か創ってみてはくれんか?」

「へっ!?何でも……?」

「うむ、指定がないと難しいかのぅ、では、我は今座りたい気分じゃ」


少し狼狽えながらも魔力を集め創造魔法を発動しようとする、ふとポケットから手のひらサイズのボールを取り出したアロガルはそれをひょいとアヤメに投げる。

慌ててキャッチしたアヤメに「魔法が解けておるぞ」と指を指す。


「あっ、うー……いきなりボール投げられて集中切れた……」

「それが、出来るか否か。更に同時に3つ、創造魔法を発動できるまでの時間。マーリン、我は今座りたい、創ってみせよ。ほれほれ、ほーれ」


幸せそうにアヤメの様子を眺めていたマーリンに、唐突にアロガルはボールを3つ投げつけながらそう声をかけた。


「うん?いいよー、ほーらばーん!」


1つ手に取り、1つは足の甲で蹴り上げてリフティング、更にもう1つは頭の上にバランスよく乗っけてとまるで大道芸のようにしながら空いている手をくるりと指を回した。

ぐにゃりと魔力が収束して目を開けた時にはふかふかのソファがドンと現れていた。


「ぅっ、わぁー!すごいマーリンふっかふか!」

「!すごい?ほんと!?でしょでしょすごいでしょー!アヤメに褒められるなんて嬉しいよー!」


ぱぁっと顔を輝かせたマーリンはボールを放り投げてアヤメを抱きしめてくるくると回る。

ぽすんとソファに座ったアロガルはまぁつまりはこう言うことじゃとくるくる指を回した。


「想像力、何かをしている状態でも魔法を並行して使える並列思考、スピード、この3つが創造魔法の肝というわけじゃ。さて、アヤメは既に基礎はついた。あとは他の魔法同様これを極めるには兎に角反復練習!我が良いというまで何があろうと常に並行して創造し続けよ、頑張るのじゃぞ、さぁれっつごーぅ!」


のじゃ喋りの見た目ショタ、可愛らしい掛け声と共に、かくしてアロガル式魔法反復練習(スパルタ)が始まった。


「安心せよ、我の魔法道具であるヴァプラはモノの構成をみる効果を有する、対象が生物であってもじゃ。魔力枯渇寸前なったり危なくなったらすぐいってやるぞ」


虫眼鏡のようなものを取り出してそういったアロガルの指示通り、ものを作って、創って、創って創って創って創って…………


しばらく経ってふと何かに気づいたらしいアロガルはそーじゃそーじゃと若干態とらしく声を出した。

生憎と柏木彩芽の頃の社畜根性が抜けきっておらずがっつりと集中して魔法特訓をしていたアヤメにはただただ声を出したようにしか思わなかったようだが。


「我はちと用事があったんじゃった、ほれマーリンも手伝えこいこい、アヤメは気にせず特訓を続けておれ」

「えっ!?俺、アヤメといっしょ、いしょ、い、や、やだぁ〜〜〜〜!!」


小柄なアロガルだが自身よりも大きなマーリンのやだやだ攻撃にも今生の別れのような悲痛な声も気にせず首根っこを掴んで引きずっていった。

1人になっても尚創って創って創って創って……ふと、山積みになった創ったものを挟んで前に現れたのは赤髪の男。


しゃがみこんで黒い瞳を創造魔法の山なじっと向けているのはマーリンから“底なしの腹ペコ”と称されていたホルン・イーターだった。


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